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1つのFFPE組織試料からRNA/DNAを抽出できるキット Mag-Bind FFPE DNA / RNA 96 Kit

掲載日情報:2021/07/21 現在Webページ番号:70452

磁気ビーズを用いて、1つのキットでホルマリン固定パラフィン包埋(Formalin Fixed Paraffin Embedded, FFPE)組織試料からDNAまたはRNAをそれぞれ抽出します。汎用型の自動分注装置による自動化にも利用できます。有害なキシレンは使用しません。

FFPE由来DNAの新たな利用法(がん家族歴研究)

FFPE由来DNAを用いた様々な試みがなされています。英国マンチェスター大学セントメアリーズ病院ゲノム医学センターのギャレス・エヴァンス教授のグループは、従来のリンパ球の代わりに、死亡した罹患者由来の180個のFFPE試料を用い、得られたDNAから次世代シークエンシングに基づく遺伝子パネルを開発・検証を行いました。内訳は、乳がん・卵巣がん患者(BRCA1/BRCA2遺伝子の生殖細胞変異を調査)、大腸がん・胃がん・卵巣がん・子宮内膜がん患者(遺伝性大腸がん・胃がんに関連する13遺伝子のパネルで調査)で、140例(78%)の解析が成功し、がんの家族歴に関連する29の生殖細胞変異が同定されたことを報告しました。病気にかかって亡くなった方のFFPE試料が、近親者の将来の健康管理に有効である可能性を示しています。

参考文献

  • Bennett, S., et al., Eur. J. Hum. Genet., 29(5), 861~871 (2021). PMID: 33654310

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Webinar:同一FFPE試料からDNAとRNAを包括的に分析するための抽出ストラテジー



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特長

  • FFPE試料の脱パラフィン操作では、有害なキシレンを用いた溶解・除去の代わりに、ミネラルオイルを加えて加熱処理をします。
  • 1つのFFPE試料から、溶出液を変えてDNAとRNA両方を抽出するため、貴重な試料から包括的な解析が行えます。
  • 精製には磁気ビーズを用いるため、自動化装置への組み込みに適しています。
  • 独自のバッファーにより、試料中のホルムアルデヒドによる架橋を部分的に脱架橋します。
  • 得られたDNA/RNAへの他方の混入はありません。
  • DNA、RNAいずれかのみの抽出も可能です。
  • 得られたDNAとRNAは、NGS、PCR、qPCR、リアルタイムRT-PCR、マイクロアレイ解析、microRNA解析などに使用できます。

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仕様

  • 出発材料:FFPE組織
  • 液量:50~200μl
  • 試料量:厚さ10μm未満のFFPE切片3枚
  • 処理能力:最大96試料
  • 抽出法:自動または手動

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操作方法概略

  1. FFPE試料にミネラルオイル(別途用意)を加え、56℃でのインキュベートと遠心分離でパラフィンを溶解・除去する。
  2. FDR bufferおよびProteinase Kを加え、56℃でのインキュベートでFFPE試料を溶解する。
  3. ライセートを90℃に加熱して、Proteinase Kの失活と、 核酸中の架橋の回復を行う。
  4. ライセートにMB4 bufferとMag-Bind particles CHを加えてDNAを結合させ、精製・溶出を行う。
  5. RNAを含む上清にイソプロパノール(別途用意)を加え、これに新たなMag-Bind particles CHを加えてRNAを結合させ、精製・溶出を行う。

■核酸抽出に用いるFFPE試料について

標準的なホルマリン固定、パラフィン包埋の手順では、核酸の著しい断片化が起こります。DNA / RNAの断片化の程度を抑えるために、以下のガイドラインを推奨します。

  1. 組織試料の固定に、4~10%ホルマリンを使用する。
  2. 固定時間を14~24時間にする。
  3. 試料を完全に脱水してから包埋する。

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各種実験例

実験例1:がんFFPE試料から得られた核酸の平均収量

各種がんのFFPE試料からDNAとRNAを分離・精製し、平均収率を見た

3種類のがん組織(乳がん、肺がん、大腸がん)の1 x 10 μm切片について、3種類のキット(Omega Bio-tek社、A社、B社)にてそれぞれの推奨プロトコルに従い核酸抽出操作を行い、平均収率(n=3)を求めた。定量化には NanoDrop 2000cシステム(Thermo Fisher Scientific社)、QuantiFluor dsDNA and RNAシステム(Promega社)を使用した。いずれの場合も、Omega Bio-tek社キットの収率は、A社やB社キットの収率よりも勝っていた。


実験例2:各種がんのFFPE試料から得られたDNAおよびRNAの純度の比較

キットで単離したDNAとRNAの純度を分光光度法にて測定

各社のキットを用いて単離したDNA(図A)およびRNA(図B)の純度を、分光光度法にて検討した。
A260 / A280の比は実線の棒グラフで、A260 / A230の比は斜線の棒グラフで示した。Omega Bio-tek社キットによるDNAおよびRNAのA260 / A280の平均値は、それぞれ純粋なDNAおよびRNAを示す理論値である1.8および2.0に近い値であり、抽出プロトコルによりDNAとRNAが別々の溶出液に効率よく分離されたことを示した。一方、A社およびB社の場合、抽出したDNAのA260 / A280の比が2.0に近かったことから、DNA溶出液にRNAが混入している可能性が示された。A260 / A230比により二次的な純度の測定を行ったところ、精製されたDNAおよびRNAの値は、Omega Bio-tek社が1.33~1.72、A社が0.64以下であった。B社については、A260 / A230比は、DNAでは2.0以上、RNAでは0.60未満であり、Omega Bio-tek社のキットで抽出された核酸が、他の2社のキットで抽出された核酸よりも高品質であることが示された。


実験例3:得られたDNAおよびRNAを用いたReal-time PCR分析

DNAおよびRNAの品質をRT-PCRで検討

3社のキットのプロトコルに従って得られたDNAおよびRNAの品質と下流の実験への適用に関し、qPCRから得られたThreshold Cycle(Ct)値を比較することによって評価した。10倍希釈したDNA(A)およびRNA(B)の溶出液を用い、ヒト由来DNAおよびRNAに特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCRを各メーカーの推奨プロトコルに従い3回行い、得られた平均Ct値を示した。それぞれのFFPE試料からA社およびB社キットで抽出されたDNAやRNAと比べて、Omega Bio-tek社のキットで得られた核酸は、より少ないサイクル数で増幅され、優れた増幅能力と感度の高さを示した。例えば、乳がん組織試料からOmega Bio-tek社キットで精製されたDNAは、A社キットの場合よりも~1.34サイクル、B社キットの場合より~2.35少ないサイクルで増幅され、高収量であることが示された。


実験例4:各種がんのFFPE試料から抽出したRNAに含まれる長鎖断片の比率

FFPE試料の由来 メーカー RNAのDV200
胸部 Omega Bio-tek社 74.90%
A社 70.54%
B社 59.38%
Omega Bio-tek社 76.86%
A社 69.85%
B社 60.28%
結腸直腸 Omega Bio-tek社 70.97%
A社 66.75%
B社 38.40%

それぞれの試料から各社キットで抽出したRNAについてTapeStation 2200(Agilent社)で解析し、3種のがん由来FFPE試料から抽出したRNAのDV200値(200 nt以上のフラグメントの割合)を評価した。いずれの抽出方法でも、DV200値は20%以上であり、Illumina社のNGS解析で必要とされるFFPE試料からのRNAの品質を満たしていた。しかし、Omega Bio-tek社製品で抽出したRNAは、A社およびB社のキットで抽出したRNAに比べて、200ヌクレオチド以上の断片の割合が有意に高く、高品質なRNAであることが判明した。


実験例5:大腸がん組織のFFPEおよび新鮮凍結組織試料から抽出したDNAのΔCq値

メーカー 結腸直腸試料 Cq(or Ct) ΔCq値/凍結組織試料
Omega Bio-tek社 FFPE 25.42 3.10
A社 FFPE 26.39 4.06
B社 FFPE 27.64 5.32
n/a 新鮮凍結試料 22.33 n/a

大腸がん患部から摘出した組織を、そのまま新鮮凍結保存した試料とFFPE試料で、Omega Bio-tek社、およびA社、B社のキットを用いて精製したDNAについて、ΔCq値を求めた。Omega Bio-tek社製品の場合、ΔCq値はA社およびB社のキットを用いて得られたものよりも低値であった。このことは、得られた核酸の品質が高く、FFPE処理される前の実際の組織試料をより忠実に再現していることを示している。TruSight Tumor 170(Illumina社)ライブラリの最適なパフォーマンスのためには、ΔCq <5が推奨されており、Omega Bio-tek社とA社製品で抽出したDNAはこの要件を満たしているのに対し、B社製品で精製したDNAはこの基準を満たしていなかったことを示した。


実験例6:各種がん由来FFPE試料から抽出したDNAのシークエンス指標値

FFPE試料の由来 メーカー インサートサイズ
の中央値
Exon bases(%) Aligned reads(%)
胸部 Omega Bio-tek社 165 96.8 84.9
A社 164 94.5 84.6
B社 161 94.0 82.5
Omega Bio-tek社 162 93.9 83
A社 162 89.4 83.5
B社 149 79 53.8
結腸直腸 Omega Bio-tek社 160 96.1 82
A社 157 95.2 80.3
B社 156 91.8 77.8
凍結試料 176 95.9 89.5

異なるキットで抽出したDNAについて、シークエンス指標(インサートサイズの中央値(bp)、Exon basesの割合(250xカバレッジ)、Aligned readsの割合)を追跡した。インサートサイズの中央値は、TruSight 170パネル(Illumina社)用に定められた品質閾値79 bpを満たしていた。Omega Bio-tek社キットの性能は、A社のものと同等であり、B社製品と比べると、ほとんどの指標で優れていると思われた。大腸がん試料の場合では、Omega Bio-tek社製品によるFFPE試料由来DNAの品質指標は、新鮮な凍結試料に近いものであった。例えば、インサートサイズの中央値は、凍結試料では176、Omega Bio-tek社製品では160であったのに対し、A社とB社ではそれぞれ157、156と低めであった。また、Exon bases(%)とAligned reads(%)に関しても同様であった。これは、Omega Bio-tek社製品を用いたFFPE試料からのDNA抽出法がより高品質であることを示しており、よって新鮮凍結試料から抽出したDNAの値をより正確に反映していると考えられる。


実験例7:大腸がん組織FFPE試料由来DNAにおける変異検出と新鮮凍結コントロールとの比較

各社キットを使用して大腸がん組織FFPE試料から抽出したDNAの変異検出

Omega Bio-tek社およびA社、B社のキットを使用して大腸がん組織FFPE試料から抽出したDNAについて、TP53遺伝子とPIK3R1遺伝子の2つの報告された変異を解析した小規模な変異検出(バリアントコーリング)分析で、新鮮な凍結組織(対照)と比較した。いずれのキットでも、同じ変異が検出されたことを示している。しかし、ここで報告された変異について、新鮮な凍結組織由来試料とFFPE試料の対立遺伝子頻度とカバー率を比較すると、Omega Bio-tek社の抽出物が対照試料由来抽出物と最も一致していた。乳がんおよび肺がんのFFPE組織試料をシークエンスした場合も、同様の結果が得られた(結果は省略)。


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キット内容

  • FDR buffer
  • Proteinase K solution
  • MB4 buffer
  • Mag-Bind particles CH
  • RMP buffer
  • Elution buffer
  • DNase digestion buffer
  • Mag-Bind DNase I
  • PHM buffer
  • Nuclease-free water

抽出精製には、ミネラルオイル、シーリングフィルム(Omega Bio-tek社 #AC1200)などが別途必要です。


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