in vivo用途にも適した抗体を作製します 組換え（リコンビナント）抗体作製・改変受託サービス

非フコシル化抗体は、Fc領域に修飾された糖鎖がフコース糖単位を持たないように設計された抗体です。非フコシル化抗体は、免疫細胞、特にNK細胞上のFcレセプターにより強く結合するため、抗体依存性細胞傷害（ADCC）の誘導能が増強されます。がん細胞や感染細胞などを標的とする抗体を非フコシル化することによって、これら異常細胞を効率的に排除できるようになります。

図. ADCCのメカニズム
（1）抗体が標的細胞（がん細胞など）表面の抗原を認識し、結合する。
（2）NK細胞のFcレセプター（CD16）に抗体のFc領域が結合する。
（3）NK細胞が活性化される。
（4）NK細胞から細胞毒性顆粒（グランザイム、パーフォリンなどの細胞障害成分を含む）が分泌され、標的細胞の細胞障害が誘導される。
（5）標的細胞の細胞死が誘導された後、NK細胞が標的から遊離する。

evitria社では、ProBioGen社が保有するGlymaxXと呼ばれる非フコシル化技術をProBioGen社とのライセンス契約によって使用しています。この技術は、フコース生合成経路に関わる酵素遺伝子の導入に基づくものです。導入した酵素はフコース合成の中間体を基質として別の糖を合成するため、Fc領域のグリコシル化に必要なフコース単糖の量が枯渇します。これによってFc領域糖鎖のフコースレベルを低下させること、さらにはフコースを完全に除去することができます。Fc領域のアミノ酸改変を伴う他の非フコシル化技術は免疫原性をもたらす可能性がありますが、本技術では、CHO細胞を用いて、native抗体と同じDNA配列で（アミノ酸改変を伴うことなく）非フコシル化抗体を作製することが可能です。そのため、native抗体と同等の収量・安定性を実現できることに加え、免疫原性のリスクを防ぐことができます。

非フコシル化抗体にはFc領域のフコース糖単位が存在しないため、マクロファージやNK細胞などの免疫細胞上のFcレセプターに対する親和性が大幅に高まります。この高い親和性は、標的細胞に対するより強力で効率的な免疫応答をもたらします。

Fc領域が有するエフェクター機能（ADCC誘導能やサイトカイン放出誘導能などの免疫系を活性化する機能）を低下させる技術です。in vivoの用途では、標的との結合相互作用を中和するために抗体を用いる場合など、宿主免疫系の活性化が悪影響を与える場合に不可欠な技術です。また、in vitroの用途では、免疫組織化学やフローサイトメトリーにおける非特異的なバックグラウンドシグナルを減少させます。
evitria社では、mAbsolve社が保有するSTR技術を使用して、エフェクター機能が完全に消失（サイレント）したFc領域を持つ抗体を作製できます。

図. 主要なFcサイレンシング変異体のFcレセプターへの親和性評価
他技術はFcレセプターとの親和性が残っているが、STR技術は親和性がほぼ完全に消失している。