誰もが簡単に「極微量タンパク質検出」を行える革新的プラットフォームを目指して(株式会社BioPhenoMA)
掲載日情報:2025/11/15 現在Webページ番号:69396
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Vol. 107 誰もが簡単に「極微量タンパク質検出」を行える革新的プラットフォームを目指して
株式会社BioPhenoMAは、2023年4月に創業、極微量タンパク質の高感度定量サービスの提供、並びに定量サービスを活用した医薬品、医薬部外品、試などの研究・開発支援を行うメーカーです。 今回は代表取締役の三田村真氏(下写真)にお話を伺いました
株式会社BioPhenoMAについて
発明者である早稲田大学教授伊藤 悦朗、北海道医療大学教授 吉村 昭毅らが考案したタンパク質検出技術をコア技術として、タンパク質測定に変革をもたらすことを目指して2023年4月に創業しました。
元々伊藤らは「極微量のタンパク質を定量できないか?」「核酸(mRNA)なら増幅して検出ができるのに…」というジレンマを抱えていました。試行錯誤の末、従来の「サンドイッチELISA法」と「酵素サイクリング法」を組み合わせる着想を得ましたが、単純には上手く行かず、さらに苦闘した結果、独自基質の開発に成功し(知財化)、「TN-cyclon™法」として確立しました。
現在は、創業時の「誰でも簡単に極微量タンパク質の高感度検出を可能にする」という段階からシフトして、 TN-cyclon™法をさらに活かすために体外診断薬領域でのビジネスモデルを構築しています。中でも重点を置いている領域は、「グローバルヘルス」、「コンパニオン診断薬・治療モニタリング」であり、製品の導出、ライセンスを目指しています。
研究用試薬としては「PD-L1 TN-cyclon™ ELISAキット」、ならびに「TN-cyclon™ ELISA 開発キット」をフナコシ社経由で販売中です(次ページ参照)。どちらも創薬支援ツール、バイオマーカー・シーズ探索、分析バリデーション用途、薬物動態評価、治療効果判定などの目的でお客様にご活用いただいています。
また、この開発キットをベースに高感度定量測定の受託サービスも行っています。
TN-cyclon™法(技術紹介)
私たちはS/N比を上げつつ、目標とする信号のみを増幅させるために基質、酵素の組合せの最適化に腐心しました。この課題をクリアすることで、従来のサンドイッチELISA法に比べ、およそ10~100倍の感度向上(LOD/LOQ)が見込めます。すべてのタンパク質で可能というわけではありませんが、0.1~1pg/ml程度までの測定は達成しており、Zeptmole(10-21moles)検出の論文を発表しています1。
こうした高感度化は従来技術と比較して、一般的なELISA法と同等の操作、プレートリーダー(呈色、405nm)で測定できる点、また高額な大型分析装置(デジタル ELISAやCL、MS)などに比肩する感度を低コストで実現できるというメリットがあります。
酵素サイクリング改良法(TN-cyclon™)とは
酵素サイクリング改良法(TN-cyclon™)は、サンドイッチELISA法と酵素サイクリング法を組み合わせたBioPhenoMA社独自のタンパク質検出技術です。本手法を用いると、従来のサンドイッチELISA法と比べて高感度な定量が可能です。
原理
本手法では、 ELISA法を第一の反応系として、捕捉抗体、検出抗体を用いて抗原をサンドイッチ方式で挟み込みます。検出抗体にはアルカリホスファターゼ(ALP)が標識されており、BioPhenoMA社独自のALP基質であるA3Pを作用させます。通常のELISA法であればこの反応物質(下図. A3)を測定することで抗原量を定量しますが、酵素サイクリング改良法(TN-cyclon™)では、この反応物質が次の反応系であるサイクリング反応の基質になります。サイクリング反応では、A3PとALPとの反応物質であるA3が水酸化ステロイド脱水素酵素(3α-HSD)によって脱水素反応(酸化反応)を起こし、A3’が産生されます。また、逆の反応も繰り返し起こります。サイクリング反応が進行するにつれて補酵素であるThio-NADおよびNADHが消費され、消費後の副産物であるThio-NADHおよびNADが蓄積します。このThio-NADHは405 nmに吸収極大を持ち、この吸光極大波長(405 nm)の変化を測定することで、もとの抗原濃度が測定できます。
この増幅方法によって、従来の一般的なELISA法の感度では検出限界以下であった極微量の抗原量の測定も可能となります。
参考文献
1. Watabe, S., et al., Biophysics, 10, 49~54 (2014). [PMID:27493498]
2. Kobayashi, Y., et al., Front. Immunol., 15, 1445771 (2024). [PMID:39687610]
現在、我々はこのTN-cyclon™法を用いて従来の感度では不足して検出できなかった、あるいは困難であった検体種(EV全体、内腔、膜表面、尿や喀痰など)での実施例を多数有しています。例として、子宮頸がんの前がん状態の患者の尿中からHPV16E7タンパク質の検出にも成功しています。従来の細胞診という侵襲性、心理的ストレスを有する検体採取・測定法から、より簡易的な検査法へと置換する可能性があり、検診システムそのもののパラダイムシフトを目指しています。
今後の展望
今後、BioPhenoMA社として注力する分野として、「グローバルヘルス」を考えています。このテーマは、日本国内にいるとなかなか理解し難い分野ですが、世界的には、マラリア、結核、顧みられない熱帯感染症などの社会的課題によって毎年多くの命が奪われています。私たちは、TN-cyclon™法を用いて新たなターゲットタンパク質を探索し、そのバイオマーカーを開発、提供することで世界におけるヘルスケア領域の日本としての責務を果たしたいと考えています。
一方、「コンパニオン診断薬・治療モニタリング」の分野では、アカデミアとの共同開発による多くの自社開発パイプラインを有しており、製薬・診断薬企業とのアライアンスも順調に進めています。また、産学地域連携のコンソーシアムを立ち上げており、PIの先生方同士の情報共有を含めて、体外診断薬化、臨床実装を目指した積極的な取り組みを支援しています。
BioPhenoMA社は、立ち上がったばかりのスタートアップ企業ですが、いくつかの事業パイプライン、自社開発、バイオマーカー・シーズ案件を基に、これからもヘルスケア・ライフサイエンスの領域で着実に社会貢献を進めて参ります。
参考文献
1. K. Iha,et al., Anal Sci, 2021; 37: 1469–1472. PMID:27493498
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