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レクチンと抗体を理解するためのガイド

掲載日情報:2024/07/17 現在Webページ番号:71340

Vector Laboratories社のサイエンスブログ(SpeakEasy Science Blog)からレクチンに関するブログをご紹介します。

Vector Laboratories社のレクチンに関する他のブログについては,サイエンスブログ「レクチン」からご覧下さい。

by John DiVittorio, M.Sc.


抗体のイメージ像

レクチンも抗体も、多くの用途に用いられる強力な結合タンパク質です。19世紀後半に発見されて以来、これらのタンパク質は幅広く学問の対象となり、分類され、研究、健康、科学の発展に利用されてきました。本稿では、レクチンと抗体の主な類似点と相違点、そしてこれらがどのような分析に応用されるかを説明します。

レクチンと抗体の結合

レクチンは、グリカンとも呼ばれる糖鎖に結合する分子です。それぞれのレクチンが特定の糖鎖構造に対して独自の親和性を持っています。例えば、Maackia Amurensisレクチン I(MAL I、#L-1310)はGal (β-1,4) GlcNAcに特異的です。レクチンの多様性により、グライコームレベルでの複雑な評価が可能になります。

抗体は、免疫反応において特定の抗原に直接親和性を持ち、結合するように作られます。抗原とは、免疫反応を引き起こす分子で抗体と結合します。抗原はタンパク質、小さなペプチド、あるいは他の抗体である場合もあります。

レクチンと抗体の由来

レクチンは藻類、菌類、バクテリア、動物、植物などさまざまな生物に存在します。レクチンの起源によって結合特性が決まり、機能も決まります。例えば、バクテリアのレクチンは、表面の糖鎖の末端や内部のオリゴ糖鎖に結合します。これらのレクチンは、細菌が病原性および共生の目的で、宿主細胞上のグリカン配列を認識するために不可欠です。

植物由来のレクチンは、自然界に豊富に存在し、抽出も簡単なため、最もよく研​​究され、最も利用されています。

抗体は、動物の免疫系に含まれるB細胞(B cell)によって産生されます。抗体は血流やリンパ系に放出され、血清にも含まれます。免疫動物の血清から精製されたものは、さまざまな抗体産生細胞からの産物の集合物であるためポリクローナル抗体(Polyclonal antibody)と呼ばれ、一つの抗原のさまざまなエピトープターゲットに対する抗体の混合物になります。

それとは別の方法として、実験室でモノクローナル抗体を作製することもできます。この手法では、免疫動物から個々のB細胞を分離し、クローン化して増殖させ、均等な抗体を作製します。このようなモノクローナル抗体(Monoclonal antibody)は、一つの抗原を標的とするだけでなく、抗原上の単一のエピトープ、すなわち単一の結合部位を標的とします。

レクチンと抗体の構造

レクチンにはさまざまな形と大きさがあり、さまざまな糖鎖結合部位があります。レクチンは、結合部位の数に基づき構造的に分類できます。

メロレクチン(Merolectin)には糖鎖結合ドメインが1つあり、ホロレクチン(Hololectin)には2つ以上の糖鎖結合ドメインがあります。スーパーレクチン(Superlectin)には2つの非同一(non-identical)ドメインがあり、キメラレクチン(Chimerolectin)は酵素ドメインと糖鎖結合ドメインの両方を持ちます。

一般的な抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖で構成されるY字型のタンパク質です。Fabフラグメントには、軽鎖と重鎖の一部が含まれています。これは抗原に結合する領域であるため、大きな変動性を持ちます。Fc領域は、重鎖部分のみからなる尾部です。この領域は高度に保存されており、抗体は細胞表面受容体と相互作用ができます。

抗体に含まれる重鎖の種類によって、抗体はIgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5つのクラスに分類されます。各クラスには固有の構造があり、特定の生物学的特性、局在性、抗原性を有します。

レクチンと抗体の活用法

レクチンは糖鎖生物学の研究で使用され、生物系内の複雑な糖鎖をプロファイリング、特徴付け、捕捉します。また、レクチンの発現レベルは生理学的変化に応じて変化するため、さまざまな疾患や症状のバイオマーカーとして使用することもできます。抗体は、特定の抗原を識別して特徴付けるために、さまざまな生物学的研究方法で使用されます。

抗体とレクチンは、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry、IHC)、免疫蛍光染色(Immunofluorescence、IF)、ELISA、フローサイトメトリー(Flow Cytometry)、免疫沈降(Immunoprecipitation、IP)、アフィニティーマトリックス(Affinity matrix)など、さまざまな技術で同様に使用できます。

レクチンも抗体もさまざまな検出系に使用できますが、レクチンが糖鎖に結合する一方、抗体は抗原に親和性を示すことから、適用可能なアッセイが異なります。たとえば、多くの疾患は、細胞の糖鎖付加(グリコシル化)と、細胞膜上に存在する糖タンパク質の変化を引き起こします。

正常細胞、疾患細胞、処置を受けた細胞のグリコシル化を研究するには、抗体よりも糖鎖に特異的なレクチンアッセイを利用する方が有益です。さらに、新しい疾患や治療の影響という未知の領域に踏み込む場合、レクチンスクリーニングを実施して、疾患や治療が糖鎖プロファイルをどのように変化させるかを調べることができます。

その代わりに、特定のタンパク質を研究する際、特にそのタンパク質の正確な糖鎖付加情報が不明な場合、抗体はより有益なツールとなるでしょう。さらに、両方のターゲットが同じ糖鎖発現を示す二重検出(Double detection)アッセイでは、レクチンよりも抗体を使用する必要があります。レクチンではこの2つを区別するのが困難ですが、抗体は各ターゲットに対してさらに特異的に適用することができます。

抗体とレクチンの能力を併用する実験系を組むこともできます。たとえば、Lycopersicon Esculentumレクチン(LTL、トマトレクチン、#L-1170)は、げっ歯類の血管の有用なマーカーです。Ki67タンパク質は細胞増殖を示すタンパク質マーカーで、抗Ki67抗体で直接検出できます。梗塞後の血管新生の発達評価系の実験系では、抗体はKi67と結合して増殖細胞を検出し、LTLは既存の血管と新生血管すべてを検出します。

レクチンガイドのご案内

レクチンの歴史、レクチンアッセイの方法、原理などについては、以下のレクチンガイド(Lectin Application and Resource Guide)も併せてご参照下さい。


VEC社 Lectin Application and Resource Guide

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