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ミクログリアは神経変性疾患の味方か、敵か? 神経変性疾患における神経炎症とミクログリア活性化
掲載日情報:2026/07/15 現在Webページ番号:73735
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アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患では、異常タンパク質の蓄積や酸化ストレスに加え、神経炎症が病態形成に関与する可能性が広く認識されつつあります。本記事では、脳内免疫細胞であるミクログリアに着目し、神経変性疾患における神経炎症、アルツハイマー病との関連、治療標的としての可能性についてご紹介します。 ※ バイオ研究に役立つ基礎知識・技術情報を、研究テーマ別にまとめています。研究に役立つ基礎知識・技術情報まとめをご覧下さい。 |
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神経変性疾患におけるミクログリアの役割
アルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患では、異常タンパク質の蓄積、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレスなど、さまざまな細胞機構が病態形成に関与すると考えられています。近年、これらに加えて注目されているのが、ミクログリアの異常な慢性活性化に起因する神経炎症です。
ミクログリアは脳常在性の免疫細胞であり、脳の発生や恒常性維持に不可欠な細胞です。シナプスの保護・維持、細胞残渣の貪食、中枢神経系の免疫応答の調節などに関与します。健康な脳では、ミクログリアは枝分かれした突起を伸ばし、周囲の微小環境を常にモニタリングしています。
一方で、疾患の進行に伴いミクログリアが慢性的に活性化すると、炎症性サイトカインの分泌増加、タンパク質や神経細胞残渣のクリアランス機能の低下、代謝異常、活性酸素種(ROS)や炎症性メディエーターの産生などを介して、神経変性の進行に寄与する可能性があります。このようにミクログリアは、初期には神経保護的に働く一方、慢性的な活性化状態では神経障害的に働く可能性があるため、脳の健康と疾患の双方に関わる「両刃の剣」と言えます。
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神経炎症とアルツハイマー病
神経炎症は、かつては神経変性疾患の結果として生じる二次的な反応と考えられていました。しかし近年では、神経変性を引き起こす要因の一つとしても注目されています。アルツハイマー病では、遺伝学的研究やバイオインフォマティクス解析により、疾患発症前から免疫系の活性化が起こることが示されています。
また、TREM2やCD33などの免疫系タンパク質をコードする遺伝子の変異は、アルツハイマー病の発症リスクと関連することが報告されています。さらに、肥満や乾癬など、全身性炎症を伴う疾患を有する場合にも、アルツハイマー病のリスク上昇との関連が示されています。これらの知見は、炎症と神経変性の間に密接な関係があることを示唆しています。
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アミロイドβによるミクログリア活性化
アルツハイマー病の病態進行では、アミロイドβ(Aβ)が単量体、オリゴマー、プロトフィブリル、プラークなど、さまざまな形態をとりながら蓄積していきます。これらのAβは、受容体介在性または非受容体介在性の相互作用を介してミクログリアと関わります。
近年の研究では、Aβの沈着がミクログリアを「プライミング」し、二次刺激に対してより反応しやすい状態にする可能性が示唆されています。Aβの存在は、プライミングされたミクログリアの慢性的な活性化を持続させ、サイトカインやケモカインの過剰産生を引き起こします。これにより、さらにミクログリア活性化が増幅され、最終的には神経細胞の喪失や疾患進行に寄与すると考えられています。
このような神経炎症とミクログリア過活性化のメカニズムは、アルツハイマー病だけでなく、パーキンソン病やハンチントン病など、他の神経変性疾患にも関与する可能性があります。したがって、ミクログリアの調節異常を標的とする治療介入は、多くの神経変性疾患の早期段階で有用となる可能性があります。
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治療標的としてのミクログリア
ミクログリアは神経保護的にも神経障害的にも働くため、治療標的として考える場合には、単純に活性化を抑制するだけでは不十分です。むしろ、有益なミクログリア機能を維持・促進しながら、有害な炎症性応答を抑えるような調節が求められます。
そのためには、ミクログリア、末梢炎症刺激、神経細胞の複雑な相互作用を明らかにする研究モデルが重要です。これらの関係を解明するためには、器官型脳スライス培養、新しい動物モデル、iPS細胞などの研究系が有用と考えられています。
神経変性疾患における免疫療法は、これまで必ずしも成功してきたわけではありません。しかし、ミクログリア機能の詳細な理解が進むことで、複数の神経変性疾患に共通するミクログリア活性化経路を標的とした治療戦略の開発につながる可能性があります。
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