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1 台で遺伝子実験を手軽に行える「Bento Lab」開発者インタビュー(Bento Bioworks 社)

掲載日情報:2020/08/13 現在Webページ番号:69332

Frontiers

Vol. 62 初めての人でも簡単に『科学』を始められるものを

Bento Bioworks 社はイギリスのロンドンに拠点を置き、1 台で遺伝子実験を手軽に行える「Bento Lab」の開発・製造を行っているメーカーです。今回は会社創業者の一人であるPhilipp Boeing 氏よりお話を伺いました。

Bento Bioworks社の会社創業者の一人Philipp Boeing 氏
Philipp Boeing 氏

健康維持のために、2 年前からロンドン交響楽団合唱団に入団しました。今では著名な指揮者や合唱団の方とコンサートを行っています。私が仕事を続ける上でとても大切なリフレッシュする時間です。


Bento Lab の開発に至った理由を教えて下さい。

共同創業者のBethan Wolfenden 氏と私がユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの学生だった頃、学術的なバイオサイエンスとアマチュアの市民科学の交流に興味を持ったのが始まりでした。
私とBethan Wolfenden 氏はThe International Genetically Engineered Machine competition(iGEM)に参加していたため、毎年夏の2ヶ月間は大学に行って研究に取り組んでいました。しかし、それが過ぎると取り組むことがなくなってしまうため、少々物足りなさを感じていました。
そんな時、私たちはこれまでに、バイオ実験を始めたいと思っていても、どうやって始めたらいいのかわからないという人たちにたくさん出会ってきたことを思い出しました。そこで、初めてバイオサイエンスに関わる人でも、簡単かつ役に立つ科学実験ができる新しいタイプの研究方法をデザインするプロジェクトを立ち上げました。アメリカやヨーロッパの様々なアマチュアの研究室を訪問し、同じ志を持った人たちと出会い、自分たちのオリジナルの実験機器を作り始めることにしました。
最初のBento Lab は、ブリーフケースにシンプルなヒートブロックと、3D プリンターで作製されたローター付きの遠心分離機、ゲルトレイを詰め込んだものでした。このBento Lab の初期のプロトタイプを学会やMaker Fair のイベント、ミーティングなど様々な場所で披露していました。そうしていくうちに、このような機器が、バイオサイエンスの学習だけでなく、フィールド調査や、微生物学者、鳥類のブリーダー、地酒メーカーなどのプロの研究者たちのコミュニティにも役立つことに気付きました。


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Bento Lab の名前の由来を教えて下さい。

Bento Lab の最初のプロトタイプをデザインしたのは、私が奨学金をもらって日本に一年間滞在し、バイオメディア・アートのプロジェクトに取り組む直前でした。当時、私は「科学を身近なものにしたい、親しみやすいものにしたい」という思いを表現するため、技術的な難しい名前ではなく、シンプルな名前を模索していました。
そんなある日、デザインした最初のプロトタイプが日本のお弁当に似ていることに気付きました。チームの中でも「Bento」という名前に賛成の声が多かったため、 「Bento Lab」と名付けることにしました。
私にとって、Bento の名前は「シンプルでエレガント、かつ入手しやすいバイオサイエンスツールを作りたい」という私たちの 使命を思い出させてくれます。私たちは日本らしさが詰め込まれた弁当当文化を心から尊敬しており、そのアプローチを製品に取り入 れたいと考えています。
  BentoLab


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Bento Lab の開発エピソードを教えて下さい。

日本に住んでいた時に、Slush Tokyo というスタートアップ・カンファレンスでBento Lab を発表したら面白いんじゃないかと 思い、参加しました。Bento Lab はとても高評価で、私たちはファイナリストの一人になりました。 実のところ、当初Bento Lab は趣味の一環でした。面白いコンセプトを持っているとは思っていたのですが、私たちにはそれを お客様に喜んでいただけるような持続可能なビジネスに変えるスキルがありませんでした。
しかし、Slush Tokyo での成功から、Bento Lab を本物のビジネス にしてみようと考えました。すぐに世界中でBento Lab のベータテストに投資してくれる人々を見つけ、キックスターターキャンペーンという名のもと、15 万ポンド以上の資金を集めました。
自分たちの経験が浅いことはわかっていたので、工業デザインや製造会社と提携して進めていました。
ビジネスを始めて最初の1 年間は良い流れに乗っていたのですが、その後は様々な課題に悩み、苦労しました。今思い返せば、 最初は会社の経営や管理の仕方を学べばよかったと思います。バイオサイエンスを身近なものにするという課題には没頭できたのです が、優れた製品を作り、お客様を満足させる会社づくりをするという課題に取り組めるようになるまでには、しばらく時間がかかっ てしまいました。

Bento Bioworks社の会社創業者のPhilipp Boeing 氏とBethan Wolfenden 氏

Bento Bioworks社の会社創業者のPhilipp Boeing 氏とBethan Wolfenden 氏

Bento Labデザインチーム

Bento Labデザインチーム


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どんな方々がBento Lab を使用していますか?

Bento Lab を選ぶ人は皆、普通とは違う考えを持ち、クリエイティブで、バイオテクノロジーの未来にワクワクしている人だと私は思います。Bento Lab は従来の実験装置とは全く異なる新しいアプローチの方法です。私たちのお客様は、そうした新鮮な方法で伝統を 見ようとする人々だと思います。
また、お客様の中には、持ち運びやすい装置を必要としているプロの科学者もいます。フィールドにて小型デバイスを用いてシークエンス用の試料を準備したり、Bento Lab を用いてPCR を行ったりする研究者は多いです。最近、Bento Lab をご利用いただいている研究者の一人が動物の寄生虫のフィールドシークエンスの可能性について、論文を発表しました(Ineke E. Knot., et al., Front. Ecol. Evol.( 2020).)。
一方で、遺伝子工学を学んだり、または教えたりするためにBento Lab を採用されているお客様もたくさんいます。私たちは楽器を習うくらい気軽にバイオサイエンスを学べるようにしたいと考えているので、遺伝子工学を学ぶコミュニティラボや学校、個人の学習者に Bento Lab と私たちのプロジェクトキットを使っていただけることにとても興奮しています。

New Scientist Liveでのワークショップの様子

New Scientist Live で教員、保護者、学生を対象とした遺伝子工学の体験型ワークショップを開催した。

Bento Labの梱包作業

日本に発送されるBento Lab


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Future plan

最近では、Bento Lab をすべて社内で生産しているので、お客様からの意見をもとに、 より多くのプロトタイプや開発ができるようになりました。
環境モニタリング、食品分析、 教育など、さまざまな分野でBento Lab を使用しているお客様をサポートするために、 よりいっそう努力していきたいと思います。
また、地域社会と密接に協力して、より多くの人に 実践的な遺伝子工学の可能性を伝えていきたいと考えています。


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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 機器・消耗品担当)

kiki@funakoshi.co.jp

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