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細胞および組織におけるタンパク質間相互作用の秘密を解き明かす! in situタンパク質近接解析キット MolBoolean Mouse/Rabbit Kit

掲載日情報:2024/12/23 現在Webページ番号:72227

MolBooleanは、ウプサラ大学のOla Söderberg教授らとAtlas Antibodies社の共同研究により開発した新しいin situ近接技術です。
独自のオリゴヌクレオチドを使用することにより、細胞または組織中に存在する2つの目的タンパク質(任意のProtein AおよびProtein B)に対して、相互作用によるIntracting proteins AB(~40 nm近接)と、相互作用せずそれぞれ単独で存在するIndividual protein AおよびIndividual protein Bの3つの局在を同時に検出することが可能です。MolBooleanは固定された細胞や組織切片に適用でき、さまざまな研究環境でご使用いただけます。


MolBooleanについて

背景と原理

細胞および組織における内在性のタンパク質間相互作用(protein-protein interactions、PPIs)を研究するための従来のアプローチは、組換え体タンパク質や細胞ライセートが用いられており、信頼性の低い結果を示していた可能性がありました。in situ近接ライゲーションアッセイ(in situ Proximity Ligation Assay、in situ PLA)法の開発により、細胞や組織における内在性PPIsの検出が可能になりましたが、相互作用せず単独で存在するタンパク質に関する情報はまだ不足しています。細胞および組織におけるPPIsのダイナミクスは、空間的位置だけでなく、相互作用するそれぞれのタンパク質量にも大きく依存します。したがって、in situタンパク質近接研究では、相互作用によるタンパク質複合体量だけでなく、相互作用せず単独で存在するタンパク質量も理解することが極めて重要です。

Atlas Antibodies社とウプサラ大学Ola Söderberg教授らとの共同研究により開発された新しいin situ近接技術であるMolBooleanは、独自のオリゴヌクレオチドを使用することにより、細胞または組織中に存在する2つの目的タンパク質(任意のProtein AおよびProtein B)に対して、相互作用によるIntracting proteins ABと、相互作用せずそれぞれ単独で存在するIndividual protein AおよびIndividual protein Bの3つの局在を同時検出することが可能です。
検出には、最大発光波長が590 nm(ATTO565)または664 nm(ATTO647N)の蛍光色素を標識したタグ特異的オリゴヌクレオチドを使用します。目的タンパク質と結合する2種類の一次抗体は、免疫動物がそれぞれマウスとウサギであれば、任意の一次抗体を組み合わせて使用できます。シグナルを増幅する手段として、環状オリゴDNAと抗マウスおよび抗ウサギ特異的近接プローブのローリングサークル増幅(Rolling circle amplification、RCA)を利用します。MolBooleanで行われる一連の分子ステップは、それぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)か、または、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)かということを示す情報をローリングサークル増幅産物(Rolling circle products、RCPs)に組み込みます。この情報は、蛍光色素標識タグ特異的オリゴヌクレオチドの結合によって蛍光シグナルに変換され、従来の蛍光顕微鏡での可視化が可能になります。画像解析ソフトウェアを使用することで、蛍光シグナルをセグメント化して区別することができ、試料中の2つの目的タンパク質について、単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)と相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)の相対的定量が可能です。

従来のタンパク質間相互作用解析に対するMolBooleanの利点

MolBooleanは、in situ PLAや蛍光共鳴エネルギー移動(Förster Resonance Energy Transfer、FRET)などの従来法と比較して、プロテインダイナミクス研究において、以下の利点があります。
従来のin situ PLAは、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)のみを検出しますが、MolBooleanはタンパク質複合体と単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)の3つの局在を同時に検出することができます。FRETを用いると、単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)とタンパク質複合体(Intracting proteins AB)の3つの局在を解析することができますが、専用の顕微鏡など高度な機器を必要とし、しばしば厳密な実験設定と校正を必要とします。MolBooleanは標準的な免疫蛍光染色の観察に使用する広視野顕微鏡や共焦点顕微鏡と互換性があります。無料の画像解析ソフトウェアとプラグインの利用が可能で、手順を説明するチュートリアルビデオも用意されていますので、簡便に解析を行うことができます。



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操作方法概略

MolBooleanは、2つの目的タンパク質が、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)を形成しているか、あるいはそれぞれ単独で存在(Individual protein AおよびIndividual protein B)しているかを、以下の7つのステップにより検出します。

使用例
  • Step 1:目的タンパク質に結合した一次抗体と抗マウスまたは抗ウサギ特異的近接プローブが結合する。
  • Step 2:一次抗体を介して目的タンパク質に結合した近接プローブと環状オリゴDNAがハイブリダイゼーションする。
  • Step 3:Nickase enzymeを用いて、環状オリゴDNAを切断する。
  • Step 4:切断された環状オリゴDNAに識別タグを含むオリゴヌクレオチドが取り込まれる。
  • Step 5:DNAライゲーションにより識別タグを含む環状オリゴDNAが生じる。
  • Step 6:RCAを用いてシグナルを増幅する。
  • Step 7:蛍光標識タグ特異的オリゴヌクレオチドがRCPsにハイブリダイズし、蛍光顕微鏡で検出する。

Step 1の前に、試料をブロッキングし、お手持ちの一次抗体とインキュベーションを行う必要があります。


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特長

  • 相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)とそれぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)の3つの局在を同時検出できます。
  • 相互作用によるタンパク質複合体の量を目的タンパク質の総量で正規化するため、より正確に試料間の比較ができます。
  • シグナルを1,000倍増幅するローリングサークル増幅(Rolling Circle Amplification、RCA)を用いることで、存在量の少ないタンパク質を可視化および定量化することができます。
  • 相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)とそれぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)から生じるRCPsは、同一のステップを経て生成されるため、均一なシグナル効率が保証されます。
  • 目的タンパク質と結合する2種類の一次抗体は、免疫動物がそれぞれマウスとウサギであれば、任意の一次抗体を組み合わせて使用可能なユニバーサルキットであり、標準的な免疫蛍光染色で用いる広視野顕微鏡や共焦点顕微鏡で観察ができます。
  • 無料の画像解析ソフトウェアとプラグインを利用できます。


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使用例

E-Cadherin/β-Catenin MolBoolean staining in MCF7 Cells

使用例

本製品を用いたMCF7細胞におけるE-cadherinとβ-cateninの相互作用解析

MCF7細胞において相互作用によるE-cadherin/β-catenin複合体とそれぞれ単独で存在するE-cadherinとβ-cateninを本製品を用いて相対定量した。
マゼンタ:抗E-cadherin抗体(#AMAb90862)、32%
緑色:抗β-catenin抗体(#HPA029159)、19%
白色:抗E-cadherin抗体/抗β-catenin抗体(Overlap)、49%

SATB2/HDAC1 MolBoolean staining in human colon

使用例

本製品を用いたヒト結腸組織におけるSATB2とHDAC1の相互作用解析

ヒト結腸組織において相互作用によるSATB2/HDAC1複合体とそれぞれ単独で存在するSATB2とHDAC1を本製品を用いて解析した。それぞれ単独で存在するSATB2およびHDAC1と、相互作用によるSATB2/HDAC1複合体の空間的位置が示された。
マゼンタ:抗SATB2抗体(#AMAb90682
緑色:抗HDAC1抗体(#HPA029693
白色:抗SATB2抗体/抗HDAC1抗体(Overlap)



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使用文献

Mapping GPCR-RAMP complexes with MolBoolean

  • Kotliar, I.B., et al., "Multiplexed mapping of the interactome of GPCRs with receptor activity-modifying proteins.", Sci Adv., 10(31), 9959(2024). [PMID:39083597]

Gタンパク質共役受容体(G Protein-Coupled Receptor、GPCR)は、細胞間コミュニケーションやシグナル伝達において重要な役割を果たす細胞表面受容体の大きなファミリーです。受容体活性調節タンパク質(Receptor Activity-Modifying Protein、RAMP)は、GPCRと相互作用してその機能を修飾するタンパク質であり、GPCRの輸送とリガンド特異性を調節することにより、レセプターのシグナル伝達に関与します。GPCRとRAMPのタンパク質間相互作用はGPCRシグナル伝達を理解するために重要であり、創薬に重要な意味を持ちます。下図は、SK-N-MC細胞膜における内在性GPCR-RAMP2複合体のマッピング結果です。

Mapping GPCR-RAMP complexes with MolBoolean

図.SK-N-MC細胞膜における内在性GPCR-RAMP2複合体

GPCR‐RAMP2相互作用を定量するために、異なる視野から取得した各Zスタックに対して細胞あたりのMolBoolean RCPsの数を測定した。スケールバー:10 μm。
緑色:抗GPCR抗体
マゼンタ:抗RAMP2抗体
白色:抗GPCR抗体/抗RAMP2抗体(Overlap)
青色:DAPI(核)



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キット内容

  • Tube 1:Blocker
  • Tube 2:Diluent
  • Tube 3:Probe A
  • Tube 4:Probe B
  • Tube 5:Circle
  • Tube 6:Additive
  • Tube 7:Buffer A
  • Tube 8:Nickase enzyme
  • Tube 9:Buffer B
  • Tube 10:Tag oligos
  • Tube 11:Ligase enzyme
  • Tube 12:Polymerase enzyme
  • Tube 13:Buffer C
  • Tube 14:Detection oligos
  • Tube 15:Buffer D
製品外観


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関連動画

共同開発者であるウプサラ大学Ola Söderberg教授による製品紹介(Q&A)

画像解析に関するチュートリアル動画



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FAQ

Q-1. MolBooleanとは何ですか?

A-1. MolBooleanは、Atlas Antibodies社とウプサラ大学Ola Söderberg教授らの共同研究により開発された新しいin situ近接技術であり、細胞または組織中に存在する2つの目的タンパク質の相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB、~40 nm近接)と相互作用せずそれぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)の3つの局在を同時に検出することができるキットです。


Q-2. 従来のタンパク質間相互作用解析と比較して、MolBooleanを使用する利点は何ですか?

A-2. in situ PLAやFRETといった従来の方法と比較して、MolBooleanは、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB、~40 nm近接)と相互作用せずそれぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)の3つの局在を同時に検出することができ、データの正規化により試料間のより正確な比較が可能で、均一なシグナル効率を保証する一貫した分子プロセスなど、従来の方法よりもいくつかの利点があります。


Q-3. MolBooleanはどのようにして、従来のin situ PLAの課題を解決しましたか?

A-3. MolBooleanは、タンパク質間相互作用に関するより包括的な解析を行うことで、従来のin situ PLAの課題をを解決しました。MolBooleanは、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)と相互作用せずそれぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)の3つの局在を同時に検出することで完全な空間的定量分析が可能です。さらにMolBooleanは、タンパク質間複合体形成のデータの正規化を行い、データ解釈におけるギャップに対応します。


Q-4. MolBooleanはどのようにデータを正規化しますか。また、これが重要な理由は何ですか?

A-4. MolBooleanはタンパク質間相互作用の数を目的タンパク質の総数に正規化します。これは、目的タンパク質の存在レベルが細胞処理や疾患状態などのさまざまな要因によって影響を受ける可能性があるため、極めて重要です。正規化された測定値を用いることで、MolBooleanは試料間の比較を可能にし、結果の信頼性を高めます。


Q-5. MolBooleanは微量なタンパク質を検出できますか?

A-5. はい、MolBooleanは微量なタンパク質を検出することができます。MolBooleanは、蛍光シグナルを1,000倍増加させるRCAを利用するので、微量なタンパク質の検出と定量を可能にします。


Q-6. MolBooleanは相互作用によるタンパク質複合体と相互作用せず単独で存在するタンパク質をどのように区別しますか?

A-6. MolBooleanは一次抗体に結合した近接プローブと環状オリゴDNAによるRCAによりRCPsを生成します。MolBoolean独自の一連の分子ステップにより、それぞれ単独で存在するタンパク質(Individual protein AおよびIndividual protein B)か、または、相互作用によるタンパク質複合体(Intracting proteins AB)かを示す識別タグを含むRCPsが生成されます。MolBooleanは、生成されたRCPsと1つまたは2つの蛍光色素標識タグ特異的オリゴヌクレオチドとの結合によって、相互作用によるタンパク質複合体と相互作用せず単独で存在するタンパク質を区別します。


Q-7. どの一次抗体に対してもMolBooleanを使用できますか?

A-7. MolBooleanは、目的タンパク質と結合する一次抗体の免疫動物が、マウスおよびウサギの組み合わせであれば、任意の一次抗体ペアをご使用いただけるユニバーサルキットです。この適合性により、さまざまな研究ニーズに対応し、目的のタンパク質に特異的な抗体を使用することができます。


Q-8. MolBooleanで使用する一次抗体の特異性は重要ですか?

A-8. はい、MolBooleanで使用する一次抗体の特異性は、結果の精度にとって重要です。一次抗体が目的のタンパク質に特異的であることを確認するために、一次抗体を検証する必要があります。Atlas Antibodies社では、抗体の検証に細心の注意を払っており、抗体特異性を保証するために以前から行っている抗体の広範な検証および特性評価に加えて、Nature MethodsでIWGAV(抗体の検証のための国際的ワーキンググループ)が提案したガイドラインに従い、アプリケーション特有の強化された検証試験を導入しています。
Atlas Antibodies社における抗体検証の取り組みはこちらをご確認下さい。


Q-9. MolBooleanは細胞と組織の両方で検証されていますか?

A-9. はい、MolBooleanはMCF7細胞、ヒト腎臓、ヒト結腸など、多くの細胞株や組織で検証されています。


Q-10. キットの容量はどれくらいで、何回のアッセイに使用できますか?

A-10. MolBooleanキットの容量は4.8 mlです。本製品は1キットあたり細胞試料の場合は約120回(1試料あたり40 μl使用)、組織試料の場合は約60回(1試料あたり80 μl使用)のアッセイにご使用いただけます。


Q-11. 査読論文でMolBooleanが使用されたアプリケーションはありますか?

A-11. はい、上記使用文献を含む査読論文での使用実績が複数あります。

使用文献の例
  • Raykova, D., et al., "A method for Boolean analysis of protein interactions at a molecular level."Nat. Commun., 13(1), 4755(2022). [PMID:35963857]
  • Kotliar, I.B., et al.,"Multiplexed mapping of the interactome of GPCRs with receptor activity-modifying proteins.", Sci. Adv., 10(31), 9959(2024). [PMID:39083597]
  • Rivas-Santisteban, R., et al., "Boolean analysis shows a high proportion of dopamine D2 receptors interacting with adenosine A2A receptors in striatal medium spiny neurons of mouse and non-human primate models of Parkinson's disease."Neurobiol. Dis., 188, 106341(2023). [PMID:37918757]


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MolBoolean Mouse / Rabbit Kit (4.8 ml Approx: 60 assays in tissue and 120 in cells)
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