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抗体アレイについて知識を深めよう! 抗体アレイって何?種類と使い分け(RayBiotech社)

掲載日情報:2025/02/07 現在Webページ番号:72108

小さな基板(担体)上に核酸やペプチド、タンパク質、抗体などを検出する多数の分子を固相化し、配置したものをマイクロアレイ(Microarray)と呼びます。この技術を用いてガラススライドやメンブレン上に多数の抗体を並べたものが抗体アレイです。抗体アレイは、ELISAと同じ原理でタンパク質を検出する解析法ですが、一度の解析で多くの種類のタンパク質量の検出ができるため、スクリーニングやバイオマーカーの探索などによく用いられます。また、少量の試料での解析が可能なため、試料を節約でき、特に貴重な試料の解析に適しています。

Antibody Arrays Used in Research


抗体アレイを用いたタンパク質の検出および解析方法概略

RayBiotech社の抗体アレイシリーズは、サンドイッチ法のELISAと同じ原理でタンパク質を検出します。

抗体アレイのワークフロー

抗体アレイのワークフロー

Step 1. 捕捉抗体の固相化

一般的な96ウェルプレートを用いてサンドイッチ法で測定するELISAの場合、プレートに1種類の捕捉抗体が固相化されていますが、抗体アレイの場合、さまざまな標的タンパク質に対する捕捉抗体がガラススライドやメンブレンの固体表面上にスポットされています。


ブロッキング

試料を添加する前に、非特異的結合によりバックグラウンドが高くなることを防ぐ目的で、ブロッキングを行います。ブロッキング剤(ブロッキングバッファー)には、ウシ血清アルブミン(BSA)や脱脂粉乳などに、界面活性剤(1%Tween-20など)を加えた溶液がよく使用されます。


Step 2、3. 試料と検出抗体の添加

試料を添加し、捕捉抗体と標的タンパク質を結合させます。未結合の分子は、洗浄工程で除去されます。続いて、酵素標識した検出抗体を捕捉された標的タンパク質と結合させます。その結果、標的タンパク質は捕捉抗体と検出抗体でサンドイッチされるように結合した状態になります。RayBiotech社の抗体アレイは、検出にビオチン標識抗体を用います。


Step 4. 標的因子の検出(化学発光または蛍光検出)

蛍光色素または、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識したストレプトアビジンを添加し、ビオチン標識検出抗体と反応させます。化学発光または蛍光検出によりビオチン-ストレプトアビジン複合体を検出します。化学発光を用いる場合は、X線フィルムやCCDカメラなどの化学発光イメージングシステムを使って検出します。蛍光色素を用いる場合は、対応する蛍光スキャナー(スライドガラスの場合)を利用します。

RayBiotech社のガラススライドタイプの抗体アレイと互換性のある蛍光スキャナーの詳細は、ガラススライド抗体アレイの対応スキャナーをご覧下さい。


Step 5. 検出データの解析

化学発光(メンブレンアレイ)による検出例 アレイマップ
化学発光(メンブレンアレイ)による検出例 Human Cytokine Array C5(#AAH-CYT-5)アレイマップ

図をクリックすると拡大します(🔍)
Human Cytokine Array C5(#AAH-CYT-5)の場合

各抗体アレイ製品のデータシートには、検出対象のタンパク質に対するそれぞれの捕捉抗体が、アレイのどの位置にスポットされているのかを示すアレイマップが掲載されています。化学発光や蛍光により検出されたアレイ上のスポットの位置とアレイマップを対比することにより、どのタンパク質が検出されたのか(試料中に含まれるタンパク質の種類)を確認することができます。


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定性・定量・半定量について

データシートの例
(ウエスタンブロット)

プロテインXのウエスタンブロット像

定性的データ
定性的データ(目視)
半定量的データ
半定量的データ
定量的データ

Sample BはSample AよりプロテインXの量が多い。

Sample BはSample Aの2倍量のプロテインX量を含む。

例:Sample Aは100 μg/ml、Sample Bは200 μg/ml濃度のプロテインXを含む。


定性的データ

「陽性/陰性」、「ある/なし」といった具体的な数値を伴わないデータを指します。一例として、ウエスタンブロットのバンド強度があります。抗体アレイでは、コントロールと試料のスポットをイメージングシステムなどで可視化し、評価することができます。


半定量的データ

比較対象間における相対的な差異が得られるデータを指します。 抗体アレイでは、ピクセル強度のような蛍光、または化学発光の出力値を用いて、複数の測定試料間の相対評価が可能です。RayBiotech社の一部の抗体アレイ製品では、標準曲線を使用しないため、絶対量ではなく、相対値(例:発現比、fold changes)のデータが得られます。


定量的データ

タンパク質濃度など、具体的な数値が得られるデータを指します。 通常の抗体アレイは定性的・半定量的なデータが得られますが、Quantibodyシリーズの抗体アレイでは、試料と併せてスタンダードも測定し、ELISAのように標準曲線から各因子を定量することができます。


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解析に必要な試料量・試料の調製方法

SME(Sample Matrix Effects)の概略図

図をクリックすると拡大します(🔍)

SME(Sample Matrix Effects)の概略図

試料の希釈例

図をクリックすると拡大します(🔍)

試料の希釈例

抗体アレイはマイクロアレイの一つであるため、一般的なELISAよりも測定に用いる試料は少量です(詳しくは各製品のマニュアルをご確認下さい)。しかし、ELISAと同じ原理を用いているため、ELISAと同様にサンプルマトリックス効果(SME、Sample Matrix Eeffects)と呼ばれる現象が起こります(図A)。
SMEは、試料に含まれる標的タンパク質以外の分子の影響により捕捉抗体または検出抗体が干渉を受けるため、妥当な測定結果が得られない現象です。SMEを防ぐためには、試料を適切な濃度へ希釈する必要があります(図B)。希釈率は、試料の種類や実験条件等によって異なるため、試料ごとに最適化した上で測定を行うことが望ましいです。


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抗体アレイの基板(担体)の種類

RayBiotech社の抗体アレイは、主にメンブレンとガラススライドが基板(担体)として使用されています。

A:抗体アレイの基板
(担体)
メンブレンアレイ ガラスアレイ ビーズベース
メンブレンアレイ ガラスアレイ ビーズベース
🡇 🡇 🡇
B:解析結果 化学発光 蛍光 蛍光
化学発光
(化学発光検出システム)
蛍光
(蛍光スキャナー)
蛍光
(フローサイトメトリー)


メンブレンベースの抗体アレイ(C-シリーズ)

Cシリーズのデータ比較イメージ

Cシリーズの解析例

メンブレンベースの抗体アレイは、ガラススライドと比べると、1アレイあたりの基板の表面積が大きいため、添加する試料量も多くなります。しかし、操作の簡便さや、CCDカメラなどの安価な化学発光用の検出装置で検出でき、ガラススライドよりもバックグラウンドが低く抑えられやすい利点から、マルチプレックス解析の手法で人気があります。


ガラススライドベースの抗体アレイ(G-シリーズ、Quantibodyシリーズ)

Gシリーズのデータ比較イメージ

Gシリーズの解析例


ガラススライドベースの抗体アレイは、75 mm × 25 mmのガラススライドにメンブレンベースの抗体アレイより多くの捕捉抗体がスポットされています。少量の試料で、多数の標的タンパク質を蛍光スキャナーを用いて解析できます。


ラベルベースの抗体アレイ(L-シリーズ)

ラベルベースの抗体アレイとは、サンドイッチ法で使用する検出抗体を使用せず、試料中のタンパク質に直接ビオチンを標識し、ビオチン化タンパク質を捕捉抗体で捉えて検出します。検出抗体を使用しないことで、多高密度なアレイが可能です。ただし、1種類の抗体を用いるため、サンドイッチ法より特異性が低くなります。また、検出に使用するビオチンは、ご自身で試料中のタンパク質に標識する必要があります。


ラベルベース サンドイッチベース サンドイッチベース
ラベルベース サンドイッチベース サンドイッチベース


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まとめ

抗体アレイは、タンパク質のプロファイリングや、マルチプレックス解析に強力なツールの一つです。数百から数千のタンパク質を同時に解析するアレイは、タンパク質プロファイリングやバイオマーカー探索に最適です。RayBiotech社では、炎症、成長因子、血管新生、肥満など特定の生物学的プロセスや、Pathwayに焦点を当てた抗体アレイ製品もあります。
また、サイトカインアレイ/プロテインアレイ(Cytokine Array/Protein Array)のラインナップやアレイキットやカスタムアレイを用いた受託サービスも承っています。実験研究の目的に合わせてお役立て下さい。


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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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