腸内細菌叢による胆汁酸代謝関連研究に有用です！ 胆汁酸－腸内細菌相関／Bile Acid-Gut Microbiome Axis

微生物叢は、体内の栄養素や生体異物の代謝において主要な役割を果たし、これらの化学物質の薬効薬理および毒性を変化させることができます。この一例として、腸内細菌叢が肝臓で作られた一次胆汁酸をさまざまな二次胆汁酸に変換するしくみがあります。二次胆汁酸は肝臓に戻ってさらなる修飾を受けたり、老廃物として排泄されたりします。ヒトおよびマウスの肝臓で合成される一次胆汁酸の半分はコール酸、残り半分をケノデオキシコール酸で占めていますが、マウスでは、ケノデオキシコール酸はムリコール酸に変換されます。肝臓では、グリシンやタウリンは胆汁酸と抱合し、宿主細胞への再侵入を防ぎ、界面活性作用を高めます。胆汁酸が大腸に移行すると、細菌は胆汁酸を抱合し、さらに代謝物を生成されます。これらの二次胆汁酸は、一次胆汁酸とは異なる化学的およびシグナル伝達特性を持ちます。疎水性二次胆汁酸であるデオキシコール酸とリトコール酸は7α-脱ヒドロキシルによって生成され、正常なヒトとげっ歯類の糞便中に最も豊富に存在します。

胆汁酸は、細菌にエネルギーを供給し、微生物叢集団を調節し、脂肪および脂溶性ビタミンの吸収を助け、胆汁酸レセプター（FXRおよびTGR5）にアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し、胆汁酸合成およびエネルギー代謝調節に関連するシグナル伝達経路に影響を及ぼします。胆汁酸プールの変化は、胆石や肝臓および結腸がんなど特定の慢性疾患との関連が報告されています。ウルソデオキシコール酸は二次胆汁酸であり、腸でのコレステロールの吸収と胆汁への分泌を阻害するリトコール酸の代謝産物です。ウルソデオキシコール酸は、胆汁うっ滞性肝疾患の管理と治療に一般的に使用されています¹。肥満外科手術は腸内の胆汁酸を減少させる一方で、循環胆汁酸濃度を上昇させることが示されています。微生物叢のシグナル伝達を介して産生される一次胆汁酸であるCholic Acid 7-sulfateは、肥満外科手術の代替や、肥満および2型糖尿病の治療薬として研究が進められています²。

図. 胆汁酸－腸内細菌相関の概要

参考文献

1. Guarino, M. P., et al., "Ursodeoxycholic acid therapy in gallbladder disease, a story not yet completed."World. J. Gastroenterol., 19(31), 5029～5034(2013). [PMID:23964136]
2. Ridlon, J. M., "Bariatric surgery stirs symbionts to counteract diabesity by CA(7)Sting a liver-generated bile acid into the mix"Cell. Host. Microbe., 29(3), 320～322(2021). [PMID:33705701]