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細胞内遊離ヘムを蛍光検出する試薬 HemeGREEN™<Intracellular Labile Heme Detection Reagent>

掲載日情報:2025/08/07 現在Webページ番号:72755

フナコシ /
フナコシ株式会社
[メーカー略称:FNA]

HemeGREEN™は生細胞内の遊離ヘム(Labile Heme)を観察できる蛍光プローブです。二価鉄(Fe2+)など他の活性種やタンパク質に内包されるヘムにはほとんど応答せず、遊離ヘムを選択的に検出することができます。
本製品は岐阜薬科大学 平山祐教授の研究成果をもとに、フナコシ(株)が製品化し、販売しています。
本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。


HemeGREENの製品イメージ

HemeGREEN™の製品イメージ


細胞内遊離ヘムの解析について


遊離ヘム構造式

ヘム(Heme)は中心金属に鉄イオンを持つプロトポルフィリンⅨの錯体であり、生体内では多くのヘムタンパク質の補因子として働いています。例えば、ヘモグロビン・ミオグロビンなどの酸素の運搬・貯蔵に関わるタンパク質や、ペルオキシダーゼやシトクロムP450などの代謝や酸化還元に関わるタンパク質の機能に不可欠な分子です。

細胞内のヘムは、その大部分が前述のようなヘムタンパク質に強く結合した状態で存在していますが、タンパク質に結合していない遊離状態のヘム(Labile Heme)も細胞内には存在しており、近年その働きに注目が集まっています。例えば、ヘムを活性制御因子とするBach2などの転写因子が複数発見されており、遊離ヘムが細胞分化やサーカディアンリズム、種々疾患の病態に関わっていることが明らかになりつつあります。また、ヘムは鉄イオンよりも脂溶性が高く、酸化還元に関連する反応性が高いため、遊離ヘムが生体分子の酸化的損傷にも広く関与していると考えられています。しかしながら、細胞内の遊離ヘムを検出・解析する手法はほとんどなく、遊離ヘムの細胞内動態については不明な点が多いのが実情です。

HemeGREEN™は岐阜薬科大学の平山祐教授によって開発された、細胞内遊離ヘムを蛍光検出する低分子プローブです。


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原理

HemeGREEN™は蛍光色素Rhodolに細胞膜透過性を高めるためのアセチル基と、遊離ヘム応答部位が結合した構造を有しており、そのままではほとんど蛍光を発しません。HemeGREEN™は細胞培地に添加するだけで細胞内に取り込まれ、細胞内エステラーゼによってアセチル基が脱保護されることで「脱アセチル化HemeGREEN™」に変換されます。さらに周囲に遊離ヘムが存在する場合は、遊離ヘムが遊離ヘム応答部位と反応することによって、最大蛍光波長535 nmの緑色蛍光を発するようになります。これによって細胞内の遊離ヘムを蛍光シグナルによって可視化できます。
HemeGREEN™は生細胞専用にデザインされており、in vitroアッセイには使用できません。

HemeGREEN測定原理


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特長

  • 細胞内の遊離ヘムと反応して発蛍光となるため、細胞内の遊離ヘムを可視化できます。
  • 遊離ヘムに対する高い選択性があります。細胞内でみられる他の主要な金属イオン、およびタンパク質に含有しているヘムにはほとんど反応しません。
  • 細胞膜透過性があるため、培地に添加するだけで自発的に細胞に取り込まれます。
  • 推奨使用濃度10 μMでは細胞毒性がほとんどありません。
  • 細胞内遊離ヘムのイメージングや遊離ヘム量の変動解析が可能です。
  • 分子式:C27H21F2NO6
  • M.W.:493.46
  • 溶解性:DMSOに溶解する。
  • Ex/Em:490/535 nm(一般的なFITC用フィルターが使用できます)

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参考データ

蛍光スペクトル

脱アセチル化HemeGREENの蛍光スペクトル

左記データはHemeGREEN™のアセチル基が脱保護された「脱アセチル化HemeGREEN™」に関するものです。HemeGREEN™そのもののデータではありませんのでご注意下さい。

脱アセチル化HemeGREEN™(0.2 μM)をHEPES buffer(pH 7.4)+ 100 μM GSHに溶解させ、1 μM Heminを添加した。Hemin添加後の蛍光変化を経時的に追跡した。
励起波長 490 nm
Heminの中心金属Fe(Ⅲ)がGSHでFe(Ⅱ)に還元されることによって、HemeGREEN™と反応する遊離ヘムが生成される。


遊離ヘムに対する選択性

HemeGREENの遊離ヘムに対する選択性

脱アセチル化HemeGREEN™(0.2 μM)と各種金属イオンをHEPES buffer(pH 7.4)中で混合し、96ウェルプレート中、室温で30分間反応させた。その後、プレートリーダー(励起波長480 nm、蛍光波長530 nmのフィルターセットを使用)で各ウェルの蛍光強度を測定した。
グラフ中の「遊離ヘム」はHeminをGSHで還元させた条件。


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操作方法概略


HemeGREEN操作方法概略
  1. HBS(HEPES buffer)などを用いて終濃度10 μMのHemeGREEN™溶液を調製する。
  2. 培養細胞の培地を除去し、PBSで洗浄する。
  3. HemeGREEN™含有溶液を添加する。
  4. 30分間培養する。
  5. 細胞をHBSなどで1回洗浄する。

HemeGREEN™の最適濃度や添加後の培養時間は、ご使用の細胞などにより適宜ご検討下さい。
長時間放置すると細胞から蛍光色素の拡散が生じます。細胞洗浄後は、速やかに観察を行うことを推奨します。


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使用例

ヘム生合成および分解の制御による細胞内遊離ヘム濃度変化の評価

HeLa細胞にヘムの原料である5-aminolevulinic acidALA、1 mM)、およびクエン酸鉄アンモニウム(FAC、10 μM)を添加した。原料の添加と同時に、ALAをヘム前駆体に変換する酵素ALA dehydrataseの阻害剤SuccinylacetoneSA、1 mM)、さらにヘムの分解酵素Heme oxygenase-1の阻害剤ZnPPIX(1 μM)を添加し、一晩培養した。その後、HemeGREEN™で細胞を30分間処理し、共焦点レーザー顕微鏡で蛍光像を観察することで、これら添加物が細胞内遊離ヘム濃度に与える効果を評価した。ALAおよびFACの添加によって蛍光シグナルの増加がみられたことから、ヘム原料の添加で細胞内遊離ヘムの量が増加したことが観察された。この蛍光シグナル増加はSAの添加で抑えられたことから、SAによってヘムの生合成が阻害されたことが示唆された。さらにZnPPIXの添加で蛍光シグナルはより強くなったことから、ヘムの分解が阻害され、細胞内遊離ヘムの量が増加したことが示唆された。

ヘム生合成および分解の制御

ヘム生合成の制御による細胞内遊離ヘム濃度変化のHemeGREENによる測定
ヘム分解の制御による細胞内遊離ヘム濃度変化のHemeGREENによる測定

一酸化窒素による細胞内遊離ヘム濃度変化の評価

ヘムタンパク質を一酸化窒素で処理するとヘムが遊離することが知られている。HeLa細胞に一酸化窒素ドナーであるNOC-5を添加し20分間培養した。さらにHemeGREEN™で30分間細胞を処理したのち、共焦点レーザー顕微鏡で蛍光像を観察し、一酸化窒素が細胞内遊離ヘム濃度に与える影響を評価した。NOC-5の濃度依存的に蛍光シグナルの増加が見られたことから、一酸化窒素によって細胞内遊離ヘム濃度量が増加したことが観察された。


一酸化窒素による細胞内遊離ヘム濃度変化の模式図
一酸化窒素による細胞内遊離ヘム濃度変化のHemeGREENによる測定

フェロトーシス誘導時における細胞内遊離ヘム濃度の追跡

フェロトーシス誘導時における細胞内遊離ヘム濃度のHemeGREENによる測定

HT1080細胞をフェロトーシス誘導剤エラスチンで処理し、6時間培養した。その後、細胞をHemeGREEN™とFe(Ⅱ)プローブであるSiRhoNox-1で同時に染色し、細胞内遊離ヘムと細胞内Fe(Ⅱ)の変動を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、エラスチンの添加によってFe(Ⅱ)だけでなく、遊離ヘム濃度も同時に増加していることが分かった。


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原著論文

  • Kawai, K., et al., “Molecular Imaging of Labile Heme in Living Cells Using a Small Molecule Fluorescent Probe”, J. Am. Chem. Soc., 144 (9), 3793~3803 (2022). [PMID:35133144]

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価格

[在庫・価格 :2025年08月09日 00時00分現在]

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HemeGREEN <Intracellular Labile Heme Detection Reagent>
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説明文
生細胞内の遊離ヘム(Labile Heme)を緑色蛍光で可視化する試薬。二価鉄(Fe2+)など他の活性種やタンパク質に内包されるヘムにはほとんど応答せず、遊離ヘムを選択的に検出することができる。
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HemeGREEN <Intracellular Labile Heme Detection Reagent>

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説明文 生細胞内の遊離ヘム(Labile Heme)を緑色蛍光で可視化する試薬。二価鉄(Fe2+)など他の活性種やタンパク質に内包されるヘムにはほとんど応答せず、遊離ヘムを選択的に検出することができる。
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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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