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Ferroptosis経路の誘導物質／阻害物質／検出キット フェロトーシス（Ferroptosis）研究用製品（Cayman社）

掲載日情報：2021/06/29 現在Webページ番号：68871

ケイマン ケミカル /
Cayman Chemical Company
[メーカー略称：CAY]

フェロトーシス（フェロプトーシス、Ferroptosis）は、「制御された細胞死」の一つで、鉄依存の過酸化脂質の蓄積に起因します。フェロトーシス経路（機構）、フェロトーシス誘導物質、フェロトーシス関連試薬、フェロトーシス検出キットについてご紹介します。

※ 本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


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フェロトーシス（Ferroptosis）とは

フェロトーシス（フェロプトーシス、Ferroptosis）は、「制御された細胞死」の一つで2012年にコロンビア大学のストックウェル教授のグループにより初めて報告されました。アポトーシスやネクロトーシスとの共通点（例えば、オルガネラの膨張、クロマチンの凝縮、膜の完全性の喪失）は無く、フェロトーシスを起こしている細胞は、細胞体積の減少やミトコンドリア膜密度の増加など、正常細胞と比べ形態的にはわずかな違いしかありません。また、生化学的プロセスも異なります。フェロトーシスは、鉄依存の過酸化脂質の蓄積に起因します。鉄は脂質過酸化を強く促進し、生じたROS（Reactive Oxygen Species、活性酸素種）が細胞の抗酸化システムの処理能力を超えると、酸化ストレスがタンパク質、核酸、脂質を損傷します。このように、酸化を受けた脂質は致命的な信号として機能し、損傷した物質の除去／リサイクルにつながる反応が開始します。フェロトーシスはがん治療の新しいターゲットとしても注目されており、GPX4阻害が薬剤耐性のあるがん細胞を選択的に死滅させる手段になるとの報告もあります。


主要文献（Review）

  1. Lewerenz, J. et al., "Oxytosis/Ferroptosis-(Re-) emerging roles for oxidative stress-dependent non-apoptotic cell death in diseases of the central nervous system.", Front. Neurosci., 12, 214 (2018).[PMID: 29731704]
  2. Forcina G.C. and Dixon S.J., "GPX4 at the Crossroads of Lipid Homeostasis and Ferroptosis.", Proteomics, 19(18), e1800311 (2019).[PMID: 30888116]
  3. Hirschhorn T. and Stockwell B.R., "The development of the concept of ferroptosis.", Free Radic. Biol. Med., 133, 130～143, (2019).[PMID: 30268886]
  4. Viswanathan, V.S., et al., "Dependency of a therapy-resistant state of cancer cells on a lipid peroxidase pathway.", Nature, 547(7664), 453～457(2017).[PMID: 28678785]
  5. Tsoi, J., et al., "Multi-stage Differentiation Defines Melanoma Subtypes with Differential Vulnerability to Drug-Induced Iron-Dependent Oxidative Stress.", Cancer Cell, 33(5), 890～904(2018).[PMID: 29657129]
  6. Hangauer, M.J., et al.,., "Drug-tolerant persister cancer cells are vulnerable to GPX4 inhibition.", Nature, 551(7679), 247～250(2017).[PMID: 29088702]

CAYMAN CURRENTS FERROPTOPSISのご案内

CAYMAN CURRENTSは、Cayman社より不定期で発刊されているニュースレター（英文）です。FERROPTOSIS - A New Form of Cell Death（ISSUE 30, FALL 2018）では、フェロトーシスの反応経路に関する基本情報や、関連製品をご紹介しています。右図をクリックしてご覧下さい（フェロトーシスの反応経路に関する基本情報や、関連製品、4.32 MB）。

目次

  • The Ferroptosis Pathway: Structure, Function, and Modulation、page 1
  • Ferroptosis Inducers、page 3
  • Ferroptosis Inhibitors、page 5
  • Lipid Peroxidation、page 7
  • Oxytosis vs. Ferroptosis; What's In a Name?、page 9
Cayman_Currents_FERROPTOPSIS


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フェロトーシス経路（機構）および各種の経路阻害物質

図中の各項目をクリックすると対応する化合物または製品リストをご覧いただけます。

フェロトーシス経路(機構)および各種の経路阻害物質

フェロトーシス経路(機構)および各種の経路阻害物質

System XCおよびその顆粒の阻害によるフェロトーシスの誘導 鉄による多価不飽和脂肪酸 メバロン酸経路（MVA Pathway）いよるフェロトーシス感受性の調節 GPX4阻害物質によるフェロトーシスの誘導 PUFAの過酸化 フェロトーシス阻害物質

フェロトーシス経路を引き起こす三要素としては、
（Ⅰ）リン脂質膜に含まれる長鎖の多価不飽和脂肪酸（Polyunsaturated Fatty Acids, PUFA）
（Ⅱ）レドックス活性鉄
（Ⅲ）過酸化脂質修復システムの欠陥
が知られており、またある種の低分子物質も重要なタンパク質や関連する代謝経路を標的として、これらのプロセスをトリガーできます。

下記項目をクリックすると詳細記事をご覧いただけます。

＊ FINs：Ferroptosis-Inducing compound（Stockwell B.R. et al., Cell, 171(2), 273～285 (2017). [PMID: 28985560]

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System XC-およびその下流の阻害によるフェロトーシスの誘導

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品名 作用機序 商品コード
Acetaminophen NAPQI の母化合物で、細胞内グルタチオンレベルを低下させる。 10024
N-Acetyl-4-Benzoquinone Imine (NAPQI) アセトアミノフェンの代謝産物で、代謝過程でGSHと結合するため、高用量の場合、利用可能な肝臓GSHを枯渇させる。 16115
L-Buthionine-(S,R)-Sulfoximine (BSO) GSH合成の律速酵素であるγ-グルタミルシステイン合成酵素を阻害することにより、GSHを枯渇させる。 14484
Erastin System XC-を介したシスチンの取り込みを阻害する。 17754
Erastin2 Erastin の誘導体で、System XC-を介したシスチンの取り込みをより強力に阻害する。 27087
5-Octyl D-Glutamate 膜透過性があり、細胞内のグルタミン酸レベルを上昇させる。 16106
Sorafenib シスチンの取り込み阻害により、GSH生産を妨害する。 10009644
Sulfasalazine 抗炎症物質 5-アミノサリチル酸のプロドラッグで、シスチンの取り込みを阻害する。 15025

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GPx4阻害物質によるフェロトーシスの誘導

フェロトーシス誘導物質

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品名 作用機序 商品コード
ML-162 (1S,3R)-RSL3よりも選択的で強力なGPx4阻害物質。 20455
ML-210 プロドラッグ型の分子で、生細胞に取り込まれたのち活性化されGPx4を阻害する。 23282
(1S,3R)-RSL3 GPx4のセレノシステイン活性部位に直接結合し酵素活性を阻害する。 19288


GPx4検出用抗体

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品名 作用機序 商品コード
Anti-GPx4 Polyclonal Antibody ヒトGPx4 内部に由来するペプチドを抗原として得られたウサギポリクローナル抗体。
ヒト、マウス、ラット、ブタ試料におけるIHCとWBに適用可能。		 10005258

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メバロン酸経路（MVA Pathway）によるフェロトーシス感受性の調節

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品名 作用機序 商品コード
FIN56 酵素GPx4の分解を促進し、またスクアレン合成阻害を活性化することで抗酸化物質CoQ10を減少させ、フェロトーシスを誘導する。 25180

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鉄による多価不飽和脂肪酸（Polyunsaturated Fatty Acid, PUFA）の酸化

鉄イオンの影響により活性酸素種を生じフェロトーシスを誘導する主な物質

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品名 作用機序 商品コード
Artemisinin 環状ペルオキシドで、酸化鉄（II）と反応してROS（Reactive Oxygen Species, 活性酸素種）を生成し、フェロトーシスを誘導する。 11816
Artesunate Artemisininの誘導体の環状ペルオキシドで、酸化鉄（II）と反応してROS（Reactive Oxygen Species, 活性酸素種）を生成し、フェロトーシスを誘導する。 11817
(-)-FINO2 細胞内鉄を酸化（Fe (Ⅱ) → Fe (Ⅲ)）しラジカルが発生、またGPx4酵素活性を間接的に阻害すると想定される。 25096
Chlorido[N,N'-Disalicylidene-1,2-
Phenylenediamine]Iron(Ⅲ)		 Fe3+を含む錯体で、ヒト神経芽細胞腫 NB1細胞を3μMで処理した場合、フェロトーシスを誘導し、アポトーシスやネクローシスは起こさない。 28788


鉄イオンの蛍光インジケーター

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品名 作用機序 商品コード
Phen Green SK Diacetate Fe2+などの存在で緑色蛍光を発する金属インジケーター（励起波長 507 nm, 蛍光波長 532 nm）。 25393

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リポキシゲナーゼによるホスファチジルエタノールアミン含有PUFAの過酸化

Oxidized Lipid Mediators

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品名 作用機序 商品コード
5(S)-HETE アラキドン酸の5-Lipoxygenase代謝物。 34230
11(S)-HETE アラキドン酸の非酵素的酸化により生成されるモノヒドロキシ脂肪酸。 34510
12(S)-HETE 哺乳類血小板の主要なLipoxygenase産物。 34570
15(S)-HETE 15-Lipoxygenase 経路の主要なアラキドン酸代謝産物。 34720
(S)-HETE HPLC用混合物で、各種 (S)-HETE (Hydroxyeicosatetraenoic Acid) が含まれている。 34001
5(S)-HpETE 5-Lipoxygenaseによりアラキドン酸から生成される多価不飽和脂肪酸。 44230
12(S)-HpETE アラキドン酸の12-Lipoxygenase代謝物。 44570
15(S)-HpETE アラキドン酸の15-Lipoxygenase代謝物。 44720
Hydroperoxy HPLC Mixture 脂質・リポキシゲナーゼ研究用の標準物質のセット。 44001


Lipoxygenases

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品名 作用機序 商品コード
Lipoxygenase from Glycine Max (Soybean)-Purified 主に非ヘム、非硫黄のフェロプロテインである13-リポキシゲナーゼ-1とリポキシゲナーゼ Lx3が含まれている。 60700
5-Lipoxygenase, Human, Recombinant アラキドン酸から5(S)-HpETEの産生を触媒する。 60402
12-Lipoxygenase, Platelet-type, Mouse, Recombinant アラキドン酸から12(S)-HpETEの産生を触媒する。 10341
15-Lipoxygenase-2, Human, Recombinant アラキドン酸を代謝し、15(S)-HETEを産生する。 10011263

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フェロトーシス阻害物質

フェロトーシスの存在は、適当な阻害物質によって細胞死が予防されるかどうか、また生成物の過酸化脂質を測定することで確認できます。Cayman社では、フェロトーシス経路の主要な作用点ごとの阻害物質をご提供しています。

Lipid Peroxide Scavengers

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品名 作用機序 商品コード
Ferrostatin-1 アシル鎖を持つペルオキシラジカルを脂質二重層中に捕捉することによりフェロトーシスを阻害する。 17729
Ferrostatin-1-Diyne 細胞内にFerrostatin-1を局在化するために、小さなアルキンであるdiyneのタグを付けたフェロトーシス阻害物質。 25492
Liproxstatin-1 アシル鎖を持つペルオキシラジカルを脂質二重層中に捕捉することによりフェロトーシスを阻害する。 17730
SRS11-92 エラスチンにより誘導されるフェロトーシスを阻害する。 25689
SRS16-86 Erastinによるフェロトーシスを抑制し、また GPX4/System XC-シスチン/グルタミン酸トランスポーター／GSHを増加させる。 26752
UAMC-3203 安定性が高く易溶性のFerrostatin-1誘導体で、フェロトーシスを抑制する。 26525


Additional Antioxidants

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品名 作用機序 商品コード
BHT 広く使われている合成抗酸化物質。 89910
β-Carotene ビタミンAの前駆体で、抗酸化作用がある。 16837
Coenzyme Q10 電子伝達系のコファクターで、還元型は抗酸化物質として機能する。 11506
N-Acetyl-L-Cysteine GSH（glutathione）の前駆体で抗酸化作用を示す。 20261
N-Acetyl-L-Cysteine Amide N-Acetyl-L-Cysteineよりも血液脳関門透過性が向上した抗酸化物質。 25866
Ebselen グルタチオンペルオキシダーゼ様活性を示す含セレン低分子化合物。 70530
Idebenone フリーラジカルの生成を防ぐ強力な脂質過酸化反応の抑制物質。 15475
Mitoquinol ミトコンドリアを標的とした抗酸化物質。 89950
Probenecid MRP1（Multidrug Resistance-associated Protein 1）を阻害して細胞内からのGSH の流出を防ぐ。 14981
Sesamolin 生体内で脂質過酸化を抑制する植物リグニン。 11754
α-Tocotrienol ビタミン E誘導体で、抗酸化作用を有する。 10008377
γ-Tocotrienol 10008494
Trolox 抗酸化作用を示す細胞膜透過性ビタミンE誘導体。 10011659


Antioxidant Assay Kit

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品名 製品概要 商品コード

Antioxidant Assay Kit

70066-CAY-3-Antioxidant Assay Kit

 metmyoglobin による ABTS（2,2'-azino-di-［3-ethylbenzthiazoline sulphonate］）の ABTS＋への酸化反応を阻害する活性を指標に、抗酸化能を測定するキット。ROS 他のシステムの酸化的ストレスによる細胞損傷への防御効果を評価できる。 709001


Squalene Synthase (SQS) Inhibitors

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品名 作用機序 商品コード
YM-53601 コレステロール合成を抑制するスクアレン合成酵素阻害物質。メバロン酸経路での非ステロール生成物の形成を促進する。 18113
Zaragozic Acid A コレステロール合成を抑制するスクアレン合成酵素の可逆的な競合阻害物質。 17452


Lipoxygenase (LO) Inhibitors

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品名 作用機序 商品コード
Baicalein 12-および15-Lipoxygenase-1を阻害し、また脂質過酸化を抑制する。 70610
CAY10649 5-Lipoxygenase生成物形成を直接的に阻害する。 10804
15-Lipoxygenase Inhbitor 1 複素環式ピリミドベンゾチアジン系化合物で抗酸化作用があり、15-Lipoxygenasの酸化還元サイクルを阻害するとされる。 10010468
ML351 選択的な15-Lipoxygenase-1阻害物質。 16119
ML355 選択的な12-Lipoxygenase-1阻害物質。 18537
Nordihydroguaiaretic Acid 非選択的なLipoxygenase阻害物質。 70300
PD 146176 選択的な15-Lipoxygenase-1阻害物質。 10010518
Zileuton 可逆的な 5-Lipoxygenase阻害物質。 10006967


Iron Chelators

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品名 作用機序 商品コード
Ciclopirox 鉄キレート物質で、細胞透過性を有する。 16021
Deferasirox 鉄キレート物質で、2：1 の比率で鉄と結合する。 16753
Deferiprone 鉄キレート物質で、3：1 の比率で鉄と結合する。 20387
Deferoxamine (Mesylate) 鉄キレート物質で、プロリルヒドロキシラーゼを阻害する作用がある。 14595

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脂質性ROS（活性酸素種）の検出

Lipid ROS Assays

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品名 製品概要 商品コード
Lipid Hydroperoxide (LPO) Assay Kit 鉄イオンとの酸化還元反応を利用して、脂質ヒドロペルオキシドを直接測定するキット。 705002
TBARS (TCA Method) Assay Kit 様々な体液試料中の脂質の過酸化をチオバルビツール酸反応性物質（TBARS）アッセイにより比色測定するキット。 700870
TBARS Assay Kit 10009055
ROS Detection Cell-Based Assay Kit (DCFDA) 生細胞中の活性酸素種（ROS）をフローサイトメトリーまたはプレートリーダーで直接測定するキット。 601520
ROS Detection Cell-Based Assay Kit (DHE) ジヒドロエチジウム（DHE）を用いて、細胞の活性酸素量（ROS；Reactive oxygen species）を蛍光で測定するキット。 601290


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（テクニカルサポート 試薬担当）

reagent@funakoshi.co.jp

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