免疫組織化学の歴史と共に歩む(Vector Laboratories社)
掲載日情報:2017/12/15 現在Webページ番号:81001

Vol. 21 免疫組織染色技術のパイオニア
私たちは、組織や細胞を正確に可視化するためのツールを世界中の研究者に40年以上にわたって提供し続けてきました(下記参照)。私たちの使命は、研究者がIHCやIFを迅速かつ容易に行えるようにし、ひいては研究目標を達成できるようお力添えすることです。 これからも、研究の幅を広げられるような新製品の開発にも取り組み、優れた製品と迅速で親身なサービスにより、 世界のスタンダードになることを目指しています。 |
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免疫組織化学の誕生
自然科学の分野において観察は、何らかの事象を明らかにするための科学的方法の基本といえるステップです。しかし、組織の科学的研究においては、何世紀にもわたって肉眼的解剖学による観察に限定されていました。
17 世紀に入り、レーウェンフックが細胞レベルで組織観察を可能にする顕微鏡を発明したことにより、組織学が確立しました。初期の組織学の研究者たちにとって、植物の細胞境界と細胞内区画とを区別するのは比較的容易でしたが、動物組織では容易ではありませんでした。しかし、19 世紀後半、Paul Mayer がヘマトキシリンを用いて核の染色に成功したことにより、細胞内の局在組織構造が観察できるようになりました。このことをきっかけに組織化学が登場しました。
20 世紀初頭になると、多くの組織染色用の色素や試薬が開発されましたが、依然として個々の細胞/組織特異的なタンパク質の同定は行えませんでした。1941 年、Albert Coons 博士が蛍光標識抗体を用いて局在化させたマクロファージ内の細菌の観察に成功し、これをきっかけに免疫組織化学(IHC)の時代が始まりました。その後20 年にわたり、抗体、抗原および免疫学に対する理解が急速に深まりました。しかし、IHC は主に大学で使用されていた特殊な研究ツールでしかありませんでした。1960 年代後半にStratis Avrameas 博士とPaul Nakane 博士が、Horseradish Peroxidase(HRP)を抗体に共有結合させる方法をそれぞれ開発しました(HRP 標識抗体)。HRP は、DAB(ジアミノベンジジン)および過酸化水素の存在下で褐色沈殿物を生成するため、HRP 標識抗体が結合したところに沈殿物が生じます。この沈殿物は、通常の光学顕微鏡を用いて視覚化することができたため、IHC の結果を高価で手順が複雑な蛍光機器を使わずに観察できるようになりました。
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免疫組織化学染色技術の発展と共に歩んだ歴史
その後10 年間で、研究ツールとしてのIHC の使用は増加し、大学病院の臨床施設でも使用され始めました。1980 年代初期、Su-Ming Hsu 博士はビオチンに対するアビジンの高親和性が酵素-抗体複合体の安定性を高め、アッセイの感度を向上させることを示しました。これによりHRP アッセイシステムがさらに改善されました。
Vector Laboratories 社は、この重要な技術を製品化(VECTASTAIN ABC Kit)することでIHC 分野をさらに発展させました。ABC Kit は、当初はBAS(Biotin Avidin System)法として売り出しましたが、なかなか普及せず、語順を変えてABC(Avidin Biotin Complex)法と改名して市場に浸透し始め、そして現在に至っています。品質・感度の良さが認められ、応用範囲が広く、抗体があれば何にでも使えるため、試薬史上に残る大ヒット製品となりました。
1991 年、Shan-Rong Shi 博士がホルムアルデヒド固定組織のための「抗原賦活化法(antigen retrieval)」を開発しました。この技術により、ホルマリン固定パラフィン包埋組織でIHC を容易に実施できるようになり、IHC の臨床的有用性を大きく向上させました。しかし、抗原賦活化は組織切片の抗原性を改善したものの、以前は検出されなかった内在性ビオチンを多数露出させてしまいました。これにより試料中の内在性ビオチンをブロックするためのステップが、IHC のプロトコルに追加されるようになりました。特に臨床の現場では、内在性ビオチンに起因する混乱を避けるために、非ビオチン-HRP システムに戻す施設もありました。しかし、感度の点ではABC 法の方が優れていたため、臨床現場のこの選択はあまり良い選択ではありませんでした。
このジレンマは、2000 年にアビジン ビオチン検出システムと同様の感度を示すビオチンフリーポリマー/マルチマー検出システムの出現によって最終的に解決しました。初期ポリマーベースのシステムは、バックグラウンドや組織の浸透の問題を抱えていましたが、このシステムではアビジン ビオチン検出システムに匹敵する性能を発揮します。Vector Laboratories 社では効率的な検出を可能にするポリマー法試薬として、二次抗体に直接ペルオキシダーゼ・マイクロポリマー結合させた試薬(ImmPRESS® Polymer Detection Systems)を開発しており、革新を続けています。
参考文献
- Coons AH., et al., Proc. Soc. Exp. Biol., Med. 47, 200~202 (1941).
- Avrameas S., et al., Cr. Acad Sci. D. 262, 2543~2545 (1966).
- Nakane P., et al., J. Cell. Biol., 33, 307~318 (1967).
- Leduc E., et al., J. Exp. Med., 127, 109~118. (1968).
- Hsu S-M., et al., J. Histochem. Cytochem., 29, 577~580 (1981).
- Shi SR., et al., J Histochem Cytochem., 39, 741~748 (1991).
- Childs GV., , Pathobiology of Human Disease., 3775~3796 (2014).
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免疫組織化学染色技術の進歩とVector Laboratories 社の製品の歩み
1941 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ||
Albert Coons博士が蛍光標識抗体でマクロファージが取り込んだ細菌を観察できることを実証(免疫組織化学) | ||
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 1966 | ||
Stratis Avrameas博士とPaul Nakane博士がHorseradish peroxidase(HRP)と抗体を共有結合させる方法を独自開発 |
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 1970 | ||
Ludwig AとSternbergerが、標識酵素としてペルオキシダーゼを使用するPeroxidase-Anti-Aeroxidase;PAP法を開発 |
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1980 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ||
アビジン‐ビオチン標識酵素複合体(ABC)を用いたキットを販売(VECTASTAIN ABC Kit) | ||
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 1981 | ||
Su-Ming Hsu博士が、ビオチンとアビジンの高い親和性がタンパク質-抗体の複合体の安定性を高めることを報告 |
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 1986 | ||
PHOTOPROBE®-Biotinを発売 | ||
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1991 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ||
Shan-Rong Shi博士はホルムアルデヒド固定組織のための抗原賦活化法を開発 |
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 1993 | ||
蛍光退色防止試薬を発売(VECTASHILD Mounting Media) | ||
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1999 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ||
環境規制に準拠した次世代の撥水性ペンを発売(ImmEdge® Pen) | ||
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 2004 | ||
封入後に固化する蛍光退色防止用封入剤を発売(VECTASHILD Hard・Set Mounting Medium) | ||
2005 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ![]() |
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酵素標識ポリマー法により、ABC法よりも高感度な検出試薬を発売(ImmPRESS® enzyme polymer) | ||
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 2007 | ||
多重染色を可能にする独自のHRP基質を発売(ImmPACT® HRP Substrate) | ||
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2011 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● | ||
内在性アルカリホスファターゼ(AP)とペルオキシダーゼ(PO)活性の両方を一度に不活性化できる酵素活性ブロッキング溶液を発売(BLOXALL® Endogenous PO / AP Blocking Solution) | ||
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 2014 | ||
独自開発したAP基質を発売(ImmPACT® Vector Red Substrate) | ||
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