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NHEJを利用し、幅広い細胞で高効率に遺伝子ノックアウトを行えます KN2.0 Non-homology Mediated CRISPR Gene Knockout Kit

掲載日情報:2023/03/15 現在Webページ番号:68457

CRISPR模式図

細胞内修復機構の非相同末端結合(NHEJ)を利用して、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウトを行うキットです。分裂細胞、非分裂細胞いずれにおいても、高効率で遺伝子ノックアウトが行えます。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


CRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウトキットについて

CRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウト(Gene Knockout、KO)では、細胞内の修復機構について相同組換え(HDR、Homology Directed Repair)を利用する場合と、非相同末端結合(NHEJ:Non-homologous End Joining)を利用する場合があります。
本キットは、NHEJを利用しており、非分裂細胞を含めた幅広い細胞で、HDRを利用したキットよりも高効率に遺伝子ノックアウトを行えます。

OriGene社の遺伝子ノックアウトキットの比較

キット名 HDR Mediated Kit KN2.0 Non-homology Mediated Kit
(本製品)
gRNA Vector pCas-Guide
ドナーカセット Homologous Armが両端に隣接 Homologous Armなし
細胞スペクトル 分裂細胞 分裂および非分裂細胞
ノックアウト効率

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KN2.0 Kitによる遺伝子ノックアウトの概要

KN2.0キット概略

本キットには、2種類のgRNAベクターと、1種類の線状化されたドナーDNA(ドナーカセット)が含まれております。標的遺伝子に特異的なgRNAの誘導によりCas9が標的ゲノムを切断し、NHEJによる修復時にドナーDNAが標的ゲノムの切断部位に組込まれます。

ドナーDNAは、ゲノム中に順方向・逆方向のいずれかで組込まれるため、ドナーDNAに含まれる選択マーカー(ピューロマイシン耐性遺伝子)とレポーター遺伝子(GFP)を利用してスクリーニングを行います。

本キットを用いた遺伝子ノックアウトでは、多くの場合において1回のゲノム編集で両アレル(biallelic)をノックアウトします。そして、その多くの場合において、一方のアレルにドナーカセットが組込まれ、もう一方のアレルにはindel(挿入・欠失)が生じます。


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特長

  • gRNAベクター2種とドナーDNAをセットにしたReady-to-Useのキットです。
  • 分裂細胞、非分裂細胞いずれにおいても、高効率で遺伝子ノックアウトが行えます。
  • ドナーDNAに選択マーカー配列が含まれるため、スクリーニング操作が容易です。
  • ヒトおよびマウスの幅広い遺伝子についてキットを取りそろえています。

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操作方法概略

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操作方法概略
  1. トランスフェクション当日に50~70%コンフルエントになるように細胞を播種する。
  2. 培地にgRNAベクター、ドナーDNA、トランスフェクション試薬の順で加えたものを細胞に添加し、5%CO2インキュベーターで細胞を培養する。
    キットには2種類のgRNAベクターが含まれており、それぞれ別個に操作を行う。
    トランスフェクションの詳細は、トランスフェクション試薬のプロトコルに従う。
  3. トランスフェクションから48時間後(1回目)、5日後(2回目)、8日後(3回目)、11日後(4回目)に、それぞれ10倍希釈で継代を行う。
    細胞のゲノムDNA中に組込まれていない遊離のドナーDNAに由来するピューロマイシン耐性の影響を減らすため、2週間程度細胞を培養する。
    (オプション)上記のとおりピューロマイシン選択を行えるまでに2週間を要するため、2回目の継代(P2)の時点で、ゲノムPCRを行い、ゲノム中に順方向・逆方向のどちらで組込まれたかを確認する。
  4. 14日間培養した細胞を用いて、10倍希釈で5回目の継代(P5)を行う。その際に、ピューロマイシン選択か、GFPによるソーティングを行う。
    (オプション)後日に再度のピューロマイシン選択を行うために、細胞の一部についてピューロマイシン選択を行わずに、凍結保存または別途培養を行うことをお勧めします。
  5. ピューロマイシン耐性を示した細胞に対してゲノムPCRまたはシークエンシングを行い、ドナーDNAの組込みを確認する。
    標的遺伝子の発現産物に対する抗体を用いたウエスタンブロットによる、ゲノム編集の成否の確認はこの段階でも行えますが、次項の単一細胞コロニー分離を行った後に実施する方が望ましいです。
  6. 限界希釈法またはクローニングリング/シリンダー法で、単一細胞のコロニーを分離する。

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KN2.0 Kitによる遺伝子ノックアウトの検証例

ゲノムPCRによるドナーDNA組込みの確認

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ゲノムPCRのプライマーのデザイン

5Fおよび3Rプライマーは標的遺伝子に特異的な物が必要で、その配列は標的遺伝子のゲノム配列からデザインする必要があります。

ゲノム中に順方向で組込まれた場合

ゲノム中に順方向で組込まれた場合

ゲノム中に逆方向で組込まれた場合

ゲノム中に逆方向で組込まれた場合

順方向でのゲノム組込みの検証

順方向でのゲノム組込みの検証
順方向でのゲノム組込みのプライマー模式図

HEK293細胞にgRNA(G1)とドナーDNA(D)をトランスフェクトし、3日後の細胞からゲノムDNAを抽出し、ゲノムPCRを行った。WTは未改変のHEK293細胞から抽出したゲノムDNA。

順方向でのゲノム組込みが行われた場合、5F/5Rプライマーの組合せ(5' Junction)および3F/3Rプライマーの組合せ(3' Junction)でPCR産物が得られる。

逆方向でのゲノム組込みの検証

逆方向でのゲノム組込みの検証
逆方向でのゲノム組込みのプライマー模式図

HEK293細胞にgRNA(G1)とドナーDNA(D)をトランスフェクトし、3日後の細胞からゲノムDNAを抽出し、ゲノムPCRを行った。WTは未改変のHEK293細胞から抽出したゲノムDNA。

逆方向でのゲノム組込みが行われた場合、5F/3Fプライマーの組合せ(5' Junction)および5R/3Rプライマーの組合せ(3' Junction)でPCR産物が得られる。

細胞クローンにおけるゲノム組込みの方向の確認

細胞クローンにおけるゲノム組込みの方向の確認
ゲノム組込みの方向の確認プライマー模式図

HEK293細胞にgRNA1とドナーDNAをトランスフェクトし、ピューロマイシン選択を行って得られた安定細胞プールから単一細胞コロニー(1~6)を単離した。単離した細胞からゲノムDNAを抽出し、5F/3Rプライマーの組合せでゲノムPCRを行った。WTは未改変のHEK293細胞から抽出したゲノムDNA。

ゲノム編集なしおよびindelが生じた場合は0.75 kbのPCR産物が、ドナーDNA組込みが生じた場合は3.4 kbのPCR産物が得られる。
6つの細胞コロニー中の、1、4、5の3つのクローン(50%)で、ドナーDNAの組込みが生じていることが示された。


シークエンシングによるノックアウトの確認

0.75 kbのPCR産物をシークエンシングして、ノックアウト部位でのindelを確認した(両アレルについて、一方にドナーDNAの組込み、もう一方にindelが生じていることが確認された)。

シークエンシングによるノックアウトの確認1

確認例1:ノックアウト部位にT(チミン)の挿入が確認された



シークエンシングによるノックアウトの確認2

確認例2:ノックアウト部位に2塩基の挿入と1塩基の置換が確認された

MIA PaCa-2細胞中のSHMT1遺伝子のノックアウト

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KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitを用いて、MIA PaCa-2(ヒト膵がん由来細胞株)中のSHMT1遺伝子をノックアウトした(ユーザー様提供データ)。

gRNAおよびドナーDNAのデザイン

SHMT1ノックアウトgRNAのデザイン
SHMT1ノックアウトドナーDNAのデザイン width=100% style=

安定細胞プールにおけるゲノムPCR

SHMT1ノックアウト安定細胞プールにおけるゲノム組込みの方向の確認
SHMT1ノックアウトゲノム組込みの方向の確認プライマー模式図

MIA PaCa-2細胞にgRNA(G1またはG2)とドナーDNA(D)をトランスフェクトし、8回継代した後、ピューロマイシン選択を行った。得られた安定細胞プールからゲノムDNAを抽出し、ゲノムPCRを行った。
ドナーDNA組込み部位の両隣にPCRプライマーをデザインし、ゲノム編集なしおよびindelが生じた場合は413 bpのPCR産物が、ドナーDNA組込みが生じた場合は1.6 kbのPCR産物が得られる。
コントロールは未改変のMIA PaCa-2細胞から抽出したゲノムDNA。
gRNA1(G1)を用いた安定細胞プールで、ドナーDNAの組込みが生じていることが示された。


単一細胞のコロニーにおけるゲノムPCR

SHMT1ノックアウト単一細胞のコロニーにおけるゲノム組込みの方向の確認

MIA PaCa-2細胞にgRNA1とドナーDNAをトランスフェクトして得られた安定細胞プールから、単一細胞コロニーを単離した。単離した細胞からゲノムDNAを抽出し、ゲノムPCRを行った。
コントロールは未改変のMIA PaCa-2細胞から抽出したゲノムDNA。
8つの細胞コロニー中、コロニー#8を除く7つのクローン(87%)で、ドナーDNAの組込みが生じていることが示された。

シークエンシングによるノックアウトの確認

0.4 kbのPCR産物をシークエンシングして、ノックアウト部位でのindelを確認したところ、A(アデニン)の挿入が確認された(両アレルについて、一方にドナーDNAの組込み、もう一方にindelが生じていることが確認された)。

シークエンシングによるSHMT1ノックアウトの確認

ウエスタンブロットによるノックアウトの確認

ウエスタンブロットによるSHMT1ノックアウトの確認

単一細胞コロニー#6、#11および未改変のMIA PaCa-2細胞(コントロール)についてウエスタンブロットを行った。
SHMT1:抗SHMT1ポリクローナル抗体
NS:非特異的なバンド
β-Actin:抗β-Actin抗体(ローディングコントロール)



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ウェビナー動画


CRISPR gene knockout webinar to get high biallelic knockout(英語、約50分)


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KN2.0 KitのFAQ

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Q-1. 標的遺伝子をノックアウトする際には、ドナーDNAは必要ですか?

A-1. ドナーDNAがないと、二本鎖切断は非相同末端結合(NHEJ:non-homologous end joining)によって修復され、予期せぬindel(挿入・欠失)が導入される傾向があります。そのため、標的遺伝子のフレームシフトを引き起こすような挿入・欠失についてスクリーニングをする必要があります。ドナーDNAに薬剤耐性遺伝子やGFP発現遺伝子を組込むことで、下流のスクリーニング手順を大幅に簡略化することができます。



Q-2. KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitによる遺伝子ノックアウトとドナー配列の標的遺伝子への組込みのメカニズムはどのようになっていますか?

A-2. KN2.0 Kitは、CRISPR-Cas9を用いた標的ゲノム編集技術をベースにデザインされています。標的遺伝子に特異的なgRNAがゲノムを切断し、選択カセットを含むドナーDNAが非相同末端結合(NHEJ:non-homologous end joining) を介した修復機構により切断部位に組込まれます。
ドナーDNAは、ゲノム中に順方向・逆方向のいずれかで組込まれるため、ドナーDNAに含まれる選択マーカー(ピューロマイシン耐性遺伝子)とレポーター遺伝子(GFP)を利用してスクリーニングを行います。
本キットを用いた遺伝子ノックアウトでは、多くの場合において1回のゲノム編集で両アレル(biallelic)をノックアウトします。そして、その多くの場合において、一方のアレルにドナーカセットが組込まれ、もう一方のアレルにはindel(挿入・欠失)が生じます。



Q-3. KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitの利点は何ですか?

A-3. 相同組換え(HDR)を介した遺伝子ノックアウト/ノックインは、手法が確立されていますが、HDR効率の低い細胞種や生物種では必ずしも適用できない場合があります。
KN2.0 Kitは、あらゆる細胞種や生物種に対する遺伝子ノックアウトのニーズに対して、普遍的な手段を提供するために特別に設計されており、ノックアウト効率が向上していることを確認済みです。



Q-4. KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitでの使用実績がある細胞は何ですか?

A-4. HeLa、HEK293T、MIA PaCa-2(ヒト膵がん由来細胞株)があります。



Q-5. KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitでピューロマイシン選択を行ったところ、生存細胞がありませんでした。この場合、どのような原因が考えられますか?

A-5. 2つの可能性が考えられます。
まず、その遺伝子が細胞生存に必須の遺伝子であるため、構成的な遺伝子ノックアウトに耐えることができないケースです。この場合は、コンディショナルノックアウトを行うが必要があります。
もう一つは、トランスフェクションの効率が低すぎるケースです。この場合は、トランスフェクションの最適化、またはエレクトロポレーション法などの別のトランスフェクション方法を選択する必要があります。



Q-6. KN2.0 CRISPR Gene Knockout Kitは、トランスジェニック動物モデル作製のための胚マイクロインジェクションに使用できますか?

A-6. KN2.0 Kitはトランスジェニック動物モデルを作製するための胚マイクロインジェクションに、理論上は使用することができます。しかしながら、OriGene社では未検証で、お客様自身での最適化が必要です。




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納品物

  • gRNA配列が組込まれたpCas-Guide Vector(2種類)
  • Linear donor DNA(1種類)

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価格

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ご注文方法

検索入力

OriGene社ウェブサイトにアクセスし、上部にある検索ボックスに遺伝子やAccession No.など、および「non-homology」を入力して下さい(その際に半角スペースを開けて下さい)。


検索結果

「KN2.0」および「non-homology mediated」と記載されている製品が該当となります。
商品コードをお知らせ下さい。


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使用文献について

OriGene社CRISPR Gene Knockout Kitの使用文献については、以下の2種類の方法でご確認いただくことができます。
厳選されたOriGene社製品の、代表的な使用文献のみを掲載しています。


① 使用文献一覧

OriGene社CRISPR Gene Knockout Kitの使用文献一覧はこちらからご確認いただくことができます。
表示される文献は、KN2.0 Non-homology Mediated Kit(本キット)とHDR Mediated Kitの使用文献の合計となります。


② 各製品の使用文献

OriGene社ウェブサイトのSearchボックスで目的キットの検索を行い、検索結果を表示させると、文献掲載実績がある製品の場合、使用文献数が表示されます(下図参照)。
さらに製品名をクリックし、製品詳細のページへ移行すると、文献情報をご確認いただけます。

検索結果に文献が表示される例

使用文献の例

使用した製品:ABCB5, Human, CRISPR KN2.0 Kit(#KN415604)

  1. Milosevic, V., et al., Int. J. Cancer, 146 (1), 192 (2020). [PMID: 31107974]

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(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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