ヒト生体に近い腸上皮単層モデルを作製可能(Altis Biosystems 社)
掲載日情報:2026/07/01 現在Webページ番号:72958
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Vol. 109 ヒト生体に近い腸上皮単層モデルを作製可能
ノースカロライナ州に拠点を置く Altis Biosystems 社は、ヒトの小腸および大腸上皮を再現する細胞ベースのモデルシステムを開発し、キット品の販売およびアッセイサービスの提供を行っています。
Senior Director of Commercial Strategy の Maureen Bunger 氏にお話を伺いました。
創薬研究において、薬がヒトの体内でどう反応するかをより正確に予測する重要性が高まっており、高度な in vitro モデルの需要が急増しています。このニーズが特に顕著な分野の一つがヒト腸の研究であり、薬物の吸収、代謝、安全性が初期段階で評価される重要な領域です。
私たちの主力製品である RepliGut Planar は、ヒトの初代幹細胞から構築された腸上皮モデルで、より本物のヒト生体に近い実験が可能になります。最先端のバイオ技術でありながら、ふだんの研究現場で使いやすい仕組みになっているため、研究の早い段階で、予測精度の高いデータを得ることができます。
Altis Biosystems 社が拠点を置く「リサーチ・トライアングル」
Altis 社があるのは、アメリカ屈指のバイオ技術の拠点として知られるノースカロライナ州の「リサーチ・トライアングル地域」です。ここはデューク大学など 3 つの有名大学をはじめ、多くのバイオベンチャーや期待の新興企業がひしめき合う、巨大な研究エリアです。
Altis 社自体も、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のアカデミック研究から誕生したベンチャー企業です。ヒト腸上皮の高度なモデル開発を専門とする 3 名の教授(Nancy Allbritton 博士、Chris Sims 博士、Scott Magness 博士)が、その成果を形にするために立ち上げました。
開発の背景:動物モデル代替法へのニーズ
近年アメリカの研究現場で【従来の動物モデルが必ずしもヒトの生物学的反応を正確に反映しているわけではない】という認識が広まっています。米国食品医薬品局(FDA)や国立衛生研究所(NIH)といった公的組織も、ヒト相関性がより高い動物実験代替技術の開発を積極的に推奨しています。こうした動きは、米国に限ったことではありません。オルガノイドや生体模倣システム(MPS)、次世代型の上皮モデルといった、最新の細胞培養モデルへの注目が一気に高まっています。
リサーチ・トライアングルは、こうした新しい実験手法を広めるリーダー的存在です。ここには、国立環境健康科学研究所(NIEHS)と米国環境保護庁(EPA)という 2 つの主要な連邦研究機関が拠点を置いており、動物実験の代替法の普及や、化学物質および薬物の安全性を評価するための『New Approach Methodologies(NAMs)』の開発を長年にわたり牽引してきました。
ヒト生体に近い腸上皮単層モデルを作製できる RepliGut システム
こうした背景から開発されたのが、Altis 社のヒト初代腸管幹細胞由来の腸上皮モデル「RepliGut」です。このシステムは、ヒト腸管粘膜の生理学的特徴を再現するように設計されています。
これまで、腸の研究には「Caco-2」という大腸がん由来の上皮細胞モデルが長年使われてきましたが、がん細胞であるため、本物の健康な腸とは性質が異なるという制約がありました。
RepliGut では、不死化細胞株ではなくヒトの初代腸管細胞を使用しています。細胞は幹細胞の増殖期を経て、極性のある単層構造を形成します。成熟期において、細胞は腸上皮特有の細胞型(吸収上皮細胞、杯細胞、内分泌細胞など)に分化、バリア機能を有するタイトジャンクションを形成します。
作製したモデルでは代謝酵素やトランスポーターなど薬物代謝・吸収に重要なタンパク質が発現し、薬物透過性、トランスポーター活性、代謝機能といった、創薬に欠かせないプロセスの評価が可能になります。
| Caco-2 | 腸オルガノイド | RepliGut Planar | |
|---|---|---|---|
| 複数部位の再現 | × | ○ | ○ |
| 複数ドナー対応 | × | ○ | ○ |
| 代謝機能の評価 | △ | ○ | ○ |
| 能動輸送の評価 | ○ | △ | ○ |
| バリア機能の評価 | ○ | × | ○ |
| 再現性 | ○ | △ | ○ |
高度技術と使いやすさの両立
高度な生体モデルを開発する上で、腸管幹細胞を安定して分化維持させ、バリア機能を一定に保つようにさせること、ロット間での再現性が高い細胞培養を可能にする製造プロセスの開発など、いくつもの技術的課題を克服する必要がありました。
一方、オルガノイドやマイクロ流体デバイスを用いた生体模倣システム(organ-on-chip)といった技術は、貴重な知見をもたらす一方で、製薬研究の日常的なルーチン作業への組み込みが難しい面もあります。
Altis 社は、本物のヒトの細胞が持つメリットを活かしつつ、創薬研究に不可欠な再現性とスケーラビリティ(拡張性)を追求しまし た。RepliGut Planar は、 標準的なマル チウェルプレートにそのまま組み込める『平面培養(planar culture)』形式でデザインされています。そのため、特殊な装置や複雑な実験セットアップは必要ありません。
腸管モデルの応用場面
高度な腸管モデルは、バイオ医学研究の多岐にわたる分野でますます重要性を増しています。ペプチドのような複雑な分子や吸収されにくいタイプの新薬候補が増えているため、in vitro でヒトの腸の反応をどれだけ正確に再現できるかが、新薬開発の成否を分ける重要なカギとなっています。
製薬研究
腸管の炎症、経口薬の吸収、薬物相互作用評価、腸管トランスポーターや代謝酵素の役割の分析
CRO
薬物代謝・薬物動態(DMPK)試験
アカデミア
腸の生理機能、疾患メカニズム、代謝異常、炎症性疾患、宿主とマイクロバイオーム(腸内細菌叢)の相互作用の研究
これからの医学研究では、本物のヒトの細胞を使ったモデルが、今以上に大きな役割を担うことになります。
RepliGut は、これまでの実験と本物の人間の体との間にある『ギャップ』を埋める架け橋となるはずです。
Altis 社は、世界中の研究者がより高度で、かつ使いやすいツールを手にできるよう、これからも技術を進化させていきます。
このたびフナコシ株式会社とパートナーを組めたことを大変光栄に思っています。
日本の研究者の皆さんが、この最新技術を日々の研究に役立てていただけるよう全力を尽くします。
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