HOME > 試薬 > 免疫化学 > ウイルス/微生物/アレルゲン > 微生物 > 細菌の応用
HOME > 試薬 > 細胞培養 > ATCC商品 > 細菌の応用

細菌の応用

掲載日情報:2025/12/24 現在Webページ番号:71090

何世紀にもわたり、細菌は発酵による食品や日用品などの生産に用いられてきました。近年では、品質管理やプロバイオティクス、ビタミン、抗生物質、有機酸、バイオ燃料の生産にも利用されています。本記事では、細菌の多種多様な応用例についてご紹介します。

細菌の増殖、保存、応用に関する一般的な技術情報のまとめは、「細菌の培養方法をご紹介します(ATCC® Bacteriology Culture Guide)」をご覧下さい。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。
商用利用については、ATCC® Webサイトをご確認下さい。

細菌の応用

品質管理

食品や日用品などの製造においては、コンタミネーションがないことを確認するために、効果的な微生物検査を実施することが不可欠です。加工会社における安全性、評判、業績は、効果的な品質管理にかかっています。品質管理に使用される細菌株は、継代培養を最小限に抑える綿密な実験手順によって裏付けられた同一性、生存性、純度が検証されている必要があります。1925年以来、ATCC®は品質管理に使用する細菌株のリーディングプロバイダーであり、研究および製品試験のための生物学的試料の認証および分譲の基準を設定してきました。ATCC®によって認証され、分譲される全ての細菌株は、厳格な表現型および遺伝子型の両方の特性評価を受けています。これらの手順については、 "細菌株の認証"をご覧下さい。

食品

細菌は食酢、漬け物、乳製品など、さまざまな発酵食品の製造に広く利用されています。これらの食品は乳糖やエタノールなどの化合物をそれぞれ乳酸や酢酸に発酵させることによって作られます。例えば、チーズやヨーグルトの製造では、乳糖発酵にラクトバチルス属(Lactobacillus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)が一般的に使用されます。乳糖発酵により乳酸が生成され、乳製品の食感と風味が変化します。一方、食酢の生成には酢酸菌によるエタノールの発酵が必要であり、その結果、芳醇で酸味のある製品が生成されます。多くの非発酵食品と比較して、発酵食品は総じて腐敗しにくく、消化が促進されるなど、健康によい効果があるとされています。

プロバイオティクス

プロバイオティクスは宿主に有益であると考えられています。プロバイオティクスを十分な量を摂取すれば、これらの生きた菌株は消化・吸収を促し、腸内に存在する病原菌の数を減らすことができます1。ラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属は、最も一般的に使用されるプロバイオティクスであり、ヨーグルトなどの発酵食品によく含まれています。これらの種は、抗生物質、ビタミン、アミノ酸を天然合成することが分かっています。さらに、これらの微生物は腸内のpHレベルを適切に保ち、カルシウム、マグネシウム、鉄を含む栄養素の吸収を促進します。プロバイオティクスにおける病原菌に対する抗菌作用や健康効果は、正常な腸管の働きを維持するとともに、胃腸炎、大腸炎、過敏性腸症候群などにおけるさまざまな症状の改善を補助できる可能性があります。

ビタミン

DNA合成や脂質や炭水化物、タンパク質の異化などといった、さまざまな代謝プロセスを補助するために、多くの細菌株は数種類のビタミンB群やビタミンK群を産生します。例えば、ヒトの腸内細菌は、ビタミンK1、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、ナイアシンアミド(B3)、コバラミン(B12)、リボフラビン(B2)、パントテン酸(B5)、チアミン(B1)を合成することが知られています。これらの細菌が産生するビタミンの多くは、補酵素または補因子としてヒトで利用され、適切な代謝プロセスに不可欠となっています。特にビタミンKは、肝臓におけるいくつかの血液凝固因子の形成に必要です。また、パントテン酸とビオチンはそれぞれ、炭水化物の酸化反応とカルボキシル化反応の補酵素として機能します。

抗生物質

抗生物質とはタンパク質合成やDNA合成の阻害など、さまざまなメカニズムによって細菌や真菌を破壊したり、増殖を阻害したりするために用いられる化合物のことです。現在知られている抗生物質の多くは、放線菌の一種、特にStreptomyces属の細菌によって産生されています。Streptomyces属は糸状の土壌細菌で、アミノ酸、低分子脂肪酸、糖、核酸など、さまざまな前駆体を用いて、二次的な代謝産物を介して抗生物質を産生します2。細菌株は、有害であったり、同じような栄養源を巡って競合する他の細菌株の増殖を抑えたり、根絶したりする手段として抗生物質を産生すると考えられています。人間社会では、抗生物質の生産は感染症の治療に不可欠であり、また、植物に対する病原性微生物をコントロールするために、農業分野でもよく利用されています3

有機酸

クエン酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸などのさまざまな有機酸は、代謝副産物として細菌によって産生されます。例えばクエン酸はクエン酸回路の副産物であり、代謝において重要な有機酸です。一方、乳酸は乳糖発酵の最終産物として産生されます。そして有機酸は食品の保存、乳化、香料など、さまざまな目的に利用することができます。また、有機酸は緩衝液、洗剤、化粧品、錆落としなど、より産業的な用途にも使用されています。

バイオ燃料

現在、私たちのエネルギーのほとんどは、石油、石炭、天然ガスといった埋蔵資源によって賄われています。しかし、これらのエネルギー源は有限であり、再生不可能です。最近では、トウモロコシやサトウキビの茎などの商用資源からバイオ燃料を生産し、持続可能なエネルギーを生み出す取り組みが行われています。しかし、これらの新しいエネルギー源は、食物を人間の食糧としてではなく、燃料として使用する必要があります。この問題を解決するために、現在のバイオ燃料研究ではセルロースを目的の炭化水素燃料化合物へと分解する細菌の利用に焦点を当てています。現在のバイオ燃料研究の目標は、バイオ廃棄物や雑草の分解によって、バイオ燃料を生成する代謝経路を持つ細菌株を工学的に作製し、食糧供給を減らすことなく持続可能なエネルギー供給手段を作り出すことです。

レポーター標識株

蛍光や発光を利用したレポーター標識株は、微生物の定量や検出、宿主と病原体の相互作用の解析、創薬、食品検査など、基礎科学や応用科学における多様な用途があります。例えば、これらの菌株は、異なる生理学的条件下や感染サイクルの段階において、宿主細胞や組織内における特定の細菌病原体の侵入、コロニー形成、局在化、病原体負荷を解析するためのユニークなツールとなります。さらに、細菌を容易に可視化・定量化できるこの性質は、多数の抗菌治療薬を効果的にスクリーニングし、増殖を抑制する薬剤の量を決定することができます。これらの研究は微生物の病原性に関する知見に大きく貢献する可能性があり、新規治療薬の開発や評価、品質管理試験にとって重要な意義を持ちます。

参考文献

  1. Nagpal, R., et al., "Probiotics, their health benefits and applications for developing healthier foods: a review.", FEMS Microbiol. Lett., 334(1), 1-15(2012). [PMID:22568660]
  2. Chater, K.F., "Streptomyces inside-out: a new perspective on the bacteria that provide us with antibiotics.", Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci., 361(1469), 761-768(2006). [PMID:16627293]
  3. Raaijmakers, J.M., et al., "Antibiotic production by bacterial biocontrol agents.", Antonie Van Leeuwenhoek, 81(1-4), 537-547(2002). [PMID:12448749]

© 2025 American Type Culture Collection. The ATCC trademark and trade name, and any other trademarks listed in this publication are trademarks owned by the American Type Culture Collection unless indicated otherwise.

お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

製品情報は掲載時点のものですが、価格表内の価格については随時最新のものに更新されます。お問い合わせいただくタイミングにより製品情報・価格などは変更されている場合があります。
表示価格に、消費税等は含まれていません。一部価格が予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承下さい。