フェロトーシス（Ferroptosis）研究用試薬とキット フェロトーシスに関わるリポキシゲナーゼ関連製品

PUFA（多価不飽和脂肪酸）は、酵素的／非酵素的に容易に酸化的ダメージを受けやすい物質です。PUFAは、分子内に水素原子の引き抜きが起こりやすいビスアリルプロトンを持ち、その結果アルキルラジカルを生成します。この反応物は、分子状酸素と容易に反応してペルオキシラジカルを生成する性質があります。生成したペルオキシラジカルは、更に別のPUFAと反応して脂質過酸化の連鎖反応を起こします。フェロトーシスの過程では、Acyl-CoA synthetase long-chain family member 4（ACSL4）、Lysophosphatidylcholine acyltransferase 3（LPCAT3）、およびリポキシゲナーゼ（15-LO など）がPUFA酸化物形成を促進します。

図：細胞質型ホスホリパーゼA2（cPLA₂）によって切り出されたアラキドン酸（AA）は、オキシリピン類に変換され^*1、残りのAAは上述のACSL4によってCoenzyme A（CoA）と縮合します。AA-CoAは、リン脂質膜内でLPCAT3によりホスファチジルエタノールアミン（PE）のエステル（PE-AA）となります。リポキシゲナーゼ^*2（LO）、特に15-LOは、通常は遊離PUFAを基質としますが、この場合PE-AAを酸化しヒドロペルオキシPEを生成します（図中のPE-15-HpETE）。GPX4の処理能力が不十分な場合、ペルオキシドが蓄積して致死的なシグナルとなり、フェロトーシスを引き起こします。フェロトーシスの刺激により5-HETE、11-HETE、および15-HETEの放出が起こり、また5-HpETE、12-HpHETE、および15-HpHETEで細胞を処理することにより、フェロトーシスへと繋がるプロセスが加速されます。

*1 参考文献：Gabbs M., et al., Adv. Nutr., 6(5), 513～540 (2015). PMID: 26374175.
*2 Arachidonic Acid Alkyneとクリックケミストリーを利用して、LOによるLipid-ROSの標的を特定できます。