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老化研究の新たな標的として注目されるIL-11 IL-11シグナル阻害により細胞老化を抑制し、健康寿命を延ばせるか

掲載日情報:2026/06/30 現在Webページ番号:73710

加齢に伴う細胞老化や慢性炎症は、健康寿命を左右する重要な要因として注目されています。近年、IL-6ファミリーサイトカインの一つであるIL-11が、老化に伴う炎症、代謝機能の低下、フレイルなどに関与する可能性が報告されました。
本記事では、IL-11シグナルの阻害が細胞老化を抑制し、老齢マウスの健康寿命および寿命を延長した研究について紹介します。

本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

細胞老化を引き起こす多様なストレスシグナル

老化細胞の蓄積と慢性炎症

細胞老化とは、さまざまなストレスを受けた細胞が、細胞分裂を停止した状態を指します。老化細胞は、炎症性サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼなどを分泌するSASP(細胞老化随伴分泌現象:senescence-associated secretory phenotype)を示すことがあります。
細胞老化は、発生や創傷治癒などでは一時的に有益に働く場合があります。しかし、加齢に伴って老化細胞が慢性的に蓄積すると、組織の恒常性が乱れ、加齢性慢性炎症(inflammaging)につながると考えられています。
このような加齢性慢性炎症は、がん、動脈硬化、2型糖尿病、神経変性疾患など、さまざまな加齢関連疾患にも関与すると考えられています。


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IL-11は加齢に伴って発現が上昇するサイトカイン

IL-11はIL-6ファミリーに属するサイトカインで、炎症や線維化に関与することが知られています。IL-11は、IL-11 Rαおよびgp130からなる受容体複合体を介してシグナルを伝達し、Jak-STAT経路、PI3K-Akt-mTORC1経路、Ras-MEK-ERK経路などを活性化します。
紹介されている研究では、マウスの肝臓、内臓脂肪組織、骨格筋において、加齢に伴いIL-11の発現が上昇することが示されました。また、老齢マウスではERK、mTOR、p70S6Kなどのリン酸化が増加し、細胞老化マーカーであるp16およびp21の発現も上昇していました。


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IL-11はERK-mTORC1依存的に細胞老化を促進する

IL-11受容体欠損マウス(IL-11ra1欠損マウス)では、老齢になってもERKやmTOR関連分子のリン酸化、ならびにp16およびp21の発現上昇が抑えられていました。このことから、IL-11シグナルはERK-mTORC1経路を介して、細胞老化を促進する可能性が示唆されます。
また、ヒト線維芽細胞や肝細胞にIL-11を処理すると、ERKおよびmTORの活性化、p16およびp21の発現上昇、細胞周期関連因子であるPCNAやCyclin D1の低下が認められました。これらの変化は、MEK阻害剤やmTORC1阻害剤によって抑制されたことから、IL-11による細胞老化の誘導には、ERK-mTORC1経路が関与していると考えられます。


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IL-11シグナル阻害により老化指標が改善

ヒト線維芽細胞を継代培養する実験では、IL-11 Rα中和抗体を添加することで、継代に伴うERK、mTOR、STAT3のリン酸化、p16およびp21の発現、炎症関連サイトカインの産生が低下しました。
さらに、IL-11 Rα中和抗体を処理した細胞では、テロメア長、ミトコンドリアDNAコピー数、酸素消費率などが、若い継代細胞に近い状態で維持されていました。これらの結果は、IL-11シグナルの阻害が細胞老化の進行を抑え、老化に伴う細胞機能の低下を遅らせる可能性を示しています。


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IL-11欠損マウスでは健康寿命に関連する指標が改善

IL-11欠損マウスでは、野生型老齢マウスと比較して、炎症性遺伝子の発現や血清IL-6濃度が低下していました。また、体脂肪量の低下、除脂肪量の増加、フレイルスコアの改善、糖・インスリン耐性の改善など、加齢に伴う代謝機能低下や身体機能低下の抑制が認められました。

  • 炎症性遺伝子発現の低下
  • 血清IL-6濃度の低下
  • 体脂肪量の低下
  • 除脂肪量の増加
  • フレイルスコアの改善
  • 糖・インスリン耐性の改善
  • 筋力の改善
  • IL-11欠損または抗IL-11中和抗体投与による肉眼的腫瘍の減少

これらの結果から、IL-11シグナルの抑制は、細胞老化に加えて、加齢に伴う慢性炎症、代謝異常、フレイル、肥満などの改善にも関与する可能性があります。


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抗IL-11中和抗体投与による寿命延長効果

この研究では、75~100週齢の老齢マウスに抗IL-11中和抗体を3週間ごとに投与し、健康寿命関連指標を評価する実験が行われました。その結果、抗IL-11中和抗体を投与されたマウスでは、炎症性遺伝子発現の低下、代謝機能の改善、筋力の改善に加えて、エネルギー消費に関わるベージュ脂肪様の性質が白色脂肪組織で回復することなどが認められました。
さらに、IL-11欠損または抗IL-11中和抗体投与により、マウスの中央値寿命が延長することも報告されています。野生型マウスの中央値寿命が120.9週であったのに対し、IL-11欠損マウスでは151週に延長しました。一方、寿命延長効果の評価では、75週齢から死亡時まで抗IL-11中和抗体を月1回投与した場合、雌では117週から146週、雄では130週から160週へ中央値寿命が延長したことが報告されています。


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ヒトへの応用にはさらなる検証が必要

今回紹介した研究は、IL-11シグナルが細胞老化や加齢関連変化に関与する可能性を示す重要な知見です。特に、抗IL-11療法が老齢マウスにおいて、健康寿命と寿命の双方を延長した点は注目されます。
一方で、これらの結果は主にマウスを用いた研究に基づくものであり、ヒトでも同様の効果が得られるかどうかは、今後さらなる検証が必要です。IL-11シグナル阻害は、将来的な健康寿命延長や加齢関連疾患の制御に向けた新たな研究テーマとして期待されます。


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参考文献

  • Widjaja, A. A., et al., Nature, 632(8023), 157-165(2024). [PMID:39020175]

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関連製品

IL-11、IL-11 Rα、gp130、炎症性サイトカイン、mTOR/ERK/STAT3シグナルなどの研究には、Bio-TechneグループのR&D Systems、Tocris Bioscienceなどが提供するELISAキットや抗体などが利用されています。関連する製品情報は、以下をご覧ください。


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