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脳神経研究に有用なRNA精製・解析用製品

掲載日情報:2026/03/30 現在Webページ番号:72812

高品質なRNA研究用製品を幅広く取りそろえているZymo Research社の製品ラインナップの中から、本ページでは脳神経研究に用いられた製品を使用文献と共にご紹介します。併せて、製品を用いる際のヒントをご案内します。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

Brain-Brochure

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目次

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カテゴリー 品名 製品概要 本ページ掲載項目
文献紹介 技術情報
RNA抽出 Direct-zol RNA Kit 酸性グアニジンチオシアネート/フェノール法で試料を溶解後、溶解液をそのままスピンカラムにアプライすることにより、高品質かつ高濃度のTotal RNAを迅速かつ効率的に抽出・精製できるキット。 イヌ脳幹試料からの狂犬病ウイルスの検出 微量RNA抽出のヒント
マウス脳組織からの微量RNA抽出
イルミナ用
NGS
ライブラリー
調製
Zymo-Seq RiboFree Total RNA Library Kit rRNAを除去したTotal RNAのNGSライブラリー調製キット。 ショウジョウバエ触角で発現するノンコーディングRNAの解析 高品質なTotal RNAライブラリー調製のヒント
Zymo-Seq SwitchFree 3' mRNA Library Kit Total RNA試料からの3'mRNA-Seq用ライブラリー調製キット。
microRNA-Seq Service miRNAライブラリーの調製と解析を行う受託サービス。

はじめに

従来、脳の研究は主として巨視的構造や電気的活動の観察に限られていました。しかし神経科学研究に分子生物学的手法が導入されたことで、脳の理解を一変させるパラダイムシフトとなりました。この展開により、研究者は神経の発生、機能、機能障害の根底にある分子メカニズムを解明できるようになりました。さらに、こうした手法の導入は、神経疾患に対する革新的な治療法や治療戦略の開発にもつながっています。

その一方で、これらの組織からの核酸抽出は高脂質含量、細胞構造の複雑さなどのため、依然として神経科学研究固有の課題となっています。脳組織からの核酸抽出におけるこのような課題を克服するため、研究者は通常、これらの問題に対応するよう設計された専用のプロトコールや試薬を用います。本ページでは、分子生物学的手法が神経科学の変革をどのように後押しし、新たな発見の最前線へと導いているか、いくつかの事例をご紹介します。

脳神経研究

文献紹介:イヌ脳幹試料からの狂犬病ウイルスの検出

狂犬病について

狂犬病は致死的な人獣共通感染症であり、致死率はほぼ100%です。迅速に治療すれば予防可能であるにもかかわらず、世界では毎年およそ60,000人が狂犬病で亡くなっています。死後の狂犬病診断におけるゴールドスタンダードは直接蛍光抗体法(DFA法またはFAT法)ですが、この方法にも限界があります。診断精度は高品質な抗体標識試薬、熟練した技術者、試料中に非特異的蛍光が存在しないことに左右されます。さらに、脳試料は細胞構造が複雑で脂質含量も高いため、核酸やタンパク質の適切な抽出を妨げることがあります。DFA法は、劣化組織や固定組織には適しておらず、新鮮組織を低温管理下(コールドチェーン)で維持する必要があります。

脳イラスト

代替アプローチ法の開発

Crystal Gigante博士が開発したTaqManベースのLN34アッセイは、RT-PCRを用いてリッサウイルス属に共通して保存されたゲノム領域を増幅・同定します。パイロット試験では、このLN34アッセイに対して過去最大規模の評価が行われ、2,978試料が対象となりました。これらの脳幹試料は、アフリカ、アジア、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東の狂犬病が疑われる動物に由来し、Direct-zol RNA Miniprep Kit(Zymo Research社)を用いてRNAを抽出しました。CDC(米国疾病予防管理センター)は、すべての参加機関にLN34アッセイに必要な構成品一式と、Direct-zol RNA Kitを提供しました。
TRIzolを用いる従来型RNA抽出法で必要となるクロロホルムや相分離工程を省略できるため、Direct-zol RNA Kitのスピンカラム技術は、世界中での狂犬病検査における重要課題である「使いやすさ」と「導入のしやすさ」に対応します。RNA抽出法を、結合、洗浄、溶出というシンプルな工程に標準化したことが、この研究の実施において決定的でした。これにより、世界各地の施設で有機溶媒による相分離技術やDFA法に精通した研究者に頼ることなく、死後の脳試料からRNA抽出を行えるようになりました。

CDCおよびワクチン接種者チーム

CDCおよびハイチにおけるワクチン接種者チーム

またLN34アッセイは、ホルマリン固定や劣化など、DFA法には不向きな試料からでも狂犬病ウイルスを検出することに成功しました。狂犬病の流行地域の多くでは、継続的な低温保管、蛍光顕微鏡、高度に熟練した人材を必要とするDFA法を導入することが困難です。固定組織からのRNA抽出を可能にすることで、新鮮組織を高コストの低温管理下で輸送する必要がなくなり、医療資源の乏しい地域での狂犬病診断の強化が期待されます。国際共同評価の結果、LN34アッセイは高い確実性、低い変動性、優れた診断感度を示しました。このアッセイは世界の狂犬病検査を変革する可能性を持っています。

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文献紹介:マウス脳組織からの微量RNA抽出

  • 使用文献:Gao, Y. et al., Cell Rep., 32(5), 107997(2020). [PMID:32755589]
  • 使用製品:Direct-zol RNA Kit
  • 著者(Yu Gao博士、ウィスコンシン大学マディソン校)コメント:微量RNA精製用の複数のキットを比較したところ、TRIzolで溶解後にカラム精製を行うDirect-zol RNA Microprepが最も高品質なRNAを得られました。これは微量RNAを分解から守る最良の方法でもあります。さらに、溶出カラムの膜部分の口径が小さいため、微量の溶出液でRNAを回収でき、精製RNAを濃縮する追加工程が不要でした。

海馬について

海馬は、脳の深部に位置するタツノオトシゴのような特徴的な形状の組織で、人間の経験に不可欠な多くの認知機能において重要な役割を担っています。この小さいながらも重要な領域は、記憶形成、学習、空間認知、情動調節に中心的役割を果たします。脳の「記憶の索引付け装置」として機能し、短期記憶を長期記憶へと変換することで、個人的な体験、事実に関する知識、人生の教訓を保持できるようにします。


神経再生の促進

近年の研究では、「ランニングが海馬におけるニューロン新生を促進し、学習能力や情動調節に影響を与える」という興味深い現象が注目されています。Yu Gao博士らの研究は、この関連を支える複雑な分子機構の解明を進めており、ランニングの力によって脳をより健康にできる可能性を示しています。
ランニングと神経新生の相関は広く知られていますが、その正確なメカニズムはまだ明確ではありません。この研究では、RGS6がニューロン成熟と、海馬神経新生に依存する学習および情動調節において重要な役割を果たすことが示されました。マウスでRGS6をノックダウンすると、ランニングによるニューロン成熟の促進や、その後の学習改善および抗不安作用が失われました。研究では、RGS6が電位依存性カルシウムチャネルを介したカルシウム流入に影響することで、ニューロン成熟に寄与している可能性が示唆されています。RGS6は、神経変性疾患や加齢性認知機能低下を対象とする治療介入の標的となる可能性があります。

ランニングイラスト

微量RNAへの対応

脳組織の不均一性と複雑な構成のため、生存可能な再生ニューロンや新生ニューロンを回収することは、Yu Gao博士らにとって大きな課題でした。生存可能なニューロン数が限られていたため、ゲノムワイドな評価を行うには広範なRNA抽出が必要でした。新生ニューロンを同定するため、条件付きリボソームタグ付けを用い、RNAを免疫沈降により回収しました。

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技術情報:微量RNA抽出のヒント

  1. ワークフローを簡素化する:
    工程数を減らし、ユーザーエラーや追加工程ごとに生じるバイアスを最小限に抑えます。たとえば、フェノール・クロロホルム分離では、操作者の熟練度が結果に影響します。
  2. 採取と処理を最適化する:
    DNA/RNA ShieldのようなDNA/RNA安定化液の使用や、液体窒素による急速凍結で試料を保存することを検討します。DNaseが多く扱いにくい高脂質試料には、Tri-ReagentやTRIzolのようなカオトロピック系溶解液が適しています。試料を適切に採取し、十分にホモジナイズすることで、高いRNA完全性が得られます。
  3. RNA抽出法を試料に合わせる:
    微量試料用に設計されたRNA抽出キットを選びます。これらのキットは、17 nt程度の短いRNAや単一細胞レベルの微量試料からでも、RNA回収率を高め損失を最小限に抑えるための専用カラムや試薬を備えています。

Direct-zol RNA Kitシリーズ
RNA Clean & Concentratorシリーズ
DNA / RNA試料の保存試薬バナー

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文献紹介:ショウジョウバエ触角で発現するノンコーディングRNAの解析

解析概要

lncRNA(長鎖ノンコーディングRNA)が神経プロセスの調節に関与することを裏付ける根拠は、10年以上にわたり蓄積されてきました。200 ntを超えるこれらのRNA配列は、触媒、足場、調節因子、スポンジ、リガンドなど、多様な機能を持ちます。これまでに、いくつかのlncRNAが神経発生や神経活動の調節因子として同定されており、嗅覚受容ニューロン群による嗅覚情報の符号化における役割を研究する土台が築かれてきました。

ショウジョウバエの触角は詳細に解析されており、ゲノムも比較的小さいことから、イェール大学の研究グループはこのモデル生物を用いて、神経発生におけるlncRNAの役割を評価しました。ショウジョウバエRNAは、5日齢の雄および雌から第3触角節を採取して抽出されました。これらの構造は非常に小さいため、4つの生物学的反復に十分なRNA量を得るには、およそ150匹を解剖する必要がありました。その後、著者らはZymo-Seq RiboFree Total RNA Library Kitを用いてrRNA除去済みのTotal RNAライブラリーを構築し、コード領域だけでなく、研究対象であるノンコーディング転写産物も解析しました。

ショウジョウバエイラスト

解析結果

これらのライブラリー解析により、ショウジョウバエの触角には数百種類の線状lncRNAが存在することが示されました。これらには、アンチセンス鎖lncRNA(例:CR44137)、センス鎖重複lncRNA(例:CR42549)、遺伝子間領域lncRNA(例:CR31451)、環状RNA、多数のイントロンRNAが含まれます。
このlncRNA群から、著者らは74種類のアノテーションされていないlncRNAを同定しました。さらに、得られた嗅覚系のRNA-Seqデータを他系統・他組織・他手法の公開データセットと組み合わせて解析することにより、触角で優先的に発現する38種類のlncRNAを見いだし、lncRNAを神経細胞型に対応付け、同定した30種類の神経系ncRNAについてlncRNA-ニューロンマップを作成しました。
まとめると、本研究は神経系における今後の機能解析候補となる多数のlncRNAを提示しており、神経調節機構の解明に向けた研究の可能性をさらに広げるものと考えられます。

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技術情報:高品質なTotal RNAライブラリー調製のヒント

  1. DNAを含まないRNAを用いる:
    RNA試料をDNaseⅠで処理して混入DNAを除去します。DNAが残存していると、シークエンスデータ品質を低下させ、バイアスが生じる可能性があります。
  2. RNA試料の品質確認を行う:
    フラグメントサイズやRINを取得し、RNAの完全性を評価します。可能な限り完全性が高いRNAを使用します。
  3. ビーズクリーンアップ時の注意:
    ビーズは使用前に室温に戻します。転倒混和やボルテックスで十分に均一化します。核酸を効率良く回収するため、洗浄バッファー残液を完全に除去し、ビーズを適切に乾燥させます。適切に乾燥したビーズは、光沢がなく、ひび割れもないマットな外観を示します。

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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