HOME> 試薬> 細胞情報伝達> ストレス> 酸化ストレス/低酸素> Hyp-Stamp
HOME> 試薬> 生化学一般試薬/その他> 蛍光/標識用試薬> 蛍光および標識試薬> Hyp-Stamp

過酸化水素(H2O2)の細胞内局在を蛍光標識 Hyp-Stamp

掲載日情報:2023/07/11 現在Webページ番号:70856

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

Hyp-Stampは、細胞透過性を有し、細胞内や組織内で発生した過酸化水素(H2O2)に応答してH2O2周辺に存在するタンパク質を蛍光標識(フルオレセイン標識)する試薬です。試薬の添加後に細胞を固定し、蛍光顕微鏡でH2O2の局在を観察することができます。また、H2O2が存在する部位の周辺タンパク質を同定・解析することも可能です。

本製品は京都大学工学研究科 浜地教授の研究成果をもとに、フナコシ(株)が製品化し、販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

Hyp-Stamp製品イメージ

図をクリックすると拡大します(拡大図

Hyp-Stamp製品イメージ

まとめ買いバナー

  ☞ 価格表へ  


H2O2解析の重要性について

ROSとH2O2について

活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)はさまざまな生物過程で発生する活性分子種であり、種々の生体分子に対して高い反応性を示します。ROSは主に酸化ストレスの過程において発生し、脂質、タンパク質、DNAなどに対して損傷を与えることで細胞の老化に関与するほか、がん、炎症、心血管疾患、神経変性疾患など、さまざまな疾患の原因にもなります。一方で、ROSは通常の代謝過程においても発生し、多くのシグナル伝達経路の制御など、細胞プロセスに不可欠な分子であることも知られています。ROSの一種であるH2O2は、他のROSに比べて反応性が穏やかで比較的安定な分子です。そのため、H2O2は十分な距離を移動・拡散できる理想的なシグナル伝達物質として振舞うことができ、免疫反応や成長因子の刺激など多様な生理現象を制御しています。これらのことから、細胞内におけるH2O2の挙動を調べることはライフサイエンスにおける重要な課題となっています。

Hyp-Stamp開発の背景

従来、細胞内におけるH2O2解析にはH2O2応答性蛍光プローブが用いられてきました。それらは生細胞内でのH2O2の発生を観察するツールとして有用ですが、H2O2に応答して蛍光がONになった後に細胞内の他の領域に拡散してしまうため、時間の経過とともにH2O2の正確な局在を観察することが困難となります。また、細胞の固定により除去されるため、特定のタンパク質を標的とする抗体と組み合わせた共染色を行うことはできないという問題もありました。一方、Hyp-Stampは、H2O2近傍のタンパク質を蛍光修飾するために固定した細胞での観察が可能であり、細胞内のH2O2の局在をタンパク質レベルで解析することができます。

  ☞ 価格表へ  



目次に戻る

原理

Hyp-Stampは京都大学 浜地教授によって開発された、細胞内のH2O2に応答して周辺タンパク質を蛍光標識する試薬です。Hyp-Stampは分子内にタンパク質結合部位と、蛍光色素フルオロセインを有しています。ただし、タンパク質結合部位はボロン酸エステルで保護されており、そのままではタンパク質との反応は進行しません。H2O2Hyp-Stampのボロン酸エステル部位と反応・脱保護することよって、タンパク質結合部位が活性型(キノンメチド構造)となり、周囲に存在するタンパク質に結合・フルオレセイン標識します。

Hyp-Stamp原理

図をクリックすると拡大します(拡大図

Hyp-StampによるH2O2存在部位選択的なタンパク質フルオレセイン標識


既存のH2O2応答性蛍光プローブは、H2O2と反応して蛍光がONになる仕組みを利用しています。それらは、生細胞内でのH2O2の挙動を観察することはできますが、細胞の固定によりプローブは除去されてしまうため、固定細胞での観察はできません。一方、Hyp-Stampは生細胞での観察はできませんが、固定細胞でH2O2の局在を観察することができるため、免疫染色との併用が可能です。

生細胞 固定細胞
PMA(−) PMA(+) PMA(−) PMA(+)
既存のH2O2
蛍光プローブ
Phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)添加による免疫刺激でH2O2を発生させたマウスマクロファージ様細胞株RAW264.7生細胞の蛍光イメージング像
固定化


固定化操作で
遊離の蛍光色素が
除去される
Phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)添加による免疫刺激でH2O2を発生させたマウスマクロファージ様細胞株RAW264.7固定細胞の蛍光イメージング像
Hyp-Stamp

Phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)添加による免疫刺激でH2O2を発生させたマウスマクロファージ様細胞株RAW264.7細胞の蛍光イメージング像


  ☞ 価格表へ  


目次に戻る

特長

  • H2O2の存在下で、迅速に周辺タンパク質をフルオレセイン標識します。
  • 他の主要な活性酸素種であるスーパーオキサイド(O2-), 一重項酸素(1O2), ヒドロキシラジカル(·OH)と比較してH2O2選択的に反応します。
  • 細胞膜透過性があり、培地に添加するたけで自発的に細胞に取り込まれます。
  • 推奨使用濃度5 μMにおいて、細胞毒性をほとんど示しません。
  • Hyp-Stampフルオレセイン標識されたタンパク質は、細胞固定後に局所観察することができます。特定のタンパク質を標的とした抗体との共染色も可能です。
  • Hyp-Stampフルオレセイン標識されたタンパク質は、抗フルオレセイン抗体による検出や免疫沈降が可能です。
  • 分子式: C41H38BFN2O11
  • 分子量:764.56 g/mol
  • 溶解性:DMSO
  • 蛍光特性:励起 495 nm/蛍光 515 nm(一般的なFITC用フィルターが使用できます)

  ☞ 価格表へ  


目次に戻る

使用例

アプリケーションの分類


組織・細胞試料へのHyp-Stampの添加
Hyp-Stampによるタンパク質標識
細胞・組織の固定 細胞・組織抽出液の作製
免疫染色 抗フルオレセイン抗体で免疫沈降
顕微鏡観察
(☞ 使用例①、②
SDS-PAGE
ウエスタンブロッティング
(☞ 使用例
質量分析によるプロテオミクス解析
(☞ 使用例④

  ☞ 価格表へ  


使用例① マウスマクロファージ細胞株の免疫刺激によって発生するH2O2の局所観察

RAW264.7細胞に免疫刺激(1 μg/ml PMAで30分間処理)を与えた後、5 μM Hyp-stampを添加して30分間培養した。細胞を冷メタノールもしくは4%ホルムアルデヒドで固定したのち、ミトコンドリアタンパク質であるSdha, Hspa9で免疫染色し、共焦点レーザー顕微鏡で局所観察を行った。

拡大
(A)
マウスマクロファージ細胞株の免疫刺激によって発生するH<sub>2</sub>O<sub>2</sub>の局所観察

図をクリックすると拡大します(拡大図

拡大
(B)
マウスマクロファージ細胞株の免疫刺激によって発生するH<sub>2</sub>O<sub>2</sub>の局所観察

図をクリックすると拡大します(拡大図


  ☞ 価格表へ  


マウスマクロファージ様細胞株におけるHyp-Stamp、(A)Sdha, (B)Hspa9の免疫染色との共染色像

Hyp-Stampとこれらタンパク質が部分的に共局在しており、PMA免疫刺激によって発生したH2O2がこれらタンパク質近傍に存在していることが示された。


使用例② マウス海馬スライスのイメージング

マウス海馬スライスをミトコンドリアComplex Ⅱ阻害物質2-thenoyltrifluoroacetone(TTFA)で処理(1 mM, 30 min)して酸化ストレスを与えた後、5 μM Hyp-Stampを添加して1時間インキュベートした。海馬スライスを4%パラホルムアルデヒドで固定し、冷メタノールで透過処理を行った後、共焦点レーザー顕微鏡でイメージングを行った。TTFAによって発生したH2O2の局在が、固定した海馬スライスにおいて観察された。

TTFA(−) TTFA(+)
マウス海馬スライスのイメージング

マウス海馬スライス

マウス海馬スライスのイメージング

図をクリックすると拡大します(拡大図


  ☞ 価格表へ  


使用例③ ミトコンドリア酸化ストレスによるHyp-Stamp標識総タンパク質の解析

HeLa細胞をミトコンドリアComplex Ⅱ阻害物質TTFAで処理(1 mM, 30 min)した後、5 μM Hyp-Stampを添加して30分間培養した。細胞抽出液を作成したのち、SDS-PAGEを行い、フルオレセインの蛍光とCBB染色で観察した。TTFAによる総タンパク質量の変動は見られない一方で、Hyp-Stampラベル化されたタンパク質が増加していることが分かった。

ミトコンドリア酸化ストレスによるHyp-Stamp標識総タンパク質の解析

図をクリックすると拡大します(拡大図

ミトコンドリア酸化ストレスによるHyp-Stamp標識総タンパク質の解析

  ☞ 価格表へ  


使用例④ Hyp-Stampラベル化タンパク質のプロテオミクス解析

RAW264.7細胞に免疫刺激(1 μg/mL PMAで30分間処理)を与えた系(+)、与えなかった系(−)のそれぞれに5 μM Hyp-Stampを添加し、30分間培養した。細胞抽出液を作成したのち、抗フルオレセイン抗体で免疫沈降を行い、In-gel digestionでペプチド溶液を得た。PMA(−)試料にTMT lightタグを、PMA(+)試料にTMT heavyタグを修飾したのち、両者を混合してLC-MS/MS解析で試料間の変動を網羅的に解析した。

プロテオミクス解析の実験手法

図をクリックすると拡大します(拡大図

プロテオミクス解析の実験手法

PMA(+)/(−)によるタンパク質シグナル変化のvolcano plot

図をクリックすると拡大します(拡大図

PMA(+)/(−)によるタンパク質シグナル変化のvolcano plot

Log2(PMA(+)/(−))>1、且つP<0.05のタンパク質を緑色のドットで示している。Sdhaなどのミトコンドリアタンパク質や多くのベシクルタンパク質が同定され、H2O2がこれらタンパク質の近傍に局在することが示唆された。

  ☞ 価格表へ  


目次に戻る

参考文献

  • Zhu, H., et al., "Imaging and profiling of proteins under oxidative conditions in cells and tissues by hydrogen-peroxide-responsive labeling.", J. Am. Chem Soc., 142(37), 15711~15721 (2020). [PMID:32822179]

目次に戻る

価格

[在庫・価格 :2024年04月29日 00時00分現在]

※ 表示されている納期は弊社に在庫が無く、取り寄せた場合の納期目安となります。
詳細 商品名
  • 商品コード
  • メーカー
  • 包装
  • 価格
  • 在庫
  • 法規制等
納期 文献数
Hyp-Stamp <H2O2-Responsive Protein Labeling Reagent>
1週間程度 ※ 表示されている納期は弊社に在庫がなく、取り寄せた場合の目安納期となります。 0
説明文
細胞内の過酸化水素(H2O2)に応答して,H2O2周辺に存在するタンパク質を蛍光標識(フルオレセイン標識)する試薬。試薬添加後に細胞を固定することで,蛍光顕微鏡でH2O2の局在を観察できる。
法規制等
保存条件 -20℃,暗所保存 法規備考
掲載カタログ

製品記事
関連記事

[在庫・価格 :2024年04月29日 00時00分現在]

※ 表示されている納期は弊社に在庫が無く、取り寄せた場合の納期目安となります。

Hyp-Stamp <H2O2-Responsive Protein Labeling Reagent>

文献数: 0

説明文 細胞内の過酸化水素(H2O2)に応答して,H2O2周辺に存在するタンパク質を蛍光標識(フルオレセイン標識)する試薬。試薬添加後に細胞を固定することで,蛍光顕微鏡でH2O2の局在を観察できる。
法規制等
保存条件 -20℃,暗所保存 法規備考
掲載カタログ

製品記事
関連記事

目次に戻る

おすすめ製品記事

お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

製品情報は掲載時点のものですが、価格表内の価格については随時最新のものに更新されます。お問い合わせいただくタイミングにより製品情報・価格などは変更されている場合があります。
表示価格に、消費税等は含まれていません。一部価格が予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承下さい。