C末端にタグを有する組換え（リコンビナント）ナノボディ抗体 tag 標識済みVHH（Nanobody）抗体

VHH（Nanobody、ナノボディ）抗体はアルパカやラマなど、ラクダ科由来の約15 kDaのシングルドメインからなるモノクローナル抗体です。VHH抗体の分子量は通常の抗体の約10分の1で、高いアフィニティ、組織透過性、早い血中クリアランスを示し、ELISAや免疫沈降のみならずin vivoイメージングやin vitroライブセルイメージングに有用です。

VHH抗体はベルギーのブリュッセル自由大学で、ラクダ科の動物が持つ重鎖のみの抗体（HcAbs）から発見されました。HcAbsの単一可変ドメイン（VHH）は親水性で、抗原との結合に必要かつ十分であり、単離できることがわかりました。この単一ドメイン抗体は、Ablynx社によりNanobody（ナノボディ）、VHHsまたはシングルドメイン抗体と名付けられました。2018年には血液凝固疾患の治療薬として、初のVHH医薬品Caplacizumabが発売されました。VHH抗体はcDNAが利用できるため、組換え産生と精製に加えて、部位特異的な操作と修飾、誘導体化が簡便に行えます。

VHH抗体はサイズが小さく、単一ドメインであるため、免疫沈降やプロテオミクスに最適です。また、VHH抗体は配列が既知であるため、マススペクトル上のノイズを低減できます。

VHH抗体は、イメージング用に様々な放射性物質でタグ付けすることができます。代謝回転の半減期が短く、イメージングに適しています。また、アルブミン結合VHH抗体と結合させたり、PEG化することで半減期を長くすることが可能です。

VHH抗体をHRPやアルカリホスファターゼ（AP）などの酵素（または蛍光色素）に直接カップリングすることで、ELISAや免疫染色をワンステップで行うことができます。さらに、高感度なバイオセンサーの開発にも最適です。

構造研究においては、VHH抗体をシャペロンとして使用し、共結晶化研究を行うことができます。VHH抗体はタンパク質の結晶化を促進し、結晶化が困難な多くのタンパク質の詳細な構造の取得に有用です。