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幹細胞(Stem Cell)特集 - iPS細胞、ES細胞の研究に

掲載日情報:2019/12/24 現在Webページ番号:5868

iPS細胞、ES細胞、幹細胞(Stem Cell)研究用製品、iPS細胞の作製(リプログラミング)、ES細胞 / iPS細胞多能性マーカー(Alkaline Phosphatase, Nanog, Oct4, TRA-1-60, SSEA-3)、リプログラミング化合物をご紹介しています。

幹細胞(Stem Cell)実験ナビゲーション

多能性幹細胞
体性幹細胞

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幹細胞(Stem Cell)、リプログラミング、iPS細胞とは

幹細胞(Stem Cell)

自分と同じ性質を持つ細胞を複製する能力(自己複製能, Self-renewal)および、別の性質を持つ複数の細胞へと分化することができる能力(多分化能)を併せ持つ細胞を幹細胞(Stem Cell)といいます。幹細胞には体性幹細胞(成体幹細胞、組織幹細胞), 胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell : ES細胞), 人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell: iPS細胞)などがあります。

リプログラミング(Reprogramming)

分化した細胞のエピジェネティック修飾を初期化することをリプログラミングといいます。体細胞の初期化によるiPS細胞の作製もリプログラミングの一種で, ウイルスベクター, プラスミドベクター, タンパク質, mRNA, miRNAなどにより特定因子を体細胞に導入することで体細胞のリプログラミングを行います。

iPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell, 人工多能性幹細胞)

体細胞に数種類の因子を導入・培養することにより樹立されたES細胞様の多能性及び増殖能を持つ細胞です。初期胚が必要なES細胞とは異なり、すべての体細胞から作製することができるため倫理的な問題や免疫拒絶反応の恐れがなく、再生医療や創薬分野において盛んに研究が行われています。

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ES細胞、iPS細胞、mirPS 細胞の特長

ヒトES細胞 ヒトiPS細胞 臍帯血 mirPS 細胞
(miRNAで作製した多能性細胞)
由来 成人 出生時のみ 成人
免疫適合性
リプログラミング効率 n/a 0.02% n/a 2 ~ 30%
作製方法 n/a レトロウイルス n/a エレクトロポレーション
腫瘍原性 可能性有 可能性有 n/a
細胞周期 遅(Morula)/
早(Blastocyst)
n/a
フィーダー細胞 - 不要
導入遺伝子数 - 3~4 因子 - 1因子
(マイクロRNA)


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リプログラミング(Reprogramming)効率比較

リプログラミング(Reprogramming)効率比較

リプログラミング(Reprogramming)効率比較


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分化転換(Transdifferentiation)

分化転換は、ある細胞型から他の細胞型へ幹細胞を経ずに直接変換することです。分化転換により、腫瘍形成のリスクがあるiPS細胞を経ずに、目的の細胞型を産生することができます。

分化転換実験の歴史

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mir-302 ファミリー

mir-302 ファミリー(mir-302a、b、c、d、および pre-micro RNA cluster)は増殖の遅いヒト ES 細胞で多く発現しており、細胞が分化および増殖すると速やかに減少します。最近、この mir-302 ファミリーを体細胞へ導入すると、多能性細胞へ再プログラミングされることが明らかとなりました。mir-302 ファミリーで再プログラミングされた多能性細胞(以下、mirPS 細胞)は、以下のような特長を有します。

  • mirPS 細胞は、ヒト ES 細胞マーカーである Oct4、Sox2、Nanog などを発現している。
  • mirPS 細胞はヒト ES 細胞と同様、ゲノムが高度に脱メチル化されている。
  • mirPS 細胞はマイクロアレイ解析において、hES H1およびH9細胞の発現パターンに 86~92 %以上の類似性を示す。
  • mirPS 細胞は多様な組織への分化能を有する。

これらのことから、mir-302 ファミリーは、Oct4、Sox2、Nanog に代わり、シンプルかつ効率的な多能性細胞発現マーカーであるといえます。

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ES細胞 / iPS細胞の多能性マーカー

Alkaline Phosphatase (AP)

Alkaline Phosphatase (AP)は、ES細胞、EG細胞、iPS細胞を含むすべての多能性幹細胞で高発現しています。他の多能性マーカーは動物種や由来により発現パターンが異なりますが、Alkaline Phosphatase (AP)は多能性細胞に共通したマーカーとして広く用いられています。

Nanog

Nanogは内部細胞塊やES細胞の増殖、自己複製に関与する転写調節因子です。ES細胞の胚体外内胚葉や栄養外胚葉への分化を抑制し、多能性維持に働いています。また、NanogはSMAD1に作用し、SMAD1の転写を活性化するコアクチベーターの結合を阻害することにより、BMPシグナルによるES細胞の中胚葉分化を阻止しているとされています。

Oct4

Oct4はPOUドメインを有する転写因子で、初期胚発生やES細胞の多能性維持に重要な役割を果たしています。Oct4の下方制御により、ES細胞の分化と同時に原腸形成が起こることなどから、Oct4は多能性幹細胞や生殖前駆細胞の運命決定に関与していると考えられています。また、多能性マーカーとしてだけでなく、生殖細胞の癌化に対するマーカーとしても用いられています。

TRA-1-60

抗TRA-1-60抗体は、ヒトEC細胞、EG細胞、ES細胞、iPS細胞の表面に発現する抗原を認識します。ヒト多能性細胞のマーカーとして用いられています。

SSEA-3

SSEA-3(stage specific embryonic antigen 3)は細胞表面に局在するスフィンゴ糖脂質の一種で、多能性/胚性マーカーとして用いられています。ヒトEC細胞およびES細胞ではSSEA-3とSSEA-4が発現しており、分化とともにその発現は低下し、代わりにSSEA-1の発現が上昇します。

多能性マーカーの検出例

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リプログラミング化合物

ACTH 1-24ペプチド

副腎皮質刺激ホルモンのフラグメント(ACTH)1-24は、マウスES細胞の生存および増殖を促進し、単一割球からのマウスES細胞への誘導を促進することが知られています。

A83-01

ヒトおよびラットのiPS細胞作製時にマウスES細胞様自己再生状態に導くために用いられます。ALK5、ALK4およびALK7の選択的阻害物質で、ALK1、2、3および6にもわずかに阻害作用を示します。また、Smad2のリン酸化を阻害することでTGF-β誘導性上皮間葉移行を阻害します。ヒトのES細胞またはiPS細胞から内皮細胞への分化誘導実験や、内皮細胞の増殖促進に適用できます。

CHIR99021

GSK3β(Glycogen synthase kinase 3β)に対する最も選択的な阻害物質です。MEK / MAPK阻害物質であるPD184352、およびFGFレセプター阻害物質であるSU5402と共に用いることで、マウスES細胞を長期間維持できます。ヒトのES細胞またはiPS細胞から心血管幹細胞への分化誘導実験や、初代培養細胞の増殖促進に適用できます。また、Hh-Ag1.5(Hh経路アゴニスト)およびStemRegenin1(造血幹細胞増殖促進物質)との共処理により、正常細胞およびがん幹細胞の自己再生を促進します。

DAPT

γ-セクレターゼの阻害物質で、γ-セクレターゼの基質であるNotchも間接的に阻害します。Notch経路は、神経系および膵臓の発達に関与しているため、DAPTは、ES細胞の分化研究において、Notchの活性の調節に有用であると考えられています。

LDN193189

非常に強力な骨形成タンパク質(BMP)の阻害物質です。Ⅰ型BMPレセプターであるALK2およびALK3を阻害することで、Smad1、Smad5、Smad8のリン酸化を防ぎます。BMPシグナル伝達は、発達パターンニングを調整し、成熟した生物において重要な生理的役割を担うことから、LDN193189は、マウスモデルにおいて、異所性骨形成を低減するために使用されます。

PD0325901

MEK / MAPKKの選択的阻害物質です。Cl-1040よりも活性および可溶性が高く、また様々なヒト腫瘍異種移植片で抗腫瘍活性を示すことが明らかとなっています。GSK-3β阻害物質であるCHIR99021と共に使用することで、細胞分化を抑制し、ES細胞の自己複製能を維持します。

SB431542

選択的かつ強力なアクチビン受容体様キナーゼ(ALK:Ⅰ型TGFβレセプター)の阻害物質です。特にALK4、ALK5、ALK7を強力に阻害し、ALK2、ALK3、ALK6のような骨形成タンパク質(BMP)を認識する他のALKファミリーには影響を与えません。また、ERK、JNK、p38 MAPキナーゼ経路またはそのシグナル伝達の構成要素に対しても影響を与えません。SB431542は、特にES / iPS細胞におけるSmadシグナル伝達の阻害や再生を抑制し、分化を促進します。MEK阻害物質であるPD0325901と同時に使用することで、リプログラミングの効率が向上します。

SU5402

線維芽細胞増殖因子レセプター(FGFR)に特異的なのチロシンキナーゼ阻害物質です。多発性骨髄腫の研究では、in vitroにおいてFGFR3のリン酸化を阻害することが示唆されています。また、血管内皮細胞増殖因子レセプター(VEGFR)や血小板由来成長因子レセプター(PDGFR)の強力な阻害物質でもあります。SU5402は、CHIR99021およびPD325901と組み合わせて使用することで、ES細胞の多能性の維持に非常に効率的である可能性が示唆されています。

Thiazovivin

トリプシン処理に対するヒトES細胞の生存率を顕著に改善させます。TGF-βレセプターおよびMEK経路の阻害物質と共に使用することで、リプログラミング効率を200倍以上に向上させます。iPS細胞の継代および播種における生存率の向上や、凍結融解や、酵素を用いた初代培養細胞の樹立における細胞の保護、および生存率・増殖効率の改善作用があります。また、クローン細胞(組織由来の幹細胞および前駆細胞なども含む)をフローサイトメトリーや連続希釈培養する際に、生存率を改善させる作用があります。

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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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