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R&D Systems ELISA 添加回収試験(Spike and Recovery Test)プロトコル

掲載日情報:2021/07/19 現在Webページ番号:80560

添加回収試験(Spike and Recovery Test)は、ELISA測定に使用するキットが、試料(被検体)に適しているか、測定干渉物質による“ずれ”が生じないかを確認する試験です。

R&D Systems(R&Dシステムズ) ELISA 添加回収試験(Spike and Recovery Test)プロトコルのpdf版ダウンロードはこちらから。
R&D Systemsの Quantikine ELISA Kitは、こちらの「Quantikine ELISA Kit/DuoSet Kit 特集」をご覧下さい。


1. はじめに

適用試料と適用外試料について

ELISAは、対象因子を特異的に認識する抗体を用いて、試料中の対象因子を相対定量する測定法です。しかし、試料中または希釈溶液中に含まれる測定干渉物質(BSA、補体、異好性抗体、リウマチ因子など)により、抗原抗体反応が阻害され、測定精度に影響を及ぼし、実際の対象因子の含有量と測定値との間に“ずれ”が生じることがあります。

R&D Systems(R&Dシステムズ、以下RSD社)では、各ELISA キットについて、測定干渉物質による“ずれ”が生じないことを確認するために、「添加回収試験(Spike and Recovery Test)」ならびに「直線性試験(Linearity Test)」を実施しています。両試験を実施し、測定に問題がないことが確認されている試料を「適用試料」、それ以外の試料を「適用外試料」としています。

適用外試料を用いて測定を行いたい場合、測定を開始する前に、お客様ご自身で添加回収試験と直線性試験を実施し、ご使用になるキットがその試料の測定に適しているかどうかを確認する必要があります。

添加回収試験(Spike and Recovery Test)とは

試料溶液に濃度既知の対象因子を添加(Spike)し、その添加量が測定値に正しく反映されるか(回収:Recovery)を確認する試験です。試料に含まれる成分による干渉の有無がわかります。

直線性試験(Linearity Test)とは

濃度既知の対象因子を添加した試料と添加しなかった試料で希釈系列を作製・測定し、直線性(Lineality)を確認する試験です。測定値が直線性を示さなかった場合には、試料に含まれる成分の干渉により、正確な測定が妨げられていることがわかります。さらに、直線性を示す希釈範囲を決定することも重要です。

以下の項では、添加回収試験と直線性試験のプロトコル例をご紹介します。


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2. プロトコル例

2-Ⅰ. 添加回収試験(Spike and Recovery Test)に必要なもの

  • DuoSet Kitと必要な別売品セット、またはQuantikine ELISA Kit
  • Spiking Stock Solution(濃縮液、2-Ⅱ. 調製方法参照)
  • 試料2.0 ml(キットの標準曲線範囲内の濃度のもの)*1, 2
  • ELISA に必要な器具(製品添付のデータシート参照)

*1 試料の濃度が標準曲線の範囲を超えている場合には、標準曲線の範囲内に入るように適度に希釈して下さい。
*2 試料の濃度が分からない場合は、原液、1:10、1:20などの段階希釈を行った試料で予備試験を実施して、あらかじめ試料のおおよその濃度を確認する必要があります。

2-Ⅱ. Spiking Stock Solutionの調製

  • DuoSet Kitの多くには、Spiking Stock Solutionとして使用できる、濃縮されたスタンダードが含まれています。
  • Spiking Stock Solutionの濃度は、最も高いスタンダード濃度の10倍を推奨します。例えば、スタンダードの最高値が2,000 pg/ml(2 ng/ml)の場合、20 ng/mlのSpiking Stock Solutionを準備して下さい。

Quantikine ELISA Kitに含まれているスタンダードは、濃縮されている場合と濃縮が必要な場合があります。再構成されたスタンダードが検量線の最高値となるキットの場合、Spiking Stock Solution調製用にスタンダードをもう1本注文して下さい。そして、キットの添付文書に記載されている希釈液を使用してスタンダードを再調整して下さい。
ELISA Kitに同梱されているスタンダード以外の組換えタンパク質を使用してSpiking Stock Solutionを作ることも可能ですが、ELISA Kitのスタンダードを使用するのが最も効率的です。
添加後の試料の濃度は、プロトコルに示された標準曲線の範囲の上限から中央付近に収まるようにして下さい。上述の通り、一般的には最も高いスタンダード濃度の10倍程度のSpiking Stock Solutionが推奨されていますが、想定される試料の値によっては、対応する適切な濃度に調製して下さい。

2-Ⅲ.標準曲線の作成

標準曲線は、キットのデータシートの記載に従って作成して下さい。

スタンダードの再構成や希釈に用いる希釈液(Diluent)は、測定する試料に合わせて選択して下さい。例えば、細胞ライセートの場合は、細胞溶解バッファーに類似したバッファーが適合すると考えられます。また、血清や血漿の場合は、PBSに10~50%の子牛胎児血清(FBS)を加えたものからご検討いただくことをお勧めします。

Quantikine ELISA Kitには通常、1本あるいは2本のCalibrator Diluentが含まれており、標準曲線の作成や試料の希釈に使用されます。一般的には、Calibrator Diluent RD5は、尿、唾液、細胞培養上清などタンパク質含有量の少ない試料に適しており、Calibrator Diluent RD6は、血清や血漿など高タンパク質の検体に適しています。ただし、ご使用のキットで未検証の試料については、どのCalibrator Diluentが適しているか、あらかじめ検証する必要があります。

DuoSet Kitのデータシートに記載されている希釈液は、ほとんどの細胞上清試料に適しています。細胞培養上清以外の試料に使用する場合、適切な希釈液を検証する必要があります。ご自身で作成した希釈液は、標準曲線作成にのみ使用して下さい。検出抗体やストレプトアビジン-HRP(Horseradish Peroxidase)の希釈に血清を含む希釈液を使用しないで下さい。

2-Ⅳ.添加回収用試料および対照(Control)の調製

以下の手順に従って、「Unspiked」、「Spiked」、「Control」を調製して下さい。

1. チューブを3本用意し、それぞれに「Unspiked」、「Spiked」、「Control」と書いたラベルを貼る。

2. よく混合した試料(2.0 ml)を、下記のように分注する。

(a):「Unspiked」チューブに試料を1.0 ml加える。 → このまま測定に使用する。
(b):「Spiked」チューブに試料を0.98 ml加える。

3. 「Control」のチューブに、2-Ⅲ.で使用した希釈液(Diluent)を0.98 ml加える(c)。

4. 「Spiked」、「Control」のチューブに、2-Ⅱ.で用意した Spiking Stock Solutionをそれぞれ同量ずつ添加して測定用試料を調製する。


例えば、
 0.98 mlの試料が含まれる「Spiked」チューブ(b)に、Spiking Stock Solution を20μl添加する。
 0.98 mlの希釈液(Diluent)を含む「Control」チューブ(c)に、Spiking Stock Solution を20μl添加する。

上記は、1 wellあたり200μlで二重測定を行う場合に十分な量を調製するプロトコルです。1 wellあたりに必要な液量が少ない場合や二重測定を行う必要がない場合は、より小スケールでの試料調製が可能です。

5. 調製した「Unspiked」、「Spiked」および「Control」をボルテックスで軽く混合する。泡立たないように注意する


添加回収試験での、試料および Control の調製ダイヤグラム

2-Ⅴ. 試料とコントロールの希釈系列作製

直線性試験を行うため、「Spiked」チューブ(b)と「Control」(c)を段階希釈した試料を調製します。「Unspiked」(a)の値がスタンダードの最高濃度の60%を超える場合には、「Unspiked」も同様に希釈系列を作製して測定を行って下さい。

1. 1:2(50 %) 希釈
希釈液(Diluent)0.5 mlを含むチューブを3本用意し、「Unspiked」,「Spiked」,「Control」をそれぞれ0.5 mlずつ加える。

2. 1:4 希釈(25 %)
希釈液(Diluent)0.5 mlを含むチューブを3本用意し、上記の1:2 希釈した各試料溶液を0.5 mlずつ加える。

3. 1:8 希釈(12.5 %)
希釈液(Diluent)0.5 mlを含むチューブを3本用意し、上記の1:4 希釈した各試料溶液を0.5 mlずつ加える。

系列希釈した試料の測定値が、キットの標準曲線と同様の傾きを示すかどうかを確認することで、試料を希釈しても測定値の正確性が保たれるかを判断できます。

2-Ⅵ. アッセイの実施

キット付属のプロトコルに従い、2-Ⅲ.、2-Ⅳ.、2-Ⅴ.で調製した試料を用いてアッセイを行います。

スタンダード・試料・コントロールのウェル配置図

1 2 3 4 5 6
A スタンダード 1 Spiked(b) Control(c)
B スタンダード 2 1:2 希釈の Spiked 1:2 希釈の Control
C スタンダード 3 1:4 希釈の Spiked 1:4 希釈の Control
D スタンダード 4 1:8 希釈の Spiked 1:8 希釈の Control
E スタンダード 5 Unspiked(a)
F スタンダード 6 1:2 希釈の Unspiked
G スタンダード 7 1:4 希釈の Unspiked
H ブランク 1:8 希釈の Unspiked

2-Ⅶ. 測定値の算出・解析

以下の計算式を使用して測定値を算出し、解析を行います。

2-Ⅶ-1. 添加回収試験

回収率(% Recovery)=  Observed - Unspiked  ×100
Expected

ここで、

  Observed = Spiked 試料の測定値

  Unspiked = Unspiked 試料の測定値

  Expected = Controlの測定値

測定値が検量線の検出限界以下の場合、Unspiked の値は 0 pg/mlを示す可能性があります。R&D Systemsが推奨する回収率は80~120%の範囲です。Controlの回収率が80~120%の範囲に収まらない場合、Controlの調製に問題があることを示します。


2-Ⅶ-2. 直線性試験

    「Spike」の直線性を確認する場合、「Spike」の測定値を「Expected」とする。 「Unspiked」の直線性を確認する場合、「Unspiked」の測定値を「Expected」とする。
1:2 希釈の回収率(%)=  Observed Value (pg/ml) of 1:2 dilution  ×100
Expectd Value (pg/ml) / 2 (dilution)


1:4 希釈の回収率(%)=  Observed Value (pg/ml) of 1:4 dilution  ×100
Expected Value (pg/ml)/ 4 dilution


1:8 希釈の回収率(%)=  Observed Value (pg/ml) of 1:8 dilution  ×100
Expected Value (pg/ml) / 8 (dilution)

回収率80~120%が許容範囲です。
「Control」は希釈系列が正しく作製できているかの確認に使用します。「Control」の回収率が80~120%にならない場合は、調製方法に問題があると考えられます。

2-Ⅷ. 計算例

下記のテーブルは、50,000 pg/ml Spiking Stock Solutionを調製し、計 1,000 pg/ml添加した場合の例です。

Spiked1,250 pg/mlControl1,010 pg/ml
1:2 希釈の Spiked613 pg/ml1:2 希釈の Control499 pg/ml
1:4 希釈の Spiked309 pg/ml1:4 希釈の Control249 pg/ml
1:8 希釈の Spiked162 pg/ml1:8 希釈の Control123 pg/ml
Unspiked206 pg/ml
1:2 希釈の Unspiked101 pg/ml
1:4 希釈の Unspiked49 pg/ml
1:8 希釈の Unspiked23 pg/ml

2-Ⅷ-1. 添加回収試験の計算例

Spiked(未希釈)試料の回収率(% Recovery)=  1,250 (pg/ml) - 206 (pg/ml)   ×100 = 103 %
1,010 (pg/ml)

2-Ⅷ-2. 直線性試験の計算例

下記の計算例は、Unspiked 試料の希釈直線性を確認するものです。

1:2 希釈の回収率(%)= 101 (pg/ml)      ×100 = 98 %
206 (pg/ml) / 2 


1:4 希釈の回収率(%)=   49 (pg/ml)      ×100 = 95 %
206 (pg/ml) / 4 


1:8 希釈の回収率(%)=   23 (pg/ml)      ×100 = 90 %
206 (pg/ml) / 8 


2-Ⅸ. 結論

添加回収試験および直線性試験の測定値がメーカーの推奨する許容範囲内にある場合、メーカーによる条件検討が行われていない適用外の試料に対して、一般的に用いているELISA キットを使用する際の信頼度の向上につながります。

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