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RNA抽出を成功させるためのコツやヒントをご紹介! TIPS & TRICKS FOR RNA ISOLATION(Zymo Research社)

掲載日情報:2024/07/05 現在Webページ番号:71735

RNA抽出には困難な作業が伴います。また、よくある問題として、RNAの分解、低収量、低純度、DNAのコンタミネーションなどが挙げられます。さらに、試料の種類によってはRNA抽出の際に、考慮すべき点があります。例えば、微生物(グラム陽性/陰性菌、真菌、古細菌など)は、化学的・酵素的な方法では溶解しきれない丈夫な細胞壁を持っていることがあります。また、糞便や植物などの試料には、RNAと共沈し、RT-qPCRなどの下流の解析に影響を及ぼす可能性のある阻害物質(ポリフェノール、フミン酸/フルボ酸、タンニンなど)が含まれています。
そこで本記事では、RNA抽出のコツ、特にDNAを含まない高品質のRNAを最大限に抽出するための方法をご紹介します。


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試料採取後のRNAの安定化

RNAは不安定で非常に分解されやすい物質です。多くの試料には、RNAを分解するRNaseが大量に含まれています。RNAが分解されるのを最小限に抑えるには、試料採取後直ちにRNAを安定化させることが必要です。RNAを安定化させる一般的な方法には、液体窒素やドライアイスで冷却したエタノールによる瞬間凍結や、-80℃フリーザーでの保存などがあります。しかし、これらの方法は凍結融解によりRNAダメージを受けるなどの欠点があり、また試料採取時に、これらの方法をいつも利用できるとは限りません。

RNAを安定化させる最もよい方法

  1. RNaseを不活性化する溶解バッファー(TRIzol、RNA lysis bufferなど)で直ちに試料を溶解する方法。試料はすぐにRNA抽出処理または、凍結保存をすることができます。
  2. ヌクレアーゼを不活性化し、核酸を常温で長期保存可能な安定化試薬(DNA/RNA Shieldなど)に溶解する方法。野外での試料採取や貴重な生体試料(組織、血液など)を採取する際に特に有用です。
試料採取外観

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試料の十分な溶解

RNA抽出操作において、高収量・高品質のRNAを得るには、試料を完全に溶解することが必要です。しかし、すべての試料が同じ溶解バッファーに適しているとは限りません。例えば、血液細胞(リンパ球、PBMCなど)や微生物は、効率的に溶解することが難しい傾向があります。これらの試料では、界面活性剤ベースの溶解バッファーを加えるだけでは不十分な場合があります。効率的に溶解させるためには、溶解バッファーの添加と物理的な破砕(ビーズ破砕など)を組み合わせることや、溶解バッファーを加える前に酵素(プロテイナーゼK、リゾチームなど)を添加することが効果的です(図1)。さらに、試料を十分に溶解することは、抽出操作をスムーズに進める上でも重要です。試料の溶解が不十分な場合、カラムを用いたRNA抽出では、カラムの詰まりやバッファーのキャリーオーバー、DNAのコンタミネーションをおこし溶出が不十分となる可能性があります。Zymo Research社では、このような点を考慮し、各試料に対して最も効率的な溶解バッファーとなるよう最適化しています。
溶解バッファー中で、破砕ビーズによりホモジナイズしたE. coli.から抽出したTotal RNAのRIN値

図1. 大腸菌におけるビーズ破砕を用いた効果

溶解バッファー中で、破砕ビーズを用いてE. coliから抽出したTotal RNAと、溶解バッファーのみでE. coliから抽出したTotal RNAをAgilent 2200 TapeStationで解析した。溶解バッファー中で物理的にホモジナイズすると、23S/16Sリボソームにおいて高いバンド強度が得られ、さらにRNA Integrity Numbers(RIN)が高くなることが分かる。

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コンタミネーションしたDNAを取り除くには?

RNA抽出時におけるもう一つの問題はDNAのコンタミネーションです。DNAのコンタミネーションは、紫外可視分光法による定量測定に影響を与え、RNA濃度が実際よりも高くなる可能性があります。さらに、RNA-seqなどのより高感度なアプリケーションでは、得られる結果に影響を及ぼすこともあります。正確に定量を行い、得られる結果への影響を防ぐためには、コンタミネーションしたDNAを除去することが重要です。コンタミネーションしたDNAの除去方法は、TRIzol相分離、DNA除去カラム、DNase処理などがあります。
DNAのコンタミネーションを確認する最も効率的な方法は、RNAをアガロースゲル、Agilent TapeStationなどで可視化し、28SリボソームRNAのバンドの上に高分子量のDNA断片がないか調べることです(図2)。また、qPCRやQubitのような方法でも確認することができるので、DNAのコンタミネーションに影響を受けやすいRNA-seqなどの高感度なアプリケーションを行う際は実施することをおすすめします。
Zymo Research社では、コンタミネーションしたDNAを除去すると同時に、RNAを結合/抽出するバッファーカラムシステムによる、革新的なRNA抽出キットを開発しました。これらのRNA抽出キットには、オンカラム処理用のDNase Iが付属しているので、RNA抽出後のDNase処理やクリーンアップ作業が不要になり、RNA抽出から下流のアプリケーションまでの工程が効率化されます。
Direct-zol RNA KitとA社製品を比較したRNAプロファイル

図2. Direct-zol RNA KitとA社製品を比較したRNAプロファイル

アガロースゲル電気泳動で可視化したヒト上皮細胞のRNAプロファイル。Zymo Research社のキットを用いて抽出したRNAは、A社製品と比較して、ゲノムDNAのコンタミネーションがなく、small RNAの回収率が高いことが分かる。

Direct-zol RNA KitとA社製品を比較したRNAプロファイル

図3. Quick-RNA KitとA社製品を比較したDNAのコンタミネーション

Quick-RNAキットで抽出したRNA(緑色)とA社のキットで抽出したRNA(破線)。Quick-RNAキットで抽出したRNAはDNAのコンタミネーションがないことが分かる。いずれのキットも106個のヒト上皮細胞からTotal RNAを抽出した(両キットともオンカラムDNase処理使用)。各増幅曲線は、3回の独立したRNA抽出実験の平均を表している。

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最適なRNA抽出キットの選び方

Zymo Research社では、多種多様な試料に適したRNA抽出キットを幅広く開発してきました。さらに、これらのRNA抽出キットの多くは、試料量や検体数に対応できるよう、さまざまなフォーマット(Microprep、Miniprep、96ウェルプレート、磁気ビーズなど)をご用意しています。
下表をご参考に最適なキットをお選び下さい。また、不明な点がございましたら、当社テクニカルサポート部(試薬担当)までお問い合わせ下さい。

キット名をクリックすると詳細情報がご覧いただけます。
適用試料 推奨キット
Total RNA抽出/精製
(低分子RNAを含む)
酸性グアニジンチオシアネート/フェノール法で溶解した試料 Direct-zol RNA Kit
血液、培養細胞、組織、その他の生物学的液体 Quick RNA Kit
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)新鮮/凍結組織 Quick RNA FFPE Kit
Total RNA抽出/精製 哺乳動物の全血、血漿*1、血清、末梢血単核細胞、軟膜 Quick RNA Whole Blood Kit
尿 ZR Urine RNA Isolation Kit
新鮮な組織、パラフィン包埋組織 Pinpoint Slide RNA Isolation System
cell-free RNA
抽出/精製
血漿、血清、脳脊髄液または羊水*2 Quick cfRNA Serum & Plasma Kit
ウイルス
RNA抽出/精製
血清、血漿、唾液、尿、血液、細胞培養液、細胞懸濁液、生検、スワブ、糞便など Quick RNA Viral Kit
バクテリア、菌類
RNA抽出/精製
バクテリア、酵母および菌類 Quick RNA Fungal/Bacterial Microprep Kit
微生物RNA抽出/精製
(低分子RNAを含む)
哺乳類の糞便、土壌、植物/種子、細菌/真菌細胞、バイオフィルムや水などの広範な試料中の細菌、真菌類、原生動物、藻類、ウイルス、ミトコンドリア ZymoBIOMICS RNA Miniprep Kit
植物RNA抽出/精製
(低分子RNAを含む)
広範囲な植物種におけるさまざまな器官 Quick RNA Plant Miniprep Kit
昆虫RNA抽出/精製 ショウジョウバエをはじめとするさまざまな昆虫および節足動物 Quick RNA Tissue/Insect Microprep Kit
クリーンアップ/濃縮 酵素/標識反応試料、ショ糖密度勾配遠心分画試料、酸性フェノール抽出後の水相 RNA Clean & Concentrator Kit
アガロースゲル Zymoclean Gel RNA Recovery Kit
阻害物質除去 土壌、植物、皮膚、糞便から調製したDNAやRNAなど OneStep PCR Inhibitor Removal Kit
RNA安定化 細胞、組織、微生物、血液、唾液、尿、糞便など DNA / RNA Shield
*1 一般に使用されるEDTA、クエン酸およびヘパリンなどの抗凝血剤と併用が可能です。
*2 あらかじめ試料中の細胞残渣、細胞破片および粒子を遠心分離(12,000×g)で除去して下さい。凍結融解後に試料中に沈降物が観察される場合には、消化前に再度遠心分離で除去して下さい。

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関連製品

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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