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LNP(脂質ナノ粒子)の調製に有用です! カチオン性/イオン化カチオン性脂質(Cayman社)

掲載日情報:2025/02/04 現在Webページ番号:70861

カチオン性脂質は、核酸をカプセル化し、エンドソーム脱出を促進する作用を有するためにLNP(Lipid nanoparticles、脂質ナノ粒子)で使用されます。Cayman社では、さまざまなイオン化脂質とカチオン性脂質製品を取りそろえています。

脂質ベースの薬物送達(LBDD、Lipid-Based Drug Delivery)について

LBDDの利用について

mRNAベースのCOVID-19ワクチンの成功は、数十年にわたるLBDDに関する研究なくしては不可能でした。LBDDシステムは、汎用性が高く、さまざまな生理活性物質を標的の細胞や組織に送達するために利用されてきました。LBDDは、薬物の安定性、生物学的利用能、分布の向上など、従来の薬物送達法に比べていくつかの利点を有しています。そしてLBDDシステムのタイプのひとつである脂質ナノ粒子(LNP)は、オリゴヌクレオチドをベースとした治療薬の送達における目覚ましい発展を成し遂げました。
LNP内にカプセル化されたオリゴヌクレオチドは、酵素分解から保護されて細胞内へと効率的に送達されます。導入されたオリゴヌクレオチドは細胞内で放出され、目的のタンパク質に翻訳されます。脂質ナノ粒子(LNP)は、そうしたオリゴヌクレオチドをベースとした革新的な治療法への多大な可能性を秘めていることから、研究者の注目を集めています。


さまざまな細胞内送達物質(カーゴ)のカプセル化に用いられるLBDDの構造のタイプ

  • LNP:siRNA、mRNA、プラスミドDNA(pDNA)などのオリゴヌクレオチドをカプセル化して送達する、逆ミセルで構成される内部コアを取り囲む脂質シェル。
  • Liposeome(リポソーム):1つ以上の脂質二重層と水性コアを含み、ラメラリティとサイズによってさらに分類される。疎水性および/または親水性小分子の送達に使用できる。
  • SLN(Solid lipid nanoparticle、固体脂質ナノ粒子):固体脂質で構成されるコアマトリックスを取り囲む、界面活性剤のシェル。疎水性および/または親水性カーゴのカプセル化に使用される。
  • NLC(ナノ構造脂質キャリア):固体および液体の脂質で構成されるコアマトリックスを取り囲む界面活性剤のシェル。疎水性および/または親水性カーゴのカプセル化に使用される。
  • Micelle(ミセル):溶液中の脂質単層の自己集合体で、疎水性のコアを持ち、リン脂質の尾部が内部に向いている。小さな疎水性カーゴのカプセル化に使用できる。
  • Reverse micelle(逆ミセル):通常のミセルと反転した構造で、リン脂質尾部が外側に向いた親水性コアを形成し、LNP内のオリゴヌクレオチドのような小さな親水性カーゴのカプセル化に使用できる。

LNPと他のLBDDシステムとの比較

LBDDの種類 LNP リポソーム SLN NLC
LNP リポソーム SLN NLC
脂質シェル 単層 二重層 界面活性剤
内部コア 逆ミセル 水性 固体脂質 固体・液体脂質
カーゴ オリゴヌクレオチド 疎水性および/または親水性小分子
粒径 ∼20~100 nm ∼50~1,000 nm ∼40~1,000 nm ∼40~1,000 nm
Cationic lipidカチオン性脂質 PEGylated lipidPEG化脂質 Phospho lipidリン脂質 Surfactant界面活性剤 Oligonucleotideオリゴヌクレオチド Sterol lipidステロール脂質
Solidlipid固体脂質 Solidlipid液体脂質 Aqueous phase水相 Hydrophilic Drug親水性薬剤 Hydrophobic Drug疎水性薬剤

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イオン化カチオン性脂質(Ionizable cationic lipid)とは

カチオン性脂質はオリゴヌクレオチドのカプセル化に効率的ですが、細胞毒性を伴います。この問題を回避するため、イオン化カチオン性脂質が開発されました。これらの脂質は、低pH(通常<7)において一時的に正に荷電し、LNPのコアにオリゴヌクレオチドをカプセル化する逆ミセルを形成します。一方で生理的pHでは中性に近い電荷を有するため、細胞毒性がなくカーゴのオリゴヌクレオチドを効果的に送達します。

イオン化カチオン性脂質は、RNA送達と毒性にさまざまな影響を与える不飽和、マルチテール、分岐テール、ポリマーおよび生分解性の5つの構造クラスに分類されます。Cayman社のイオン化カチオン性脂質はpKa値のデータが提供されています(下図参照)。

代表的なイオン化カチオン性脂質のpKa

品名をクリックすると製品の詳細、化学構造式をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

DODAP DODMA ALC-0315
DODAP DODMA ALC-0315
四級アミンpKa値:5.59 四級アミンpKa値:6.59 四級アミンpKa値:6.09
DLin-MC3-DMA DLin-KC2-DMA SM-102
DLin-MC3-DM DLin-KC2-DMA SM-102
四級アミンpKa値:6.44 四級アミンpKa値:6.68 四級アミンpKa値:6.68



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イオン化カチオン性脂質のラインナップ

品名をクリックするとメーカーサイトでの製品の詳細、化学構造式をクリックすると拡大図、商品コードをクリックすると各製品の価格表をご覧いただけます。

品名 製品概略 化学構造式 CAS No. 商品コード
1,2-Dimyristoyl-3-dimethylammonium-propane(DMDAP) イオン化カチオン性脂質 1,2-Dimyristoyl-3-dimethylammonium-propane 72719-84-7 38310
1,2-Dioleoyl-3-dimethylammonium-propane(DODAP) イオン化カチオン性脂質 1,2-Dioleoyl-3-dimethylammonium-propane 127512-29-2 25726
1,2-Dioleyloxy-3-dimethylamino-propane(DODMA) イオン化カチオン性脂質 1,2-Dioleyloxy-3-dimethylamino-propane 104162-47-2 15109
1,2-Dipalmitoyl-3-dimethylammonium-propane(DPDAP) イオン化カチオン性脂質 1,2-Dipalmitoyl-3-dimethylammonium-propane 96326-74-8 38311
113-O12B イオン化カチオン性脂質様化合物 113-O12B 2803699-72-9 37671
113-O16B イオン化カチオン性脂質様化合物 113-O16B 2566523-07-5 37831
246C10 イオン化カチオン性脂質 246C10 2635329-26-7 37907
306-O12B イオン化カチオン性脂質様化合物 306-O12B 2566523-06-4 37549
306-O12B-3 イオン化カチオン性脂質様化合物 306-O12B-3 37096
306Oi10 分岐イオン化カチオン性脂質様化合物 306Oi10 2322290-93-5 36698
80-O16B イオン化カチオン性脂質様化合物 80-O16B 1624618-02-5 37564
93-O17O イオン化カチオン性脂質様化合物 93-O17O 2227214-78-8 34366
93-O17S イオン化カチオン性脂質様化合物 93-O17S 2227008-67-3 34367
98N12-5 イオン化カチオン性脂質 98N12-5 917572-74-8 37651
9A1P9 マルチテールイオン化カチオン性リン脂質 9A1P9 2760467-57-8 37276
A12-Iso5-2DC18 イオン化カチオン性脂質様化合物 A12-Iso5-2DC18 2412492-06-7 38586
AA3-DLin イオン化カチオン性アミノ脂質 AA3-DLin 37903
AL-A12 イオン化カチオン性アミノ脂質 AL-A12 38001
ALC-0315 イオン化カチオン性アミノ脂質 ALC-0315 2036272-55-4 34337
ATX-001 イオン化カチオン性脂質 ATX-001 1777792-33-2 39037
ATX-100 イオン化カチオン性脂質 ATX-100 2230647-37-5 36935
BAMEA-O16B イオン化カチオン性脂質 BAMEA-O16B 2490668-30-7 37439
C12-200 分岐イオン化カチオン性脂質様化合物 C12-200 1220890-25-4 36699
C13-112-tetra-tail イオン化カチオン性脂質 C13-112-tetra-tail 1381861-92-2 38329
C14-4 イオン化カチオン性脂質 C14-4 2639634-80-1 38942
LP-01(CIN-16645) イオン化カチオン性アミノ脂質 LP-01(CIN-16645) 1799316-64-5 37278
cKK-E12 イオン化カチオン性リポマー(Lipomer) cKK-E12 1432494-65-9 36700
CL4H6 イオン化カチオン性アミノ脂質 CL4H6 2256087-35-9 37279
CP-LC-0729 イオン化カチオン性アミノ脂質 CP-LC-0729 3040858-60-1 41929
CP-LC-0743 イオン化カチオン性アミノ脂質 CP-LC-0743 3040858-73-6 41925
CP-LC-0867 イオン化カチオン性アミノ脂質 CP-LC-0867 3040858-96-3 41926
CP-LC-1143 イオン化カチオン性アミノ脂質 CP-LC-1143 3040859-45-5 41927
CP-LC-1254 イオン化カチオン性アミノ脂質 CP-LC-1254 3040859-52-4 41928
DLin-DMA イオン化アミノ脂質 DLin-DMA 871258-12-7 36701
DLin-KC2-DMA イオン化カチオン性アミノ脂質 DLin-KC2-DMA 1190197-97-7 34363
DLin-MC3-DMA イオン化カチオン性アミノ脂質 DLin-MC3-DMA 1224606-06-7 34364
DOG-IM4 イオン化カチオン性脂質 DOG-IM4 2758097-38-8 37441
IC8 イオン化カチオン性脂質 IC8 2349307-32-8 37986
L202 イオン化カチオン性脂質 L202 2170488-92-1 37841
L-319 イオン化カチオン性生分解性脂質 L-319 1351586-50-9 35051
Lipid 5 イオン化カチオン性アミノ脂質 Lipid 5 2089251-33-0 34372
Lipid 14 イオン化カチオン性アミノ脂質 Lipid 14 2430034-05-0 38589
Lipid 29 イオン化カチオン性アミノ脂質 Lipid 29 2244716-55-8 35337
Lipid 222 イオン化カチオン性アミノ脂質 Lipid 222 38338
Lipid A4 分岐イオン化カチオン性脂質様化合物 Lipid A4 2639634-71-0 38351
Lipid A6 イオン化カチオン性生分解性アルキン脂質 Lipid A6 35052
Lipid A9 イオン化カチオン性脂質 Lipid A9 2036272-50-9 37667
Lipid C24 イオン化カチオン性脂質 Lipid C24 2767561-52-2 37122
Lipid CL1 イオン化カチオン性トリアルキル脂質 Lipid CL1 1450888-71-7 38320
NT1-O14B イオン化カチオン性脂質様化合物 NT1-O14B 2739805-64-0 37095
OF-02 イオン化カチオン性アミノ脂質 OF-02 1883431-67-1 37652
OF-C4-Deg-Lin イオン化カチオン性脂質 OF-C4-Deg-Lin 1853203-01-6 37856
OF-Deg-Lin イオン化カチオン性脂質 OF-Deg-Lin 1853202-95-5 37853
PPZ-A10 イオン化カチオン性脂質 PPZ-A10 9004144
SM-102 イオン化カチオン性アミノ脂質 SM-102 2089251-47-6 33474
TCL053 イオン化カチオン性アミノ脂質 TCL053 2361162-70-9 37045
TT3 イオン化カチオン性アミノ脂質 TT3 1821214-50-9 37909
YSK05 イオン化カチオン性アミノ脂質 YSK05 1318793-78-0 35786

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カチオン性脂質のラインナップ

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品名 製品概略 化学構造式 CAS No. 商品コード
1,2-Dioleoyl-3(R)-trimethylammoniumpropane (chloride)(R-DOTAP) カチオン性脂質 1,2-Dioleoyl-3(R)-trimethylammoniumpropane (chloride) 328250-28-8 38194
1,2-Dioleoyl-3(S)-trimethylammoniumpropane (chloride)((S)-DOTAP) カチオン性脂質 1,2-Dioleoyl-3(S)-trimethylammoniumpropane (chloride) 428506-51-8 38195
1,2-Dioleoyl-3-trimethylammoniumpropane (chloride)(DOTAP) カチオン性脂質 1,2-Dioleoyl-3-trimethylammoniumpropane (chloride) 132172-61-3 15110
1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-EPC (chloride)(DOEPC/EDOPC) カチオン性エステル化リン脂質 1,2-Dioleoyl-<i>sn</i>-glycero-3-EPC (chloride) 474945-24-9 36473
N-[1-(2,3-Di(9-octadecenoyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium (chloride) カチオン性脂質異性体混合物 <i>N</i>-[1-(2,3-Di(9-octadecenoyloxy)propyl]-<i>N,N,N</i>-trimethylammonium (chloride) 104872-42-6 38592
N-[1-(2,3-Dioleyloxy)propyl]-N,N,N-trimethylammonium (chloride)(DOTMA) カチオン性脂質 <i>N</i>-[1-(2,3-Dioleyloxy)propyl]-<i>N,N,N</i>-trimethylammonium (chloride) 104162-48-3 25926

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参考資料

Lipid Nanoparticle Formulation

A GUIDE TO LIPID NANOPARTICLE FORMULATION

Lipid Nanoparticle Research Tools

Lipid Nanoparticle Research Tools

Lipid Nanoparticle Development Services

Lipid Nanoparticle Development Services

Ionizable Lipid Composition Influences LNP Efficacy

Ionizable Lipid Composition Influences Lipid Nanoparticle Efficacy in Multiple Cell Types In Vitro

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アプリケーションノート

画像をクリックするとPDFファイルをご覧いただけます。

CAY-Application-Note

イオン化カチオン性脂質であるLP-01(#37278)、ALC-0315(#34337)、cKK-E12(#36700)を用いてmRNA-LNPを調製し、in vitroおよびin vivoでの発現効率を評価した(PDF、英文8ページ)。

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

製品情報は掲載時点のものですが、価格表内の価格については随時最新のものに更新されます。お問い合わせいただくタイミングにより製品情報・価格などは変更されている場合があります。
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