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パーキンソン病研究に有用なα-シヌクレイン(SNCA)KO細胞株(ATCC® Michael J. Fox Foundation SNCA Knockout Cell Line Collection

掲載日情報:2024/04/10 現在Webページ番号:70244

ATCC®は、マイケル J.フォックスパーキンソン病研究財団(MJFF, The Michael J. Fox Foundation for Parkinson’s Research)の協力により、三重複α-シヌクレイン(α-synuclein, SNCA)遺伝子を有するドナー(男性、皮膚)由来の人工多能性幹細胞(iPSC, induced pluripotent stem cell)を用い、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9によるフレームシフト変異でSNCA遺伝子を機能的に欠失させたisogenic細胞株を提供しています。これらの細胞株は、内因性遺伝子座からのSNCA遺伝子発現量を研究するために使用できる細胞パネルの一部として、パーキンソン病の研究に応用できます。

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SNCA ノックアウト細胞株の開発の背景

マイケル J.フォックスパーキンソン病研究財団(MJFF)とは(Dr. Clark)

マイケル J.フォックスパーキンソン病研究財団(MJFF, The Michael J. Fox Foundation for Parkinson’s Research)は、2000年に俳優のMichael J. Foxにより設立され、パーキンソン病の治療法の研究に専念しています。これまでに、MJFFは研究プログラムに10億ドル以上の資金を供与し、200種類のツールプログラムの利用を可能にしました。MJFFはツールプログラムを2つの方法で提供しています。その一つがATCC®を通して利用可能なLRRK2変異体MEF株などの新しいツールを作製するプログラムで、もう一つはMJFFスポンサードプログラムです。これは、Dr. Birgitt Schüleが作製したドナー由来のiPSC株など、外部の研究者によって開発されたツールプログラムを特定し、ATCC®などの貯蔵機関を通して広く配布するものです。


SNCA遺伝子三重複ドナーについて(Dr. Schüle)

SNCA遺伝子ノックアウトのアイソジェニック細胞株は、アイオワ家系の子孫であるSNCA遺伝子の三重複を有するドナーに由来しています。この家族は、常染色体優性遺伝のパーキンソン病のため、1920年代からMayo Clinicで経過観察を受けてきました。アイオワ家系は、常染色体優性遺伝パターンに従う重度のパーキンソニズムの明確なパターンを示し、発症が異常に早く、20~48歳、平均34歳で症状が現れます。この家系では病気の進行は早く、罹患者は認知症になり、発症後2~12年以内に亡くなります。罹患者の死後分析により、黒質の著しい変性、皮質下および皮質領域の両方におけるレビー小体の広範な存在、皮質の空胞化、神経細胞の消失、および海馬の神経膠症が明らかになり、またSNCA染色により、皮質領域における神経細胞病変は、レビー小体型認知症の最も顕著な症例で観察される重症度を上回ることがわかりました。

2003年、Singletonらは、アイオワの家系において、染色体4q21上に位置するSNCA遺伝子座の三重複を特定しました。当初はPARK4と呼ばれ、この三重複のサイズは1.7 Mbで、合計17個の遺伝子が含まれます。この三重複は、1つのアレル上のSNCA遺伝子に特異的に影響を及ぼし、その結果、脳内でのSNCAタンパク質の発現が2倍に増加します。この発見は、パーキンソン病に顕著な神経変性状態の誘発において、野生型SNCA発現の上昇が極めて重要な役割を果たしていることを示しています。この分野における第一人者のDr. James Williamは、罹患者に見られる病気の経過と進行、神経病理学的な変化から、これらのSNCA遺伝子の三重複形成の症例を"Parkinson's on steroids"と名付けました。


SNCA遺伝子ノックアウトのアイソジェニック細胞株の作製(Dr. Schüle)

2009年に、私たちはドナーから皮膚線維芽細胞を採取し、リプログラミングさせることで人工多能性幹細胞 (iPSC)を作製することに成功しました。これらのiPSCから分化させたニューロンは、同ドナー由来のコントロール細胞と比較すると、酸化ストレス、ミトコンドリアの機能、およびニューロンへの分化プロセスにおいて注目すべき変化を示しました。

SNCA遺伝子発現の影響を調査するために、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いてアイソジェニックモデルを作製しましました。次に、アイオワ家系に属するドナー由来のヒトiPSCを作製し、さらにそのiPSC内のSNCAコード領域のエクソン2のフレームシフト変異を導入し、それぞれのSNCA遺伝子内に異なるフレームシフト変異を有する複数のクローンの作製、およびそれらの特性評価を行いました。この革新的なフレームシフト変異を持つアイソジェニックSNCA遺伝子発現モデルを用いることにより、さまざまなレベルのSNCA発現に関連する生理学的影響や有害な結果を包括的に探索することができるようになりました。厳密性と再現性に基づいて、各SNCA遺伝子のバリアントに対してそれぞれ異なるフレームシフト変異を有する複数のクローンを意図的に作製したことにより、実験計画の一貫性と信頼性が確保され、さらに実験の構築や実施する際の柔軟性も高まります。


SNCA遺伝子ノックアウトのアイソジェニック細胞株の応用について(Dr. Schüle)

SNCAタンパク質の蓄積と凝集は、パーキンソン病の病態生理学において極めて重要な現象であり、その結果、神経機能の障害が生じてドーパミン作動性神経細胞の死滅に至ります。パーキンソン病における主要な役割から、SNCAは、疾患の経過を変化させる新しい治療法の開発標的となることが期待されます。これらの知見は、SNCA量を減少させるか、細胞内の有毒なSNCA種の除去が、パーキンソン病やその他のSNCA関連疾患の進行を抑える、回復、または潜在的な予防のための有望な戦略をとなる可能性があります。しかし、SNCAの下方制御が神経保護にどの程度有効であるかは、はっきりとわかってはいません。

SNCA遺伝子発現量が確認されているアイソジェニックヒトiPSC株は、細胞生物学やオミクス分析を用いたSNCAのさまざまなタンパク質レベルの試験、スクリーニングアッセイの確立、および医薬品の開発の促進に役立てることができ、分子経路から潜在的な治療介入まで、さまざまな側面での探索が可能になります。


参加者

Elisia Clark, PhD

マイケル・J・フォックス・パーキンソン病研究財団
研究プログラム担当アソシエイト・ディレクター

Birgitt Schüle, MD

スタンフォード大学医学部病理学教室准教授

Brian Shapiro, PhD

マーケティングセグメントマネージャー(ATCC)
専門:腫瘍学

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特長

  • 由来動物種:ヒト(白人男性)
  • 由来組織:皮膚
  • 培養形態:接着細胞培養
  • 疾病:パーキンソン病(三重複SNCA遺伝子を保有)
  • 細胞数:≧1.0×106 cells/vial(1 ml)
  • 下記のウイルス陰性を確認しています。
    • Cytomegalovirus(CMV) 
    • Epstein-Barr virus(EBV) 
    • Hepatitis B virus(HBV) 
    • Human Immunodeficiency virus(HIV) 
    • Human papillomavirus(HPV)
  • 細菌、ウイルス、マイコプラズマ陰性を確認しています。
  • 細胞の品質検査、細胞表面マーカー(フローサイトメトリー)およびSTR試験により検証済みです。

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製品ラインナップ

  ☞ SNCA3x_4KO     ☞ SNCA3x_3KO     ☞ SNCA3x_2KO     ☞ SNCA3x_1KO     ☞ SNCA3x_0KO   

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アレルKO数 細胞株名 ATCC® No. 製品画像
Low Density High Density
4 SNCA3x_4KO_C1 SNCA3x_4KO_C1™ SNCA3x_4KO_C1 Low Density🔍 SNCA3x_4KO_C1 High Density🔍
SNCA3x_4KO_C2 SNCA3x_4KO_C2™ SNCA3x_4KO_C2 Low Density🔍 SNCA3x_4KO_C2 High Density🔍
3 SNCA3x_3KO_C1 SNCA3x_3KO_C1™ SNCA3x_3KO_C1 Low Density🔍 SNCA3x_3KO_C1 High Density🔍
2 SNCA3x_2KO_C1 SNCA3x_2KO_C1™ SNCA3x_2KO_C1 Low Density🔍 SNCA3x_2KO_C1 High Density🔍
SNCA3x_2KO_C2 SNCA3x_2KO_C2™ SNCA3x_2KO_C2 Low Density🔍 SNCA3x_2KO_C2 High Density🔍
1 SNCA3x_1KO_C1 SNCA3x_1KO_C1™ SNCA3x_1KO_C1 Low Density🔍 SNCA3x_1KO_C1 High Density🔍
SNCA3x_1KO_C2 SNCA3x_1KO_C2™
0

(wild type)
SNCA3x_0KO_C1 SNCA3x_0KO_C1™ SNCA3x_0KO_C1 Low Density🔍 SNCA3x_0KO_C1 High Density🔍
SNCA3x_0KO_C2 SNCA3x_0KO_C2™ SNCA3x_0KO_C2 Low Density🔍 SNCA3x_0KO_C2 High Density🔍

各細胞株の詳細は下記の文献をご覧下さい。


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参考文献

  • Zafar, F., et al., "Isogenic human SNCA gene dosage induced pluripotent stem cells to model Parkinson’s disease.", Stem Cell Res., 60, 102733, (2022). [PubMed: 35263701]

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