総DNMT（DNAメチルトランスフェラーゼ）活性測定キット EpiQuik DNMT Activity / Inhibition Assay Easy /Ultra Kit

DNAのシトシン環の5位の炭素にメチル基が共有結合的に付加することでDNAのメチル化が起こり、5-メチルシトシンが産生されます。これらのメチル基は、DNAの主溝に突出し、転写を阻害します。ヒトのDNAでは、5-メチルシトシンはゲノムDNAの約1.5％を占めており、主にCpG部位に見られます。通常は、遺伝子のプロモーター領域内またはその近くにCpGアイランドとして知られるDNAの0.3～2 kbストレッチにはCpG部位のクラスターがあり、そこで転写が開始されます。ゲノムDNAの大部分は、ほとんどのCpG部位が高度にメチル化されています。しかし、生殖系列の組織のCpGアイランドと正常な体細胞のプロモーターはメチル化はされず、遺伝子発現が起こります。遺伝子のプロモーター領域のCpGアイランドがメチル化されると、遺伝子発現が抑制されます。遺伝子発現の抑制は、特定の転写因子の結合を直接阻害するか、メチル-CpG結合タンパク質と関連する抑制的なクロマチンリモデリング活性によって間接的に起こります。DNAのメチル化は、遺伝子の転写への影響のほか、ゲノム刷り込み（genomic imprinting）にも関与します。これは、遺伝子の親由来の特異的発現とクロマチンドメインの形成を意味します。

DNAのメチル化は、正常細胞と異常細胞においていくつか異なるレベルで制御されています。メチル基の付加は、酵素のファミリーであるDNAメチルトランスフェラーゼ（DNMT）によって行われます。遺伝子プロモーター付近のクロマチン構造も、DNAのメチル化と転写活性に影響を与えます。DNAのメチル化のパターンを確立および維持するには、3つのDNMT（DNMT1、DNMT3A、およびDNMT3B）が必要となります。さらにもう2つの酵素（DNMT2およびDNMT3L）も、より特異的ではあるものの関連する機能を持っている可能性があります。DNMT1は、DNAのメチル化の確立されたパターンの維持に関与していると見られていますが、DNMT3AとDNMT3Bは新しい、またはde novo DNAメチル化パターンの確立を媒介していると推定されます。DNMT3Lは、DNMT3AおよびDNMT3Bの機能に不可欠な、DNAメチルトランスフェラーゼの触媒的に不活性な調節因子であることがわかっています。

DNAメチル化パターンを調節する薬剤の探索は、さまざまな疾患に対する有望な治療手段となることが期待されます。なかでもDNMT阻害物質は、サイレンシングされた遺伝子を再活性化し、本来の細胞機能を回復することができ、すでに血液悪性腫瘍の臨床試験において有望な結果が得られています。今のところDNMT阻害物質は、Dacogen（デシタビン）と、骨髄異形成症候群の治療薬で使用されるのVidaza（アザシチジン）があります。

DNMTの発現または活性化の増加に関連したDNAメチル化の異常は、がんをはじめさまざまな疾患で発見されています。例えばがんは、プロモーター領域の過剰なメチル化による腫瘍抑制遺伝子の転写サイレンシングが起こることが知られています。DNMTの阻害は、脱メチル化およびサイレンシングされた遺伝子の発現に関与する可能性があります。そうしたことから、DNMTの活性測定および阻害を迅速かつハイスループットでスクリーニングする手段は、エピジェネティック薬開発の促進につながることが期待されています。