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生細胞における脂肪酸β酸化(FAO)活性の蛍光定量試薬 FAOBlue® (Fatty Acid Oxidation Detection Reagent)

掲載日情報:2023/02/01 現在Webページ番号:65885

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

生物において脂肪酸の分解の際の共通の代謝経路である脂肪酸のβ酸化(Fatty acid beta-oxidation; FAO)活性を、青色蛍光で可視化する試薬です。従来、測定が困難であった生細胞における脂肪酸のβ酸化活性を蛍光イメージング法によって簡便に測定可能です。
細胞種ごとの脂肪酸のβ酸化活性の比較評価、β酸化活性を促進または阻害する化合物の探索、β酸化に関わる酵素群の基礎研究などに幅広く応用できます。
本製品は九州大学大学院薬学研究院創薬ケミカルバイオロジー分野 王子田彰夫教授の研究成果をもとに、フナコシ(株)が製品化し、販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

脂肪酸のβ酸化活性測定試薬FAOBlueのイメージ図

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脂肪酸のβ酸化活性測定試薬FAOBlue®のイメージ図

FAOBlueのHepG2細胞での使用例(-Inhibitor)

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FAOBlue®のHepG2細胞での使用例(-Inhibitor)

FAOBlueのHepG2細胞での使用例(+Inhibitor)

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FAOBlue®のHepG2細胞での使用例(+Inhibitor)

FAOBlue®は細胞内に取り込まれ、主にミトコンドリアで脂肪酸β酸化(FAO)を受けることで青色蛍光色素が細胞質に放出され、細胞全体が青色蛍光を発する。FAOBlue®青色蛍光はFAO阻害物質を処理することで抑制されるため、FAO特異的であることがわかる。
詳細はデータ例:様々な細胞種におけるFAO活性の可視化をご参照下さい。

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製品の概要や使用方法、使用時の注意点などをご説明いたします。まだご使用が決まっていない方もお気軽にご相談下さい。

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脂肪酸のβ酸化(Fatty acid beta-oxidation; FAO)とは

脂肪酸の分解について

脂肪酸は細胞を構成する様々な脂質の基本要素であり、グルコース、アミノ酸に並ぶエネルギー源として知られています。特に、グルコースが不足する飢餓状態においては、脂肪酸が積極的に分解されることで多量のATPが産生されます。脂肪酸には炭素鎖長の違いや不飽和度の違いで様々な種類がありますが、ミトコンドリアなどにおいて共通する脂肪酸の分解経路が知られ、脂肪酸のβ酸化(Fatty acid beta-oxidation; FAO)と呼ばれています。

脂肪酸のβ酸化による分解経路

脂肪酸のβ酸化は、以下の主に4段階の酵素反応により段階的に分解する経路から構成されます。

  • 1)脂肪酸β位の酸化
  • 2)β位の水和
  • 3)β位の酸化
  • 4)開裂により炭素数が2個短い脂肪酸とATPの原料であるアセチルCoAへの分解

    生成した炭素数が2個短い脂肪酸は、さらに同じサイクルで分解され、2炭素ずつ短い脂肪酸を繰り返しながら分解されます。

脂肪酸β酸化(Fatty acid beta-oxidation; FAO)とは

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FAOBlueをかけるとFAO活性の高い細胞が青く光るんです

脂肪酸のβ酸化とFAOBlue®について

がんや代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)などの疾患においては、脂肪酸のβ酸化が大きく変動することが示唆されており、脂肪酸のβ酸化の活性測定法の開発が期待されています。しかし、従来、複数の酵素が関わる脂肪酸のβ酸化を生細胞において検出することは、困難とされていました。

FAOBlue®は九州大学大学院薬学研究院 創薬ケミカルバイオロジー分野の王子田彰夫 教授らにより開発された、世界初の脂肪酸β酸化応答型の蛍光プローブです。培地に添加するだけの簡単操作と、蛍光観察により脂肪酸β酸化活性を定量することが可能です。

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原理

FAOBlue®は炭素数9のノナン酸の炭素鎖末端に青色蛍光色素クマリンの誘導体を付与した化合物で、さらに末端の脂肪酸をアセトキシメチルエステルで保護することで細胞膜透過性を向上しています。FAOBlue®はクマリン誘導体を有しますが、この状態では405 nm励起において蛍光を発しません。

FAOBlueの原理

Coumarin(Ex 405 nm / Em 460 nm)

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  1. FAOBlue®はカルボキシ基に付与したアセトキシメチル基の高い疎水性により細胞膜を透過し、効率的に細胞内に取り込まれます。
  2. 細胞内のエステル加水分解酵素により、アセトキシメチルエステルが除去され、遊離脂肪酸の形に変換されます。
  3. アシルCoA合成酵素により、アシルCoAに変換され、β酸化経路に取り込まれます。
  4. β酸化サイクルによりノナン酸(C9)はヘプタン酸(C7)、ペンタン酸(C5)、プロピオン酸(C3)の順に変換され、4回目のβ酸化サイクルによりプロピオン酸が分解される際に、クマリン誘導体が放出されます。クマリン誘導体は405 nmの励起により青色蛍光を発します。
  5. 遊離のクマリン誘導体は細胞全体に拡散するため、細胞内の青色蛍光強度を測定することで、β酸化活性を経時的・定量的に評価することが可能です。

カルニチンシャトル阻害物質であるEtomoxirの添加により、細胞内の蛍光強度の上昇が強く抑制されます。この結果は、FAOBlue®が、主にミトコンドリアのFAO活性を検出することを示しています。

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特長

  • FAOBlue®は消光状態にあり、分解後の遊離クマリン誘導体は分解前と比べ高い蛍光強度を示します。
  • 培地に添加後、30分から120分程度で観察可能です。
  • 特別な操作不要でβ酸化活性を測定できます。
  • 複数の細胞種でβ酸化の観察実績があります。
  • 薬剤依存的なβ酸化の阻害、または促進による活性の変化を検出した実績があります。
  • 測定波長:励起405 nm/蛍光460 nm

ご注意

共焦点レーザー顕微鏡をお使いの場合、405 nmレーザーによる励起を推奨しています。本試薬は330~380 nmの範囲で励起すると、FAO活性に関わらずに由来する370~450 nm(最大蛍光波長410 nm)の蛍光が観察されます。蛍光顕微鏡をご使用の場合、FAO活性特異的な観察を実施するために励起390~430 nmの範囲で励起光のフィルターを選択することを推奨しています。詳しくは使用例:FAO依存的な吸収・蛍光スペクトルの変化をご覧下さい。

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適用

  • 各種細胞のβ酸化活性の評価
  • β酸化に関わる遺伝子の基礎研究
  • β酸化の阻害または促進化合物の探索 など

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操作方法概略

FAOBlueのワークフロー

FAOBlue®のワークフロー図をクリックすると拡大します(🔍)

  1. FAOBlue®を終濃度5~20 μM*1になるように、HEPES-buffered saline(HBS)に溶解する。
  2. 培地を除去、細胞をHBSで2回洗浄する。
  3. FAOBlue®を含むHBSを細胞に添加する。
  4. 少なくとも30分以上*2、37℃で培養する。
  5. 培地を交換後*3、イメージングにより青色蛍光(Ex. 405 nm/Em. 430~480 nm)を観察する。
  • *1:細胞種ごとに適正な濃度が異なります。実験ごとに濃度の検討を推奨します。
  • *2:細胞種ごとに最適なインキュベーション時間が異なります。実験ごとの検討を推奨いたします。
  • *3:染色後の培地交換は必須ではありません。洗浄しなくても観察可能です。

実験上の注意

本試薬は405 nmの励起光を使用するため、観察対象によっては自家蛍光が観察される場合があります。本試薬を添加していないネガティブコントロールを並行して実施することを推奨しています。特に顕微鏡観察時にドット状の蛍光シグナルが観察される場合、自家蛍光に起因する可能性があります。

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使用例

FAO依存的な吸収・蛍光スペクトルの変化

FAOBlue®はFAOによりクマリン誘導体に変換されることで、吸収極大が350 nm→405 nmに長波長シフトする。そのため、405 nm励起条件下では、FAOBlue®は蛍光を示さず、FAOによりクマリン誘導体が放出されたときのみ青色蛍光を生じる。

FAOBlueおよびクマリン誘導体の吸収スペクトル

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FAOBlue®およびクマリン誘導体の吸収スペクトル

FAOBlueおよびクマリン誘導体の蛍光スペクトル

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FAOBlue®およびクマリン誘導体の蛍光スペクトル

実験上の注意

FAOBlue®の吸収極大350 nm付近の光で励起すると、FAOBlue®青色蛍光(380~450 nm; 極大波長400 nm)が生じます。蛍光顕微鏡における一般的なDAPIフィルターを用いると、未反応のFAOBlue®FAO反応後のクマリン誘導体の両方が励起されてしまいます。フィルターの選択には十分ご注意下さい。

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様々な細胞種におけるFAO活性の可視化

4種類のがん細胞にFAOBlue®を添加し、一定時間培養後に蛍光観察した。いずれの細胞からも青色蛍光が観察され、FAO阻害物質Etomoxirを添加すると蛍光が著しく減衰したことから、青色蛍光はFAO活性に起因することがわかる。
下表中の各図をクリックすると、拡大図をご覧いただけます。

細胞の種類 HepG2細胞 LNCap細胞 HeLa細胞 A549細胞
FAOBlue®処理 5 μM、30 min 20 μM、120 min 20 μM、120 min 5 μM、30 min
FAO阻害物質
検出画像 Coumarin FAOBlueのHepG2細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのHepG2細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのLNCap細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのLNCap細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのHeLa細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのHeLa細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのA549細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのA549細胞での使用例(+Inhibitor)
DIC FAOBlueのHepG2細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのHepG2細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのLNCap細胞の細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのLNCap細胞の細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのHeLa細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのHeLa細胞での使用例(+Inhibitor) FAOBlueのA549細胞での使用例(-Inhibitor) FAOBlueのA549細胞での使用例(+Inhibitor)

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刺激依存的なβ酸化活性の変化を観察

HepG2細胞に脂質代謝促進剤AICAR*4(200 μM、3時間)または部分的FAO阻害剤Ranolazine(200 μM, 12時間)を添加し前処理した後、FAOBlue®(5 μM)を添加し30 分培養した。蛍光観察を行うと、コントロール(未処理)に比べ、AICARで有意に蛍光強度が上昇し、Ranolazineで有意に減少していることが分かった。
*4AICAR : AMPK(AMP-activated protein kinase)活性化剤で脂質代謝を活性化する働きがある。
下の各図をクリックすると、拡大図をご覧いただけます。

FAO活性調節物質 Control AICAR Ranolazine
検出画像 Coumarin Coumarin(Control) Coumarin(+AICAR) Coumarin(+Ranolazine) 刺激依存的なβ酸化活性の変化を観察

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DIC DIC(Control) DIC(+AICAR) DIC(+Ranolazine)

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薬剤効果の定量的解析

FAOBlue®を用いることで薬剤がFAOに与える効果を定量的に解析することができる。HepG2細胞を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の治療薬候補であるND-630(acetyl-CoA carboxylase inhibitor)で4時間前処理した後、FAOBlue®(5 μM)を添加し30分培養した。 共焦点レーザー顕微鏡で青色蛍光強度を評価するとND630濃度依存的な蛍光強度の上昇が観察された。ND-630によりFAO活性が亢進していることがわかる。
下の各図をクリックすると、拡大図をご覧いただけます。

ND-630濃度 0.2 nM 30 nM 100 nM 薬剤効果の定量的解析

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検出画像 Coumarin ND-630 0.2 nM(Coumarin) ND-630 30 nM(Coumarin) ND-630 100 nM(Coumarin)

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MASHモデルマウスの解析

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)は脂肪分解速度が低下することが知られる脂質関連疾患である。正常マウスおよびMASHモデルマウスに対し、脂質代謝を亢進するBezafibrateを経口投与したのち、肝臓を回収し初代培養肝細胞を調製した。各細胞にFAOBlue®(5 μM)を添加しFAO活性を観察したところ、正常マウス由来細胞に比べ、MASHモデルマウス由来細胞で著しいFAO活性の抑制が見られた。一方、Bezafibrateを投与したMASHモデルマウス由来細胞では、FAO活性の回復が見られた。
本試薬は、脂質関連疾患モデルにおけるFAOの定量解析に有用である。
下の各図をクリックすると、拡大図をご覧いただけます。

Control mouse MASH mouse MASHモデルマウスの解析

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Bezafibrate(−) Bezafibrate(+)
検出画像 Coumarin Control mouse(Coumarin) MASH mouse(Bezafibrate(−))(Coumarin) MASH mouse(Bezafibrate(+))(Coumarin)
DIC Control mouse(DIC) MASH mouse(Bezafibrate(−))(DIC) MASH mouse(Bezafibrate(+))(DIC)

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蛍光プレートリーダーによる薬剤応答性の評価

786-O細胞を96ウェルプレートに播種し、1日培養したのち、コンフルエント条件下で各種薬剤を無血清DMEM培地中に添加し20時間処理した。細胞をHBSで洗浄した後、HBSに希釈したFAOBlue®(終濃度10 μM)を添加し2時間反応させ、洗浄操作を行わずに蛍光プレートリーダー(透過型測定)で蛍光強度(Ex 420±5/Em 460±10 )を測定した。各蛍光強度は細胞を含まないFAOBlue®(10 μM)溶液の蛍光強度を除して補正した。ミトコンドリアFAO阻害剤であるetomoxirで蛍光強度が顕著に抑制されたことから、ミトコンドリアFAO活性に依存した蛍光シグナルを検出できた。 薬剤処理: 10 μM Etomoxir(ミトコンドリアFAO阻害剤)、500 μM AICAR(AMPK活性化剤)、5 μM 2-BP(広範な脂質代謝撹乱剤)

蛍光プレートリーダーによる薬剤応答性の評価

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原著論文

  • Uchinomiya, S., et. al., "Fluorescence Detection of Metabolic Activity of Fatty Acid Beta Oxidation Pathway in Living Cells.", Chem. Commun. 56(20), 3023~3026 (2020). [PMID:32048639]

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価格

[在庫・価格 :2024年12月11日 20時55分現在]

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納期 文献数
FAOBlue <Fatty Acid Oxidation Detection Reagent>
1週間程度 ※ 表示されている納期は弊社に在庫がなく、取り寄せた場合の目安納期となります。 0
説明文
脂肪酸分解の共通経路である脂肪酸β酸化(FAO)活性を青色蛍光で可視化する試薬です。従来測定が難しかった脂肪酸β酸化の活性を生細胞で蛍光イメージングによって簡便に測定可能です。任意の培養細胞に添加し,30分程度反応させたのち,405 nm励起における青色蛍光(~460 nm)を観察することでFAO活性を相対定量できます。
法規制等
保存条件 -20℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2024年2月1日号 p.4
ニュース2021年7月15日号 p.10
ニュース2024年11月1日号 p.12

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FAOBlue <Fatty Acid Oxidation Detection Reagent>

文献数: 0

説明文 脂肪酸分解の共通経路である脂肪酸β酸化(FAO)活性を青色蛍光で可視化する試薬です。従来測定が難しかった脂肪酸β酸化の活性を生細胞で蛍光イメージングによって簡便に測定可能です。任意の培養細胞に添加し,30分程度反応させたのち,405 nm励起における青色蛍光(~460 nm)を観察することでFAO活性を相対定量できます。
法規制等
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掲載カタログ ニュース2024年2月1日号 p.4
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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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