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極めて化学的に安定な耐光性近赤外蛍光色素 PREX710-NHS <Super PhotoStable Dye>

掲載日情報:2020/04/03 現在Webページ番号:69318

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

PREX710は生体内安定性の高い耐光性近赤外色素で、in vivo蛍光イメージングや1分子イメージング、葉緑体の自家蛍光の影響を抑えた植物イメージング、および多重染色に有用です。本試薬はNHSエステルが付与されており、アミノ基特異的に標識が可能です。

本製品は名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 山口茂弘教授、多喜正泰特任准教授の研究成果をもとに、フナコシ株式会社が製品化し、販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

マウスのin vivo血管イメージング

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100 μm

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マウスのin vivo血管イメージング

PREX710-NHSで標識したアミノデキストラン(平均分子量 70,000)を調製し、4週齢マウスに尾静脈投与し、オープンスカル法で脳血管の深部イメージングを共焦点レーザー顕微鏡(励起/蛍光波長=638 nm/667~733 nm)で行った。PREX710は血中でも長時間安定に維持され、血液イメージングの課題とされるヘモグロビンの自家蛍光の影響を受けにくい波長で励起可能であることから、鮮明な脳血管深部イメージングに成功した。
(本データは愛媛大学大学院医学系研究科 今村健志研究室にて取得されたものです。)


イメージングにおける近赤外色素のメリットと既存色素の問題点

蛍光イメージングは現在の生物学に欠かせない技術で、さまざまな蛍光色素が開発されています。その多くは可視光で励起できる蛍光色素で青色、緑色および赤色蛍光が汎用されています。しかし、生体試料を蛍光イメージングする際に励起光として可視光を利用することにおいて、大きく3つの問題点があげられています。

  • 光障害性:光エネルギーが強いため、長時間観察対象に光障害を与え、ライブイメージングに影響があると考えられています。
  • 自家蛍光:可視光励起では蛍光色素以外にも生体物質由来の自家蛍光が観察される可能性があります。
  • 組織透過性:可視光は組織透過性が低く、個体レベルのイメージングでは組織深部観察は難しいと考えられています。
シアニン系赤外色素(代表例:インドシアニングリーン)

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シアニン系赤外色素
(代表例:インドシアニングリーン)

PREX710<br>(キサンテン系)

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PREX710
(キサンテン系)

上記の問題を解消するため、可視光よりも波長の長い近赤外色素(Near Infrared dye; NIR dye)の利用が期待されています。近赤外色素は一般的に700~900 nmの範囲の波長を励起光に使用します。長波長光はエネルギーが低く光毒性が抑えられるだけでなく、近赤外波長は生体物質の吸収が小さいことから自家蛍光が小さく、組織浸透性が高い「生体の窓」と呼ばれています。従来の近赤外色素の大部分はシアニン骨格を基本としています。シアニン色素系(代表例、インドシアニングリーン)は生体内での化学的安定性が低く、光安定性にも乏しいため、生体試料中で分解されてしまう点やすぐに退色してしまうなど生体試料での蛍光イメージングには不十分とされていました。

PREX710は新規近赤外色素で、シアニン骨格ではなくキサンテン骨格にホスフィンオキシド基を導入した新規骨格により、血中でも化学的安定性を維持し、極めて高い光安定性を示します。In vivo イメージングなど生体試料中での長時間イメージングに優れた新規近赤外色素として期待されています。

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特長

  • 既存の近赤外蛍光色素に比べ、極めて高い光安定性を示します。
  • 既存のシアニン系近赤外蛍光色素に比べて、水中・生体試料中で安定です。
  • pH4~10の範囲において、pHによる影響をほとんど受けません。
  • NHSエステルのため、アミノ基含有試料に標識できます。
  • in vivo イメージングや一分子イメージングに有用です。
  • 植物で使用すると葉緑体の自家蛍光の影響を受けず観察できます。
  • 一般的な青色蛍光色素、緑色蛍光色素、赤色蛍光色素と組み合わせが可能で4重染色が可能です。
  • 励起/蛍光波長:710 nm/740 nm
  • 量子収率:0.12
PREX710-NHSの構造

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PREX710-NHSの構造

PREX710色素にNHSエステルが付与した構造です。
各種アミノ基を含む試料に標識できます。

参考データ

PREX710の励起・蛍光スペクトル

PREX710の励起・蛍光スペクトル

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  • 青線:励起スペクトル
  • 赤線:蛍光スペクトル

PREX710のpH安定性

PREX710のpH安定性

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PREX710のpH依存的な安定性を評価するため、pH 4.2, 7.4, 10.3中での712 nmにおける吸光度の経時変化を10時間後に測定した。いずれのpHにおいてもほとんど吸光度の減衰は観察されず、生体内で想定されるpH範囲(pH4~10)ではpHの影響を受けないことが分かる。

PREX710の光安定性

PREX710の光安定性

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PREX710の光安定性を評価するため、PREX710をPBSに溶解し、キセノンランプ(300 W)を断続照射し712 nmにおける吸光度の減衰を評価した。PREX710は2時間キセノンランプを連続露光しても全く吸光度の変化が観察されなかった。

PREX710の血清中安定性

PREX710の血清中安定性

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PREX710の血液中での安定性を評価するため、PREX710をFBS(100%)に溶解し、712 nmにおける吸光度の変化を12時間にわたり評価した。PREX710は血清中でも少なくとも12時間はほとんど吸光度に変化が見られなかったことから、血清中で極めて安定であることが分かる。



タンパク質標識時の光安定性比較

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タンパク質標識時の光安定性比較

標識モデルとして、IgG抗体にPREX710-NHSまたはシアニン系競合色素A-NHSおよび競合色素C-NHSエステルでそれぞれ標識し、キセノンランプ(300 W)を断続的に照射して光安定性を評価した。シアニン系競合色素Aおよびシアニン系競合色素Cでは速やかな吸光度の減衰が観察されたが、PREX710はIgG抗体標識状態であっても長時間の光照射に対しほとんど変化がなかった。

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標識方法概略

本製品は褐色バイアルにPREX710-NHS(緑色)が1 mg含まれており、NHSエステルの安定化のためアルゴンガスを充填しています。一度開封しますとNHSエステルが、徐々に加水分解する恐れがあります。本試薬は開封・溶解後は速やかに使用することを推奨しています。

  1. バイアル開封後、速やかにDMSOまたはDMFに溶解
    注意:水中で加水分解反応が進行するため、水への溶解は推奨していません。DMSOやDMFは脱水グレードを推奨します。また、NHSエステルは溶液中で不安定のため、標識作業の直前にストック溶液を調製し、速やかにご使用ください。ストック溶液調製後の保管は、標識活性を失う可能性があるために推奨していません。
  2. 標識したいアミノ基を含む試料を0.1 M carbonate buffer (NaHCO3/Na2CO3, pH 8.3) に溶解する。
    注意:リン酸緩衝液PBSの代用は可能です。ただし、アミノ基含有緩衝剤(Tris、グリシンなど)の使用は推奨していません。NHSが緩衝剤と反応し失活する可能性があります。
  3. PREX710-NHS溶液と試料溶液を混合し、少なくとも1時間反応させる。
  4. ゲルろ過や限外ろ過法により未反応のPREX710色素を除去する
    注意:色素量および試料使用量は検討が必要です。

標識の注意点

NHSエステルとアミノ基の反応時における溶液のpHは重要です。pH8.2-8.3が最適です。pHが8以下だとアミノ基がプロトン化され反応効率が低下します。一方、pH 8.5以上でNHSエステルの加水分解が進み標識活性を失います。

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アプリケーションデータ

植物イメージング

PREX710-NHSで標識したオクタアルギニンペプチドR8(PREX710-R8)を用いてヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体の細胞壁を染色し、蛍光顕微鏡で観察した。PREX710-R8は励起/蛍光波長 703~717 nm/754~816 nmで観察し、葉緑体は励起/蛍光波長 300~400 nm/>420 nmで自家蛍光として検出した。PREX710を用いることで葉緑体の自家蛍光と切り分けて鮮明なシグナルを検出することができた。PREX710は葉緑体の自家蛍光の影響を受けにくいため植物イメージングに優れている。

PREX710-R8を用いた植物のイメージング

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PREX710を用いた1分子イメージング

1分子イメージングのモデル構築として、PREX710-NHSおよびシアニン系競合色素A-NHSそれぞれで標識したアビジンタンパク質を調製し、ビオチン固相表面に結合させた系を作製した。ドット上のシグナルはアビジン分子1分子に起因する蛍光シグナルである。10フレーム/秒の取得条件下で120秒間継続して1分子のシグナルを追跡した。シアニン系競合色素Aは個々のシグナルが徐々に減衰し、40秒後にはほぼ完全に蛍光シグナルが消失していたことに対し、PREX710で標識した各ドットシグナルは1分子レベルでも120秒間の観察の間わずかな減衰で維持されていた。
(本データは理化学研究所 岡田康志研究室にて取得されたものです。)

PREX710を用いた1分子イメージング

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原著論文

  • Grzybowski, M., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 57(32), 10137~10141 (2018). [PMID: 29984448] A Highly Photostable Near-Infrared Labeling Agent Based on a Phospha-rhodamine for Long-Term and Deep Imaging.

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PREX710-NHS <Super-Photostable Dye>
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説明文
極めて化学的に安定なキサンテン型近赤外蛍光色素PREX710のNHS標識体です。任意のアミノ基への修飾が可能です。既存のシアニン系色素に比べ,分子量が小さく,化学的安定性および耐光性に優れるため,in vivo蛍光イメージングや1分子イメージング,多重染色等に有用です。(励起 ~710 nm/ 蛍光 ~740 nm)。
法規制等
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掲載カタログ ニュース2022年10月1日号 p.12
ニュース2022年6月15日号 p.27

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PREX710-NHS <Super-Photostable Dye>

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説明文 極めて化学的に安定なキサンテン型近赤外蛍光色素PREX710のNHS標識体です。任意のアミノ基への修飾が可能です。既存のシアニン系色素に比べ,分子量が小さく,化学的安定性および耐光性に優れるため,in vivo蛍光イメージングや1分子イメージング,多重染色等に有用です。(励起 ~710 nm/ 蛍光 ~740 nm)。
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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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