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糖鎖生物学ワークフローにおけるレクチンの活用法

掲載日情報:2024/07/09 現在Webページ番号:71339

Vector Laboratories社のサイエンスブログ(SpeakEasy Science Blog)からレクチンに関するブログをご紹介します。

Vector Laboratories社のレクチンに関する他のブログについては,サイエンスブログ「レクチン」からご覧下さい。

by Shuhui Chen, Ph.D.


糖鎖イメージ像

細胞プロセスや病理学における糖鎖の役割の理解は、科学的ブレークスルーを引き出すために必要です。細胞集団の糖鎖プロファイリングは、健康な状態でも病気の状態でも非常に有益であり、身体機能において糖鎖の重要な役割について知ることができるだけでなく、糖鎖プロファイルの変化が疾病の表現型をどのように修飾するかを推測することもできます。これらの知見を組み合わせることで、創薬研究に大きく貢献することができます。

たとえば、腫瘍細胞表面のグライコームには、腫瘍細胞に対する高親和性の標的治療薬を設計するための情報があります。唯一の問題点は、健康と疾患における糖鎖に関する情報の欠如です。このギャップを埋めるには、患者試料を研究して糖鎖構造、動態、および位置を明らかにすることです。これは、糖鎖結合タンパク質(アフィニティー試薬)、糖鎖結合抗体およびレクチンによって可能です。抗体は、外来糖鎖に対する免疫反応として体内または細胞集団によって産生され、レクチンは認識ドメインで特定の糖鎖に直接結合します。

抗体やレクチンの結合を定量化・可視化することで、研究者は試料の糖鎖プロファイルに関する貴重な知見を得ることができます。レクチンの多様性とユニークな物理化学的特性は、糖鎖検出の理想的な候補となります。

糖鎖結合タンパク質の種類によって結合のメカニズムは若干異なりますが、免疫組織化学染色(IHC)や免疫蛍光染色(IF)を含む糖鎖検出アッセイの使用方法は非常に類似しています。これら2つの方法は、試料中の糖鎖構造を可視化し定量化するために必要です。

この記事では、糖鎖生物学アッセイワークフローでレクチンを使用する際の注意点をまとめています。多くのステップは抗体を利用したワークフローと同じですが、微妙ではありますが決定的な違いがあります。

組織の保存

組織の保存は、免疫組織化学染色(IHC)/免疫蛍光染色(IF)の設計を成功させるための第一歩です。使用するアフィニティー試薬にかかわらず、組織標本の作製は凍結かパラフィン包埋のいずれかで行うことができます。

パラフィン包埋では、組織をアルコールで脱水(固定)してからパラフィンに包埋します。パラフィンは一晩で硬化し、組織を室温でより長く保存できます。一方、凍結では最初の固定は行われず、代わりに組織を液体窒素、またはドライアイス/凍結溶媒に浸します。この方法は、酵素活性を保持するのによく使用されます。

クエンチング

組織には、Endogenous Peroxidase(EP)、Pseudoperoxidase、Alkaline Phosphatase(AP)が含まれています。このため、PeroxidaseとAPの検出システムを使用すると、バックグラウンド染色が発生しやすくなります。BLOXALL® Endogenous Peroxodase and Alkaline Phosphatase Blocking Solutionなどの二重酵素ブロッキング試薬を使用してこれらの酵素を不活性化(クエンチング)することで、バックグラウンド染色のリスクを軽減できます。

ブロッキング:アビジンとストレプトアビジン

抗体とレクチンのワークフローは、ブロッキングのステップで異なります。

抗体ベースのワークフローでは、抗体の抗原検出能力を増幅するためにビオチン標識が使用されます。アビジンと呼ばれる糖タンパク質はビオチンに対する親和性が高いため、アビジン-ビオチン結合を利用して、免疫組織化学染色(IHC)での染色強度を増幅するためによく使用されます。しかし、組織には内因性のビオチンが含まれている場合があり、これはアビジン/ビオチンブロッキング試薬で前処理することで防ぐことができます。

アビジンは溶解性が高く、製造コストが低いなどの利点がありますが、レクチンベースのワークフローでの使用は推奨されません。アビジン自体が糖タンパク質であるため、レクチンと非特異的な相互作用を形成し、最終的な染色性を変化させる可能性があります。ストレプトアビジンは、ビオチンとの結合に利用できる代替品です。ストレプトアビジンは糖鎖を持たないため、非特異的結合が著しく減少します。

正常血清/ミルクと糖タンパク質を含まないブロッキング溶液の使用

非特異的染色の原因は、一次抗体とFc受容体との相互作用です。抗体ベースの免疫組織化学染色(IHC)ワークフローでは、(できれば二次抗体作製のときに使用した種の)正常血清を使用できます。試料内のFc受容体に非特異的に結合することで、正常血清は一次抗体の結合を妨げることができます。

ただし、アビジンを避けるのと同じ理由で、正常血清はレクチンワークフローには適していません。というのは、正常血清に限らず、他のすべてのミルクベースのブロッキング剤は糖鎖が付加されているため、望ましくないレクチン結合を引き起こすからです。

レクチンベースのワークフローでは、ブロッキング剤としてウシ血清アルブミンを代用することができます。もう1つの選択肢は、Carbo-Free Blocking Solutionです。糖タンパク質が含まれていないため、バックグラウンド染色や偽陽性のリスクが軽減されます。

一次抗体/レクチン

一次抗体は、タンパク質の標的部位に直接結合します。レクチンワークフローでは、一次抗体の代わりに糖鎖特異的レクチンを使用することができます。一次結合試薬の選択にかかわらず、最適な特異的結合を確保するためには、組織/試料の構成成分、組織調製法、ブロッキング法を考慮する必要があります。

二次試薬

二次試薬はシグナル強度を増幅し、一次抗体に免疫標識などの特性を付与するために使用します。

一次試薬が抗体の場合、抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体などの抗抗体(Anti-antibody)を使用する必要があります。このような抗体には、標識型または非標識型の製品があります。非標識型の二次抗体は研究者ご自身で標識を行うのに最適ですが、市販の標識抗体を使って蛍光標識またはビオチン標識によるシグナル増幅で検出することも可能です。

抗体の代わりに一次レクチンを使用する場合、抗レクチン抗体が理想的な二次試薬になります。レクチンがビオチン標識されている場合、抗レクチン抗体の標識にはストレプトアビジンを使用する必要があります。一次レクチン自体にタグが付いている場合は、それぞれのタグに対応する抗フルオレセイン、抗DNP、抗DIG、抗ビオチンなどの抗レクチン抗体を使用できます。

三次試薬と基質/発色剤

​​三次試薬は、対象分子の存在量が少ない場合のシグナル増幅に役立ちます。

免疫組織化学染色(IHC)ワークフローでは、三次試薬と発色剤を使用して二次抗体を結合し、発色産物を形成させます。三次試薬には、多くの場合、Horseradish peroxidase(HRP)やAlkaline Phosphatase(AP)などの酵素が含まれており、発色剤/呈色物質と相互作用して酵素固有の発色をもたらします。この相互作用は、対象分子の細胞外局在部位と相対的発現レベルを明らかにする染色を行うために用いられます。

免疫蛍光染色(IF)ワークフローでは、増幅抗体(例えば、ヤギで作られた抗マウスIgG抗体や抗ウサギIgG抗体)が二次試薬と結合するような増幅蛍光系が使用されます。次に、蛍光色素標識抗ヤギIgG抗体を増幅抗体に結合させ、明るい蛍光染色を行います。

糖鎖検出のための免疫組織化学染色(IHC)/免疫蛍光染色(IF)ワークフローの詳細

IHC/IFワークフローにレクチンを組み込むことは、それほど難しいことではありません。実際、最初と最後のステップはほとんど同じです。レクチンを使用する際に重要なのは、シグナル増幅し、バックグラウンド染色を除くようなブロッキング試薬と二次検出試薬の選択です。

糖鎖検出に抗体とレクチンのどちらを選択するか迷っている場合は、レクチンの主な利点に焦点を当てたVector Laboratories社の記事をご覧下さい。

その他のリソースとして、以下のデータベースや記事をご参照下さい。

  • UniProtは、ワークフローに組み込む予定のタンパク質がグリコシル化されているかどうかを確認するためのタンパク質データベースです。
  • アイルランド国立大学ゴールウェイ校の研究者が執筆した論文で、著者らは糖鎖検出のためのIHC/IFワークフローの理論的根拠と考慮事項を要約しています。
  • PubMedには、レクチンの応用例を示す多くの論文が掲載されています。
Rebelo, A.L., et al., "An optimized protocol for combined fluorescent lectin/immunohistochemistry to characterize tissue-specific glycan distribution in human or rodent tissues.", STAR Protoc., 2(1), 100237 (2020). [PMID: 33364625]

レクチンガイドのご案内

レクチンの歴史、レクチンアッセイの方法、原理などについては、以下のレクチンガイド(Lectin Application and Resource Guide)も併せてご参照下さい。


VEC社 Lectin Application and Resource Guide

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