HOME > 試薬 > 生化学一般試薬/その他 > 生化学アッセイキット > 代謝関連アッセイキット > NAD分子をワンステップで抽出・測定
NAD分子をワンステップで抽出・測定
掲載日情報:2025/06/15 現在Webページ番号:71150
追加しました。

Vol. 103 NAD分子をワンステップで抽出・測定
今回は、CEOのJari Narhi氏(右写真)にお話を伺いました。


NADMED社は、フィンランドの名門・ヘルシンキ大学の最先端のミトコンドリア研究から誕生したバイオテクノロジー企業です。同大学のAnu Suomalainen Wartiovaara教授の研究チームは、ミトコンドリア病の研究を通じて、体内のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を正確に測定することの重要性に気づきました。この課題を解決するため、チームの一員であるLiliya Euro博士(現・同社CSO)が研究を重ね、従来の手法よりも簡便かつ正確なNAD測定技術の開発に成功しました。その成果をもとに、2022年にNADMED社が設立されました。
NADとは
NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、ビタミンB3から作られる重要な補酵素で、エネルギー産生、細胞修復など、250以上の代謝プロセスに関与しています。NADにはNAD+、NADH、NADP+、NADPHの4つの分子種が存在し、それぞれが酸化還元のバランス維持、ミトコンドリア機能の調整、酸化ストレスからの保護などに役立っています。そのため、NADのバランスを保つことは、正常な代謝機能や全身の健康維持に欠かせません。

NAD研究の世界的な動向
近年、NADへの関心が高まっており、特にその代謝の調節機能、老化や寿命への影響、さらには神経変性疾患における役割が注目されています。現在では、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、心血管疾患などを対象に、NADの前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を用いた「NADを増やす治療法」の研究も進められています。
しかし、こうした治療法の研究が進む一方で、NADレベルを正確に測定することの重要性は、まだ十分に理解されていません。実際の研究では、NADの量が低すぎても高すぎても、さまざまな疾患との関連が見られることが明らかになっており、NAD濃度を生理的な範囲内で維持・最適化することの重要性が指摘されています。
そのためには、信頼性が高く標準化されたNADの測定技術が不可欠であり、NAD代謝の理解や治療法の最適化に向けた大きな鍵となります。
最近の研究では、NAD代謝の乱れがミトコンドリア疾患、代謝異常、神経変性疾患、心血管疾患、がんなど、多くの病気に関与していることが明らかになっています。
これまでのNAD測定の課題
これまで、全血試料からのNAD測定は困難でした。まず、NADの代謝物は非常に不安定であり、急速に分解されてしまいます。さらに、NADは血清/血漿といった液性成分にはほとんど含まれておらず、細胞成分を含む全血からの抽出が必要となります。
全血にはヘモグロビンやタンパク質が含まれており、これが質量分析などの従来の分析技術に干渉し、信頼性のある結果を得ることを難しくしていました。
質量分析を使えば高精度で測定できますが、測定できるのは酸化型NAD(NAD+)のみであり、測定数も少なくなります。しかも特殊な機器と複雑な前処理が必要となり、日常的な測定には限界があります。
全血から各NAD分子を測定
NADMED社は、これらの課題を解決するために、酵素サイクリング反応と比色検出に基づいた新しい測定法を開発しました。この方法は、代謝物をワンステップで抽出した後、代謝物の不安定性を回避するために、NAD+とNADHに対して環境の最適化を個別に行います。アッセイの呈色の強度はNADおよびグルタチオンの濃度に一致し、吸光度をスタンダードと比較することで代謝物レベルを判定します。
NADMEDの技術の大きな利点は、標準的な実験機器で実施できる点です。これにより、血中NAD測定がスケーラブルで実用的になり、研究や臨床現場での使用が可能になります。また、血液は採取が簡単で、組織検査より身体への負担も少ないため、血液試料から直接NADを測定できることは、研究室や臨床現場での大きなメリットとなります。NADMED社のキットは、たった200μlの血液があれば十分なため、通常の採血で簡単に対応できます。
質量分析法と同等の精度
NADMED社のキットは質量分析と同等の測定精度を有していることに加え、質量分析に比べて低コストかつ作業時間が短いといった多くの利点があります。
NADMED社製品と質量分析法によるヒト血液試料のNAD+濃度の比較
簡単・迅速なプロトコル
【NAD+and NADH Assay Kit(#RUO_001)の場合】
血液試料をキット付属のバッファーと混合、インキュベートしてNAD+とNADHを同時に抽出します。抽出物を2つに分割し、一方の代謝物を除去、もう一方を安定化してから、NAD+とNADHの両方の濃度を測定します。
※ 血清、血漿試料は測定できません。
※ 組織試料の測定はNAD+ & NADH Tissue/Cell Kit (#RUO_003)をご使用下さい。
今後の製品リリース予定
全血試料用の新しいNADP+/NADPH 測定キットの発売準備を進めています。今後は、酸化ストレスと代謝をより包括的に把握できるグルタチオンアッセイキットも開発中です。
追加しました。
製品情報は掲載時点のものですが、価格表内の価格については随時最新のものに更新されます。お問い合わせいただくタイミングにより製品情報・価格などは変更されている場合があります。
表示価格に、消費税等は含まれていません。一部価格が予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承下さい。