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レクチンの種類と分類
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レクチンの種類と分類
レクチンの種類と分類
掲載日情報:2025/07/23 現在Webページ番号:72528
追加しました。
Vector Laboratories社のサイエンスブログ(SpeakEasy Science Blog)からレクチンに関するブログをご紹介します。
※ Vector Laboratories社のレクチンに関する他のブログについては、サイエンスブログ「レクチン」からご覧下さい。
※ Vector Laboratories社のレクチン製品は標識・非標識レクチンをご覧下さい。
by Shuhui Chen, PhD

糖鎖は、細胞内取り込みから細胞認識にいたる、数多くの生物学的プロセスで鍵を握る存在ですが、糖鎖機能は他の高分子との相互作用が必要です。特に、細胞表面の糖鎖は、抗体やレクチンなどの糖結合タンパク質の認識により、一連の細胞プロセスを仲介します。糖鎖認識の作用機序は未だ完全に解明されていませんが、これまで得られた知見により、抗体やレクチンなどを用いた糖鎖の単離および可視化が可能となり、理解が深まっています。
レクチンの研究は、赤血球を凝集するタンパク質であるヘマグルチニンの作用機序を調べる免疫血液学が出発点です。ヒマの種子から抽出されたヘマグルチニンは、血液型特異的に赤血球凝集を示すことがわかりました1,2。そして、1950年代にモーガンとワトキンスによって、ラテン語の「選ぶ」を意味する「legere」に由来する「レクチン」と名付けられました3。
現在、レクチンは糖鎖関連の幅広い生物活性に関与していることが示されています。また、生物自身の表面糖鎖に結合する内在性レクチンが発見され、レクチンは植物界だけでなく、動物界を含む他の生物界にも存在することが明らかになりました。
レクチンの種類
レクチンは構造および結合する糖鎖のタイプに基づいて、分類されます。分類方法は多岐にわたりますが、レクチンはさまざまな生物に存在するため、その起源となる種に基づいた分類が最も一般的です。異なる界に属するレクチンは、結合特性や結合条件だけでなく、応用される分野も異なります。
藻類レクチン
藻類レクチンは、抗がん作用と抗ウイルス作用を示すことが発見されて以来、バイオメディカル分野におけるがん研究およびHIV研究で広く利用されています4。多くのレクチンは結合に二価陽イオンが必要ですが、藻類レクチンは必要ありません。さらに、単糖ではなく糖タンパク質に対して親和性を示します。
真菌レクチン
真菌レクチンは、真菌の成長と発達、および植物との共生関係に関与しています5。このプロセスは菌根形成と呼ばれ、真菌が植物と資源を交換する仕組みであり、真菌レクチンによる植物の糖鎖認識に関連しています。真菌レクチンは主にキノコに存在しますが、微小真菌、酵母、および菌糸体にも少量含まれています6。
バクテリアレクチン
バクテリアレクチンは、表面糖鎖の末端または内部オリゴ糖鎖に結合することができます。ブログ記事「糖鎖の世界へのいざない」で説明したように、細菌は宿主の表面糖鎖から侵入します。バクテリアレクチンは、宿主の糖鎖認識と細胞付着に寄与し7、病原性における相互作用以外にも、共生において重要な役割を果たします8。
植物レクチン
植物レクチンは、植物の成長だけでなく、生態系との相互作用にも寄与しています。主に、窒素固定細菌との共生関係を確立し、病原微生物から植物を保護する役割を担っています9。また、自然界に豊富に存在し、単離が容易であることから、バイオメディカル分野では特に注目されています。特に重要な点は、特定の糖鎖配列に可逆的に結合する非触媒領域の発見です。レクチンに関する研究の大部分は植物レクチンに焦点を当てており、約500種類以上が単離されています10。
動物レクチン
動物レクチンは、細胞表面に存在する可溶性複合糖質に結合し、シグナル伝達経路、細胞間接着、血中のタンパク質濃度の調節、病原体に対する免疫防御など、多様な機能を担っています9。特定の必須アミノ酸配列を有する糖鎖認識ドメイン(CRD)で構成され、結合には二価陽イオンが必要です。
糖鎖結合ドメインに基づいた動物レクチンの分類
動物レクチンのCRD配列は115~130のアミノ酸残基を含み12、糖鎖結合領域に多様な構造を有します。これは、多くの糖鎖を認識し、生理機能を担うため、理にかなった特徴です。結晶化研究から、CRD配列の同定、CRD配列モチーフおよび構造的特性の類似性に基づいて、4つの主要なタイプ(C型、P型、S型、I型)に分類されましたが、M型、L型、キチナーゼ様、F型レクチンなどの新たなクラスが発見されています。
C型レクチン
C型レクチンは、Ca2+依存的に糖鎖を認識する動物由来のレクチンです。Ca2+依存的にアミノ酸残基を調整し、糖鎖のヒドロキシ基に対し高い親和性を持ちます。マクロファージ、樹状細胞、内皮細胞に存在し、病原体認識および除去、サイトカイン産生の誘発、寄生虫に対する免疫調節プロセスなど、多様な免疫応答に関与しています。
P型レクチン
P型レクチンは、マンノース-6-リン酸に対して高い特異性を示します。一部のP型レクチンは、カチオン非依存性結合部位を有する単一の細胞外ドメインや、2つのCa2+依存性結合部位を有する大きな細胞外ドメインを持ちます。これらの細胞内膜貫通タンパク質は、ゴルジ体から他の小器官への酵素(リソソーム酵素など)の輸送を促進する役割を担います。
S型レクチン
S型レクチン(別名ガレクチン)は、複数の糖鎖結合部位とシステイン残基を有する相同のS型糖鎖認識ドメイン(S-CRD)を特徴とし、β-ガラクトシドリガンドに対する特異性を示します。また、細胞外マトリックス中の糖鎖と相互作用することで細胞増殖、接着および遊走に重要な役割を果たしています。
I型レクチン
I型レクチンは、2つのβシート構造を含む免疫グロブリン(Ig)様ドメインと共通のモチーフを共有しています。これらのβシート構造は、それぞれ70~110のアミノ酸から構成され、複数の水素結合とジスルフィド結合で連結されています。I型レクチンの大多数はシアル酸と結合し、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(Siglec、シグレック)と呼ばれています。これらのシアル酸認識部位は、NK細胞、B細胞、T細胞に存在するシアル酸含有リガンドと結合します。そのため、免疫細胞のリクルートに大きく寄与しています。
植物レクチンの分類
植物レクチンはその広範な分布と抽出の容易さから、最もよく研究されているレクチンです。これらの研究に基づいて、3つの異なる方法で分類されます。1つ目は、結合部位の数に基づいた構造的な分類です。
- 1つの糖鎖結合ドメインを有するメロレクチン(Merolectin)
- 2つ以上の糖鎖結合ドメインを有するホロレクチン(Hololectin)
- 2つの非同一(non-identical)ドメインを有するスーパーレクチン(Superlectin)
- 酵素ドメインと糖鎖結合ドメインを有するキメロレクチン(Chimerolectin)
2つ目は、CRDの結晶構造に基づいた分類です。
- アマランサス科レクチン
- キチン結合性レクチン
- ウリ科のフロームレクチン
- マメ科レクチン
- 単子葉植物マンノース結合レクチン
- 2型リボソーム不活性化レクチン
3つ目は、マハル博士らの研究に基づいた分類です。マハル博士らは、植物レクチン特異性をより正確にプロファイリングするための新たな解析手法を提案し、機械学習アルゴリズムと糖鎖マイクロアレイデータを用いて、57種類の植物レクチンの結合特異性を解析しました13。
- 複合型N-結合型糖鎖に結合するレクチン
- Core O-結合型糖鎖レクチン
- マンノース結合型レクチン
- フコース結合型レクチン
- シアル酸および硫酸結合型レクチン
- 末端GalとLacNAc結合型レクチン
- 末端GlcNAcおよびキチン結合型レクチン
補足として、各レクチンは特定の糖鎖エピトープに対して優先的に結合することや、糖鎖残基の置換および付加でその特異性が変化します。例えば、Phaselus Vulgaris-L(PHA-L)は、β1,6分岐のN-糖鎖に特異性を示す複合型N-結合型糖鎖に結合するレクチンですが、α2-6結合シアリル化によりこの特異性が低下します。
さらに、一部の植物レクチンには複数の結合モチーフが含まれることがあります。例えば、シアル酸結合型Maackia Amurensis-Ⅱ(MAL-Ⅱ)は、O-糖鎖のα2,3-シアル化型Galβ1-3GalNAcを優先的に結合しますが、3'O-硫酸化のGalエピトープも認識します。
ブログ記事「レクチンと糖鎖が特異的に結合することの重要性」では、さまざまな植物レクチン結合特性についてまとめています。これらの植物レクチンの分類は、植物レクチンを購入する際の適切な判断材料であり、糖鎖マイクロアレイ研究を実施する上で役立ちます。例えば、ハーバード大学にあるNational Center for Functional Glycomics(NCFG)は、糖鎖特異性に基づいたマイクロアレイリソースを提供しています。
レクチンの分類および機能に関する情報
種を問わず、レクチンは糖鎖と密接に関係し、多様な生物学的現象を引き起こし、生命維持に不可欠な役割を果たしています。その役割は、細胞の成長および発達から、細胞接着や遊走まで多岐にわたります。さらに、病原体の細胞表面の糖鎖を認識し、免疫反応を引き起こす能力も持っています。一方、特定のレクチンの種類(特に植物レクチン)は、糖鎖の生物学的役割を解明するための有用なツールとして活用されています。
レクチンガイドのご案内
レクチンの歴史、レクチンアッセイの方法、原理などについては、以下のレクチンガイド(Lectin Application and Resource Guide)もあわせてご参照下さい。
参考文献
- Renkonen, K. O., Annales Medicinae Experimentalis et Biologiae Fenniae (1948).
- Watkins, W. M., et al., Nature, 169(4307), 825~826(1952). [PMID:14941057]
- Boyd, W. C., et al., Science, 119(3091), 419(1954). [PMID:17842730]
- Singh, R. S., et al., Crit. Rev. Microbiol., 41(1), 77~88(2013). [PMID:23855360]
- Varrot, A., et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 23(5), 678~685(2013). [PMID:23920351]
- Singh, R. S., et al., Crit. Rev. Biotechnol., 30(2), 99~126(2010). [PMID:20105049]
- Hooper, L. V., and Gordon, J. I., Glycobiology, 11(2), 1R~10R(2001). [PMID:11287395]
- Nizet, V., et al., Essentials of Glycobiology [Internet] third ed, (2017). [PMID:28876816]
- Diaz, C, L., Nature, 338, 579~581(1989).
- Van, Damme, E. J. M., et al., John Wiley & Sons.,(1998).
- Gabius, H, J., Eur. J. Biochem., 243(3), 543~576(1997). [PMID:9057819]
- Kilpatrick, D, C., Biochim. Biophys. Acta., 1572(2-3), 187~197(2002). [PMID:12223269]
- Bojar, D., et al., ACS Chem. Biol., 17(11), 2993~3012(2022). [PMID:35084820]
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