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リン酸化タンパク質を測定するための7つの実験方法
タンパク質のリン酸化を解析するヒントが見つかります リン酸化タンパク質を測定するための7つの実験方法
掲載日情報:2025/07/23 現在Webページ番号:71893
タンパク質のリン酸化研究は、細胞内シグナルやタンパク質機能の調節などを解明するための知見が得られます。ここでは、リン酸化タンパク質を測定するための7つの実験方法(SDS-PAGE、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、キナーゼ活性測定、ELISA、抗体アレイ、質量分析)についてご紹介します。
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- タンパク質のリン酸化とは
- 実験手法について
- 各実験手法
- SDS-PAGE
- ウエスタンブロット(Western blot)
- フローサイトメトリー(Flow cytometry)
- キナーゼ活性測定(Kinase activity assay)
- サンドイッチELISA
- 抗体アレイ(Antibody array)
- 質量分析(Mass spectrometry、MS)
- 関連受託サービス
- 参考文献
タンパク質のリン酸化とは
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実験手法について
実験手法は解析対象、技術、利用可能な設備、および予算を考慮し選択します。例えば、キナーゼの活性測定は、キナーゼ阻害物質の交差反応性のスクリーニングに用いられます。一方、ウエスタンブロットは、細胞のキナーゼ阻害物質処理の後、特定のリン酸化タンパク質の量を測定する場合に最適な方法です。また、あるリン酸化タンパク質に対する、キナーゼ阻害物質の効果が不明な場合は、質量分析を検討する必要があります。人的リソース、技術、設備を持たない研究室が質量分析を実施したい場合、受託サービスを利用することも1つの方法です。
実験コントロール
リン酸化の研究に限ったことではありませんが、実験を行う際には、適切なコントロールを用意する必要があります。適切なコントロールとしてよく利用されるものは以下になります。
- GAPDHやβ-アクチンなどのハウスキーピング遺伝子の発現量
主にウエスタンブロットのローディングコントロールとして使用されています。等量のタンパク質がSDS-PAGEのレーンに加えられたかどうか判断できます。 - リン酸化タンパク質、脱リン酸化タンパク質を含む目的タンパク質の総発現量
目的タンパク質のリン酸化量、または総タンパク質の発現量の増減を判断できます。 - リン酸化ペプチド、特定部位のリン酸化タンパク質(ポジティブコントロール)
リン酸化ペプチドは化学合成が可能です。ポジティブコントロールは、目的タンパク質に対して活性を持つキナーゼを用いてin vitroでリン酸化処理を行うことで作製できます。または、目的タンパク質に対する効果が確認済みの刺激物質で細胞を刺激することでも作製可能です。 - 脱リン酸化ペプチドやタンパク質(ネガティブコントロール)
ネガティブコントロールは、ATPを用いないin vitroキナーゼアッセイで作製できます。または、λプロテインホスファターゼなどを用いて、脱リン酸化処理を行うことで作製できます。培養細胞を用いる実験では、未刺激の細胞や特定のキナーゼ阻害物質で処理した細胞が、ネガティブコントロールになります。 - フローサイトメトリーにおける細胞集団の選別(ゲーティング)で用いる未標識細胞やアイソタイプコントロール(ネガティブコントロール)
アイソタイプコントロールは、同じ蛍光色素で目的タンパク質を認識しない抗体を利用します。
※ コントロールの種類は、実験内容により異なります。また、上記以外のコントロールが必要になるケースもあります。
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各実験手法
※ 下記ボタンをクリックすると該当箇所にページ内ジャンプします。
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SDS-PAGE
細胞や組織ライセートに含まれるタンパク質の解析は、SDS-PAGEがよく用いられています。SDS-PAGEは、電気泳動用のバッファーやゲルに含まれるドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Sulfate、SDS)が、タンパク質に対して均一な負電荷を与え、分子量の大きさで分離する方法です(図2A)7。分離したタンパク質は、CBB染色や銀染色を用いて検出することができます。特にリン酸化タンパク質は、脱リン酸化タンパク質よりも泳動の速度がわずかに遅いため、CBB染色や銀染色を用いて、その違いを検出することができます。しかし、グリコシル化などの別の要因により、移動度の変化とリン酸化による移動度の変化の区別が難しいという欠点があります。
図2. ウエスタンブロットを用いたリン酸化タンパク質の検出
リン酸化タンパク質の検出
SDS-PAGEを用いてリン酸化タンパク質の検出を行う場合は、キナーゼ反応の際に放射性同位体標識されたATPを用います。検出されたリン酸化タンパク質は放射線イメージング、蛍光イメージング、りん光イメージングで画像化ができます7。また、CBB染色や銀染色とは違い、放射性標識ATPを用いることで、未精製のリン酸化タンパク質を特異的に検出することができます。しかし、放射線で標識する方法は全てのリン酸化タンパク質を検出できる訳ではなく、また身体への悪影響も懸念されます。放射性標識ATPを用いらずに、リン酸化タンパク質を検出する方法はいくつかあります。リン酸エステル結合の加水分解後にメチルグリーンで染色する、Pro-Q Diamondなどリン酸基特異的に結合する蛍光色素を用いる、蛍光色素とリン酸基を結合させる金属キレートを用いる方法などが該当します8。例えば、中性pHの条件下でリン酸基と強い結合をする二核金属錯体として知られているPhos-Tag9をゲル作製時に予め加えておくことで、リン酸化部位の違いに関わらず、リン酸化タンパク質の移動度を低下させることができます。そのため、リン酸化タンパク質は、脱リン酸化タンパク質と比べて、バンドが高分子側へとシフトします。また、リン酸化部位を複数持つ場合は、複数のバンドが形成されるためにリン酸化の状態を簡単に区別することができます。
SDS-PAGEは異なる処理の試料間で各バンドの相対的なシグナル強度の違いを目視で比較でき、シグナル強度を半定量データとして扱うことができる実験手法です。既知の濃度のタンパク質をSDS-PAGEで泳動し、得られた検量線から定量解析も可能ですが、あまり普及していません10。そして、CBB染色や銀染色を用いた解析は、精製タンパク質が適し、ウエスタンブロットを用いた解析は未精製タンパク質が適しています。またウエスタンブロットと質量分析を組み合わせることで、Phos-Tagを用いたリン酸化タンパク質の検出が可能になります。
SDS-PAGEの利点
- 抗体は必要ありません。
- Phos-Tagは、全てのリン酸化タンパク質の移動度を低下させ、分離パターンを変化させます。また、さまざまなアプリケーションで使用することができます。
- データ解析が容易です。
SDS-PAGEの欠点
- 放射性標識ATPを用いる場合、身体への悪影響があり、オートラジオグラフィーなどの検出装置が必要です。
- CBB染色や銀染色は、ゲル中のリン酸化タンパク質と脱リン酸化タンパク質の移動度の違いを明確に区別できません。
- タンパク質のアイソフォーム間の比較や定量解析、多検体の同時処理が困難です。
- 部位特異的なリン酸化は確認できません。
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ウエスタンブロット(Western blot)
リン酸化タンパク質の定量解析は、ウエスタンブロットが最もよく用いられています。ウエスタンブロットは、SDS-PAGEでタンパク質を分離した後、電圧をかけ、ゲル中のタンパク質をメンブレンに転写させます(図2)11。次に目的のリン酸化タンパク質に特異的な抗体をメンブレンに添加し、このリン酸化抗体に対するHRP標識二次抗体と結合させます。このリン酸化抗体と二次抗体の複合体は、HRP基質が添加されることで化学発光シグナルを発するため、メンブレン上で抗体が結合したバンドを検出することができます。
ウエスタンブロットの感度と特異性は、使用する抗体の性能に依存します。抗体は、試料中の目的タンパク質以外と非特異的に結合する場合もありますが、タンパク質の分子量、バンドパターン、ラダーマーカーと比較することで、目的タンパク質のバンドを特定することができます。ただし、使用した抗体が近い分子量を持つ複数のタンパク質のアイソフォームと結合する場合、目的タンパク質の特定が困難になります。また前述のように、リン酸化タンパク質はSDS-PAGEで、予想とは異なる移動度を示すことがあり、注意が必要です。
抗リン酸化抗体
リン酸化タンパク質を検出する方法の多くは抗体を利用しているため、各イムノアッセイの特異性と感度は、使用する抗体の特性に大きな影響を受けます。イムノアッセイの1つの大きな欠点として、抗体に反応するリン酸化タンパク質のみが検出されるという点が挙げられます。残念ながら、古典的なハイブリドーマ法を用いた抗リン酸化抗体の製造は、高額かつ成功率は高くないので12、別の方法として、蛍光活性化セルソーティング(Fluorescense-assisted Cell Sorting、FACS)および免疫法/ファージデイスプレイが用いられています。FACSは、リン酸化抗原に特異的なプラズマ細胞(形質細胞)の同定ができ、免疫法/ファージデイスプレイは、目的のリン酸化タンパク質特異的な抗体の単離が可能です13。
セリンとスレオニンのリン酸化検出は、リン酸化部位近辺のアミノ酸配列を標的とする抗体を用いることが一般的ですが、リン酸化されたセリンやスレオニンを全て検出できる抗体は市販されていません。アミノ酸配列に依存せず、全てのチロシンリン酸化を検出する抗体は市販されていますが、結合する配列に偏りがあり、目的のチロシンリン酸化を特異的に検出することができない場合もあります14。
通常のウエスタンブロットは、異なる処理を行った試料間のバンドシグナル強度を半定量的に比較できる実験手法で、蛍光標識抗体を用いる蛍光ウエスタンブロットは、定量的およびマルチプレックス検出が可能な実験手法です15。また、ウエスタンブロットを用いたタンパク質のリン酸化研究では、少なくとも、ハウスキーピング遺伝子、リン酸化タンパク質、そして総タンパク質の発現量の比較が必要です。
※ 抗リン酸化抗体の製品ラインナップはこちらからご覧下さい。
ウエスタンブロット法の利点
- ゴールドスタンダードです。
- SDS-PAGEのゲルをキャピラリー化したシステムやイムノプロービング法を用いた操作時間が短縮できる方法が選択できます16,17。
- リン酸化部位の特定が可能です。
- 精製リン酸化タンパク質が入手できる場合は、定量が可能です。
- データ解析が容易です。
ウエスタンブロット法の欠点
- 抗体のインキュベーション時間、最適な抗体、ブロッキングバッファーの選定など、実験操作の最適化とトラブルシューティングが必要です。
- 基本的に定量性がありません。
- 使用する抗体により、標的タンパク質のアイソフォームの区別が困難です。
- 多検体処理のスループット性が低いです。
- 結果が抗体の性能に大きく依存します。
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フローサイトメトリー(Flow cytometry)
フローサイトメトリーは、目的タンパク質に特異的な蛍光標識抗体を用いてシングルセルレベルで解析する方法で(図3)18、細胞の生存率も測定することができます。抗体の標識に用いた蛍光色素の平均蛍光強度(Mean Fluorescence Intensity、MFI)は、目的タンパク質量に比例するため、MFI値が高い場合、多くの抗原が試料中に存在していることを意味します。
フローサイトメトリーは、主に細胞表面上のタンパク質の検出に用いられますが、リン酸化タンパク質など細胞内タンパク質の分析も可能です。未標識細胞や同じ蛍光色素を持つコントロール抗体で染色した細胞は、ネガティブコントロールとして自家蛍光の有無や、使用した抗体の非特異的な結合の確認に用いられます(図4)。他のネガティブコントロールとして、アイソタイプコントロールがあり、目的タンパク質を標的としない抗体で染色された細胞が該当します。このアイソタイプコントロールは、リン酸化抗体のMFI値がノイズではなく、目的のリン酸化タンパク質に特異的なMFI値であることを証明します。フローサイトメトリーでは、正確な細胞数とMFI値の相対値のデータが得られます。
図3A:目的タンパク質を標的とする異なる蛍光色素で標識された抗体とさまざまな種類の細胞混合物を一緒にインキュベートする。図3のYは抗体を示し、色は異なる蛍光色素で標識された抗体を表している。
図3B:フローサイトメーターはレーザーを利用して、細胞のサイズ、形、各細胞の蛍光強度(Emission Intensity、EI)を測定する。
図3C:蛍光色素の正しい組み合わせで目的の細胞集団を選別する(ゲーティング)。この方法で、目的の細胞数の測定と解析が可能。
フローサイトメトリーの利点
- 同時に複数の目的タンパク質が検出できます。
- 細胞数および、細胞生存率の測定が可能です。
- 96ウェルプレートサンプラーを用いることで、ハイスル―プット解析が行えます。
フローサイトメトリーの欠点
- 使用する抗体に依存するため、タンパク質の異なるアイソフォームの区別が困難です。
- 定量解析はできません。
- 抗体の性能に大きく依存します。
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キナーゼ活性測定(Kinase activity assay)
キナーゼ活性は、キナーゼと脱リン酸化基質を放射性同位体で標識したATPに混合して行うin vitroキナーゼアッセイで測定できます19。基質は放射性同位体標識されたリン酸基を持つため、そのシンチレーションのカウント数は、リン酸化された基質の量に比例します。他のin vitroキナーゼアッセイでは放射性標識ATPは利用せず、代わりにADPを特異的に検出する抗体や解析したいリン酸化部位特異的な抗体を用いる方法もあります。また別の方法として、トレーサーと呼ばれる蛍光標識したATPと対になる蛍光色素タグを持つ抗キナーゼ抗体を用いる時間分解蛍光測定法(TR-FRET)もあります20。キナーゼの基質が存在しない場合、抗体とATPトレーサーはキナーゼに共に結合するため、TR-FRETのシグナルを発します。ATPトレーサー存在下で、キナーゼが基質のリン酸化を促進する状況では、トレーサーがキナーゼに結合できずTR-FRETのシグナルは減衰します。この方法は、主に新しいキナーゼの基質の同定やキナーゼ阻害物質のスクリーニングなど創薬研究で、用いられています。
キナーゼアッセイの利点
- ハイスループットスクリーニングに対応します。
- 創薬スクリーニングに最適です。
キナーゼアッセイの欠点
- 放射性標識ATPは身体への悪影響があり、オートラジオグラフィー、フルオログラフィー、ホスホイメージャーなどの検出装置が必要です。
- 目的タンパク質の精製や抗体が必要になる場合があります。
- in vitroの結果とin vivoの挙動は必ずしも一致しません。
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サンドイッチELISA
最適な抗体ペア
サンドイッチELISAで用いる抗体ペアは、抗体スクリーニングが必要です21。最適な抗体ペアは、目的タンパク質の異なる領域(エピトープ)に結合するだけでなく、ELISAのプラットフォームで目的タンパク質のエピトープに使用する抗体が結合可能であるなど、いくつかの条件があります。例えば、捕捉用A抗体-検出用B抗体の抗体ペアとして機能しなくても、検出用A抗体-捕捉用B抗体の抗体ペアとしては機能する場合もあります。
目的タンパク質の濃度
目的タンパク質の濃度は、精製された目的タンパク質の既知濃度で作成した標準曲線から求めます。通常のELISAキットは定量的ですが、リン酸化タンパク質に対応したほとんどのELISAキットでは、精製されたリン酸化タンパク質やリン酸化ペプチドを標準曲線で用いないため、半定量的になります。また、目的のリン酸化タンパク質を含む細胞ライセートが、測定機器において直線的な範囲であるかを確認するためのポジティブコントロールとして用いられますが、濃度が既知ではないため、標準曲線は作成できません。
図6. A:ウエスタンブロットとB:サンドイッチELISAの結果比較
ウエスタンブロットとELISAの比較データから、同等のデータが得られることがわかります。
ELISA法の利点
- ハイスル―プット解析が可能です。
- 通常は1日以内で測定結果がでます。
- データ解析が容易です。
ELISA法の欠点
- マルチプレックス検出に適していません。
- タンパク質の異なるアイソフォームの区別が不可能(使用する抗体によっては可能)です。
- リン酸化タンパク質に対応したほとんどのELISAキットは、定量性がありません。
- 抗体の性能に大きく依存します。
※ ELISA製品の中には前述したサンドイッチELISAとは異なるフォーマットの製品も販売されています。プレートベースのELISAでは、より高密度のプレートが用いられる場合もあります。また、プレートの代わりにビーズを用いる方法もあります。さらに、96ウェルプレートで培養した細胞をそのまま用いて、培養細胞中のリン酸化タンパク質を測定する方法もあります。競合ELISAでは捕捉用抗体のみを用いますが、通常のサンドイッチELISAより特異性が落ちることを考慮する必要があります23。
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抗体アレイ(Antibody array)
ガラススライド、メンブレン、ビーズ上に多数の抗体を固相化したものを抗体アレイと言います24,25。一度で多くのタンパク質を検出できるマルチプレックス解析に適しています。抗体アレイは、初めにブロッキング処理を行います。次にアレイ上で試料をインキュベーションし、非特異的に結合したタンパク質を洗い流します。最後に、検出用抗体をインキュベーションすることで、化学発光や蛍光で検出できるようになります。得られたシグナル強度は、抗体が結合したタンパク質量に比例します。
図6および図8は、PDGFβ処理をしたNIH3T3細胞をウエスタンブロット、ELISA、抗体アレイ、それぞれで検出を行った結果です。この結果から、いずれの方法も同程度のリン酸化タンパク質量の変化を検出できたことがわかります。一般的な抗体アレイからは定量的なデータが得られますが、リン酸化タンパク質を標的とした定量解析が可能なアレイ製品は販売されていません。スポットの位置が特定できるフォーマットでは、そのスポットの位置や標識の異なる抗体により、タンパク質の同定が簡単に行えます。
※ 抗体アレイの詳細な情報については、抗体アレイって何?種類と使い分けをご覧下さい。
※ 抗体アレイの受託サービスは、こちらからご覧いただけます。
抗体アレイの利点
- マルチプレックス検出に適しています。
- さまざまなフォーマットの選択可能です。
- 通常は1日以内で測定結果がでます。
- データ解析が容易です。
抗体アレイの欠点
- フォーマットによっては、特別な装置(ガラススライドアレイには対応するレーザースキャナ、ビーズベースのアレイはフローサイトメーター)が必要です。
- フォーマットによっては、一度に解析できる試料数が少ない(数試料~最大100試料程度)です。
- リン酸化タンパク質を検出する場合、定量的なデータが得られません。
- シグナル強度のデータ抽出に対応したソフトウェアが必要です。
- アレイ上のスポットの密度によっては、データ抽出に時間がかかります。
- タンパク質の異なるアイソフォームの区別が難しいです。
- 抗体の性能に大きく依存します。
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質量分析(Mass spectrometry、MS)
一般的なボトムアップの質量分析のアプローチは、まずタンパク質を消化してペプチド化し、質量分析の前にイオン化します。次に測定を行い、ペプチド-タンパク質のデータベースを利用して、分子量や断片化の情報に基づき、検出した各ペプチドに対応するタンパク質を検索します。リン酸化タンパク質などの微量なタンパク質は、この検出プロセスの過程で多量なタンパク質によってマスクされることがあります。そのため、質量分析する前に、リン酸化に特異的な抗体や二酸化チタンによってリン酸化タンパク質の濃縮を行います26,27。試料調製の方法やマトリックスの種類で異なりますが、一度の解析で5,000種類以上のタンパク質を同定することができます。リン酸化の有無に関わらず、質量分析では、半定量(相対的な倍数変化)的なデータや定量(タンパク質の濃度)的なデータを得ることができます。
質量分析は、ウエスタンブロットやELISAと比較して3つの大きな違いがあります。まず、第一に、抗体に依存しないため、未知のリン酸化の情報を得ることができます。そのため、仮説フリーかつバイアスフリーだと考えられています。次に、ウエスタンブロットやELISAのダイナミックレンジは2~3桁オーダーと狭いのに対し、質量分析のダイナミックレンジは最大5桁オーダーであるため、低濃度のリン酸化タンパク質も検出可能です28,29。最後に、タンパク質のアイソフォームを容易に区別できるという利点があります。質量分析の詳細な情報は、RayBiotech社のブログ、"A Comparison of Antibody Arrays and Mass Spectrometry in Protein Profiling and Biomarker Research." をご覧下さい。
質量分析の利点
- マルチプレックス検出に適しています。
- ダイナミックレンジが広いです。
- タンパク質のアイソフォームを識別できます。
- 高感度です。
- 定量解析が可能です。
- 抗体を使用しないので、バイアスフリーです。
- 通常は1日以内で測定結果がでます。
質量分析の欠点
- 濃度の高いリン酸化タンパク質が必要です。
- 高額な質量分析計が必要です。
- 複雑なデータ解析には専用ソフトウェアが必要です。
- スループット性が低い(1日あたり数点から数十点の試料解析数)です。
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関連受託サービス
データ解析
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参考文献
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