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自己免疫疾患、炎症性疾患、がん研究にお役立て下さい! TL1A/DR3(免疫調節経路)研究関連製品(BPS Booscience社)

掲載日情報:2024/09/10 現在Webページ番号:70849

自己免疫疾患、炎症性疾患、がんに対する新しい治療方法の研究において、免疫調節を担うTL1A(TNF-like ligand 1A)/DR3(Death Receptor 3)経路に注目が集まっています。ここでは、 TL1A/DR3シグナル伝達の根底にある複雑なメカニズム、その生理学的役割、臨床現場での潜在的な応用に関する技術情報およびTL1A/DR3(免疫調節経路)研究関連製品についてご案内します。

TL1A/DR3(免疫調節経路)イメージ

TL1A/DR3経路の免疫調節とさまざまな疾患治療への応用について

TL1A(TNF-like ligand 1A)とDR3(Death Receptor 3)の生物学

TL1Aの役割

TNF(Tumor Necrosis Factor、腫瘍壊死因子)スーパーファミリーに属するTL1A(TNF-like ligand 1A)は、VEGI(Vascular Endothelial Growth Inhibitor、血管内皮増殖阻害物質)-251またはTNFSF15としても知られ、そのレセプターのDR3(Death Receptor 3)、別名:APO-3、LARD、TRAMP、WSL-1) と結合し、免疫応答を調整する重要な役割を担っています。

TL1A/DR3シグナル伝達経路

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TL1A/DR3シグナル伝達経路(Xu, W.D., et al. (2022).1より引用、作図協力:BioRender.com.)


TL1A/DR3経路は、自然免疫と適応免疫間のクロストークに関する重要なメディエーターとして機能し、免疫細胞の活性化、分化、およびサイトカイン産生に影響を及ぼします。TL1Aは、Ⅱ型膜貫通タンパク質で、その後、TNF-α変換酵素(TACE、TNF-α converting enzyme)などのメタロプロテアーゼ酵素の作用によって三量体可溶性タンパク質として放出されます:DR3に結合し、下流のシグナル伝達カスケードをを活性化し、自然免疫および適応免疫の恒常性の維持に関与します。複数の経路が関わり炎症、アポトーシス、ネクローシスを引き起こします。
TL1Aが結合すると、TNFR関連デスドメインタンパク質(TRADD、TNFR-associated death domain protein)を介してDR3シグナル伝達を活性化し、TRAF2やRIP1などのアダプタータンパク質とキナーゼとともにNF-κBやAP-1などの転写因子の活性化を誘導します。その後の遺伝子発現の変化により、T細胞の増殖、炎症誘発性サイトカインの産生、およびTヘルパー細胞集団の分化が促進されます。さらにTL1A/DR3シグナル伝達は、制御性T細胞(Treg、Regulatory T cells)の機能に影響を及ぼし、さらなる免疫恒常性を形成します。一方で、DR3はFas関連デスドメイン(FADD、Fas-associated death domain)を介したシグナル伝達で細胞質分子RIP1およびRIP3がカスパーゼ経路を活性化し、アポトーシスまたはネクロプトーシスを誘導します。


DcR3(Decoy receptor 3)の役割

TNF受容体スーパーファミリーの可溶性タンパク質メンバーに属するDcR3は、競合阻害物質として作用します。TL1Aに結合してそのレセプターであるDR3との相互作用を阻害することで、TL1Aの生物学的機能を複雑に調整します。このメカニズムによってDcR3はTL1Aを介したシグナル伝達経路を効果的に抑制し、免疫応答を弱めて免疫調節と寛容に寄与します。さらにDcR3は、自己免疫疾患やがんの病因にも関与しており、その調節不全によって免疫恒常性が抑制されると疾患の進行を促進する可能性があります。


TL1A-DR3経路について

TL1A/DR3経路は、免疫寛容、組織修復、宿主防御など、さまざまな生理学的状況において多面的に関与しています。正常な場合、適切な免疫反応の調整で免疫のモニタリングと感染症の回復に関与します。しかし、TL1A/DR3シグナル伝達の調節不全は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬など、自己免疫疾患の発症に関与するため、免疫介在性疾患における重要性が示唆されています。


TL1A/DR3シグナル伝達経路

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自然免疫応答と獲得免疫応答間を橋渡しするTL1A(Aiba, Y.および Nakamura, M (2023).2より引用、作図協力:BioRender.com.)

TL1Aは、自然免疫応答と獲得免疫応答間をクロストークしており、クローン病(CD、Crohn's Disease)、関節リウマチ(RA、Rheumatoid Arthritis)、強直性脊椎炎(AS、Ankylosing Spondylitis)、原発性胆汁性肝硬変(PBC、Primary Biliary Cirrhosis)、喘息、潰瘍性大腸炎 (UC、Ulcerative Colitis) などの自己免疫疾患および炎症性疾患の主要な病因となっています。

自己免疫疾患、炎症性疾患およびがん治療への応用

TL1A/DR3経路は、自己免疫疾患や炎症性疾患における異常な免疫反応を緩和する上での標的として大きな可能性を秘めています。TL1A活性制御またはDR3シグナル伝達阻害を目的とした主に抗体を用いた薬理学的処置は、前臨床研究および初期段階の臨床試験で有望な結果を示しています。この経路を選択的に操作することにより、従来の免疫抑制療法と比較して特異性が向上し、副作用が軽減され、免疫バランスを回復し、疾患の重症度が軽減される可能性があります。一方で、T細胞の機能が低下している腫瘍環境においては、DR3アゴニストを用いた疲弊細胞への共刺激が有効である可能性があります3

PD-1/PD-L1などの免疫チェックポイント阻害物質の相互作用を阻害するとT細胞の機能が回復することは明らかとなっていますが、免疫チェックポイント阻害療法が失敗した場合の対応には他の戦略が必要になる場合があります。さらに、免疫チェックポイント阻害物質とDR3アゴニストの併用は、単独療法よりも効果が向上する可能性があります。

参考文献

  1. Xu, W.D., et.al., "Role of TL1A in Inflammatory Autoimmune Diseases: A Comprehensive Review", Front. Immunol., 13, 891328 (2022). [PMID:35911746]
  2. Aiba, Y., and Nakamura, M., "The role of TL1A and DR3 in autoimmune and inflammatory diseases", Mediators Inflamm., 2013, 258164 (2013). [PMID:24453414]
  3. Zwolak, A., et.al., "A stable, engineered TL1A ligand co-stimulates T cells via specific binding to DR3", Sci. Rep., 12(1), 20538 (2022). [PMID:36446890]


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TL1A/DR3経路研究用製品

BPS Bioscience社は、TL1A/DR3経路研究を支援するさまざまな製品を取りそろえています。品名をクリックすると製品の詳細、商品コードをクリックすると各製品の価格表をご覧いただけます。

品種 品名 包装 商品コード 製品概要
ルシフェラーゼレポータ細胞株 TL1A-Responsive Luciferase Reporter Jurkat Cell Line

TL1A-Responsive Luciferase Reporter Jurkat Cell Line(#78811)🔍
2 vials 78811 NF-κB応答エレメント制御下でホタルルシフェラーゼを発現するTL1A(TNF-Like Protein 1A、TNFSF15)応答性DR3/NF-κBルシフェラーゼレポーターJurkat細胞株です。本細胞株は、DR3(DeathReceptor 3; TNFRSF25; NM_003790.3)を安定発現します。TATAプロモーターの上流に位置するNF-κB応答エレメントにより、ホタルルシフェラーゼレポーターを発現します。ルシフェラーゼ活性を測定することによりDR3のリガンドであるTL1AによるNF-κBシグナル伝達経路の活性化をモニタリングすることができます。TL1AまたはDR3阻害物質の試験と検証、またはDR3細胞シグナル伝達の探索に最適です。
阻害物質スクリーニングキット DcR3:TL1A Inhibitor Screening Assay Kit
DcR3:TL1A Inhibitor Screening Assay Kit(#82160)🔍
96 reactions 82160 DcR3(Decoy receptor 3)とTL1Aの間の相互作用の阻害物質のスクリーニングおよびプロファイリングに有用なキット。
DR3:TL1A Inhibitor Screening Assay Kit
DR3:TL1A Inhibitor Screening Assay Kit(#82241)🔍
96 reactions
384 reactions
82241 DR3(Death Receptor 3)とTL1Aの間の相互作用における阻害物質のスクリーニングおよびプロファイリングに有用なキット。
組換え体タンパク質 TL1A, His-Tag, Avi-Tag Recombinant

TL1A, His-Tag, Avi-Tag, Recombinant(#101880)🔍
100 μg
500 μg
101880
  • 組換え体ヒトTL1Aタンパク質(未標識)
  • 産生:HEK293細胞株
  • アミノ酸:aa 72~251(end)
  • タグ:N末端His-tag(6×His)+ Avi-Tag
TL1A, His-Tag, Avi-Tag, Biotin-Labeled Recombinant

TL1A, His-Tag, Avi-Tag, Biotin-Labeled Recombinant(#101882)🔍
100 μg
500 μg
101882
  • 組換え体ヒトTL1Aタンパク質(ビオチン標識)
  • 産生:HEK293細胞
  • アミノ酸:aa 72~251(end)
  • タグ:N末端His-tag(6×His)+ Avi-Tag
抗体 Anti-TL1A Neutralizing Antibody

Anti-TL1A Neutralizing Antibody(#101729)🔍
50 μg
100 μg
101729 組換え抗ヒトTL1A抗体
  • 交差性:ヒト
  • アイソタイプ:モノクローナル
  • 産生:HEK293細胞
  • 精製:Protein A
  • 適用:ELISAおよび細胞アッセイにおけるTL1Aの中和研究


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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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