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流涎やスワブによる唾液採取と測定に関する疑問が丸わかり! 唾液中のバイオマーカー測定に関するFAQ(Salimetrics社)

掲載日情報:2021/10/22 現在Webページ番号:70113

Salimetrics社のキット製品や受託測定サービス、唾液採取用器具は、唾液関連研究において非常に多くの文献に掲載されている実績があり、お客様の研究活動に貢献しています。ここでは、唾液中のバイオマーカー研究のエキスパートであるSalimetrics社に、世界中の研究者の皆様から寄せられた質問とその回答をご紹介いたします。

唾液中のバイオマーカー測定に関するFAQ
Salimetrics社唾液測定特集
唾液試料採取用器具

唾液採取編

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Q-1. どのような唾液採取法がお勧めでしょうか?

A-1. 流涎法(りゅうぜん法:よだれを集めて試料とするという方法で、具体的には自然に出てくる唾液を口内に溜めて試験に用いる方法)か、スワブ法(清潔な合成繊維製の綿棒などを口に含み唾液を採取する方法)での採取を推奨します。流涎による採取は最も一般的であり、測定対象を問いません。口内に溜まった唾液を、ポリプロピレン製のチューブ(Cryovial)へ直接回収する方法が一番お勧めです。乳幼児や高齢者などでご自身での流涎による採取が困難な場合には、スワブの使用をご検討下さい。スワブは、測定対象により適用可否があります。Salimetrics社のウェブサイトにおいて、情報が確認できます。スワブには多くの種類があるため、他社のスワブでは唾液試料の測定に不向きな場合があります。

Q-2. 流涎で採取した唾液試料をどのように保存すればよいでしょうか?

A-2. 唾液試料の品質維持には、適切な保管が重要です。一旦採取した唾液は、できるだけ早く冷蔵し、更に4時間以内に-20℃以下の冷凍庫へ移して下さい。コルチゾールなど一部の測定対象は室温保管でも安定性が高いものもありますが、貴重な試料を損なう危険性を減らすためには、なるべく早く冷凍することをお勧めします。-80℃以下での保管であれば、6か月以上は安定です。

Q-3. スワブから唾液試料を回収するのはどうすればよいですか?

A-3. 採取したスワブは冷凍して保存します。冷凍されたスワブを解凍後、以下のいずれかの方法で回収します。(1) 1,500×g で15分遠心する方法、(2) あるいは5 ccシリンジにスワブを入れて、プランジャーを押してCryovialへ絞り出して回収する方法があります。可能であれば、遠心法をお勧めします。直接指で絞り出すことはお勧めしません。何らかの事情でやむを得ない場合は手袋を着用して行って下さい。ただし、この方法では回収率が低くなります。

Q-4. スワブで採取した場合、試料の保管はどのようにすべきですか?

A-4. -20℃または-80℃での冷凍保管で6か月まで保存可能です。より長期間保存する場合は、A-3の回答のように、スワブから唾液を遠心操作などでCryovialへ回収することをお勧めします。その場合、採取直後に唾液を液体状態のままで回収してから凍結保存する方が、凍結融解の回数を最小化できるため、試料の保全の面でも有用です。

Q-5. 受託測定サービスを依頼する場合、試料の輸送時の温度管理はどのようにすべきでしょうか?

A-5. 試料の冷凍状態を保つために、発泡スチロールのクーラーボックスに入れ、十分な量のドライアイスを詰めて下さい。どうしてもドライアイスが調達できない場合は、断熱性の高い容器(保冷クーラーボックスなど)に、凍らせたアイスパックを3つ以上入れておくと、36時間までの輸送には耐えられるはずです。

Q-6. 唾液試料の分注法の注意点を教えて下さい。

A-6. 唾液は耳下腺や顎下腺などから分泌され、水分以外にも電解質、酵素などのタンパク質、ムコ多糖や糖タンパク質に富む粘液成分、および上皮細胞などを含む粘性のある不均一な液体です。このため、唾液試料をそのまま分注すると、分注された試料間で測定対象の濃度のばらつきが生ずる可能性が否定できません。これを抑えるためには、一度凍結・融解・遠心の手順を踏んでから分注する方が望ましいです。しかし、この方法だと少なくとも一回は凍結融解を行うことになるため、温度感受性の高い因子(CRPなど)の測定には不向きです。その場合は、最初の凍結前に分注することになりますが、前述のとおり分注された試料間で濃度の差が生じる可能性があることをご留意下さい。複数の測定用の唾液を連続して採取する方法は、濃度の誤差が更に大きくなる可能性があり、お勧めできません。

Q-7. スワブで採取した試料の場合、凍結保存前にスワブを遠心して回収する必要がありますか?

A-7. 必ずしも凍結前に唾液を分離・回収する必要はありません。しかし、6か月以上の長期保存が前提の場合は、事前に遠心等で唾液を回収しておくことをお勧めします。

Q-8. 唾液回収時の唾液の分泌速度はどうやって測定すればよいでしょうか?

A-8. 唾液の回収の所要時間と回収量を記録しておき、ml / minに換算します。スワブを用いた場合は、使用前と唾液採取後のスワブの重量とSwab Storage Tubeの重量を測定し、スワブを口に含ませていた時間を記録し、唾液の推定比重を1.0 g / mlとして概算します。 唾液がスワブに吸収できる容量限界を超えると結果が不正確になるので注意が必要です。小型スワブほど早く容量限界に達するので十分な予備検討を行って下さい。

Q-9. 測定結果に影響なく唾液分泌を刺激する方法はありますか?

A-9. 原則として、何らかの刺激法を用いることはお推めしません。無香料のパラフィンワックスを噛んだり、ビー玉状のものを口に含んで舌の周囲で転がすやり方も行われることがありますが、流速依存性のあるような試料の測定などには推奨いたしません。

Q-10. Salimetrics社のスワブは何でできていますか?

A-10. 食品グレードの素材を使用した不活性ポリマーで、生産も食品グレードの基準で行われていますが、組成の詳細は企業秘密です。Salimtrics社ではスワブを直接生産していませんが、ロット間差を最小にするための厳しいQC(品質保証)をパスしたものを入手し、長期に渡る研究データへの影響が生じないようにしています。

Q-11. 唾液採取前の12時間以内の飲酒を避けた方が良いのはなぜでしょうか?

A-11. エタノールは、唾液の分泌を刺激し、また呼吸によって体外へ排出されるため、飲酒後は唾液中のエタノール含有量が増加します。唾液中の高濃度のエタノールは、EIA / ELISAの際の抗体の結合能に影響を与えます。これが、12時間以内の過度の飲酒や二日酔いの状態での唾液の採取が望ましくない理由です。

Q-12. 唾液採取前に口をゆすいだ方がよいのはなぜですか?

A-12. 食べかすを除去し、唾液の粘性を下げるため、水で口を事前にゆすいでおくことをお勧めします。起床直後など食事をとっていない場合はこの限りではありません。口をゆすいだ後は、10分ほど経過してから唾液を採取します。これにより過度に唾液が薄まってしまうことが避けられます。

Q-13. DNAの検査用にSalimetrics社の唾液採取器具を使用できますか?

A-13. 流涎で回収した場合、ペレットにDNAの回収に十分な量の細胞が含まれています。Salimetrics社ではスワブからのDNA抽出用のプロトコルも開発しましたが、今のところ、こちらはSalimetrics社の受託サービスでのみご提供しています。詳細は、以下の参考文献をご参照下さい。

参考文献

  • Nemoda, Z., et al., "Assessing genetic polymorphisms using DNA extracted from cells present in saliva Samples.", BMC Medical Research Methodology, 11, 170 (2011). [PMID:22182470]

⇒ 実験デザイン編



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測定編

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Q-14. 凍結融解は結果にどのように影響しますか?

A-14. 大半の生体試料において、凍結融解は測定対象因子の分解などの悪影響を与えるため、一般的に凍結融解の繰り返しは推奨されません。実際の解決策としては、凍結前の分注が最もよく行われています。しかし、唾液の場合は粘性が高いために、分注した各試料間における測定対象の濃度にばらつきが出てしまうことがあります。対象の測定因子によっては、凍結融解への耐性が高い場合もあります。事前に十分な文献調査を行うことをお勧めします。A-6.の回答もご参照下さい。

Q-15. Salimetrics社のキットを唾液以外の試料にも使用できますか?

A-15. Salimetrics社における検証は実施していませんが、文献情報としてはユーザーの使用例(毛髪、組織、血清・血漿、気管洗浄液、涙液、汗、肺間質液など)が多数あります。コルチゾールの測定キットは、毛髪での測定に関して先駆的な役割を果たしており、プロトコルも作製されています。一般的に、適用外の使用に関してSalimetrics社からプロトコルをご提供することはできません。しかし、文献ではプロトコルの一部改変もいくつか報告されています。

Q-16. Salimetrics社のキットは、ヒト以外の動物種の試料の測定にも使用できますか?

A-16. 低分子のホルモン等は、分子種自体の種差はないので原理的には測定可能です。ただし、Salimetrics社ではヒトの唾液でしか検証を実施していないため、他の動物種での測定時のパフォーマンスを保証はできません。加えて、唾液中の基準値は種差が大きく、因子によっては唾液中に十分量が存在しない場合もあります。他の動物種の測定に使用する際は、予備検討を十分に実施することをお勧めします。タンパク質成分(IL-6, sIgA, CRPなど)の場合、ホモロジーが低い場合も多いために、ヒト以外への使用は避けて下さい。前述の、種差のないコルチゾールに関しては、ウマ、イヌ、ブタ、シカ、レイヨウ、アシカおよび魚類での使用例が文献で報告されています。

Q-17. 被験者から唾液を採取する際にどんな質問をすべきですか?

A-17. 研究の背景や目的によっても異なるので一般化できる質問票のようなものはありません。

Q-18. 有効期限を過ぎてしまったキットも使用できますか?

A-18. 有効期限切れのキットについては、測定結果を保証することができませんので、使用はお控え下さい。ただし、操作方法の教育を目的とした学生実習などには使用できる可能性はあります。

Q-19. 他社のキットや質量分析による測定結果と比較するにはどのようにすればよいですか?

A-19. 原理の異なる方法では、すべてが完璧に行われていたとしても、得られる結果は異なる可能性があります。Salimetrics社のキットに含まれるスタンダードは、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の標準品で校正されているため、他社の同等品とは類似した結果になるはずです。また、ウェル間の変動係数を最小化し、最高のパフォーマンスを維持するために、社内のQCにおいて厳格な基準を設けて各製造工程を管理しています。製造工程は、医療機器に関する品質マネージメントシステムであるISO 13485に準拠しています。

Q-20. 血清-唾液相関とは何ですか?

A-20. 血液を凝固させたときの上清である血清は、リポタンパク質を含めた身体中の水溶性成分から成りますが、唾液は口腔に開く耳下腺、顎下腺、舌下腺といった唾液腺から分泌される液体です。唾液が存在するのは局部ですが、含まれる成分や量が血清と類似・相関を示す場合があるため、「唾液検査」として有用視されています。血清中で見られる因子の血清-唾液相関については、文献で確認することができます(対象によってはSalimetlics社のウェブサイトにも情報があります)。sIgA(分泌型 IgA)やアミラーゼなどの主に局所的に産生されるものや、IL-6のように局所的な産生と血清からの移行が混在するものもあり、それらについては正確な血清-唾液相関を得ることは困難です。研究計画の段階において、十分な検討を行うことが重要です。

Q-21. 基質やコンジュゲートの添加前の状態で、プレート上で試料を保存できますか?

A-21. 良好な結果を確実に得るためには、できるだけ試料の分注操作を中断せずに速やかに行う必要があります。理想的には20分以内に完了させることが望ましいです。キットで推奨されているプロトコルからの逸脱は避けて下さい。

Q-22. キットのプロトコルを改変しても構いませんか?

A-22. キットは、付帯するプロトコルで性能が検証されています。検証済みのプロトコルに改変を加えることは、キット全体が適用外の使用となることを意味し、性能についての保証ができなくなることになります。どのような改変についても、キットの性能に何らかの影響が及ぼすかどうかは、ユーザー自身で十分な検証を行う必要があります。

Q-23. プレートリーダーの設定はどのようにすればよいですか?

A-23. Salimetrics社の社内では、Biotek社のプレートリーダーを使用しています。こちらの設定についての詳細は、当社テクニカルサポート試薬担当までお問い合わせ下さい。それ以外の他社の機種については、ご使用の装置のメーカー各社のテクニカルサポートへお問い合せ下さい。

Q-24. 二次フィルターによる補正(2波長測定)とは何ですか?

A-24. この補正は、各ウェルからの特定のシグナルに干渉する可能性のあるバックグラウンド(プレートのキズや気泡などのノイズ)を除去することを目的としています。Salimetrics社では、二次フィルター補正を推奨しますが、これは必須ではありません。副波長を測定した場合、主測定波長のデータから差分をとります。例えば450 nmを主波長、490 nmを副波長として測定した場合、450 nmの吸光度から490 nmの吸光度を差し引きます。

Q-25. 測定にはどのような器具が必要ですか?

A-25. ELISAで必要な基本的な器具のリストをご提供することができます。詳細は、当社テクニカルサポート試薬担当までお問い合わせ下さい。

Q-26. 現在所有しているプレートリーダーが使えますか?

A-26. 特定の機種でしか測定できないということはありません。96ウェルプレートに対応しており、可視光領域の波長が測定可能であれば使用できます。実際の測定波長と測定後の計算に関しては各キットの説明書もご参照下さい。ELISAの検量線の作製には、4パラメーターロジスティック(4PL)回帰モデルを推奨します。

Q-27. キットの妥当性確認として何を検証しなければなりませんか?

A-27. Salimetrics社では、キットの開発工程で妥当性についての十分な検証を行っています。ご自身で再検証をされたい場合は、米国FDAが提示しているガイドライン Bioanalytical Method Development and Validationに準拠して行うことを推奨いたします。

Q-28. デュプリケート(2点)での測定は必須ですか?

A-28. デュプリケートでの測定を推奨しますが、単回の測定でも可能です。大半の文献においてデュプリケートで求められた場合の変動係数(CV)が表記されているために、単回の測定では受理されにくいかもしれません。総検体数が膨大な場合などで単回での測定を望まれる場合では、全体の一割程度はデュプリケートでの測定を行って変動係数を確認することをお勧めします。

Q-29. 唾液の粘性が高く不均一な場合、どのようにすべきですか?

A-29. ピペットチップを用いて、形成した塊を崩して再度遠心を行うか、高速で長めに再度遠心します。唾液を再凍結することでムチンの沈殿を増やせますが、これは凍結融解を繰り返しても試験対象の測定結果に影響がないことを確認済みの場合にのみ実施できます。適切な分散のためには、ピペッティングをゆっくり行った方が効果的です。

Q-30. 測定の前日から唾液を解凍しても問題ありませんか?

A-30. 問題を生ずる場合があるため、測定の当日に解凍することをお勧めします。冷蔵庫を使用し、オーバーナイトで低温解凍しても試料の分解による測定値の下振れを引き起こす可能性があります。

Q-31. キットを測定の前夜から室温に戻しておいても良いですか?

A-31. お勧めできません。キットに含まれる試薬には室温で不安定なものもあるため、測定結果に影響を及ぼす可能性があります。

Q-32. 自分の研究に適切なアッセイを決める際に重視すべき性能や特長とは何ですか?

A-32. 唾液からのアッセイを行う際に最も重要なことは、高感度で特異性が高く、かつ再現性のある方法を選択することです。Salimetlics社のキットは、唾液試料で観察されるマトリックス効果(他の成分による測定干渉)を考慮しながら、唾液中の微量成分を検出するために特別に設計されています。またNIST(アメリカ国立標準技術研究所)の標準試料で校正されているため、同じ標準化方法を用いた他の方法で得られた結果とも類似した結果となります。各キットの詳細は、製品ごとのプロトコルをご確認下さい。

Q-33. NSBとB/B0を計算に用いることを推奨しているのはなぜですか?

A-33. NSB(非特異的結合)と補正波長の測定は、非特異的バックグラウンド信号を除去し、結果をより正確にするために役立ちます。どちらもアッセイのパフォーマンスや濃度値を得るためには必要ありませんが、より高品質な結果を得るためには両方の使用をお勧めします。

Q-34. 合成ホルモンも測定可能ですか?

A-34. 各キットの資料に記載されている交差性の情報を確認して下さい。Salimetrics社では、市販のすべての合成ホルモンの交差性についての情報を把握しているわけではありませんので、もし被験者が外因性のホルモン製剤などを服用している場合は、十分な予備検討を行うことが極めて重要です。

Q-35. キットコンポーネントを単品で再入手できますか?

A-35. キットはロット毎にQC(品質管理)を実施しているため、多くの場合は単品購入はできません。しかし一部には例外もありますので、詳細については当社テクニカルサポート試薬担当までお問合せ下さい。

Q-36. 測定をドラフト内で行う必要がありますか?

A-36. 通常はこのような排気装置は必要ではありません。しかし、感染症患者由来の検体などは安全性に配慮する必要があります。例えば、唾液を扱う際には、個人用防護具の着用をお勧めします。感染症患者由来検体と分かっている場合には、バイオセーフティフード内での操作が重要です。また、室温で強い匂いを発する試料を扱う場合も、ドラフト内での作業が好ましいことがあります。

Q-37. DNAの試験用に採取した唾液を他の測定に使用できますか?

A-37. Salimetlics社の唾液採取器具で採取した唾液は、他の測定にも使用可能です。
Salimetlics社のSalivaBio唾液採取器具を使用してDNA分析のために採取した唾液は、他の因子の測定にも使用可能です。例えば、検証済みの SalivaBioのスワブを用いた場合には、DNAは遠心操作後にスワブ素材から採取され、一方、保存チューブから取り出した唾液を他の測定に使用することができます。

Q-38. Oragene社の唾液採取器具でDNA試験用に採取した唾液を他の測定に使用できますか?

A-38. 残念ながら、Oragene社の唾液採取器具にはELISAの測定に影響を及ぼすDNA安定化試薬が含まれているため、使用には適していません。ELISAとDNAの両方の測定を行う場合、Salimetlics社の唾液採取器具の使用をお勧めします。

Q-39. 繰り返し測定することの必要性に関して、何らかの基準が設けられていますか?

A-39. 繰り返し測定を行った場合、実験間の最終濃度のCV(変動係数)が 15%を超える場合を、測定の一般的なカットオフ(識別)値として用いています。標準曲線(検量線)の下端では、わずかな値の変化が大きく影響するためCVは当然高くなります。繰り返し測定の回数を減らすために、Salimetrics社では、デュプリケートで測定した場合に関して所定の絶対値を利用しています。詳細は当社テクニカルサポート試薬担当までお問合せ下さい。

Q-40. 日本からSalimetlics社に試料を送り、受託測定サービスを利用することができますか?

A-40. 可能です。試料の送付に関する手順やアメリカの税関に提出する書類など、必要な項目の概略は唾液試料中バイオマーカーの受託測定サービスをご覧下さい。なお、詳細については当社の受託・特注品担当までお問い合わせ下さい。

Q-41. アジ化ナトリウム(NaN3)は測定に影響しますか?

A-41. 影響します。保存剤・防腐剤として使用されるアジ化ナトリウム(NaN3)は、免疫化学反応を利用したシステムで多く使用されているHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)の活性を阻害します。Salimetlics社の免疫測定キットのほとんどは、発色系にHRPを用いていますので使用は控えて下さい。なお、Salimetlics社のアミラーゼ活性測定キットはアジ化ナトリウムを0.01%含んでいますが、このキットはELISAではないためHRPを使用してはいません。

アジ化ナトリウムは毒物及び劇物取締法により毒物に指定されており、水生生物に対しても強い毒性を示します。

Q-42. 感度についての定義を教えて下さい。

A-42. 感度に関しては、分析感度(Analytical Sensitivity)と実効感度(Functional Sensitivity)があります。

分析感度とは、「分析対象を含まない試料」を測定するときに予想される測定結果の上限を説明するために使用されました。試料には分析対象が含まれていないため、この統計値(データ)は単独では実用的ではありません。分析感度は濃度限界(concentration limit)として説明され、それを超えると測定者は、観察された信号が分析対象の存在の結果であると期待(expect)します。つまり、測定値がシステム内の単なるノイズではなく、真の分析対象を反映すると想定されるような閾値です。分析感度は通常、ブランク(分析対象を含まない試料)を繰り返し測定し、観測された平均値より2SD(標準偏差)または3SD上の限界を決定することによって算出されます。繰り返し回数、2SDあるいは3SDが適切かどうか、およびその他の詳細についてはコンセンサスが得られていません。

実効感度(Functional Sensitivity、FS)とは、不正確さを考慮した上での測定精度を意味する用語です。この概念は、指数関数的に増減することが知られている甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定において最初に用いられました。ここで、TSH測定法の「世代(generation)」は、例えば第3世代においては、実効感度の測定において、測定間の再現性が変動係数(CV)20%以下の精度で測定可能なTSH 濃度などと記されています。

トロポニンなど他の測定対象の場合、CVが10%以下であることが不正確さの望ましいレベルと考えられています。実効感度は、より実用的な意味で臨床の場での検体検査に関連していますが、この応用数学的アプローチを確立するためのコンセンサスとなるプロトコルは存在しません。

⇒ 唾液採取編



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実験デザイン編

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Q-43. 測定までの間、唾液をどれぐらいの期間保存することができますか?

A-43. 唾液採取後は、なるべく速やかに冷凍することをお勧めします。測定対象によっては室温でも比較的安定なものもありますが、試料特異的な誤差が観察されています。すぐに-20℃で保管できない場合、まず速やかに4℃で保管し、次いで-20℃の冷凍庫に移すことをお勧めします。

Q-44. 唾液を-20℃、もしくはそれ以下の温度で冷凍保存した場合は、どれぐらいの期間、保存できますか?

A-44. -20℃以下でCryovial中に唾液を一旦凍結した場合、唾液試料でもその他の生体試料でも測定対象因子の長期安定性に差はないため、試料保管に最良かつ最もコストパフォマンスの良い選択肢です。6か月以上の長期保存や、唾液をCryovialへ移さずにスワブのまま保存することは推奨できません。

Q-45. 一般的な綿(コットン)製品を使って試料を採取できますか?

A-45. 綿は、測定への影響が既に知られているため推奨できません。また、使用するスワブの種類が測定対象に適用可能であることが検証されていることを確認されることをお勧めします。綿は複数の異なる因子において測定に影響を及ぼすことが認められており、詳細についてはSalimetrics社ウェブサイト掲載のコラムRigor and Reproducibility(Part2) How Good Are Your Saliva Samples? もご覧下さい。一貫性のある正確な測定のためには、測定因子に対して検証済みの化学合成素材によるスワブを使うことが最良の選択です。Salimetrics社のSalivaBio Oral Swab は、多数の因子で検証済みの、市販品では唯一の唾液回収用スワブです。エストラジオールのように流涎のみが適用可能な因子もあるため、測定因子ごとの推奨唾液試料採取器具にてスワブの適用可否をご確認下さい。

Q-46. 唾液の採取に刺激剤を使ってもよいですか?

A-46. 唾液分泌量を増加させる刺激剤の使用は、人為的な数値の増加や減少の原因となることがあるため推奨できません。高齢者や、投薬の副作用で十分な唾液産生が行えない被験者などの極端な場合には、食品の画像による視覚的な刺激や、レモンオイル、オレンジオイルなどの抽出物による嗅覚への刺激が唾液分泌の増加のために許容されると考えられています。

参考文献

  • Schwartz, E., et al., "Assessing salivary cortisol in studies of child development.", Child Development, 69, 1503~1513 (1998).[PMID:9914636]

Q-47. スワブを用いた唾液採取の際にプロテアーゼ阻害物質を使用できますか?

A-47. Salimetrics社では、プロテアーゼ阻害物質の使用可否については検証していません。予備検討で測定に影響が出ないことを確認されることをお勧めします。

Q-48. 測定前に唾液の凍結と遠心分離が必須なのはなぜですか。

A-48. 唾液試料にはムチンと呼ばれる糖タンパク質が含まれており、唾液に「とろみ」と粘度を与えています。新鮮な試料を定量分析に使用すると、このムチンのために試料が均質になりにくいため結果が安定しません。一旦凍結すると、ムチンは沈殿して溶液系から除かれてしまいます。その後、解凍した試料を遠心分離すると、沈殿したムチンと細胞の破片や食べかすなどがペレットとしてチューブの底に溜まり、水のように透明で扱いやすい上清が得られます。この透明な状態の唾液試料からは、正確で再現性の高い測定結果が得られます。

Q-49. 測定に際して必要なキット数は何個になりますか?

A-49. 各キットのデータシートをご確認下さい。原則として、すべてデュプリケートで測定することを推奨します。再測定の場合なども考慮して必要なキット数をご検討下さい。実際の各ラボの測定経験の差や試料特異的な取扱いの問題などに応じて、全体の5~10%程度は再測定が必要になる可能性があります。

Q-50. どのような唾液採取方法が推奨されますか?

A-50. 正しい唾液採取器具を選択することは、高品質な測定結果を得るために極めて重要です。一般的に、試料は流涎法(りゅうぜん法:よだれを集めて試料とするという方法で、具体的には自然に出てくる唾液を口内に溜めて試験に用いる方法)か、スワブ法(清潔な合成繊維製の綿棒などを口に含み唾液を採取する方法)が推奨されます。実験計画、対象集団に応じて適切な唾液採取器具を選択する上で、事前に考慮すべきことは多数あります。測定因子ごとの推奨唾液試料採取器具から一覧表が確認できますが、詳細に関しては当社テクニカルサポート試薬担当までお問い合わせ頂くことを強く推奨します。考慮しなければならない要素としては、測定対象の因子、被験者の年齢、野外での採取を行うかどうか、各被験者からの唾液の採取量などがあります。

Q-51. キットのロット番号を同一で揃えることは必須でしょうか?

A-51. Salimetrics社の品質管理チームは、測定キット、唾液採取器具ともにロット間差が最小となるように、基準に満たないロットは認証していません。しかしながら、ばらつきの原因となりうるいかなる要素をも最小にするために、できるだけキットや唾液採取器具のロットは同じにすることをお勧めします。

Q-52. 参考文献を紹介して下さい。

A-52. 最近の検索ツールの発展と、唾液試料からの測定による文献数が膨れ上がるにつれて、Salimetrics社では自社における記録の維持を止めました。PubMedもしくはPsycINFOでの文献検索の利用をお勧めします。文献の質や測定技術についても、1998年頃を境にそれ以前よりも向上していることが分かっています。それ以前の時期の文献を参照される場合はご注意下さい。もし疑問点がある場合は、当社テクニカルサポート試薬担当へお問い合わせいただくことでSalimetrics社へ確認をとることもできます。Salimetrics社の研究者は活発に文献査読にも参加しており、豊富な情報を持ち合わせています。

Q-53. 私の研究には、どの因子の測定が適切か教えてくれますか?

A-53. まず、PubMedもしくはPsycINFOで文献的調査を行うことをお勧めします。1998年以前の文献を参照される場合は、念のためお問い合わせいただくことをお勧めします。

Q-54. Salimetrics社のウェブサイトのリストに掲載のない因子も唾液で測定してもらうことはできますか?

A-54. 当社受託・特注品担当までお問い合わせ下さい。

Q-55. なぜSarstedt社のSalivetteによる唾液採取が非推奨になったのでしょうか?

A-55. Salimetrics社の社内テストによると、唾液試料を通常のコットンタイプのSalivetteや、コルチゾール用のポリマー製タイプを用いて採取したところ、測定結果のばらつきが大きく認められました。Salimetrics社は、唾液採取にどのようなスワブを使用しても、ゴールドスタンダードである流涎法による測定での結果と一致するべきだと考えており、Salivetteを用いたデータはSalivaBio Oral Swab用いたデータとは一致しておりませんでした。データ等の詳細はこちらもご覧下さい。正確で再現性のある結果を得るために、スワブを用いる場合はSalimetrics社製品のご使用をお勧めします。

Q-56. 測定終了後の唾液試料はどのように廃棄すれば良いでしょうか?

A-56. 測定終了後の試料の廃棄に関しては施設固有の規定がありますので、各施設内で環境安全衛生等の担当部局にご確認下さい。

Q-57. 1つの試料から最大いくつの因子を測定できますか?

A-57. 同じ試料から複数の因子が測定でき、SNP解析などのためのDNAの抽出にも使用できます。因子により必要な試料量は異なりますので、詳細は当社テクニカルサポート試薬担当までお問い合わせ下さい。

Q-58. 刺激や実験操作を被験者に行った場合、処理の前後のどの時点で唾液を採取するべきでしょうか?

A-58. 大半のホルモンは、採取の時刻が非常に重要です。またすべての被験者で採取の時間は標準化する必要があります。ステロイドホルモンの多くは午前中に高い値を示します。下記の文献が参考になります。個別のご相談も承りますので、当社テクニカルサポート試薬担当までお問い合わせ下さい。

参考文献

  • Granger, D. A., et al., "Salivary Bioscience and research on adolescence: A integrated perspective.", Journal of Adolescence, 32, 1081~1095 (2012). [PMID:22401843]
  • Skoluda, N., et al., "Intra-individual psychological and physiological responses to acute laboratory stressors of different intensity.", Psychoneuroendocrinology, 51, 227~236 (2015). [PMID:25462896]

Q-59. 服用している医薬品がコルチゾールの測定に影響を与えることがありますか?

A-59. 下記の文献をご参照下さい。

参考文献

  • Granger D.A., et al., "Medication effects on salivary cortisol: tactics and strategy to minimize impact in behavioral and developmental science.", Psychoneuroendocrinology, 34(10), 1437~1448. (2009). [PMID:19632788]
  • Hibel L.C., et al., "Individual differences in salivary cortisol: associations with common over-the-counter and prescription medication status in infants and their mothers.", Hormones and Behavior, 50(2), 293~300 (2006). [PMID:16682032]

Q-60. 乳幼児のα-アミラーゼ(sAA)を測定できますか?

A-60. 唾液中のα-アミラーゼは、出生時に検出されることもありますが、自律神経系による唾液腺の支配が成熟していないため、新生児ではsAAが自律神経の活動を反映していない可能性があります。3か月以上の乳児であれば検出可能です。最初の数か月間に、乳児のsAAの産生量は増加し、幼児期に成人で見られるレベルに達します。

  • Davis, E. P. and Granger, D. A., "Developmental differences in infant salivary alpha-amylase and cortisol responses to stress.", Psychoneuroendocrinology, 34(6), 795~804 (2009). [PMID:19268476]

Q-61. 社会的合図(Social Cue)を受けてから、どれくらいでコルチゾールやα-アミラーゼが唾液中に分泌されるのでしょうか?

A-61. Salimetrics社では、コルチゾールのタイミングに関する最良の情報は、ドイツのトリーア大学でクレメンス・キルシュバウムらによって作成された社会ストレステスト(Trier Social Stress Test:TSST)を参考にするのが最良と考えていますが、他のいくつかの研究室からは別のストレス試験による文献も報告されています。多数の先行研究による文献が存在します。TSSTやその他のストレス要因負荷後の唾液試料のタイミングについては、下記の文献を参考としてお勧めします。

  • Skoluda, N., et al., "Intra-individual psychological and physiological responses to acute laboratory stressors of different intensity.", Psychoneuroendocrinology, 51, 227~236 (2015). [PMID: 25462896]

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