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生細胞で使用可能な不可逆的GST阻害物質 CNBSF(Irreversible GST Inhibitor)

掲載日情報:2023/07/20 現在Webページ番号:68116

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

CNBSF(2-Chloro-5-Nitrobenzen Sulfonyl Fluoride)はGlutathione S-transferase(GST)に対する不可逆的な阻害物質です。GSTを不活化することにより、従来の可逆的阻害物質に比べて長期間に渡りGST活性を抑制できます。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


DMSO CNBSF
CellFluor™ GST(GST activity)
CHO細胞画像(DMSO-Control)
CHO細胞画像(CNBSF処理)

CNBSFによる細胞内GSTの酵素活性の抑制

CHO細胞にCNBSFを添加して細胞内のGSTを不可逆的に阻害後、残存GST活性を生細胞に使用できる緑色蛍光性のGST活性測定プローブであるCellFluor™ GST(#FDV-0030)を用いて観察した。観察結果から、細胞内GSTの酵素活性はCNBSFの添加により著しく抑制されたことがわかる。


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GSTと阻害物質の意義

細胞内でのGSTの作用機構

Glutathione S-Transferase(GST)ファミリーは、バクテリアから動物、植物まで幅広く保存されている酵素ファミリーで、第Ⅱ相薬物代謝酵素の1つです。第Ⅰ相薬物代謝酵素シトクロムP450により細胞内で産生された求電子代謝物や、細胞外から取り込まれた異物化合物(xenobiotics)をグルタチオン(Glutathione、GSH)に付与し、グルタチオン抱合体(GS抱合体、GS-conjugate)に変換する活性を有しています。グルタチオン抱合体は、多剤耐性関連タンパク質(Multidrug resistance-associated proteins、MRP)トランスポーター群により積極的に細胞外に排出され、毒性を軽減させる機構が存在します。そのため、GSTは細胞毒となりうる代謝物質や異物化合物の排出にかかわる解毒因子として機能すると考えられています。細胞内の主たる抗酸化因子として、酸化ストレスや脂質過酸化反応の抑制にも寄与すると考えられています。

一方、多くの抗がん物質等もGSTによってグルタチオン抱合体に変換後に細胞外に排出されることから、GSTは第Ⅱ相代謝酵素の主たる因子である一方で、薬効を弱めることで薬剤耐性効果も示します。特にがんの悪性化に伴い特定のGSTアイソフォーム(GSTP1)の発現量の亢進が知られ、それによりがん細胞は強い薬剤耐性を獲得すると考えられています。


細胞内でのGSTの作用機構

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細胞内でのGSTの作用機構


GST活性の抑制により抗がん物質の細胞内滞留性の向上が期待できますが、これまでGSTに対する十分な阻害活性を有する物質は知られていませんでした。従来のGSTの阻害物質は、GSHに対する競合性阻害物質が主に用いられてきました。これらは、in vitroでは優れた阻害活性を示しても、細胞内ではGSH濃度は数 mMオーダーと非常に高濃度であるために競合が起こりにくく、十分な阻害効果が得られないという問題がありました。


新規GST阻害戦略BSF阻害物質

CNBSFは、benzensulfonyl fluoride(BSF)基を利用し「細胞内で不可逆的な阻害物質を作り出す」をコンセプトに開発された新規GST阻害物質です。CNBSFは細胞膜透過性を有し、細胞内に取り込まれた後にGSTの異物認識部位であるH-siteに結合します。GSHはGSTのG-siteに結合し、次にGSTタンパク質内部でCNBSFはGSHに付加されてGSH抱合体(GS-5NBSF)に変換されます。GS-5NBSFは、その後直ちにGSTのTyr108(ヒトGSTP1の場合)と不可逆的に反応します。この反応により、GS-BSFはGSTから解離できずにH-siteとG-siteはともに塞がれた状態になるため、GSTは不活性となります。従来の競合型阻害物質に対してGSTを不可逆的に不活性化するこから、長期間に渡り阻害効果が得られます。


CNSBFのGST阻害機構

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CNSBFのGST阻害機構


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原理

阻害の反応機構モデル(GSTP1-1の例)

阻害の反応機構モデル(GSTP1-1の例)

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  1. CNBSFおよびGSHは、それぞれGSTのH-siteまたはG-siteに結合し、GSHのチオレートアニオンがGSTの酵素活性依存的にCNBSFに反応する。CNBSFの塩化物イオンCl-が脱離する。
  2. GST酵素内でGS-5NBSFが形成される。
  3. GS-5NBSFのbenzensulfonyl fluoride基にGSTP1-1の108番目のTyr残基中の水酸基が反応する。
  4. フッ化物イオンF-の脱離を伴い、GSTとGS-5NBSFが共有結合により架橋される。

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特長

  • 膜透過性を有し、生細胞に使用可能です。in vitroで使用する場合は、GSHの添加が必要です。
  • 細胞内においてGSTによりGSHに付加されることで、GST阻害物質(GS-5NBSF)として機能します。
  • GSTの活性中心に不可逆的に付加する阻害作用でGSTを失活させるため、長期間の阻害が可能です。in vitro・生細胞アッセイの両方において、洗浄操作後も阻害能を維持します。
  • 細胞質型GST(GSTα、GSTμ、GSTπ、GSTω、GSTθ、GSTζ)に反応することが分かっています*
  • 質量分析により、GS-5NBSF付加体として内在性のGST(GSTP1)に共有結合することが確認されています1
  • 生細胞用GST活性測定試薬CellFluor™ GSTとの併用により、生細胞におけるGST阻害活性を定量的に評価できます。

:膜結合型GST(GSTκ、MGST、PTGESなど)に対する反応性は未検証です。


実験の注意点

CNBSFは化学的反応性が高く、DMEMなどの基礎培地中で培地成分との副反応生成物が認められます(DMEM中37℃条件下10分間で60%、30分間で約95%分解)。そのため、生細胞実験においてはHBSなどの無機塩類をベースとしたバッファーの使用を推奨しています。CNBSFはDMSOストック溶液として安定的に保管できますが、ワーキング溶液は添加直前に調製し、直ちに使用して下さい。HBS中であっても徐々にsulfonyl fluoride基の加水分解が認められ(HBS中37℃条件下30分で約50%、60分で約70%の加水分解)、薬効の低下につながります。培地中で使用する場合は、使用濃度を高めに設定(eg. 100 μM~1 mM)し、実験に合わせた条件の最適化をご検討下さい。

CNSBFの安定性

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CNSBFの安定性

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使用例

Index

細胞質型GSTサブファミリーメンバーに対する交差性

細胞質型GSTサブファミリーメンバーに対する交差性

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アッセイバッファー(50 mM sodium phosphate (pH 7.4), 150 mM NaCl)にGSH 10 μM、およびヒトまたはマウスの組換細胞質型GSTメンバーを添加した。事前にCNBSF 100 μMを30分間処理し、次にGST活性測定プローブCellFluor™ GST(終濃度5 μM)を添加し、その30分後に蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。各GST酵素におけるCNBSF非存在下のCellFluor™ GST由来の蛍光強度を100%としてCNBSFの効果を相対的な蛍光強度により定量した。

細胞質型のいずれのGSTに対してもCNBSFは強い阻害活性を示した。

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in vitroにおけるCNBSFの不可逆性の評価

細胞質型GSTサブファミリーメンバーに対する交差性

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アッセイバッファー(PBS)にヒト組換GSTM1、GSTA1、GSH 100 μM, またはCNBSF 100 μMを添加し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベートした試料を2分割し、片方(Dialysis(+))は微量透析キットによりPBSで30分間透析後、透析有無での液量を補正した。それぞれさらにGSH 100 μM、CellFluor™ GST 1 μMを加えて30分間インキュベートし、蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。

GSTM1、GSTA1ともにCNBSFの添加後に透析を行っても活性の回復は見られらなかった。

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生細胞におけるCNBSFの不可逆的阻害活性の評価

生細胞におけるCNBSFの不可逆的阻害活性の評価

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CHO細胞を1×104 cells/wellで96 wellプレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地で20時間培養した。培地をHBSに置換し、100 μM CNBSFを3種類のプロトコールで処理した後に、2 μM CellFluor™ GSTを添加して1時間反応させ蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。

いずれのプロトコールにおいても蛍光強度の減衰が維持されたことから、CNBSFは生細胞内で不可逆的にGSTを阻害していることがわかる。

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生細胞における濃度依存的な阻害活性の評価

生細胞における濃度依存的な阻害活性の評価

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786-OおよびCHO細胞を1×104 cells/wellで96 wellプレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地で20時間培養した。培地をHBSに置換し、1~1,000 μM CNBSFを1時間処理した後に、それぞれに2 μM CellFluor™ GSTを添加して1時間反応し、蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。

いずれの細胞株においても4~5 μM程度のIC50値を示した。

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生細胞におけるCNBSFとEthacrynic acidの阻害活性比較

生細胞におけるCNBSFとEthacrynic acidの阻害活性比較

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786-OおよびCHO細胞を1×104 cells/wellで96 wellプレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地で20時間培養後、培地をHBSに置換し、20 μM CNBSFまたは20 μMエタクリン酸(EA、Ethacrynic acid)存在下で1時間培養した。次にCellFluor™ GST (終濃度2 μM)を添加し、1時間反応させた後に蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。

いずれの細胞においても20 μM濃度においてはエタクリン酸に比べてCNBSFの方が高いGST阻害活性を示した。

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生細胞におけるCNBSFの阻害効果持続性の評価

生細胞におけるCNBSFとEthacrynic acidの阻害活性比較

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786-OおよびNeuro2a細胞を1×104 cells/wellで96 wellプレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地で20時間培養後、培地をフェノールレッド不含・FBS不含DMEM培地(以下DMEM(−)と略)に置換した。CNBSFを処理する際は、100 μM CNBSFを含むHBSに置換し、20分間培養後、再度DMEM(−)に戻して0、1、2、4、6時間培養(Lag-time)した。その後一斉にCellFluor™ GST(2 μM)を含むDMEM(−)に置換し、1時間培養した後に蛍光プレートリーダー(Ex 475±5 nm/ Em 525±10 nm)で蛍光強度を測定した。

786-Oは少なくとも6時間までGSTの抑制効果が持続することが確認された一方で、Neuro2a細胞では経時的なGST活性の回復傾向が観察され、CNBSF処理後においても迅速なGST発現量の上昇が示唆された。

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CNBSF処理による脂質過酸化反応代謝物の亢進

CNBSF処理による脂質過酸化反応代謝物の亢進

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CHO細胞を1×104 cells/wellで96 wellプレートに播種し、10%FBS含有DMEM培地で20時間培養後、100 μM CNBSFを含むHBSに置換し1時間前処理した。次に細胞をCNBSF不含のHBSで洗浄し、HBS中でH2O2(0.1 mMまたは0.5 mM)、一酸化窒素(NO)ドナー(SNAP; 0.1 mM)、またはラジカル開始剤(APS; 1 mM)を添加して20分間処理、またはCu2+(CuSO4; 1 mM)を添加し5分間処理した。それぞれの細胞を再びCNBSF不含のHBSで洗浄し、脂質過酸化反応の後期生成物であるアクロレインの検出試薬AcroleinRED(2 μM)またはネガティブコントロールとしてTAMRA(2 μM)を含むHBSを添加し、30分間反応した。細胞をHBSで3回洗浄し未反応のAcroleinREDまたはTAMRAを除去した後、蛍光プレートリーダー(Ex 540±5 nm/ Em 580±10 nm)で蛍光強度を測定した。

各薬剤処理のみでもCHO細胞におけるアクロレイン量の増加が観察されたが、CNBSFでGST活性をあらかじめ抑制することでより顕著なアクロレイン産生量の増加が観察された。

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原著論文

  1. Shishido, Y., et al., "A Covalent Inhibitor for Glutathione S-Transferase Pi (GSTP1-1) in Human Cells." ChemBioChem, 20(7)、900~905 (2019). [PMID:30548113]

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CNBSF <Irreversible GST Inhibitor>
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説明文
Glutathione S-transferase(GST)に対する不可逆的な阻害物質。既知のGST阻害物質として汎用されるethacrynic acidと比べ,高い阻害活性を示し,不可逆的なため,長期的なGSTの不活性化が可能。
CAS No:3829-23-0
別名:2-chloro-5-nitrobenzensulfonyl fluoride
法規制等
保存条件 -20℃ 法規備考
掲載カタログ ニュース2022年11月15日号 p.21

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CNBSF <Irreversible GST Inhibitor>

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説明文 Glutathione S-transferase(GST)に対する不可逆的な阻害物質。既知のGST阻害物質として汎用されるethacrynic acidと比べ,高い阻害活性を示し,不可逆的なため,長期的なGSTの不活性化が可能。
CAS No:3829-23-0
別名:2-chloro-5-nitrobenzensulfonyl fluoride
法規制等
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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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