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可視光照射により好きな領域・タイミングでNO (Nitric oxide)を放出する試薬 Controllable NOdonor(NO-Rosa5)

掲載日情報:2019/06/03 現在Webページ番号:64931

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

Controllable NOdonor(NO-Rosa5)黄緑色可視光(530~590 nm)の照射により一酸化窒素(Nitric oxide, NO)を放出するPhoto-controllable NO donorです。光毒性の低い可視光照射でNO放出を時空間的に制御できるため、さまざまな細胞内シグナル伝達に関わるNOの生理現象の研究に有用です。

本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。
本製品は名古屋市立大学 中川秀彦教授の研究成果を元に製品化されました。

Controllable NOdonor(NO-Rosa5)の原理

Controllable NOdonor(NO-Rosa5)の原理

本試薬はRosamine色素骨格が光吸収アンテナとして機能し、黄緑色光(530~590 nm)を吸収する際に、光誘起電子移動 (PeT: Photoinduced electron Transfer)が誘導され、NOを放出します。

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NO研究におけるPhoto-controllable NO donorの意義と問題点

一酸化窒素NOは分子量わずか30のガス分子ですが、生体内においてシグナル伝達物質として機能することが知られ、その生理的意義の解明は重要な課題とされています。NOの生理的意義が盛んに研究されている現象を一部下記に示します。

  • 血管の拡張(vasodilation)
  • 神経伝達(neurotransmission)
  • 血小板接着(platelet adhesion)
  • 炎症反応(inflammation)

ガス分子であるNOは、生体内でNO合成酵素によって産生されますが、生理的条件下では極めて不安定で、半減期は数秒程度と見積もられています。そのため、NOは生体内で産生後、非常に狭い範囲(<100 μm)でのみ機能する局所的なシグナル伝達物質と考えられ、NOが媒介する局所的なシグナル伝達の意義解明が期待されています。しかしながら、NOは不安定なガス分子であるため、NOそのものを実験に利用することが難しく、NOの生理効果の検証にはNO donorが使用されてきました。
NO donorは水溶液中で分解し、NOを徐々に放出する化合物群の総称で、NO放出効率や半減期が異なるさまざまな化合物が開発され市販化されています。しかしながら、従来のNO放出試薬を用いると、実験溶液全体に均一にNOが放出されるため、本来のNOが担う局所的かつ一過的な効果を観察することは困難です。この問題を解決するため、近年、光応答性のNO donorである”Photo-controllable NO donor”が幾つか開発されていますが、1)UV光が必要な試薬群、または2)金属錯体を利用した試薬群がメインで、いずれも生細胞実験には適用しにくい欠点がありました(表参照)。

名古屋市立大学中川秀彦教授らは、これまでの問題点を克服する金属錯体を含まない可視光制御可能なPhoto-controllable NO donorとして、NO-Rosa5(Controllable NOdonor)の開発に成功し、低毒性かつ時空間的なNOの放出制御に成功しています。本試薬を用いることで、任意のタイミングおよび任意の局所でNO放出を制御可能なため、NO研究の新たなツールとして期待されています。

  一般的な
NOドナー
Photo-controllable NO donor
UV光制御型
CNO-4、BNN5など
金属錯体型 Controllable NOdonor
(NO-Rosa5)
NO放出原理 自発的分解 光分解後に
自発的分解
光分解
光照射 UV光
(~300 nm)
可視光・近赤外光 可視光
(530~590 nm)
時間的制御 困難 可能
空間的制御 不可能 可能
光毒性 極めて毒性高い 光毒性低い
化合物の細胞毒性 化合物に依存 低い 高い
(金属毒性)
低い

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特長

  • 黄緑色光(530~590 nm; 吸収極大 λmax~560 nm)でNO放出が起こります。
  • 光を非照射時はNOの放出が極めて小さく抑えられています*1
  • 推奨使用濃度10 μMにおいて、細胞毒性は確認されていません。
  • 培養細胞系、ex vivo 大動脈血管弛緩試験で生物学的活性が確認されています。
  • 光源として、顕微鏡の543 nmレーザー(He-Neレーザー)およびキセノン光源が実証されています。

*1 実験中の環境光には十分注意が必要です。


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操作方法概略

下記プロトコールは参考です。目的に応じてご検討下さい。

操作方法概略
  1. Controllable NOdonorを含む培地を調製
  2. 培地を除去
  3. Controllable NOdonorを含む培地に交換*2
  4. 30分以上培養
  5. 任意のタイミング・部位にて光照射、各種イメージング*3や生化学解析へ

*2 培地交換せず、直接Controllable NOdonorを添加することもできます。
*3 各種イメージングで蛍光性物質を検出系に使用する場合、蛍光性物質の選択に注意点がございます。詳しくは下記実験ガイドをご参照下さい。

実験上の注意点

本製品は環境光(室内蛍光灯や太陽光)によっても分解し、NOを放出する可能性があります。溶液調製時や実験時はできるだけ遮光を維持、または暗室条件での実施を推奨します。

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使用例

NO電極によるNO放出活性の定量

in vitro NO放出モデルとして10 μM Controllable NOdonor, 100 mM HEPES (pH 7.3), 0.1% DMSO溶液に黄緑色光(530~590 nmバンドパスフィルター)を照射し、放出された遊離NO濃度をNO電極により定量した。300秒間継続照射した場合、最大4 μMのNOが観察された(左)。光照射時間を20秒間ずつパルスすると段階的にNO放出が観察され、試薬の枯渇に伴いNO放出量が減少することが分かる(右)。

NO放出活性の定量

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NO検出試薬によるNO放出活性の可視化

NO放出活性の可視化

HEK293T細胞に緑色光蛍光性NO検出試薬DAF-FM DA(10 μM)を30分間前処理後、PBSで細胞を洗浄し、Controllable NOdonorを添加条件下で30分間培養した。キセノン光源(バンドパスフィルター 530~590 nm)を照射前後の細胞内NO量をNO検出試薬DAF-FMの蛍光強度で観察した。光照射後DAF-FMの蛍光強度が顕著に増加していることから、光照射によりNOが放出されたことが分かる。

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局所的光照射による部位特異的NOの放出

局所的光照射による部位特異的NOの放出

HEK293T細胞に蛍光性NO検出試薬DAF-FM DA(10 μM)を30分間前処理後、PBSで細胞を洗浄し、Controllable NOdonorを添加条件下で60分間培養した。共焦点顕微鏡の543nmレーザーで白枠部分(直径31 μm)のみに光照射し、NOの放出をDAF-FMで検出した。白枠部分のみでNOの放出が確認できた。本試薬を用いることで、光により時空間的にNOの放出をコントロールすることができる。

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ex vivo 血管弛緩試験

局所的光照射による部位特異的NOの放出

摘出したラット大動脈片をKrebs バッファーを満たしたマグナスチューブに浸し、内在性のNO生成を抑えるためNO合成酵素の阻害剤L-NAME (100 μM)を添加した。次いで、ノルアドレナリン(10 μM)を添加し、血管を収縮させた状態にした。緑色光(530~590 nm)を3分間照射しても光自体は血管収縮には効果が見られなかったが(図中①)、Controllable NOdonor (10 μM)添加後に緑色光を照射すると著しい血管の弛緩が観察された(図中②、④)。光照射を止めると再度血管の収縮が見られた(図中③、⑤)。NOによる血管の弛緩はsGC(soluble guanylyl cyclase)-cGMP経路が関与するが、この状態にsGC阻害剤であるODQ(10 μM)を添加すると、緑色光を照射しても血管の拡張は抑えられていた(図中⑥)。この結果より、Controllable NOdonorを用いることで光照射により血管弛緩を制御できることが分かる。

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細胞毒性の評価

細胞毒性の評価

HEK293T細胞にControllable NOdonorをそれぞれ10(推奨濃度), 30, 100 μM添加し、48時間培養後にWST-8アッセイで細胞生存率を評価した。少なくとも30 μMまで細胞生存率は維持されていたが、高濃度100 μMでは細胞毒性が観察された。本試薬は10 μMでの使用を推奨しています。

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実験ガイド

スペクトル情報

Controllable NOdonorは下記の吸収・蛍光スペクトルを有します。530~590 nmの光照射で効率的なNO放出が可能です。また、Rosamine骨格を有するため、500~600 nmの光照射により励起され、赤色蛍光が観察されますのでご注意下さい。

細胞毒性の評価
細胞毒性の評価

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蛍光性物質の選択ガイド

Controllable NOdonorは500~600 nmの光照射によりNOを放出するため、実験系に蛍光性物質(蛍光色素、蛍光性検出試薬、蛍光タンパク質など)を併用する場合には下記に十分注意して下さい。目的の蛍光性物質の観察にControllable NOdonorの蛍光特性が影響しないか予備検討を行うことを推奨しています。

1 赤色蛍光物質の併用を避ける

下記理由により、500~600 nmの領域に励起波長を有する赤色蛍光性物質の併用は推奨しておりません。

  1. 励起光を照射することで、Controllable NOdonorのNO放出が誘導されます。
  2. Controllable NOdonorのRosamine骨格由来の蛍光が観察されます。

2 併用可能な蛍光物質

下記の波長域を有する蛍光性物質はControllable NOdonorと併用可能です。

  • 励起波長が<500 nmの蛍光物質(青色蛍光物質または緑色光蛍光物質など)
  • 励起波長が>600 nmの近赤外蛍光物質

NO放出の確認には緑色光蛍光性NO検出試薬DAF-FM DAの使用を推奨しています。

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参考文献

  1. Ieda, N., et al., "Structure-efficiency relationship of photoinduced electron transfer-triggered nitric oxide releasers.", Sci. Rep., 9(1), 1430, (2019). [PMID:30723285]
  2. Ieda, N, et al., "In cellullo and ex vivo availability of yellowish-green-light-controllable NO releaser.", Chem. Pharm. Bull., 67(6), 576~579 (2019). [PMID:31155563]
  3. Okuno, H., et al., "A yellowish-green-light-controllable nitric oxide donor based on N-nitrosoaminophenol applicable for photocontrolled vasodilation.", Org. Biomol. Chem., 15(13), 2791~2796 (2017). [PMID:28272634]

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価格

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納期 文献数
Controllable NOdonor <NO-Rosa5>
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説明文
可視光(530~590 nm)の照射により一酸化窒素NO(nitric oxide)を放出するPhoto-controllableNO donor。既存のNO donorとは異なり,光により狙った領域・任意のタイミングでNOの放出をコントロールできるため,さまざまな細胞内シグナル伝達に関わるNOの生理現象の研究に有用。
法規制等
保存条件 -20℃,暗所保存 法規備考
掲載カタログ ニュース2020年6月15日号 p.45
ニュース2020年3月15日号 p.4

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Controllable NOdonor <NO-Rosa5>

文献数: 0

説明文 可視光(530~590 nm)の照射により一酸化窒素NO(nitric oxide)を放出するPhoto-controllableNO donor。既存のNO donorとは異なり,光により狙った領域・任意のタイミングでNOの放出をコントロールできるため,さまざまな細胞内シグナル伝達に関わるNOの生理現象の研究に有用。
法規制等
保存条件 -20℃,暗所保存 法規備考
掲載カタログ ニュース2020年6月15日号 p.45
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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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