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アデノ随伴ウイルスベクター関連製品 AAV tools(BPS Bioscience社)

掲載日情報:2023/10/16 現在Webページ番号:70885

BPS Bioscience社ではアデノ随伴ウイルス(AAV、Adeno-Associated Virus)ベクターを用いたAAV精製用製品レポーターAAV、およびAAV SaCas9ベクターを幅広く取りそろえています。また、お客様のご要望に合わせたAAVコンストラクトを設計し、目的遺伝子を導入するためのReadyto-useのカスタムAAVウイルス粒子を作製する受託サービスも承ります。

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アデノ随伴ウイルス(AAV、Adeno-Associated Virus)とは

AAVイメージ

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Graham Beards' Own work
CC BY-SA 4.0

アデノ随伴ウイルス(AAV)は、アデノウイルス製剤中の汚染物質として発見されたウイルスで、小型のパルボウイルス科ディペンドウイルス属に分類されます。AAVは、エンベロープを持たず、両端に末端逆位反復配列(ITR、Inverted Terminal Repeat sequences)を含む短い一本鎖DNAゲノムと、正二十面体のカプシドで構成されています。

AAVは自己増殖能がなく非病原性で、ヒトの病気との関連性はありません。野生型AAVは非常に低い頻度で宿主ゲノムに組み込まれることがありますが、この組み込みは主にヒト19番染色体上のAAVS1の「セーフ・ハーバー(safe harbor)」領域で行われます。遺伝子治療目的で使用される組換えAAVは、ウイルスゲノムの代わりに目的の遺伝子(長さ≦5 kb)を送達するように構築されています。細胞内において、組換えAAVベクターはエピソームとして核内に維持され、非分裂細胞で最大6か月間、目的の遺伝子の発現を持続させることができます。免疫原性が低く、挿入変異の誘発がないため、安心して臨床使用できるツールであり、様々なベクターが開発されています。また、目的の遺伝子を動物に導入するのにも最適なベクターです。

AAVの血清型(セロタイプ)について

PBD ID 1LP3から作製したAAV-2構造の三次元画像

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PBD ID 1LP3から作製したAAV-2構造の三次元画像Created with BioRender.com

AAVは、現在までに11の血清型(セロタイプ)のものがヒトおよびヒト以外の霊長類から分離されています。これらの血清型は、細胞表面のレセプターに対するカプシドタンパク質の結合親和性によって決定され、その違いにより、組織/細胞への感染指向性が異なります。そのため、この特性を利用して特定の細胞タイプを効率的に標的にすることができます。また、遺伝子治療目的のために標的の組織/細胞への感染指向性と形質導入効率を遺伝子操作によりさらに高めたAAV血清型が開発されています。そのようにして作られたAAV-DJは、野生型の血清型と比較してin vitroおよびin vivoでの形質導入効率が優れており、その結果広範囲の細胞種に感染することができます。

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CRISPR/Cas9 AAVベクター

CRISPR/Cas9 AAVベクター

Cas9は、sgRNA(single guide RNA)によって特定のDNA配列に誘導され、DNAに二本鎖に切断を導入するエンドヌクレアーゼ酵素です。哺乳動物細胞では、この切断は非相同末端結合(NHEJ、Non-Homologous End Joining)または相同組換え(HDR)のいずれかによって修復されます。NHEJでは、切断部位で数塩基対の欠失または挿入が起こることが多く、これによりフレームシフトが生じ、遺伝子の機能的不活化が引き起こされます。


SaCas9(Staphylococcus aureus CRISPR associated protein 9)は、哺乳動物細胞において高い切断効率を実証しており、またそのサイズが小さいためAAVへのパッケージングに最適です。これらのAAV-SaCas9ベクターは、ノックアウトまたはノックイン研究に用いるSaCas9過剰発現細胞株を作製するために使用されます。さらにBPS Bioscience社では、SaCas9と標的遺伝子特異的sgRNAを同じウイルス粒子内にパッケージするカスタムAAV受託サービスも提供しています。

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AAVの血清型と組織指向性

標的組織 AAV血清型
AAV1 AAV2 AAV3 AAV4 AAV5 AAV6 AAV7 AAV8 AAV9 AAV-DJ
中枢神経系/網膜
中枢神経系/網膜
AAV1 AAV2 AAV4 AAV5 AAV8 AAV9 AAV-DJ
肝臓
肝臓
AAV3 AAV7 AAV8 AAV9 AAV-DJ
肺
AAV4 AAV5 AAV6 AAV9 AAV-DJ
骨格筋
骨格筋
AAV1 AAV6 AAV7 AAV8 AAV9 AAV-DJ
心臓
心臓
AAV1 AAV8 AAV9 AAV-DJ
腎臓
腎臓
AAV2 AAV-DJ
膵臓
膵臓
AAV8 AAV-DJ

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製品ラインナップ

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AAVの精製 レポーターAAV SaCas9 AAV
AAVの精製 レポーターAAV SaCas9_AAV

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AAVの精製

AAV ONE-Extract Solution(#78585

AAVを粒子動物に注射する場合、産生細胞由来を除去した高純度な組換えウイルスを精製する必要があります。AAV ONE-Extract Solutionは、AAV産生細胞からAAV粒子を迅速に抽出するための試薬です。すべてのAAVの血清型に適応でき、簡便かつ効率的な方法でAAV粒子を単離できます。本製品による産生細胞からのAAV粒子の単離は、従来の凍結融解または超音波処理方法に比べて効率が高く行えます。
得られたウイルス粒子は、細胞への導入に使用できます。また、本製品で抽出したウイルス粒子を、必要に応じて更に精製することもできます。

使用例

AAV産生細胞からの本製品および凍結融解法によるAAV粒子抽出の結果

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AAV産生細胞からの本製品および凍結融解法によるAAV粒子抽出の結果

AAV2抽出液中のベクターゲノムコピー数をリアルタイムPCRにより測定した。次に、2×109 VGに相当する量のAAV2粒子をSDS-PAGEで分析し粒子に含まれる不純物を評価した。

  • M:マーカー
  • F/T:凍結融解法
  • AAV ONE:AAV ONE-Extract Solution
抽出したAAV粒子の更なる精製を行った結果

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抽出したAAV粒子の更なる精製を行った結果

それぞれの抽出法により得られた粗精製AAV2粒子をイオジキサノール密度勾超配遠心分離法によって精製し、2×109 VGと5×109 VGに相当する量の試料をSDS-PAGEで分析し、含まれるタンパク質不純物の量を評価した。本製品により抽出したAAV2粒子は、凍結融解法のものより不純物が少ないことが示された。

  • M:マーカー
  • F/T:凍結融解法
  • AAV ONE:AAV ONE-Extract Solution

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レポーターAAV粒子

形質導入後の遺伝子発現の可視化、定量化にはルシフェラーゼや蛍光マーカーなどのレポータータンパク質が最適です。ルシフェラーゼ、ZsGreen、eGFPおよびmCherryを含むAAVについて各血清型の製品があります。これを内部コントロールとして使用し、形質導入および実験条件の最適化、導入した遺伝子発現の経時的な追跡、またはin vivoでのAAVの挙動および形質導入のモニタリングを行うことができます。

製品ラインナップ

商品コードをクリックすると各製品の価格表をご覧いただけます。

AAVの血清型 レポーター(商品コード)
シングルレポーターシステム デュアルレポーターシステム
ZsGreen Luciferase Luciferase-eGFP Luciferase-mCherry
AAV1 78443 78452 78461 78470
AAV2 78444 78453 78462 78471
AAV3 78445 78454 78463 78472
AAV4 78446
AAV5 78447 78456 78465 78474
AAV6 78448 78457 78466 78475
AAV8 78449 78458 78467 78476
AAV9 78450 78459 78468 78477
AAV-DJ 78442 78451 78460 78469
測定波長 励起 493 nm 488 nm 587 nm
蛍光 505 nm 509 nm 610 nm
包装 2×50 μl

使用例:形質導入後のAAVレポーターベクターによるシグナル生成

AAV1-ZsGreen粒子による形質導入

精製AAV1-ZsGreen粒子を4~20% SDS-PAGE後にゲル染色した

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精製AAV1-ZsGreen粒子を4~20% SDS-PAGE後にゲル染色した

SDS-PAGE後、One-Step Lumitein UV Protein Gel Stain(Biotium社)を使用してゲルを染色し、臭化エチジウム用フィルターを使用して撮影した。得られた画像を反転し、タンパク質のバンドを黒で表示した。

  • Lane 1:タンパク質分子量マーカー
  • Lane 2:AAV1
AAV1-ZsGreenを使用したHEK293細胞への形質導入

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AAV1-ZsGreenを使用したHEK293細胞への形質導入

HEK293細胞におけるZsGreenの発現を形質導入の72時間後に蛍光顕微鏡で観察した。ZsGreenの発現は経時的に安定しており、形質導入から30日後においても観察された。


AAVによるLuciferase/mCherryの形質導入

AAV-LuciferaseによるHEK293細胞の形質導入

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AAV-LuciferaseによるHEK293細胞の形質導入

ルシフェラーゼ活性は、形質導入の72時間後にONE-Step Luciferase Assay System(#60690)を使用して測定した。

AAV-mCherryによるHEK293細胞への形質導入

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AAV-mCherryによるHEK293細胞への形質導入

mCherryの発現を形質導入の72時間後に蛍光顕微鏡で観察した。

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SaCas9を構成的に発現するAAV粒子(CRISPR-Cas9システム用)

AAV SaCas9ベクターは、哺乳動物細胞において高い切断効率を有するHAタグ融合SaCas9(Staphylococcus aureus CRISPR associated protein 9)を形質導入します。SaCas9のサイズが小さいためAAVへのパッケージングに最適であり、またHAタグを有するためこれを用いて発現タンパク質の検出ができます。これらのベクターは、SaCas9を過剰発現する細胞株の発現に使用され、ノックアウト・ノックイン研究の促進に利用できます。

製品ラインナップ

商品コードをクリックすると各製品の価格表をご覧いただけます。

SaCas9を構成的に発現するAAV粒子
AAVの血清型 AAV1 AAV2 AAV3 AAV5 AAV6 AAV8 AAV9 AAV-DJ
商品コード 78479 78480 78481 78483 78484 78485 78486 78478
包装 2×50 μl

使用例

AAV-SaCas9を使用したHEK293細胞への形質導入

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AAV-SaCas9を使用したHEK293細胞への形質導入

細胞にMOI 1×104でAAV-Cas9ウイルス粒子を形質導入した。形質導入の72時間後、標的細胞におけるSaCas9発現を抗HA.11抗体を用いたウェスタンブロットによって検出した。GAPDHをローディングコントロールとして使用した。

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カスタムAAV粒子作製受託サービス

カスタムAAV粒子受託製造

BPS Bioscience社では、お客様のご要望に応じてカスタムAAVコンストラクトを設計し、目的遺伝子を形質導入するためのready-to-useのウイルス粒子を作製します。作製したウイルス粒子は、CRISPRを用いたゲノム編集への使用のほか、タンパク質発現、レポーターによる細胞解析などへの使用に最適です。

組換えAAVは、バイオセーフティレベル1(BSL-1)施設で使用できます。細胞内では、AAVはエピソームとして維持されるため、非分裂細胞では最大6か月間、分裂細胞(HEK293細胞)では最大2か月間、目的の遺伝子を持続的に発現させることができます。詳細は、☞ 当社受託・特注品担当(✉ jutalu@funakoshi.co.jp)までお問い合わせ下さい。

Reporter gene CRISPR Gene of interest
Reporter gene ☟ CRISPR Gene of interest

ルシフェラーゼや蛍光マーカーなどのレポータータンパク質は、AAVに形質導入後の遺伝子発現の視覚化、定量化に最適です。ルシフェラーゼ、ZsGreenおよびmCherryを含むAAVは、形質導入および実験条件の最適化、経時的な導入遺伝子発現の追跡、または内在性コントロールとして使用できます。目的のベクターが製品リストにない場合は、☞当社受託・特注品担当(✉ jutalu@funakoshi.co.jp)までお問い合わせ下さい。

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FAQ

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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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