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食品・医薬品・化粧品・繊維加工など幅広い分野の研究に有用なアルギン酸ナトリウム 低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム((株)キミカ)

掲載日情報:2025/05/23 現在Webページ番号:72139

キミカ /
(株)キミカ
[メーカー略称:KIM]

南米チリの海岸に自生する大型藻類(コンブ目Lessonia属)を原料に抽出し、イオン交換反応を用いて高度に精製した医療分野での研究開発にも利用可能な低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムです。さまざまなゲル強度や粘度のグレードがあり、バイオ研究や医薬品開発などにおける多様なニーズに合わせて最適な特性を有するアルギン酸ナトリウムをご選択いただけます。

アルギン酸(ナトリウム)とエンドトキシンについて

アルギン酸

アルギン酸は、コンブ、ワカメに代表される海藻類に特有の天然多糖類です。含有量は乾燥藻体の30~60%を占め、いわばコンブやワカメの主成分で、天然の食物繊維です。

藻体中のアルギン酸は、海中に含まれるさまざまなミネラルと塩を形成し、ゆるやかなゼリー状態で細胞間隙を満たしています。波に揉まれ、海水中を揺らめきながら生長する海藻のしなやかさは、このアルギン酸がもつ独特な物資によるものと言われています。

アルギン酸は、1883年にスコットランドの科学者E.C.C. Stanfordにより初めて単離、命名されました。以来、多くの研究が重ねられ、現在ではハイドロコロイドとして多種多様なアルギン酸およびその誘導体が食品、医薬品、化粧品、繊維加工、その他幅広い分野で活用されています。(株)キミカでは、サステナブルに配慮し、ライフサイクルを終え海岸に漂着した海藻を原料とし、自然エネルギーを最大限に活用したアルギン酸の抽出および製造を行っています。

アルギン酸の化学構造

β-(1-4)-D-マンヌロン酸 α-(1-4)-L-グルロン酸
β-(1-4)-D-Mannuronic acid α-(1-4)-Guluronic acid

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アルギン酸は、マンヌロン酸(Mannuronic acid(M))とグルロン酸(Guluronic acid(G))という2種類のウロン酸が直鎖重合した構造を持つ多糖類です。アルギン酸の鎖状構造の中で、MとGはランダムに存在し、以下に示す3種のブロックを構成しながら共存しています。

M-M結合のみから成る
Mブロック
G-G結合のみから成る
Gブロック
MとGがランダムに配列した
ランダムブロック
Mブロック Gブロック ランダムブロック

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アルギン酸に含まれるMとGの量的比率(M/G比)と配列は、アルギン酸の性質、特にゲル化能力とゲル強度に大きな影響を及ぼします。このM/G比は、海藻の種類や部位によって異なり、成育場所や季節による影響を受けることが知られています。

MおよびGの各ユニットのカルボキシ基(-COO)は、さまざまな陽イオンと容易にイオン交換することで、物性を変えることができます。この性質を利用して、アルギン酸は、増粘剤、ゲル化剤、分散安定剤、テクスチャーの調整剤、皮膜形成剤など広く活用されています。

不水溶性アルギン 水溶性アルギン
不水溶性アルギン 水溶性アルギン

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アルギン酸ナトリウム

アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシ基(-COO)がNaイオン(Na+)と結合した中性塩です。アルギン酸は水に溶解しませんが、アルギン酸ナトリウムは冷水や温水に容易に溶解し、粘稠な水溶液となります。


ゲル化

アルギン酸ナトリウムの構造 Caイオンによるアルギン酸ナトリウムのゲル化

アルギン酸ナトリウムの構造

  • G:グルロン酸(Guluronic acid)
  • M:マンヌロン酸(Mannuronic acid)

Caイオンによるアルギン酸ナトリウムのゲル化

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アルギン酸ナトリウム水溶液にCaイオン(Ca2+)を加えると、瞬時にイオン架橋が起こりゲル化します。Caのイオン化を抑えることで、ゲル化時間をコントロールすることも可能です。このアルギン酸ナトリウムのユニークな性質は、増粘剤、ゲル化剤、安定剤などの各種物性改良剤として、幅広い産業で利用されています。


アルギン酸のゲル化


動画 アルギン酸の特徴「ゲル化」

動画 アルギン酸の特徴「耐熱性」

各種溶媒に対する溶解性

アルギン酸とアルギン酸ナトリウムの各種溶媒に対する溶解性(○:可溶、✖:不溶)

化合物名 溶媒
水、湯 油脂 有機溶媒 酸性の液体

果汁、酒、ドレッシングなど
アルカリ性の液体

かんすい溶液など
多価カチオンを含む液体

硬水、牛乳など
アルギン酸
アルギン酸ナトリウム  ○*

強アルカリ中では粘度が急激に低下することがあります。


アルギン酸ナトリウムの性質について

① 分子量の影響 ② 温度の影響 ③ 一価電解質の影響 ④ 温度の影響 ⑤ pHの影響
分子量の影響 温度の影響 一価電解質の影響 温度の影響 pHの影響

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  • ①:アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は、分子量すなわち重合度に応じて増大します。
  • ②:アルギン酸ナトリウム水溶液の見かけの粘度は、温度の上昇とともに低下します。凍結融解に対しては大きな影響は受けません( 溶液粘度は、水温に対してきわめて敏感なのでご注意下さい)。
  • ③:食塩など一価カチオンを放出する無機電解質をアルギン酸ナトリウム水溶液に加えると粘度が低下します。これは、イオン強度の増大により高分子電解質であるアルギン酸分子が収縮するためです。
  • ④:アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は、濃度の増加にともない対数的に上昇します。
  • ⑤:pHが低下すると、電離して溶解していたアルギン酸アニオンは遊離アルギン酸になり水に不溶化し、粘度上昇をもたらします。pH2以下では、アルギン酸として析出します。
多価カチオンと金属イオン封鎖剤:Ca2+に代表される多価カチオンの存在により、アルギン酸ナトリウム水溶液は粘度上昇を起こしゲル化します。実際にアルギン酸塩を利用するほとんどの場合、この多価カチオンの影響は避けられません。乳製品をはじめとする天然物、用水、染料などの化学物質にも多価カチオンの夾雑が考えられます。また、アルギン酸塩にも原料海藻由来のカルシウムが微量含まれています。
これらの影響を除くためには、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの金属イオン封鎖剤が用いられます。金属イオン封鎖剤は、ゲル化の反応速度や流動性のコントロールにも利用されます。


アルギン酸ナトリウムの安全性について

アルギン酸とその塩類の安全性は国連機関(JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)で評価され、ADI(一日許容摂取量)は「特定しない」という結果になっています。天然海藻由来のアルギン酸ナトリウムは、BSEや遺伝子組換え、残留農薬などの影響がない安全性の高い素材です。

エンドトキシン(Endotoxin)とは

エンドトキシン(内毒素、endotoxin)は微生物(グラム陰性桿菌)の細胞壁に存在するリポ多糖で、その微生物が死んで菌体が壊れたとき、その残骸から生じます。エンドトキシンが血液を通じて体内に侵入すると、たとえごく少量であっても発熱や敗血症性ショックなどを引き起こし、命に関わることもあります。医薬品や医療機器、特に生体内へ直接導入される注射剤についてはエンドトキシンフリーである事が求められます。


アルギン酸に含まれるエンドトキシンとは

天然の海藻から抽出されるアルギン酸には、1グラムあたり数万~数十万EU(Endotoxin Unit)のエンドトキシンが含まれているのが一般的です。口から摂取する食品や経口剤では全く問題にならないものですが、注射剤に用いるアルギン酸からは可能な限りエンドトキシンを除かなければなりません。(株)キミカは長年の研究の結果、アルギン酸の品質や特性を損なうことなく、エンドトキシンのみを効果的に除去する方法を開発し、エンドトキシンを50 EU/g以下で管理したアルギン酸を供給できるようになりました。



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特長

  • GMP対応:(株)キミカの千葉プラントでは、GMPに適合した高品質な製品の供給が可能です。
  • アルギン酸に含まれる不純物を徹底的に取り除いた、精製度の高い製品です。あらかじめ0.2 μmフィルターによるろ過を施すことも可能です。
  • エンドトキシン含有量:≦50 EU/g
  • 生菌数:≦100 cfu/g

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製品ラインナップ

商品コードをクリックすると各製品の価格表をご覧いただけます。

分類 M/G比*1 グレード 粘度 概算分子量 包装 商品コード
(1.0%水溶液、20℃)*2 (重量平均分子量) 日本語検査書付 英語検査書付
Standard 0.8~1.6 AL10 5~20 mPa·s 30万~55万 1 g×10 A030000-18053 A030000-20030
AL20 20~50 mPa·s 55万~80万 1 g×10 A030000-18054 A030000-20029
AL100 50~200 mPa·s 80万~150万 1 g×10 A030000-18055 A030000-20028
AL500 450~600 mPa·s 215万~245万 1 g×10 A030000-18056 A030000-20027
High-G <0.8 ALG10 5~20 mPa·s 30万~55万 1 g×10 A030000-18057 A030000-20034
ALG20 20~50 mPa·s 55万~80万 1 g×10 A030000-18058 A030000-20033
ALG100 50~200 mPa·s 80万~150万 1 g×10 A030000-18059 A030000-20032
ALG300 250~400 mPa·s 165万~205万 1 g×10 A030000-18060 A030000-20031
High-M <1.6 ALM20 20~50 mPa·s 55万~80万 1 g×10 A030000-18061 A030000-20036
ALM100 50~200 mPa·s 80万~150万 1 g×10 A030000-18062 A030000-20035

  • *1  アルギン酸のM/G比は、アルギン酸(アルギン酸ナトリウムなど)の主成分であるマンヌロン酸(M:β-(1-4)-D-Mannuronic acid)とグルロン酸(G:α(1-4)-L-Guluronic acid)の比率を示す。Mの比率が高いHigh-Mタイプのアルギン酸塩からは柔軟なゲル、Gの比率が高いHigh-Gタイプのアルギン酸塩からはゲル強度の高い剛直なゲルが得られる。High-MとHigh-Gをブレンドすることにより、ゲル強度を調節することもできる。
  • *2  回転式粘度計、20℃、30 rpm(ローター適宜)で測定。1 mPa・s = 1 cP

粘度参考

  • オレンジジュースの粘度:5~15 mPa·s
  • オリーブ油の粘度:約90 mPa·s
  • 練乳の粘度:約200 mPa·s
  • 卵黄の粘度:約800 mPa·s
  • グリセリンの粘度:約1,100 mPa·s

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アルギン酸ナトリウムの主な用途

工業用原料として

アルギン酸ナトリウムの由来は天然の海藻ですが、実際にはその8割ほどは食品以外の用途に利用されています。特に世界のアルギン総生産量の半分以上が布地に柄を染める際の「捺染用糊料」の用途で消費されています。アルギン酸ナトリウム水溶液の素直な粘性は、染料が生地に浸透するのを助け、均一かつ精密な、美しい染め着けをもたらします。冷水に可溶なアルギン酸ナトリウムは染着後の糊落ちが良く、また生分解性が高いために排水処理への負荷が低いなど、染色分野では非常に優れた糊とされています。この他、製紙用のサイジング剤や溶接棒を加工する際に使う粘結剤、ペットフードのゲル化剤など、衣食住に関わる幅広い場面でアルギン酸ナトリウムが利用されています。

ファインケミカルへの応用

高度に精製されたアルギン酸ナトリウムは、医薬品や医療材料、また化粧品などのファインケミカルの分野に用いられています。特に再生医療分野では、アルギン酸ナトリウムを使ってさまざまな研究が盛んに行われており、非常に興味深い研究成果が数多く報告されています。

低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムの主な利用分野

  • 細胞外マトリクスのスキャフォールド 
  • 細胞固定化担体 
  • 粘膜隆起剤 
  • 3Dバイオプリンター 
  • 細胞、組織の凍結保存用添加剤 
  • 癒着防止剤
粘膜隆起剤 再生医療研究
早期消化管がんの内視鏡治療では、病変と筋層の間の粘膜下層へ局注液(医療機器)を注射で注入し、病変が発生している粘膜を持ち上げて(人工的に隆起させて)、病変部を粘膜ごと切除します。この医療機器の主原料として、低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムが使われています。

同じ目的でヒアルロン酸が使われたものも実用化されていますが、動物由来原料の使用に際しては安全性への懸念もあり、植物性のアルギンに注目が集まっています。
再生医療分野では、アルギンのユニークな特性に着目した研究開発が進んでいます。加熱や冷却なしにゾルからゲルへ変化するアルギン独特の物性は、アルギンを任意の場所へ局注してからゲル化させたり、生体組織を生きたまま懸濁してゲル化させたりする操作を可能にします。この特性が組織再生の足場や、3Dバイオプリンターの基材などに応用されています。

再生医療に用いられるバイオマテリアルには、他にもコラーゲンやヒアルロン酸などがありますが、動物由来素材は体内に導入した時に何らかの生体反応を引き起こすことがあります。一方、海藻由来のアルギン酸ナトリウムはそうした反応が全くないことが確認されており、体内での分解もゆるやかです。この「生体に対して無作用である」ことが、バイオマテリアルとしてのアルギンの大きな特徴となっています。

機能性素材として

天然食物繊維であるアルギン酸ナトリウムは、適度な摂取によって便通改善などの効果をもたらすことが知られています。低分子化したアルギン酸ナトリウムは、コレステロールの体外排出に効果のある特定保健用食品として実用化されています。

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使用方法

水溶液として使う場合

アルギン酸塩はきわめて水和性が高いため、溶解時に均一に分散させることが重要です。分散が悪いと粉末塊の表面のみが水和して糊化した状態、いわゆる継粉(ママコ)を形成してしまいます。詳細はアルギン酸の溶解方法pdf)をご覧下さい。

動画 アルギン酸の使い方(アルギン酸の溶かし方)


強撹拌による水への溶解

強撹拌による水への溶解

  1. プロペラ型撹拌機などで水を強撹拌し、容器一杯の大きな渦を作る*3
  2. できた渦の壁面へアルギン酸ナトリウムの粉末を少しずつふりかけるように加える*4
  3. 未溶物が見えなくなるまで強撹拌を続ける。

*3 撹拌装置には、容器内の水を十分に撹拌できる力、溶解後の強い粘性を帯びた液体を撹拌できる力が必要です。

*4 適宜、途中で撹拌を止めてプロペラや容器の壁面に粉末が付着していないか確認し、付着していた場合にはスパチュラなどで掻き落として、もう一度溶解して下さい。

強撹拌による水への溶解(良い例) 強撹拌による水への溶解(悪い例)
良い例 悪い例
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アルギン酸ナトリウムの粒子が均一に分散しているため、短時間で全体が水和する。 分散が不十分の場合、アルギン酸ナトリウムの粒子同志が付着し大きな塊(ママコ)を形成し、溶けにくくなる。

粉末のまま使う場合

アルギン酸ナトリウムは、粉末のままでも使用(配合)できます。その場合、最終製品に対して1~2%程度で用いられることが多く、粉末を量り取って加えるだけでは均一に混ざりません。しかし、その機能を十分に引き出すためには製品全体に均一になるよう混合する必要があります。

具体的には、主原料の一部(10%程度)に対して必要量のアルギン粉末を投入して一次混合し、全体へ混ぜ直すような手順を踏むことにより、アルギン酸ナトリウムを製品全体に均一に混合することができます。

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技術資料

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

製品情報は掲載時点のものですが、価格表内の価格については随時最新のものに更新されます。お問い合わせいただくタイミングにより製品情報・価格などは変更されている場合があります。
表示価格に、消費税等は含まれていません。一部価格が予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承下さい。