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What Makes Antibodies Unstable?(Technical Information) 技術情報:抗体の安定性 - なぜ抗体は不安定なのですか?

掲載日情報:2021/11/26 現在Webページ番号:70459

ImmunoChemistry Technologies(ITL)社は、アメリカ北中西部に位置するミネソタ州ブルーミントンに拠点を置くバイオテクノロジー企業で創業は1994年、アポトーシス/ネクローシスを始めとする細胞の生存率に関連する各種のアッセイキットや、様々なイムノアッセイ製品を製造・販売しています。

技術情報:抗体の安定性 - なぜ抗体は不安定なのですか?    ―    原因と解決法

抗体分子(タンパク質)の熱不安定性と凍結融解

抗体分子は、室温でも-20℃でも保存中に不安定になる傾向があります。また、タンパク質の酸化およびタンパク質の分解は、4℃においても抗体の安定性にとって重要な問題です。このような不安定化反応の頻度は、温度が高くなるほど著しく増加します。抗体の安定性に関する別の懸念は、抗体が凍結/解凍のサイクルを受けるときに生じます。抗体の保存バイアルを-20℃または-70℃で保存した場合、実験に使用するためには融解する必要があります。凍結融解サイクルは、抗体を変性・凝集させ、分子全体の結合能力を失わせます。また、凍結融解サイクルは、氷結晶の形成を引き起こし、抗体のせん断やさらなる劣化につながる可能性があります。

抗体をはじめとするタンパク質は、温度が上昇するに連れ不安定となり、抗体の場合は結合能を失う

温度上昇による抗体の安定性の変化

ある抗体を、-20℃4℃、および室温で10日間保存し安定性を確認した。安定性は、等量の抗原に対する結合能を指標にウエスタンブロット法にて確認した。-20℃で保存した場合の結合能を「変化なし」とした場合、4℃では25%の減少、室温では45%の減少が見られた。左端は分子量マーカーを示す。

希釈溶液に働くせん断力

抗体の不安定性をもたらす別の問題は、IHC(免疫組織化学)やWB(ウェスタンブロット)などに使用されるワーキング溶液で希釈された抗体に関するものです。このような抗体の調製においては、2つの重要な問題が発生します。第1の問題は、他のタンパク質と同様に、抗体の希釈率が高くなると、せん断力の作用によって抗体の安定性が低下することです。多くの精製抗体溶液には、希釈によるせん断効果から抗体を保護するために、ウシ血清アルブミン(BSA)が添加されています。第2の問題は、ワーキング溶液に混入した微生物の増殖と汚染に関するもので、これは-20℃の保管場所から4℃の冷蔵庫に移した後に問題となり得ますし、室温状態ではさらに問題となります。このため、実験直前にワーキング溶液を準備することが推奨されます。これが不可能な場合は、抗体希釈用のワーキング溶液に抗菌剤を加えておくことが強く推奨されます。


グリセロールは、どのようにして抗体を安定化するのですか?

抗体製品は、多くの場合50%のグリセロールを含む緩衝液に溶けた状態となっています。グリセロールは、天然のタンパク質の集団をよりコンパクトな状態に移行させるので、-20℃で抗体を安定化させる能力があることが広く知られています1。また、グリセロールはタンパク質の変性を阻害し、凝集傾向を持つ中間体を安定化させて、タンパク質の凝集を防ぎます1。しかし、最近になって、グリセロールはエチレングリコールとは異なり、室温でもタンパク質を安定化させることが明らかになってきました2
50%グリセロールの存在下で抗体溶液は凍結しないため、-20℃保存の抗体は凍結融解の影響の心配がありません。解凍することなく、-20℃のバイアルから直接必要量を取り出すことができます。さらに、グリセロールは氷晶形成を防ぐことで、抗体をせん断のダメージから保護します。

文献:

  1. Vagenede V. et al., “Mechanisms of protein stabilization and prevention of protein aggregation by glycerol”, Biochemistry., 48(46), 11084~11096 (2009). [PMID: 19817484]
  2. Naidu K.T. et al., “Cryo vs Thermo: Duality of Ethylene Glycol on the Stability of Proteins”, J. Phys. Chem. B., 124(45), 10077~10088 (2020). [PMID: 33143422]

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