超高速なシームレスクローニングを行える酵素複合体 FAST-Licase

数種類のDNA修飾酵素の複合体であるLicaseを用いて、20塩基対長のオーバーラップを有する2つ以上のDNA断片を5分以内、また簡便かつ高効率でシームレスクローニングを行える製品です。Licaseは、熱ショックの前後で3’→5’エキソヌクレアーゼ活性からアニーリング活性に切り替わるユニークな性質を有し、これを用いて末端に相同性配列を有するDNAフラグメント間での超高速な相同組換えを行います。
※ 本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。

FAST-Licaseを用いたクローニングの操作方法概略

* コンピテントセルは1～5×10⁸ transformants/μg DNA程度の効率のもので十分です（別途ご用意下さい）。
※ 同時にアッセンブルするDNA断片の数には制限ありませんが、本製品は迅速性を特長とした製品であるため、2～3個までのDNA断片での使用をお勧めします。

クローニングするDNA断片をPCRによって増幅し、これを複製起点のRepを有するベクターに組み込みます。まず、ベクターを制限酵素により消化し、線状化します。PCRに用いる2つのプライマーは、それぞれ5‘領域には切断したベクターの一端に相同な20ヌクレオチドを、3'領域には目的のDNA断片に相同な配列を含むようにします。これら2つのプライマーにより、目的配列の両端に線状化されたベクターとの相同配列を有するPCR産物が得られるように設計します。
また、DNA合成により作成した二本鎖DNAのクローニングにも利用できます。この場合、合成DNAの5‘リン酸化は必要ありません。しかし、PCR断片の挿入の場合と同じく、20ヌクレオチド長のベクター末端との相同性配列領域をDNA断片の両側に付加する必要があります。

挿入する配列が短すぎて、合成二本鎖DNA断片が使用できないことがあります。この場合は、代わりに、部分的にオーバーラップする2つのオリゴヌクレオチドを使用し、アニーリング後に2つくぼみを作製する方法が可能です。この方法では、FAST-Licase反応を2回行います。最初の反応の間においてのみ、切断または増幅されたベクターだけを混合物に添加します。オーバーラップするオリゴヌクレオチドは、2番目の反応の間に加えます。

各末端に20ヌクレオチド長の相同性領域を有するプライマーを用いたPCRによって2つのDNA断片を増幅します。2つの断片のうちの1つには、細菌宿主中での組換えDNAの生存および増幅を可能にする適切な複製起点を含むようにします。これはベクターの作製、改変および変異導入に特に適しており、これによって1つまたはそれ以上の組換えオーバーラップ部分の中に変異を容易に組み込むことができます。

互いに相補的な相同配列を両端に有する短い複数のDNA断片を、線状化ベクターまたは複製起点を有するPCR産物に一度にクローニングします。

ウォーターバス中で、反応液を75℃で2～5秒間インキュベートします。

サーマルサイクラーを用いた場合には、マニュアル法に比べて2倍のクローニング効率が得られます。また、クローニングが困難な場合、2個以上のDNA断片のアッセンブル、オリゴヌクレオチドを挿入する場合または自動化による場合にも、サーマルサイクラー法を用いることをお勧めします。