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簡単操作で生細胞のゴルジ体を選択的に可視化 GolgiSeeing(Golgi Apparatus Green)

掲載日情報:2023/09/01 現在Webページ番号:70836

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

GolgiSeeingは培地に添加するだけで生細胞のゴルジ体を染色できる蛍光色素です。従来のセラミド系ゴルジ体染色試薬に比べて複雑な染色操作が不要なうえ、小胞体への非特異的局在が抑えられています。

本製品は名古屋工業大学の研究成果をもとに、フナコシ株式会社が製品化し、販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

GolgiSeeing製品概要

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GolgiSeeing 従来試薬
GolgiSeeingと従来のゴルジ体染色試薬との比較

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GolgiSeeing製品概要

生細胞のゴルジ体染色法と課題点

ゴルジ体とは

ゴルジ体(Golgi apparatus)はさまざまな生理機能を示すオルガネラであり、タンパク質の分泌経路の要として知られています。ゴルジ体は特長的な多重に重なった袋状構造を有しており、小胞体との相互小胞輸送を担うcis-Golgi、分泌経路の起点となるtrans-Golgiなど細分化された構造を有しています。ゴルジ体のダイナミックな形態変化は分泌機能において重要であり、ゴルジ体の機能不全は数多くの疾患との関連が示唆されていることから、ゴルジ体の生細胞イメージングでの観察が期待されています。


従来のゴルジ体の染色方法と課題

これまで生細胞でゴルジ体を染色できる手法として大きく2つの手法が活用されてきました。1つ目は蛍光標識セラミド誘導体を用いた蛍光染色法です。セラミド脂質は生合成の過程でゴルジ体に集積することを利用し、蛍光標識セラミド誘導体がゴルジ体の可視化に利用されてきました。しかしながら、ゴルジ体選択性は低く小胞体などにも局在すること、細胞毒性が強いこと、細胞内で容易に代謝されることなどの課題がありました。さらには、ゴルジ体選択的な染色には、あらかじめ蛍光標識セラミド誘導体とアルブミンの複合体を調製し、温度コントロールのもと煩雑な段階的染色プロトコールを行う必要があり、操作面でも課題があげられています。2つ目の染色手法は、ゴルジ体特異的発現タンパク質(Giantin、N-acetylgalactosaminyltransferaseなど)に蛍光タンパク質を融合して過剰発現させる方法です。この方法は、特異性の高いゴルジ体の可視化ができる一方で、事前に遺伝子導入が必要なため見たい時にすぐ観察ができないこと、特定マーカー遺伝子の過剰発現による生理機能への影響が懸念されています。このように、ゴルジ体の生細胞イメージング手法にはそれぞれ課題がありました。


GolgiSeeingについて

GolgiSeeingは、名古屋工業大学 築地真也教授らにより見出されたゴルジ体選択的な局在移行モチーフを利用した新規の低分子蛍光試薬です。従来の蛍光標識セラミド誘導体とは異なり、本製品を培地に添加して10分程度処理するだけの簡便なプロトコールでゴルジ体を染色することが可能です(原著論文)。また、蛍光標識セラミド誘導体に比べて高いゴルジ体特異性を示すため、ゴルジ体に着目した解析ができます。遺伝子操作不要で過剰発現による生理機能へのバイアスがなく、好きなタイミングで目的細胞のゴルジ体を可視化することができるため、より生理的な条件下でゴルジ体の動的挙動が観察できます。


GolgiSeeingと従来のゴルジ体染色法との比較

分類 低分子試薬 過剰発現系
染色方法 GolgiSeeing 蛍光標識セラミド誘導体 蛍光タンパク質融合
ゴルジ体局在タンパク質
ゴルジ体特異性 高い 低い
(小胞体のバックグラウンドが強い)
高い
プロトコール 簡単 煩雑
(温度コントロールのもと段階的な染色)
簡単
(遺伝子トランスフェクション)
所要時間 10分程度 数時間単位
(段階的染色プロトコールの時間)
半日以上
(目的タンパク質の発現にかかる時間)
生理機能への影響 低い 高い
(添加した蛍光標識セラミド誘導体の毒性や代謝反応)
高い
(発現タンパク質の影響)

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特長

  • パルミトイル化脂質修飾を利用してフルオレセインをゴルジ体に集積する新規ゴルジ体染色試薬です*1
  • 蛍光特性:(フルオレセイン)Ex 480 nm/Em 520 nm*2
  • 培地に添加するだけで染色が可能です。従来の蛍光標識セラミド系ゴルジ体染色試薬の煩雑な染色操作が不要で、短時間で可視化できます。
  • 従来の蛍光標識セラミド系ゴルジ体染色試薬に比べて小胞体への非特異的染色および細胞毒性が抑えられます。
  • 非洗浄条件下では長時間観察が可能ですが、ゴルジ体だけでなく細胞膜も染色されます。この特性を利用し、細胞形態とゴルジ体の動的挙動の同時観察に応用ができます*3
  • 生細胞のゴルジ体観察に優れています*4
  • *1 細胞内の内在性パルミトイル化脂質修飾活性を利用する原理のため、パルミトイル化を阻害するような薬剤または刺激は染色性を妨げる可能性があります。また、チオールのアルキル化剤はパルミトイル化修飾を阻害するため併用できません。
  • *2 GolgiSeeingはジアセチルフルオレセインを有しており、このままでは消光状態にあります。細胞内でアセチル基が脱離することでフルオレセインとなり緑色蛍光を発するようになります。
  • *3 非特異的な試薬吸着の防止のため、洗浄操作にはBSA含有培地の使用を推奨しています。PBSなどのバッファーでは十分に除去できない場合があり、バックグラウンドシグナルなど悪影響を示す可能性があります。
  • *4 固定細胞での使用、生細胞染色後の固定には使用できません。

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原理

GolgiSeeingの原理A GolgiSeeingの原理B

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GolgiSeeingはジアセチルフルオレセインとN-ミリストイル化Gly-Cysジペプチドをリンカーで繋いだ構造を有し、ペプチド鎖の各アミド結合はメチル化されたユニークな構造を示します。GolgiSeeingは細胞内でいくつかのプロセスを経てゴルジ体選択的蛍光プローブとして機能します。ジアセチルフルオレセインは細胞膜透過性を向上するための修飾フルオレセインで消光状態にあり、使用前のGolgiSeeingは蛍光をほとんど発しません。
GolgiSeeingは細胞膜を透過し細胞内に入ったのち、内在性の各種エステラーゼによりアセチル基が脱離し、フルオレセインの緑色蛍光が回復します。N-ミリストイル基の効果により主に小胞体(ER)およびゴルジ体に一過的に局在し、内在性のパルミトイル化修飾酵素の働きによりCys側鎖にパルミチン酸が付加されることで、ゴルジ体選択的局在モチーフが形成されます。本来パルミトイル化修飾はゴルジ体と細胞膜に局在化させることが知られますが、3つのメチル基の効果により平衡がゴルジ体に偏り、これによりGolgiSeeingはゴルジ体を選択的に可視化することができます。

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参考データ

GolgiSeeingとセラミド系ゴルジ体染色試薬の比較

GolgiSeeing 蛍光標識セラミド系試薬
培地添加のみ 培地添加のみ 段階的染色プロトコル
GolgiSeeing 培地添加のみ 蛍光標識セラミド系試薬 培地添加のみ 蛍光標識セラミド系試薬 段階的染色プロトコル
GolgiSeeing 培地添加のみ(Zoom) 蛍光標識セラミド系試薬 培地添加のみ(Zoom) 蛍光標識セラミド系試薬 段階的染色プロトコル(Zoom)

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HeLa細胞をGolgiSeeingおよび従来の蛍光標識セラミド系試薬(BSA複合体)で染色した。GolgiSeeingは、培地に10分間添加したのちに培地交換しただけでゴルジ体選択的な染色が見られた。一方、蛍光標識セラミド系試薬では、培地に添加しただけではERとの境目が不十分であり、推奨される段階的染色プロトコール(1時間程度)を実施するとゴルジ体への選択性は向上するものの、依然としてERの非特異的染色も観察された。

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オルガネラ特異性の評価

HeLa細胞をGolgiSeeingおよび各種オルガネラマーカー(ゴルジ体はmCherry-Giantin融合タンパク質の過剰発現を利用し、ER、ミトコンドリア、リソソームは各蛍光染色試薬を使用)で共染色した。GolgiSeeingで見られる蛍光は、ゴルジ体マーカーとよく一致し、一部がERと共局在することが観察された。一方で、ミトコンドリアやリソソームとはほとんど一致しないことが分かる。

GolgiSeeing   Organella marker   Merge
Golgi
GolgiSeeing-Golgi Organella_marker-Golgi Marge-Golgi
ER
GolgiSeeing-ER Organella_marker-ER Marge-ER
Mitochondria
GolgiSeeing Mitochondria Organella_marker Mitochondria Marge Mitochondria
Lysosome
GolgiSeeing Lysosome Organella marker Lysosome Marge Lysosome

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洗浄有無による細胞膜染色性の差異

HeLa細胞にGolgiSeeing(10 μM)を10分間処理し、洗浄操作の実施の有無における生細胞染色像を共焦点レーザー顕微鏡で比較した。洗浄操作を実施しない場合、ゴルジ体に加えて細胞膜の染色が観察されたが、洗浄操作を行った場合は細胞膜の染色は見られなかったため、余剰な試薬は洗浄操作で除去できることが分かった。ゴルジ体と細胞膜は識別が容易に可能であるため、洗浄操作をせずに観察を行うことで、細胞形態とゴルジ体を同時に観察することができる。

洗浄操作はBSA含有培地の使用を推奨しています。

洗浄有無による細胞膜染色性の差異

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さまざまな細胞の染色例

4種類の細胞種(HeLa、COS-7、HEK293、Jurkat)に対してGolgiSeeing(10 μM)を10分間処理し、洗浄後に共焦点レーザー顕微鏡で観察を行った。いずれの細胞においてもゴルジ体に高い選択性を示した(上段:蛍光観察、下段:蛍光+DIC重ね合わせ)。

HeLa COS-7 HEK293 Jurkat
HeLa細胞染色例 COS-7細胞染色例 HEK293細胞染色例 Jurkat細胞染色例
HeLa細胞染色例 COS-7細胞染色例 HEK293細胞染色例 Jurkat細胞染色例

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細胞毒性の評価

12ウェルプレートにHeLa細胞を0.5 x 105 cells/wellで播種し、GolgiSeeing処理および未処理条件下で48時間インキュベートした。2、24、48時間経過時点においてセルカウンターにより細胞数を測定した。GolgiSeeingを処理した場合においても、GolgiSeeingの未処理の場合と同様の細胞増殖が観察された。

細胞毒性の評価

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アプリケーションデータ

ゴルジ体生細胞イメージング

ガラスボトムディッシュに播種したHeLa細胞にGolgiSeeing(10 μM)を10分間処理し、洗浄操作で余剰な試薬を除去した後、共焦点レーザー顕微鏡(Ex 488 nm/Em 500~600 nm)にて30分間タイムラプスイメージングを行った。ゴルジ体のダイナミックな挙動が観察された。

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Brefeldin A処理によるゴルジ体消失の生細胞イメージング

ガラスボトムディッシュに播種したHeLa細胞にあらかじめGolgiSeeing(10 μM)でゴルジ体を染色し、洗浄操作で余剰な試薬を除去した。ここにゴルジ体機能の阻害物質であり、またゴルジ体の崩壊を促すBrefeldin A(終濃度1 μM in 0.1% DMSO)、またはネガティブコントロールとしてDMSO(終濃度0.1%)を添加し、共焦点レーザー顕微鏡(Ex 488 nm/Em 500~600 nm)にてタイムラプスイメージングを行った。Brefeldin A処理により経時的にGolgiSeeingの蛍光が減衰し、ゴルジ体形態が消失する様子が観察された。

0 min   6 min   12 min   18 min
GolgiSeeing
Brefeldin A
Brefeldin A 0 min Brefeldin A 6 min Brefeldin A 12 min Brefeldin_A-18 min
DMSO
DMSO 0 min DMSO 6 min DMSO 12 min DMSO 18 min

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有糸細胞分裂におけるゴルジ体の分配過程の生細胞イメージング

ガラスボトムディッシュに播種したMDCK細胞にGolgiSeeing(2.5 μM)を添加し、洗浄操作を行わずに共焦点レーザー顕微鏡(Ex 488 nm/Em 500~600 nm)にて2時間タイムラプスイメージングを行った。洗浄操作を行っていないため、GolgiSeeingによりゴルジ体と細胞膜の両方が可視化され、細胞の形態が観察できる。分裂時に一過的にゴルジ体が消失し、娘細胞で再構成される様子が観察された。

0 min   30 min   60 min   90 min   120 min
GolgiSeeing
(wash −)
0 min 30 min 60 min 90 min 120 min

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原著論文

  • Sawada, S., et al., "Palmitoylation-Dependent Small-Molecule Fluorescent Probes for Live-Cell Golgi Imaging", ACS Chem. Biol., 18(5), 1047~1053 (2023). [PMID:37098188]

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GolgiSeeing <Golgi Apparatus Green>
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説明文
培地に添加するだけで生細胞のゴルジ体を染色できる緑色蛍光色素。従来のセラミド系ゴルジ体染色試薬に比べて複雑な染色操作が不要なうえ,小胞体への非特異的局在が抑えられている。一般的なFITCの観察条件で使用できる。
法規制等
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GolgiSeeing <Golgi Apparatus Green>

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説明文 培地に添加するだけで生細胞のゴルジ体を染色できる緑色蛍光色素。従来のセラミド系ゴルジ体染色試薬に比べて複雑な染色操作が不要なうえ,小胞体への非特異的局在が抑えられている。一般的なFITCの観察条件で使用できる。
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