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世界初のヒト由来バイオマテリアル(Humabiologics社)

掲載日情報:2022/03/15 現在Webページ番号:65953

Frontiers

Vol.80 世界初のヒト由来バイオマテリアル

Humabiologics 社 は、ヒト組織から抽出された細胞外基質を提供するアメリカのメーカーです。
今回は、創業者で CEO の Mohammad Albanna博士にお話を伺いました。

Mohammad Albanna

Mohammad Albanna PhD., CEO & Founder

細胞外マトリックス製品の現状について

再生医療の分野では、天然高分子、合成高分子、あるいはそれら両方を組み合わせたハイブリッドなど、さまざまなバイオマテリアルが利用されています。合成高分子は強度が高いなど機械特性が優れていますが、一方で天然高分子は生体親和性など優れた生物学的特性があり、ヒト組織の作製によく使用されています。コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサンなどの天然高分子は、再生医療への応用について長年にわたり盛んに研究されてきました。これらの天然高分子は、優れた生物学的特性を維持しながら、再生医療用途にさらに適するように力学的特性を調整することも可能です。皮膚、骨、筋肉、臓器など人間の組織のほとんどはコラーゲンでできていることから、コラーゲンとその派生物であるゼラチンは、研究者にとって特に興味深い存在とされてきました。

近年、この分野は驚異的なスピードで進歩しており、組織作製には単一タンパク質ではなく、より複雑な材料が必要であると認識されるようになってきています。このため多くの研究者は、エラスチン、グリコサミノグリカン、Ⅰ型以外のコラーゲンなどの非常に多くの種類のタンパク質や成長因子からなる細胞外マトリックス(ECM)を用いるようになりました。

ところが、ヒトの治療法開発の目的で利用できるバイオマテリアルの多くは、ラット、ウシ、ブタといった動物由来のものです。これらのバイオマテリアルは、ヒト由来のものと比較すると類似点が多いものの、相違点もあり、ヒトの治療法の開発においては、その相違点が細胞反応や組織のリモデリングに大きな影響を与えることが分かっています。ヒトと動物では食事、遺伝子、生理、血行動態(血行力学)などの生物学的なパラメータが異なるため、これらに起因する相違点を完全になくすことはできません。
研究者が今後ラボでミニ臓器を作ったり、バイオプリンティングを使ってヒト組織を作ったりするためには、より生理的かつ臨床的にヒトに適したバイオマテリアルの開発が急務となります。

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Humabiologics 社設立のきっかけ

今から10年以上前のことです。当時、ひどい火傷を負った患者のために、ヒトの皮膚をバイオプリンティングで作る研究をしていたのですが、材料として必要なヒト由来のバイオマテリアルがありませんでした。つまり、移植できるようなヒトの皮膚を作るためには、次善の策として、ラットの尻尾から採取したコラーゲンなど、最適とはいえない生体材料を使わざるを得ませんでした。

その後の10年間、私はこの再生医療分野のさまざまな進歩を目の当たりにしてきましたが、高品質で安定的に供給でき、さらに手頃な価格で入手できるヒト由来のバイオマテリアルが不足している状況は、解消の兆しが見えませんでした。
その後、私は組織バンク業界で働き始めました。ドナーの意思に敬意を示し、提供されたヒトの組織や臓器を使って一人でも多くの人を助けることを目標としていました。しかし、組織自体には何も問題がないのに、厳しいガイドライン(組織の大きさが合わないなどの理由)により、移植に使われず廃棄されてしまう場合がありました。
これらの経験を通して、研究者がヒト由来のバイオマテリアル製品を必要としていること、そして目下そのための選択肢がないという問題を実感したことが、Humabiologics 社を立ち上げる原動力となりました。

Humabiologics

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世界初のヒト由来バイオマテリアルを提供

Humabiologics 社は、ドナーから提供された組織と研究者の間の橋渡しをするために設立されました。
私たちは提供を受けたものの移植に使用できなかった臓器・組織から、ヒトバイオマテリアルを抽出して研究者に提供しています。世界初のヒトゼラチンや、再生医療用ヒト皮膚由来コラーゲンの凍結乾燥品を販売しています。
製品の原料となる組織は、American Association of Tissue Banks(AATB)認定済み、米国食品医薬品局(FDA)登録済みで、FDA の21 CFR 1271に準拠した組織バンクである Organ Procurement Organizations(OPO)から厳密に調達しています。

製品ラインナップ

lineup

応用例

  • 様々な細胞を増殖させるためのコーティング剤として
  • 創薬研究やスクリーニングのためのオルガノイド開発に
  • ヒトの組織や臓器をプリントするためのバイオインクとして(メタクリル化ゼラチンのみ)
translational-research

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製品化までの苦労

「世界中の研究者に高品質で低価格のヒト由来バイオマテリアルを提供する」ことが、創業当初からの大きな目標でした。小規模であればこれらは特に問題にはなりませんが、製品化にあたって製造工程の規模を拡大してからは、そう簡単にはいきませんでした。 品質を維持しつつ、手頃な価格を実現するために試行錯誤を続け、最終的に成功を収めることができました。
もう一つ、品質に関して問題になったのは、提供を受けた組織の由来の相違によるロット間のばらつきです。これらのばらつきを最小限に抑えるため、ドナーの部位、性別、年齢などを絞り込んで加工したり、プロセッシング時の基準を厳密にしたりすることで、ロットに関わらず同じ品質の製品をご提供できるようになりました。

Humabiologics
Humabiologics

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今後の展望

世界中の研究者が、救命治療や生活の質向上のための研究に私たちの製品を活用しています。私たちが当初予想もしていなかったさまざまな研究分野で、私たちの製品が使用されているのを目の当たりにして、とても嬉しく、驚いています。イノベーションに限界はありません。研究分野は多岐にわたりますが、その中で個人的に素晴らしいと思っているのは、私たちの製品を用いてヒト組織モデルを作製すれば、薬剤スクリーニングや開発において実験動物の使用を減らせるということです。動物を使わない完全アニマルフリーのため、それ自体が人道的であるだけでなく、薬物毒性や副作用をより正確に試験するのにも、臨床的な観点から見てより適切であるといえます。新薬の開発にかかる時間とコストを削減し、患者様のもとに新薬を早く届けることに大きく貢献できると考えています。
ぜひ、このような研究アイデアが臨床に応用されていって欲しいと思います。

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日本の研究者に向けて

フナコシ(株)を通じて、日本の研究者の皆さまが私たちの製品を入手できるようになったことを嬉しく思います。ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥博士のiPS細胞に関する研究をはじめ、著名な日本人研究者による多くの研究は、世界中の研究者に刺激を与えています。
再生医療分野の研究者のために、より革新的な製品を提供できるよう、私たちも開発を続けていきます。

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ヒトドナー由来のコラーゲン/ECM/ゼラチン

Humabiologics

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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