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核酸医薬として注目されるモルフォリノオリゴ(GeneTools社)
掲載日情報:2021/10/15 現在Webページ番号:65945

Vol.76 核酸医薬として注目されるモルフォリノオリゴ
GeneTools, LLC は、アンチセンスアプリケーション用の研究用モルフォリノオリゴを製造・販売するアメリカのメーカーです。
今回は、創業時から同社に在籍しているDr. Jon D. Moultonに、同社の歴史についてお話しいただきました。

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起業まで
GeneTools 社は、モルフォリノオリゴを世界で初めて発明したANTIVIRALS Inc.(現Sarepta Therapeutics)の創業者であるDr. James Summerton(以下Jim)が新たに創業した、スピンオフ企業です。
1999 年、Jim は、彼が初めて起業した会社であるANTIVIRALS 社を去ることになりました。当時、ANTIVIRALS 社の取締役会では、早急に臨床分野への展開を進めるという方針がありました。しかし一方で彼は、モルフォリノオリゴを細胞に導入するより良い方法の追求に専念したいと思っていました。
効果的で毒性のない導入方法さえ開発できれば、モルフォリノオリゴは治療薬としてより強力な手段になりうると感じていたのです。
そこでJim は自分のラボで導入方法に関する研究を継続させ、モルフォリノオリゴを研究市場にもたらすため、現在のGeneTools 社を起業しました。その新しい会社は、当初Sequence Specific Technologiesと名付けられたのですが、電話で言いやすいより短い名前が良いということで、GeneTools に変更された経緯があります。その頃、私の妻であるDr. Hong Moulton が、ANTIVIRALS 社のJim の部署でポスドクをしていたという縁もあり、私もアカデミアを去ってGeneTools 社に入社することになり、今に至ります。
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第三世代のアンチセンス モルフォリノオリゴとは
- RNA に対して活性があり(結合する)、標的特異性が非常に高い
- 水溶性が高い
- 電荷を持たないため、タンパク質と結合する際に塩橋を形成しない(非特異的な結合がない)
- ヌクレアーゼ耐性があり、細胞内で分解されない
- 基本構造は免疫反応を誘発しない(非毒性)
- 末端に修飾することによりプローブとして使用したり、官能基を付加することでペプチドやタンパク質など化合物と結合したりすることができる

モルフォリノオリゴはRNA の配列特異的マスキングテープのようなもので、短い配列に結合して他の大きな分子のアクセスを妨げる働きがあります。RNase 依存またはRISC 依存のオリゴと異なり、翻訳阻害と核におけるプロセッシング(mRNA のスプライシング)の双方を標的とすることができます。
モルフォリノオリゴに関連する創意工夫の多くは、どこを標的にするか、にまつわるものです。研究者たちの考えた革新的なターゲッティング戦略と新しいアプリケーションには、いつも驚かされます。

中でも発生学の分野では、モルフォリノオリゴをマイクロインジェクションによって導入する技術が確立されており、発生に関わる遺伝子の機能解析に最適なツールとして多くの研究者に用いられてきました。特に、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、ウニなどの受精卵に導入することにより、標的遺伝子の発現を特異的に阻害でき、その使用例も数多く発表されています。
最近の研究の最先端領域は、circRNA とlncRNA ですね。モルフォリノオリゴがglyco-RNA に結合することを利用した最初の論文が発表されるのを楽しみにしています。

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核酸医薬品として
もともとGeneTools 社の顧客はほとんどすべてアカデミックの方でした。私たちが創業してから10 年ほどの間は、モルフォリノオリゴに対して興味を持つ企業はほとんどありませんでした。
2016 年、Sarepta Therapeutics 社のモルフォリノ治療薬(核酸医薬)「Eteplirsen」が初めて米国FDA に承認されました。それ以降、製薬企業とバイオテクノロジー企業からこれまでになく多くのモルフォリノオリゴをご注文いただくようになってきています。

「Eteplirsen」が対象とするデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋線維の再生サイクルよりもダメージの方が頻度が高くなり、筋肉の機能が日を追って失われていく遺伝性の病です。病理学上の変わった特徴を持っており、筋繊維が再生するときに核にモルフォリノオリゴを取り込ませることができ、エキソンスキッピングを引き起こすことができます。
今までに米国FDA で認可された4 種類の核酸医薬品はすべて、このDMD の治療薬です。モルフォリノオリゴは、そのものが新薬候補となりうることもあるのですが、導入方法がネックになります。モルフォリノオリゴを細胞質基質まで到達させる方法に関する課題が、その他多くの疾患への応用の壁となって残っているのです。モルフォリノオリゴが治療に有望とされている疾患は数多くありますが、このデリバリーシステムを改善しなければ実用化することができません。細胞へ安全かつ効率的に導入することができるようになれば、細胞に与える影響はわずかなままで、遺伝子発現を調節できるようになります。私たちはこれからも、より効果的で毒性が少ないデリバリーシステムの研究を続けていきます。
とはいえ、いくつかの疾患では、すでにモルフォリノオリゴを使った文献が出ているものもあります。また最近は新型コロナウイルスの増殖阻害に関する文献も出ています。社内でもモルフォリノオリゴを新型コロナウイルス研究に応用しているグループが2~3あり、ウイルスを直接ターゲットにしているグループもあれば、ウイルス宿主因子をターゲットにしているところもあります。もちろん、まだ発表されていない仕事もたくさん進行しているところです。
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モルフォリノオリゴを応用した文献が出ている疾患例
- 筋緊張症
- 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
- 肢帯型筋ジストロフィー
- ハッチンソン・ギルフォード症候群
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)
- がん
- 代謝疾患
- 細菌感染症(大腸菌、サルモネラ、バークホルデリアなど)
- ウイルス感染症(SARS-CoV、SARS-CoV-2、インフルエンザ、デング熱、エボラ出血熱など)
文献情報は、GeneTools 社ウェブサイトのMorpholino Publication Databaseで検索できます。

動物、原生生物、細菌、植物、菌類、ウイルスといった幅広い生物で論文が発表されている。
新型コロナウイルスの増殖阻害
Rosenke, K., et al., J. Antimicrob. Chemother., 76(2), 413~417(2021).[PMID:33164048]
SARS-CoV-2 のゲノムRNA の5’ 末端領域またはリーダー配列中の転写調節領域の塩基配列と相補的塩基対を形成するようにペプチド-モルフォリノオリゴ複合体を設計した。この複合体は、感染後48~72 時間の細胞培養において、非毒性かつ用量反応的にウイルス力価を最大4~6 log10 減少させることが報告された。
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日本の研究者の皆様へ
日本からもモルフォリノオリゴを使ったテクニックが数多く発表されており、次にどんな論文が出されるか、とても楽しみにしています。例えば日本から発表された「ホヤ胚のノックダウン」や「植物胚へのインジェクション」は、とても画期的でした。私たちとフナコシとの長く続いてきたパートナーシップは、日本でのモルフォリノ研究の道のりを整備してくれました。今後とも、基礎研究や創薬研究に取り組む皆さんをサポートしていきます。
植物の花粉管誘引物質「ルアー」の同定
Okuda, S., et al., Nature, 458(7236), 357~361(2009).[ PMID:19295610]
名古屋大学の東山教授のグループは、植物の花粉管誘導に関わる重要な因子LUREs の同定に成功し、Nature 誌2009 年3 月19 日号で研究成果が発表され表紙を飾りました。この研究で、モルフォリノアンチセンスオリゴは花粉管誘導物質を合成する遺伝子の候補の発現抑制に使用されました。これは植物に対してモルフォリノアンチセンスを使用した最初の論文です。
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