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増殖培地

掲載日情報:2025/12/24 現在Webページ番号:71087

本記事では、培地のグループ分類、特徴およびATCC®で使用されている代表的な細菌培地とその組成についてご紹介します。

細菌の増殖、保存、応用に関する一般的な技術情報のまとめは、「細菌の培養方法をご紹介します(ATCC® Bacteriology Culture Guide)」をご覧下さい。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。
商用利用については、ATCC® Webサイトをご確認下さい。

成長培地

細菌用培地

培地はその組成や用途によって、いくつかのグループに分類することができ、合成培地(defined medium)、複合培地 (complex medium)、選択培地(selective medium)、増菌培地(enrichment medium)などがあります。合成培地は化学組成が明らかで、通常純粋な生化学物質で構成されており、微生物の栄養要求性の研究によく使用されます。一方、複合培地は正確な化学組成が不明です。この培地タイプでは、酵母エキスやペプトンなど、正確な化学組成が不明な生物学的由来の成分含むことが多くあります。複合培地は広範囲の増殖因子が含まれており、通常、未知の細菌株や培養が困難な細菌株の培養に有用です1

選択培地は特定の細菌株の増殖を抑制したり、特定の細菌株の増殖を促進するように調製されます。例えば、好塩菌を選択するための高濃度の塩など、追加の選択試薬を含む場合があり、選択的な増殖条件下で使用することができます。増菌培地も特定の細菌株の増殖を可能にしますが、増菌培地は特定の細菌株以外の増殖抑制ではなく、特性細菌株の増殖を促すような成分が添加されています1

一般に細菌培地は、タンパク質、塩類、微量元素、アミノ酸、炭水化物の混合物です。これらの成分の含有の有無と量は、各細菌株の主要栄養素および微量栄養素の要求性に応じて、大きく異なる場合があります。また、細菌株の培養方法も大きく異なります。液体培地は単一の細菌のバッチ培養によく使用され、固形寒天培地は単一の細菌を単離するために使用されます。

液体培地は栄養素の供給に加え、pHの維持にも貢献します。pHは、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)やリン酸カリウムのような緩衝剤によって維持することができます。また、浸透圧環境は、塩化ナトリウムのような塩類の添加によって維持することができます。ATCC®では、各細菌株に最適な増殖条件を提供するため、数千種類もの培地を使用しています。これらの培地の組成は、ATCC®ウェブサイトのMicrobial Media Formulationsをご確認下さい
ATCC®は各製品の培地の配合情報のみ提供しています。現在、微生物培地のほとんどはATCC®では販売していません。

ATCC®で一般的に使用されている細菌培地には以下のものがあります。


ブレインハートインフュージョン(Brain Heart Infusion:BHI)アガロースATCC®培地組成44
連鎖球菌(streptococci)や肺炎球菌(pneumococci)を含む難培養性および、易培養性の微生物の培養に使用される、栄養豊富な汎用複合培地です。この培地は、ウシまたはブタの脳および心臓組織の浸出液の粉末から生成されます。また、浸透圧維持のために塩化ナトリウム、pH維持のためにリン酸二ナトリウムを添加することもあります。

ゴノコッカス(GC)培地 ATCC®培地組成814
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)およびその他の難培養性細菌の培養に使用される増殖培地です。チョコレート(Chocolate)寒天培地、セアーマーティン(Thayer-Martin)培地、マーティンルイス(Martin-Lewis)寒天培地、トランスグロー(Transgrow)寒天培地を調製する際の基礎培地として使用することもできます。ゴノコッカス培地は、ゴノコッカス寒天基礎培地、乾燥ウシヘモグロビン、IsoVitaleX(Becton Dickinson社)を混合し、調製されます。特定の生物を選択的に増殖させるために、この培地にクロラムフェニコール、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、アンピシリンなどの抗生物質を添加することもできます。

細菌用培地

ヘモフィルステスト(Haemophilus Test)培地(HTM)ATCC®培地組成5129
酵母エキス、ミューラーヒントン(Mueller Hinton)ブロス、ヘマチン(ブタ)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を混合したものです。主成分であるミューラーヒントン寒天培地は、もともと一般的で易培養性の増殖の速い菌の抗菌薬感受性試験の固体培地として調製されました。しかし、この培地は連鎖球菌、淋菌、ヘモフィルス属菌(Haemophilus)のような難培養性細菌には適していませんでした2。そのため、難培養性細菌の検査用にヘモフィルステスト培地が開発されました。

ルリア ベルターニ(Luria-Bertani)ブロス培地(LB)ATCC®培地組成1065
ATCC®が分子生物学的アプリケーションのために増殖、維持している大腸菌に使用している万能培地です。LBミラー(Miller)として、トリプトン、酵母エキス、塩化ナトリウムから調製されます。LBはまた、寒天を加えることで、固体培地として調製することもできます。この培地には、プラスミドDNAの維持のために、しばしばさまざまな抗生物質が添加されます。

マリン(Marine)ブロスATCC®培地組成2
従属栄養性の海洋細菌の培養に使用される選択的複合培地です。海洋環境は、高塩分と低温からなるユニークな増殖条件にあります。この環境に近づけるため、マリンブロスはペプトン、酵母エキス、高濃度の塩が配合されており、ATCC®では、Marine Broth 2216(Becton Dickinson社)を使用して、この培地を調製しています。また、マリンブロスは寒天の添加により固体培地として調製することもできます。

ミドルブルック7H9(Middlebrook 7H9)ブロスATCC®培地組成 2714
マイコバクテリウム属(Mycobacterium)の増殖と成長をサポートします。この培地は、ミドルブルック7H9(Middlebrook 7H9)ブロス、グリセロール、ピルビン酸ナトリウム、アルブミン・デキストロース・カタラーゼ(ADC)濃縮液を混合して調製されます。

ミドルブルック7H10(Middlebrook 7H10)寒天培地ATCC®培地組成173
臨床検体/非臨床検体からのマイコバクテリアの単離、培養用に使用されます。この培地はミドルブルック7H10ブロス、グリセロール、オレイン酸-アルブミン-デキストロース-カタラーゼ(OADC)濃縮液を混合して調製されます。ミドルブルック7H9ブロスとの違いは、いくつかの塩の濃度と、ADCの濃縮液ではなくOADCの濃縮液を添加している点にあります。この培地はin vitroでマイコバクテリアの初期増殖を促進するために開発された、改良型の組成に基づいています3

改良チョップドミート(Modified Chopped Meat)培地ATCC®培地組成1490
易培養性細菌用の複合培地で、大部分の芽胞形成および非芽胞形成の偏性嫌気性菌の生育をサポートします。この培地は牛挽肉(無脂肪)、水酸化ナトリウム、トリプチカーゼペプトン、酵母エキス、ヘミン、リン酸二カリウム、ビタミンK1溶液を混合したものです。ATCC®では、各嫌気性菌株の要求性に応じてこの培地にグルコース、アルギニン、ギ酸塩とフマル酸塩の組み合わせなど、さまざまな成分を添加しています。

ニュートリエント(Nutrient)寒天培地/ブロスATCC®培地組成3
易培養性の細菌株を培養するための汎用培地です。ATCC®では、この培地を牛肉エキスとペプトンからなるBecton Dickinson社の粉末製品から調製します。この培地は心臓浸出液のブロスを加えることで、さらに栄養価を高めることができます。また、この培地はさまざまな濃度の塩化ナトリウムを添加することで、特定の菌株の選択的増殖にも使用できます。

強化クロストリジウム(Reinforced Clostridial)培地ATCC®培地組成10532107
ATCC®がさまざまな試料からの嫌気性菌、特にクロストリジウム属の培養と回収に使用している培地です。ATCC®では、Oxoid Limited社またはBecton Dickinson社の粉末培地を用いて、この培地を調製しています。この培地は、塩類、トリプトース、ビーフエキス、酵母エキス、デキストロース、デンプン、L-システイン塩酸塩を混合したものです。

トリプトソイ(Tryptic Soy)寒天培地ATCC®培地組成18
さまざまな細菌株の分離と増殖に使用される培地です。ATCC®では、この培地をBecton Dickinson社の大豆-トリプシン消化ベース(tryptic soy base)に5%のヒツジ脱フィブリン血液(ATCC®培地組成260)を添加したものを用いて調製することが多くあります。大豆-トリプシン消化ベースは、トリプトン、ソイトーン(大豆の消化物)、塩化ナトリウムを組み合わせて調製されます。ヒツジの血液を加えることで、より難培養性の細菌の増殖が促進されます。

参考文献

  1. Todar, K., Todar’s Online Textbook of Bacteriology, (2008-2012).
  2. Bauer, A.W., et al., "Antibiotic susceptibility testing by a standardized single disk method.", Am. J. Clin. Pathol., 45(4), 493-496(1966). [PMID:5325707]
  3. Middlebrook, G. and Cohn, M.L., "Bacteriology of tuberculosis: laboratory methods.", Am. J. Public Health Nations Health, 48(7), 844-853(1958). [PMID:13545447]

用語集

  • 合成培地:化学的組成が明らかな培地。
  • 選択培地:特定の細菌株の増殖に使用する培地。他の微生物の増殖を阻害する抗生物質などの試薬が添加されることが多い。
  • 増菌培地:多様な微生物の増殖のために必要な栄養素を含む培地。
  • 複合培地:化学的組成が不明な培地。酵母エキスやペプトンなど、化学的組成が不明な成分を含む。

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