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ユーザーレビュー【広告】 化学合成ガイドRNAとCas9ヌクレアーゼを用いたSMARCA1遺伝子ノックアウト細胞の樹立

掲載日情報:2024/09/01 現在Webページ番号:70540

星薬科大学 先端生命科学研究所
エピゲノム創薬研究室 特任准教授 竹島 秀幸 先生

竹島特任准教授の写真

背景

 DNAメチル化異常(エピゲノム異常)は、突然変異と同様にがん抑制遺伝子を不活化することで発がんに深く関与しています。このDNAメチル化異常の大きな特徴の1つは、がんが発生するはるか以前のポリクローナルな正常組織においても非常に高レベルで蓄積していることです。正常組織におけるDNAメチル化異常の蓄積レベルは、がんが発生するリスクと相関することが知られています。このことから、正常組織において様々ながん抑制遺伝子のメチル化が蓄積することで、がんが発生しやすい状態(エピジェネティックな発がんの素地)が形成されていると考えられます(図1)。我々はこれまでに、このエピジェネティックな発がんの素地を形成する可能性のある遺伝子を多数同定してきました1, 2
 本稿では、我々がこれまでに見出している胃がんにおけるメチル化不活化遺伝子の1つであるSMARCA1を例に、その機能解明のためのノックアウト細胞作製について、Cas9タンパク質とデザイン済みの化学合成ガイドRNAを用いた際の高いノックアウト効率についてお示しします。

DNAメチル化異常による発がんの素地形成の模式図

図1:DNAメチル化異常による発がんの素地形成


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方法

 1×106個の胃がん細胞株に対して、ヒトSMARCA1遺伝子に対するEdit-R デザイン済み化学合成ガイドRNA(Edit-R CRISPR Synthetic sgRNA、Horizon Discovery社)(最終濃度:1.4 μM)、およびCas9ヌクレアーゼ(Cas9 nuclease protein NLS、Horizon Discovery社)(最終濃度:1.4 μM)をエレクトロポレーションにより導入しました。導入から48時間後以降に、限界希釈法によりシングルセルクローニングを行いました。得られたシングルセルクローンからDNAを抽出し、ガイドRNAの標的領域周辺をPCRにより増幅、サンガーシークエンスにより塩基配列を解析しました。SMARCA1が両アレルともにノックアウト(KO)されたクローンをKOクローンとしました。


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結果

 化学合成ガイドRNAとCas9ヌクレアーゼを導入した場合には、取得した60個のシングルセルクローンのうち6個(10%)で両アレルにおけるKOが認められました(図2)。ウェスタンブロット法によりタンパク質レベルでの発現を確認したところ、これらのKOクローンではSMARCA1タンパク質の完全な消失が認められました。一方、他社Cas9 mRNA製品を用いた場合は、両アレルKOクローンの取得率は~2%程度でした。

両アレルKOクローンの取得率のグラフ

図2:両アレルKOクローンの取得率

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製品を使用した感想

 SMARCA1遺伝子のKO細胞を樹立するために今回行ったCas9ヌクレアーゼとEdit-R デザイン済み化学合成ガイドRNAの導入により、非常に効率よく両アレルKOクローンを取得することができました。従来行っていた他社Cas9 mRNA製品を用いた場合と比べて格段に効率がよくなり、両アレルとも野生型の(KOできなかった)クローンがほとんどみられないことには大変驚きました。また、ガイドRNA配列がデザイン済みであることも大きな魅力だと感じています。今後もKO細胞株の樹立の際には是非両製品を使用していきたいと思っています。


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参考文献

  1. Sasaki, A., Takeshima, H., et al., “Severe induction of aberrant DNA methylation by nodular gastritis in adults.”
    J. Gastroenterol., 59(6), 442~456(2024).
  2. Takeshima, H., et al., “Frequent involvement of chromatin remodeler alterations in gastric field cancerization.”
    Cancer Lett., 357(1), 328~338(2015).

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製品記事

「化学合成ガイドRNAとCas9ヌクレアーゼを用いたSMARCA1遺伝子ノックアウト細胞の樹立」は、フナコシニュース2024年9月1日号 p.2に掲載しています。

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