ユーザーレビュー:Dharmacon Accell siRNA【広告】
慶應義塾大学 再生医療リサーチセンター 特任准教授/副センター長 森本悟 先生
Dharmacon Accell siRNA によるヒトiPS 細胞由来ニューロンに対する遺伝子ノックダウン

掲載日情報:2024/07/10 現在Webページ番号:71135

Dharmacon Accell siRNAレビュー 慶應義塾大学 再生医療リサーチセンター 特任准教授/副センター長 森本悟 先生

背景

 様々な疾患背景を有するヒトiPS細胞由来ニューロンは、神経変性疾患等の病態・創薬研究ツールとして、世界的にも盛んに使用されています1, 2, 3, 4。特に、特定の遺伝子変異などが同定されていない孤発性疾患においては、患者の遺伝情報を全て引き継いだ標的細胞を作製できる唯一無二のモデルです5
 また、ヒトニューロンにおける遺伝子発現を直接制御することで、loss of functionやgain of toxicityの病態を再現することが可能になるため、遺伝子のノックダウン技術は非常に重要になります。例えば近年、siRNA(Onpattro, Leqvio等)やアンチセンス核酸(アンチセンスオリゴヌクレオチド, ASO)を用いた医薬品(Spinraza, Tofersen等)も上梓されてきており、細胞レベルから臨床レベルまで、疾患治療開発には不可欠なものとなっています。
 しかしながら、siRNAもASOも、標的遺伝子を効率的にノックダウンするための配列を最適化するために多大な労力を要し、かつニューロン等の成熟細胞への送達も一筋縄ではいかない現状にあります。
 そこで、Dharmacon Accell siRNAを用いて、iPS細胞由来ニューロンに対する遺伝子ノックダウン実験を実施した結果をお示しします。当該siRNAを使用した主な理由としては、①ヒト標的遺伝子siRNAライブラリーが充実しており複数の遺伝子をノックダウンできる、②トランスフェクション試薬を使用せず細胞ダメージの懸念が少ない、というメリットからです。


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方法

 ヒトiPS細胞から、12 wellプレート上で独自の誘導法を用いてヒト運動ニューロンを作製し、形態的に成熟した段階で、Accell siRNA(Accell Non-targeting PoolあるいはAccell SMARTpool)を規定量添加しました。マニュアルにもありますが、それぞれのsiRNAによって最大ノックダウン効率に到達するまでの期間に24~48時間程度の差があるため、初回実験時には添加期間条件の検討を行います。トランスフェクション試薬による毒性がないため、siRNA添加を繰り返すことで、長期間のノックダウンも可能になります。


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結果

 ヒトiPS細胞からヒト運動ニューロンを分化誘導し、サイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼA(PKA)ホロ酵素の制御サブユニットRI-βをコードする遺伝子に対するAccell siRNAを最終的に48時間処置しました(独立した実験をn=3で実施)。⊿⊿Ct法を用いてqRT-PCRにより遺伝子発現を確認したところ(Housekeeping遺伝子としてACTB遺伝子を使用)、平均10.4%までのノックダウン効率を得ることが出来ました(図1)。また、siRNA添加後の形態観察にて、細胞の明らかな異常や浮遊細胞(死細胞)の増加は確認されませんでした。


Accell siRNA によるヒトiPS 細胞由来ニューロンにおける遺伝子ノックダウン効率
図1.Accell siRNA によるヒトiPS 細胞由来ニューロンにおける遺伝子ノックダウン効率

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製品を使用したご感想

 今回Accell siRNAを用いることで、ヒトiPS細胞由来ニューロンに対して、明らかな細胞毒性を伴わず非常に高効率なノックダウン結果を得ることができました。やはり、実験実施までの期間が短縮でき、非常に簡便に、低毒性、高効率に遺伝子ノックダウンが可能という点で、本ツールはとても強力であると考えます。但し、siRNAや標的細胞の種類によって、処置期間やノックダウン効率に差があることには留意が必要です。


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参考文献

  1. Okano, H., et al.,"Ropinirole, a New ALS Drug Candidate Developed Using iPSCs."Trends Pharmacol. Sci., 41(2), 99~109 (2020). [PMID:31926602]
  2. Okano, H. and Morimoto, S., "iPSC-based disease modeling and drug discovery in cardinal neurodegenerative disorders." Cell Stem Cell, 29(2), 189~208 (2022). [PMID:35120619]
  3. Ito, D., Morimoto, S., et al.,"Maiden voyage:induced pluripotent stem cell-based drug screening for amyotrophic lateral sclerosis." Brain, 146(1), 13~19 (2023). [PMID:36004509]
  4. Morimoto, S., et al., "Phase 1/2a clinical trial in ALS with ropinirole, a drug candidate identified by iPSC drug discovery." Cell Stem Cell, 30(6), 766~780.e9 (2023). [PMID:37267913]
  5. Okano, H., Morimoto, S., et al., "Induced pluripotent stem cells-based disease modeling, drug screening, clinical trials, and reverse translational research for amyotrophic lateral sclerosis."J. Neurochem., 167(5), 603~614 (2023). [PMID:37952981]

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製品記事

トランスフェクション試薬を使わずに細胞へ導入できるsiRNA
Accell siRNA
トランスフェクション試薬を使わずに細胞へ導入できるsiRNAです。Accell siRNAは、特殊な化学修飾が施されたヌクレオチドを用いており、Accell siRNA Delivery Mediaと混ぜて細胞を培養するだけで遺伝子発現をノックダウンできます。トランスフェクション試薬による細胞毒性を回避でき、配列デザインと化学修飾によりオフターゲット効果を最大限抑えているため、目的の遺伝子をより特異的にノックダウンします。

フナコシニュース

「Dharmacon Accell siRNA によるヒトiPS 細胞由来ニューロンに対する遺伝子ノックダウン」は、フナコシニュース2024年7月15日号 p.6に掲載しています。

フナコシニュース2024年7月15日号 神経科学特別号
フナコシニュース2024年07月15日号

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