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細胞内の酸化還元状態を簡単にライブイメージングできます 酸化還元状態を検出する蛍光プローブ SEMKUR-IM

掲載日情報:2025/11/27 現在Webページ番号:72730

細胞内の酸化還元状態(レドックス状態)を可視化できる低分子蛍光プローブです。
細胞膜透過性かつ、より還元的な環境下において蛍光を発するように設計されているため、培地に添加し、生細胞に投与し取り込ませるだけの簡便な操作で、個々の細胞の酸化還元状態をライブイメージングすることが可能です。


細胞内の酸化還元状態の測定について

酸化ストレスは、体内に過剰のフリーラジカルまたは活性酸素種(ROS、Reactive oygen species)が存在する場合に発生します。過剰な酸化ストレスは、DNA、タンパク質、および脂質膜への損傷などの細胞傷害を引き起こすことが知られており、老化、喘息、関節炎、糖尿病、がん、炎症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、ダウン症候群、および神経変性疾患などさまざまな疾患に関与しています。
グルタチオンは抗酸化物質として作用することにより酸化ストレスから細胞を保護する主要な役割を担っています。グルタチオンは還元型(GSH)または酸化型(GSSG)の状態で存在し、酸化還元状態に依存して起こる可逆的なチオール/ジスルフィド交換反応によって平衡状態にあります。健康な細胞および組織では、総グルタチオンの90%以上が還元型(GSH)であり、残る10%未満が酸化型(GSSG)で存在していますが、酸化ストレス環境下ではGSHが減少する一方で、GSSGが蓄積することが知られています。
そのため、GSHとGSSGの比率(GSH/GSSG比)は組織および細胞の酸化還元状態を評価する指標として広く用いられています。しかし、既存のGSH/GSSG比測定手法では測定対象の試料をライセート化する必要があり、1つ1つの細胞の酸化還元状態までは評価できないため、より簡便に細胞の酸化還元状態を評価できる手法が望まれていました。


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測定原理

Vivid Microscopy社が開発したSEMKUR-IMは、細胞の酸化還元状態をライブイメージングによって検出するために設計された細胞膜透過性の低分子蛍光プローブです。SEMKUR-IMは蛍光団(FITC)と消光団(Para-Methyl Red、PMR)がジスルフィド結合によって連結された構造を持ち、そのままの状態では励起光によってFITCが励起されてもPMRに励起エネルギーが移動して消光されるため蛍光は検出されません。しかし、SEMKUR-IMのジスルフィド結合は細胞内においてチオール/ジスルフィド交換反応(細胞内においてはほとんどがGSHとの反応と考えられます)によって切断され、その結果FITCがPMRから遊離することで蛍光を発するようになります。ジスルフィド結合の切断がどの程度起こるかは細胞内の酸化還元状態に依存し、より還元的な条件下ではジスルフィド結合の切断がより多く起こり(=蛍光強度が高い)、より酸化的な条件下ではジスルフィド結合の切断は起こりづらくなります(=蛍光強度は弱い)。このことを利用して各種実験条件下での蛍光強度を比較することで、個々の細胞の酸化還元状態を評価することが可能です。

SEMKUR-IMの構造

図1.SEMKUR-IMの構造

SEMKUR-IMの反応メカニズム

図2.SEMKUR-IMの反応メカニズム

SEMKUR-IMは細胞内においてGSHと2段階のチオール/ジスルフィド交換反応を起こし、その結果、蛍光団(FITC)が消光団(PMR)から分離することで蛍光を発するようになる。チオール/ジスルフィド交換反応がどの程度の割合で進行するかは細胞内の酸化還元状態に依存する。

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特長

  • 生細胞の酸化還元状態を検出できます。
  • 細胞膜透過性のため、培地に添加するだけで細胞内に取り込まれます。
  • 通常の使用濃度では細胞毒性を示しません。

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操作方法概略

プロトコルは観察を行う対象や目的に応じて最適化して下さい。ここでは一般的な細胞における手順を記載しています。

  1. SEMKUR-IMをDMSOに溶解し、10 mMストック溶液を調製する。
    SEMKUR-IMは光感受性のため、余ったストック溶液は-20℃以下、暗所またはアルミホイルで包んだチューブで保管して下さい。
  2. 培地にSEMKUR-IMを添加し、インキュベーションする。
    SEMKUR-IMの濃度とインキュベーション時間は観察対象の細胞に応じて最適化が必要です。一般的には、SEMKUR-IMの濃度が0.5~20 μM、インキュベーション時間は10~60分で使用可能です。
  3. SEMKUR-IMを含まない培地で細胞を洗浄する。
    洗浄回数は最低1回でも観察可能ですが、実施する測定内容に応じて最適化して下さい。
  4. 洗浄後直ちに、蛍光強度測定、または蛍光顕微鏡観察を行う(励起波長:485~495 nm、蛍光波長:516~525 nm)。
    初めて観察する細胞種の場合、蛍光強度測定の前に蛍光顕微鏡観察を行い、SEMKUR-IMの細胞内への取り込みを確認することを推奨します。
    培地に含まれるチオール/ジスルフィド還元剤やチオール基、ジスルフィド結合を多数含むタンパク質などの成分がSEMKUR-IMと反応し、観察結果に影響する可能性があります。そのような場合、これらの成分を含まない培地を用いて下さい。

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使用例

NIH/3T3細胞における使用例

SEMKUR-IMのNIH/3T3細胞における使用例

NIH/3T3細胞を10 mMのN-アセチルシステイン(NAC、細胞内の酸化還元状態をより還元的にする作用を持つ)で処理する際に、同時に20 μMのSEMKUR-IM(図中ではDSSQ1と表示)、1 μg/mlのHoechst(核染色)、200 nMのTMRM(ミトコンドリア染色)を加えて30分インキュベーションした。インキュベーション後、洗浄し、観察した結果、NAC処理をした試料では未処理(コントロール)と比較してSEMKUR-IM由来の蛍光が大幅に強まる様子が確認された。


グルタミン酸作動性皮質ニューロンにおける使用例

SEMKUR -IMのグルタミン酸作動性皮質ニューロンにおける使用例

Alvarez et al.(2024)を改変 [PMID:38000947]

グルタミン酸作動性皮質ニューロンをさまざまな濃度(0~40 mM)のNACであらかじめ30分間処理し、その後25 μMのSEMKUR-IM(図中ではDSSQ-1と表示)および5 μg/mlのHoechstで45分間染色を行った。上記のNIH/3T3細胞の場合と異なり、未処理(コントロール)ではSEMKUR-IM由来の蛍光はほとんど見られず、グルタミン酸作動性皮質ニューロンの細胞内はNIH/3T3細胞よりも酸化的な状態であることが示唆された。また、NAC濃度が高くなるにつれて蛍光が強まる様子が確認された。


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参考文献

  • Tracy, E. P., et al., Antioxid. Redox Signal., 38(4-6), 261-281(2023). [PMID:35950616]

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