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光で制御可能!細胞分裂前中期の染色体輸送調節試薬 PCEI-HU <Photoswitchable CENP-E Inhibitor>

掲載日情報:2020/04/06 現在Webページ番号:69321

フナコシ /
フナコシ株式会社

有糸細胞分裂のM期において,染色体輸送モータータンパク質(CENP-E)の活性を光照射によりOn/Offすることで,染色体移動を可逆的に抑制・再開させることのできる試薬です。
可視光照射で染色体の移動を抑制し,UV光照射で再開させることができます。染色体が完全に赤道面に整列するまでは繰り返し調節可能です。M期の染色体移動に関与するタンパク質の機能評価や紡錘体形成チェックポイント(SAC)の研究に有用です。

本製品は北海道大学 玉置信之教授,上原亮太准教授らの研究成果をもとに,フナコシ株式会社が製品化し,販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

モータータンパク質 CENP-E 活性を利用した染色体輸送の調節

モータータンパク質 CENP-E 活性を利用した染色体輸送の調節 (クリックで開閉します)

有糸細胞分裂ではS期に複製された姉妹染色体が分裂期の進行に伴って紡錘糸微小管に沿って細胞の中央部分(赤道面;metaphase plate)に輸送されます。この時,すべての染色体が赤道面に整列した場合のみ後期に進み,姉妹染色体は娘細胞に均等分配されます。赤道面への染色体の整列に異常をきたすと娘細胞に正確に遺伝情報が分配できないため,中期と後期の間にはチェックポイントが存在し,紡錘体形成チェックポイント(Spindle Assembly Checkpoint;SAC)と呼ばれています。紡錘体形成チェックポイントには多数のタンパク質が関与すると考えられており,その機構解明が期待されています。
CENP-E(Centromere-associated protein-E;Kinesin-7)は染色体の赤道面への輸送の根幹を担うと考えられているキネシンファミリーモータータンパク質で,その機能を欠損させると染色体はうまく赤道面に輸送されないことが分かっています。本試薬PCEI-HUは,北海道大学電子科学研究所の玉置信之教授,先端生命科学研究院の上原亮太准教授らにより開発された「光応答性CENP-E阻害剤(Photoswitchable CENP-E Inhibitor)」で,CENP-Eの可逆的な活性制御により染色体の赤道面への整列を抑制し,有糸分裂を前中期で停止・再開させることのできる試薬です。試薬添加後はCENP-Eが阻害され染色体輸送が抑制されますが,UV光照射によりCENP-E活性が回復することで染色体の輸送が再開されます。続けて可視光照射によりCENP-Eの活性を阻害し染色体の輸送を再度抑制することができます。全染色体の赤道面への整列が完了するまで,UV光/可視光照射により繰り返し調節可能です。微小管形成阻害剤などを用いることで有糸分裂を一斉に停止させる従来の技術とは異なり,光を用いることで任意のタイミング,または狙った細胞において染色体輸送を制御できることから,M期における種々のタンパク質の機能解析,紡錘体形成チェックポイントに関与するタンパク質の機能解析に有用です。

MEMO モータータンパク質 CENP-E 活性を利用した染色体輸送の調節


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原理

PCEI-HUは既知のCENP-E阻害剤の基本骨格に光異性化反応を示すアゾベンゼン構造を導入した化合物です。UV光および可視光を照射することで,アゾベンゼン部位がcis-trans光異性化反応を起こし,構造が大きく変化するため,CENP-E阻害能に大きく差が生じます。これによりCENP-Eの活性を可逆的に制御可能です。

PCEI-HUの原理

注意点
染色体の赤道面への輸送が完了後は,本試薬では染色体の輸送を制御することはできません。UV光照射後の反応時間には注意が必要です。詳しくはアプリケーションデータをご参照ください。

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原著論文

Mafy, N. N.; Matsuo, K.; Hiruma, S.; Uehara, R.; and Tamaoki, N., J. Am. Chem. Soc., 142, 1763~1767 (2020).
Photoswitchable CENP-E Inhibitor Enabling the Dynamic Control of Chromosome Movement and Mitotic Progression.

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特長

  • 光異性化によりモータータンパク質CENP-Eの阻害能が変化する化合物です。可視光照射後にCENP-E阻害型,UV光照射後にCENP-E非阻害型に変換できます。(照射光について詳しくは実験上の注意点をご確認ください。)
  • 納品時粉末状態の化合物CENP-E阻害型として存在します。PCEI-HUは細胞に添加した後,UV光を照射するまではCENP-E阻害型として機能します。
  • 可視光照射後はモータータンパク質CENP-Eを阻害し染色体の輸送が抑えられます。
  • UV光照射後はモータータンパク質CENP-Eが活性状態となり,染色体の赤道面への輸送が進みます。
  • 可視光/UV光照射による制御は繰り返し可能です。
    注:染色体の赤道面への整列が完了した後は,本試薬では染色体の輸送を制御することができません。

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実験上の注意点

本試薬の保存方法

本試薬は遮光状態で保管してください。特にDMSOストック溶液調製後は小分注し,それぞれ遮光環境下で保管してください。環境光による異性化反応を抑えるため,できるだけ1回で使い切ることを推奨しています。

光照射について

  • UV光:350~380 nmの光照射を推奨しています。
    例:365 nmの光照射の場合33 mW/cm2,25秒程度でCENP-E非阻害型に変換できることを確認しています。
  • 可視光:480~530 nmの光照射を推奨しています。
    例:510 nmの光照射の場合117 mW/cm2,35秒程度でCENP-E阻害型に変換できることを確認しています。

いずれも照射する光の波長によって照射条件は異なりますので,上記を参考にお使いの実験系に応じてご検討ください。

光異性化平衡について

CENP-E阻害型CENP-E非阻害型は光異性化の平衡状態にあり,十分なUV光(365 nm)照射後のCENP-E阻害型CENP-E非阻害型は7%/93%,十分な可視光(510 nm) 照射後のCENP-E阻害型CENP-E非阻害型は86%/14%と見積もられています。光照射により完全に片方に変換できるわけではありませんのでご注意ください。

UV照射後のCENP-E非阻害型の安定性

UV照射後のCENP-E非阻害型は37℃暗所下において少なくとも24時間安定なことが確認されています。

ライブイメージングによるタイムライプス観察時の注意

本試薬PCEI-HUは光応答性試薬のため,ライブイメージングでタイムラプス観察する際には,観察蛍光波長に注意が必要です。観察時の励起波長により阻害活性が変化する可能性があります。励起波長630 nm以上の近赤外蛍光色素・蛍光タンパク質であれば本試薬のcis-trans光異性化反応に影響なくタイムラプス観察が可能です。

長期培養による細胞毒性について

CENP-E阻害型の条件下で長時間培養すると細胞分裂が停止し,紡錘体形成チェックポイントにより細胞死が誘導される可能性があります。
参考:PCEI-HUの長期培養における細胞毒性をご参照ください。



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参考データ

PCEI-HUの光応答性と繰り返し変換効果

■PCEI-HUの光応答性と繰り返し変換効果
左:PCEI-HUの光照射前(w/o light),UV光照射後,可視光(Vis)照射後のUVスペクトル。350 nm前後のピークに大きく差があることが分かる。
右:UV光照射,可視光照射を繰り返し行った際の338 nmの吸光度を測定。PCEI-HUの光異性化は繰り返し誘導できることが分かる。



CENP-E阻害データ

■PCEI-HUの光依存的なCENP-E活性(ATPase活性)の阻害能
精製CENP-Eタンパク質に対しPCEI-HUを各濃度で添加し,ATPase活性を観察した。光照射なし(w/o light),UV照射および可視光(Vis)照射時のIC50を算出したところ,UV光照射時のPCEI-HUは,Vis照射時に比べおよそ10倍程度ATPase阻害活性が低い。



■PCEI-HUの長期培養における細胞毒性
PCEI-HU(終濃度 1.1 μM)を添加後,UV光または可視光を照射し,42時間培養後の細胞毒性を評価した。光照射していない場合(w/o light; CENP-E阻害型)と可視光照射後(CENP-E阻害型)ではいずれも約1 μMにて顕著な細胞毒性を示したが,UV照射後(CENP-E非阻害型)では約1 μM添加時の細胞毒性は抑えられていた。推奨濃度1 μM,数時間単位のタイムスケールにおいては,ほとんど細胞毒性を示さずに使用できます。



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アプリケーションデータ

光照射による染色体・CENP-Eの局在観察

HeLa細胞にPCEI-HU (1 μM)およびMG132(20 μM)*1 を添加し下記の3つの条件で培養し,PFAで固定化処理した。免疫染色法でCENP-E,α-tubulinおよび染色体(DAPI染色)を観察した。
*1MG132は後期への進行阻害剤として使用
PCEI-HUを添加し2時間培養後固定化 = 図のw/o light
PCEI-HUを添加し2時間培養⇒ UV光照射後30分間培養後固定 = UV irradiation
PCEI-HUを添加し2時間培養⇒UV光照射後5分培養⇒可視光照射後30分間培養
= Vis irradiation
条件①でPCEI-HUを添加後光照射せずに培養するとPCEI-HUはCENP-E阻害型として機能し,高頻度で染色体の配置異常が観察された。その際のCENP-Eは両極に濃縮していた。一方,条件②でUV照射しCENP-E非阻害型に変換後に観察すると染色体の赤道面への整列が優位に観察され,CENP-Eも赤道面に局在が観察された。条件③でさらに可視光照射するとPCEI-HUは再度CENP-E阻害型に変換され,条件①同様に高頻度の染色体異常配置が確認され,CENP-Eも両極に局在していた。
以上の結果より,光照射により染色体の配置異常およびCENP-Eの局在を制御できることが分かる。

光照射による染色体・CENP-Eの局在観察

生細胞における繰り返し光照射による染色体輸送制御

LLC-PK1細胞に1 μM 近赤外DNA染色試薬(SiR-DNA)を添加し,染色体を可視化した。その後,PCEI-HU(1 μM)およびMG132(20 μM)を添加し2時間暗所で培養したあと,UV光及び可視光を繰り返し照射し,染色体の移動を生細胞イメージングで観察した(上図)。特定の染色体の動きをキモグラフで示し,赤道面への距離を評価した(下図)。UV照射時に染色体が赤道面に近づくが,可視光照射により染色体から離れていくことが分かる。この様子は繰り返し観察され,最終的に赤道面に到達した。


生細胞における繰り返し光照射による染色体輸送制御


染色体輸送完了後のCENP-Eの役割の解明

HeLa細胞にPCEI-HU(1 μM)およびMG132(20 μM)を添加し,UV光照射後3分(上段),または30分培養後(下段),さらに可視光照射し30分間培養した。UV照射後(CENP-E非阻害型)の時間が短いとき,可視光照射(CENP-E阻害型)で再び染色体の輸送を停止することができたことに対し,UV照射後(CENP-E非阻害型)の時間が長く赤道面に整列が完了した場合,可視光照射(CENP-E阻害型)しても再度染色体の配置異常は起こらなかった。このことから,CENP-Eは染色体が赤道面に整列するために必要な因子であって,一度赤道面に整列した後はその機能が不要になることがPCEI-HUを用いることで明らかになった。


染色体輸送完了後のCENP-Eの役割の解明


紡錘体形成チェックポイント関連タンパク質の観察

紡錘体形成チェックポイントにおける重要タンパク質であるMad2を観察するため,HeLa細胞にMad2-GFPおよびヒストンH2B-mCherryを共発現させ,PCEI-HU(1 μM)およびMG132(10 μM)を添加し次の2つの条件でGFPおよびmCherryの局在を観察した。

条件①:PCEI-HUを添加⇒光照射せず2時間培養⇒UV光照射後5分培養⇒可視光照射後30分培養⇒固定・観察
条件②:PCEI-HUを添加⇒光照射せず2時間培養⇒UV光照射後30分培養⇒可視光照射後30分培養⇒固定・観察

両条件ともに,PCEI-HUを添加後,染色体の異常配置が認められ,Mad2は異常配置の染色体に局在が確認された。条件①ではUV光照射後のCENP-Eの活性が維持される時間が短く,染色体の配置異常が解消されていない。この際,異常配置染色体にMad2はまだ共局在していた。一方で,条件②ではCENP-Eの活性が維持される時間が長いため,染色体の赤道面への輸送が完了していた。それに伴いMad2の染色体への局在が解消されていることが観察された。このことから,一度染色体が赤道面に整列したのちにCENP-Eの活性を抑制しても紡錘体形成チェックポイントに影響を示さないことが分かる。


紡錘体形成チェックポイント関連タンパク質の観察


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説明文
有糸細胞分裂における染色体輸送モータータンパク質CENP-Eの光応答性阻害剤です。可視光または紫外光照射により阻害活性をOn/Offすることで,染色体移動を可逆的に抑制・再開させることのできます。M期の染色体移動に関与するタンパク質の機能評価や紡錘体形成チェックポイント(SAC)の研究に有用です。
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説明文 有糸細胞分裂における染色体輸送モータータンパク質CENP-Eの光応答性阻害剤です。可視光または紫外光照射により阻害活性をOn/Offすることで,染色体移動を可逆的に抑制・再開させることのできます。M期の染色体移動に関与するタンパク質の機能評価や紡錘体形成チェックポイント(SAC)の研究に有用です。
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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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