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溶菌・核酸抽出バイアスを防ぐために 前処理条件がマイクロバイオーム解析に与える影響

掲載日情報:2026/06/30 現在Webページ番号:73712

マイクロバイオーム解析や微生物叢解析では、試料前処理の条件が得られる微生物叢プロファイルに大きな影響を与えます。本記事では、特に溶菌、核酸抽出、PCR阻害物質の除去に着目し、解析結果に生じる溶菌・抽出バイアスと、その低減に向けたポイントをご紹介します。

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本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

前処理条件が核酸抽出・解析結果に与える影響

マイクロバイオーム解析で見えている微生物叢は、実際の微生物叢と同じとは限らない

マイクロバイオーム解析では、シークエンスデータから微生物叢の構成を推定します。しかし、その結果は「試料中に実際に存在していた微生物」をそのまま反映しているとは限りません。
解析で検出されるのは、あくまで溶菌され、DNAまたはRNAが回収できた微生物です。特に、細胞膜が比較的壊れやすいグラム陰性菌は検出されやすい一方で、厚いペプチドグリカン層を持つグラム陽性菌や、強固な細胞壁を持つ真菌などは、溶菌が不十分な場合に過小評価される可能性があります。
このような偏りはランダムな誤差ではなく、特定の微生物群を系統的に見落とす溶菌・抽出バイアスとして問題になります。単なるノイズの増加ではなく、微生物叢プロファイル全体を一定の方向に歪め、主要な分類群の存在比や微生物叢全体の解釈に影響を与える可能性があります。


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「殺菌」と「溶菌」は同じではない

加熱処理などによって微生物を死滅させても、細胞壁や細胞構造が残ったままでは、核酸が抽出バッファー中に放出されないことがあります。核酸抽出では、DNAやRNAが溶液中に露出し、カラムやビーズなどの担体に結合できる状態であることが重要です。
例えば、壊れやすい微生物と壊れにくい微生物が同じ比率で存在していても、前者だけが効率よく溶菌されると、シークエンス結果では前者が実際より多く見えてしまいます。つまり、溶菌条件が不十分な場合、解析結果は試料中の真の存在比ではなく、抽出しやすかった微生物の比率を反映してしまう可能性があります。


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マイクロバイオーム解析に用いられる主な溶菌方法と特長

方法 特長 注意点
熱溶菌 安価で簡便。多くのラボにある装置で実施でき、壊れやすい細胞には有効。 グラム陽性菌や真菌などでは、加熱により死滅しても細胞壁が残り、核酸が抽出バッファー中に十分放出されない場合がある。高温処理によるDNA分解リスクがあるほか、溶菌効率に偏りが生じやすいため、現在の一般的なマイクロバイオーム解析では単独での使用には注意が必要。
化学的・酵素的溶菌 酵素や界面活性剤を組み合わせることで、特定の細胞壁や膜構造を標的にできる。高分子量核酸を維持したい場合にも有用。 すべての微生物に有効な万能条件はなく、試料や対象微生物に応じた最適化が必要。反応時間、コスト、バッファー適合性にも注意が必要。
機械的溶菌
(ビーズビーティング)
グラム陽性菌、真菌、複雑な環境試料など、幅広い微生物群に対応しやすい方法。未知の微生物を含むマイクロバイオーム解析に適している。 最適化した条件でもDNAのせん断が生じる可能性があり、不適切な条件では発熱によるDNAへの影響、チューブ破損、試料ロス、試料間のクロスコンタミネーションなどが懸念される。

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試料由来の夾雑成分やPCR阻害物質が核酸抽出効率に与える影響

溶菌条件が適切であっても、試料中に含まれる微生物以外の成分が、核酸抽出や下流解析を妨げることがあります。糞便、土壌、排水、植物組織、臨床スワブなどでは、それぞれ異なる阻害物質や夾雑成分への対策が必要です。

  • 土壌・堆積物:フミン酸、フルボ酸など
  • 糞便:胆汁酸塩、ポリフェノール、多糖類など
  • 植物組織:フェノール性化合物など
  • 環境試料:重金属や人工化学物質の残留など

これらの阻害物質は、PCRやライブラリー調製の効率を低下させ、場合によっては解析の失敗につながります。阻害物質除去カラム、磁気ビーズ精製、キレート処理など阻害物質に応じた対策、既知量の標準物質を添加して回収率を確認するスパイクインコントロールなどを組み合わせることで、溶菌不良と阻害物質の影響を切り分けやすくなります。


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微生物標準品を用いた溶菌・抽出バイアスの評価

溶菌・抽出バイアスを把握するには、組成が既知の微生物標準品を用いた評価が有効です。既知比率の微生物コミュニティを処理し、得られた解析結果と期待値を比較することで、どの微生物群が過小評価されているかを確認できます。
また、菌体標準品とゲノムDNA標準品を比較することで、バイアスが溶菌段階で生じているのか、抽出・精製以降の工程で生じているのかを推定できます。標準品を定期的に測定することにより、装置やプロトコルの性能変動も確認できます。スパイクインコントロールを用いることで、絶対定量に応用できる場合もあります。


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正確なマイクロバイオーム解析・微生物叢解析のために

マイクロバイオーム解析では、シークエンス技術やバイオインフォマティクスだけでなく、試料前処理の段階が結果の信頼性を大きく左右します。溶菌しやすい微生物だけを見て結論を出さないためには、試料の種類に適した溶菌条件、阻害物質除去、標準品による工程管理を組み合わせることが重要です。
特に、多様な微生物を含む試料や未知の微生物群を対象とする場合には、幅広い分類群に対応できる溶菌法を選択し、標準品を用いて溶菌・抽出バイアスを確認することが、より正確で再現性の高い解析につながります。


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