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グルタミン酸作動性ニューロンの研究に 抗VGLUT抗体(Synaptic Systems社)

掲載日情報:2022/08/12 現在Webページ番号:67476

哺乳動物の中枢神経系(CNS)においてグルタミン酸は主要な興奮性神経伝達物質です。すべてのシナプスの半数以上がグルタミン酸を放出し、CNSのほとんどすべての興奮性ニューロンがグルタミン酸作動性であると推定されています。 本ページではグルタミン酸作動性ニューロンの研究に有用なSynaptic Systems社の高品質な抗VGLUT抗体をご紹介します。

グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーとしてのVGLUT(小胞グルタミン酸トランスポーター)

グルタミン酸は哺乳動物の中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質であり、学習、認知、記憶などのプロセスで重要な役割を果たしています。グルタミン酸トランスポーターは最大12個の膜貫通ドメインを持つ複数回膜貫通型タンパク質で、興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT)と小胞グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)の2つのサブクラスに分類できます。脳において、EAATはグリア細胞およびニューロンのグルタミン酸の再取り込みによって、シナプス間隙やシナプス外部からグルタミン酸を除去する役割を果たし、VGLUTはニューロンの細胞質からシナプス小胞にグルタミン酸を供給します。VGLUTファミリーにはVGLUT1(別名:BNPI)、VGLUT2(別名:DNIP)およびVGLUT3の3つサブタイプがあります。(表1)

表1:VGLUTファミリータンパク質

タンパク質名 VGLUT1
(UniProt: Q62634)
VGLUT2
(UniProt: Q9JI12)
VGLUT3
(UniProt: Q7TSF2)
遺伝子名 SLC7A7 SLC7A6 SLC7A8
分子量(kDa) 61.6 64.4 66.1
アミノ酸残基数 560 582 589
膜貫通ドメインの数 12 12 10
発現している組織・臓器 中枢神経系 中枢神経系 中枢神経系、小腸、大腸

VGLUTによるグルタミン酸のシナプス小胞内への取り込みは、液胞型プロトンATPase(V-Type H+-ATPase)によって形成されるH+イオン(プロトン)勾配に依存します。すなわち小胞内へのプロトンの流入がpHの低下と膜電位の変化を引き起こし、グルタミン酸の輸送を促進します。グルタミン酸はVGLUTを介して、一価の陽イオン(主にK+)と共に小胞内に輸送され、逆に塩化物イオン(Cl-)がプロトンと共に小胞外に輸送されます1(図1)。また、シナプス小胞へのグルタミン酸取り込みは図2に示すサイクルで行われ、グルタミン酸の取り込み量は、グルタミン酸の供給量、H +イオンの勾配および小胞内のCl -濃度に依存します。

シナプス小胞へのグルタミン酸の取り込み

図1:シナプス小胞へのグルタミン酸の取り込み


シナプス間隙におけるシナプス小胞の形成サイクル

図2:グルタミン酸作動性ニューロンのシナプス間隙におけるシナプス小胞の形成サイクル

  1. 特定の刺激により、グルタミン酸がエキソサイトーシスを介してシナプス間隙に放出される。この際グルタミン酸と一緒にH+も放出され、細胞内のpHが上昇し、VGLUTが不活性化される。
  2. エンドサイトーシスで取り込まれた小胞には高濃度のCl-が存在し、更に液胞型ATPaseがH+を取り込むことで小胞内のpHが低下し、VGLUTが活性化される。活性化したVGLUTはグルタミン酸を小胞内に取り込むと同時にCl-を排出する。
  3. 多くのグルタミン酸とH+が小胞内に取り込まれ、小胞内のpHが更に低下する。
  4. 小胞内はグルタミン酸で満たされ、Cl-がほとんどなくなる。これによってVGLUTは不活性化し、グルタミン酸の過剰な取り込みが生じないよう調整されている1

中枢神経系(CNS)におけるVGLUTの分布

VGULT2、3およびより多く存在するVGLUT1はCNSの異なる領域で相補的に発現しており2、この差次的発現パターンはラット脳のmRNAレベルで明らかにされています3(図3)。

シナプス小胞へのグルタミン酸の取り込み

図3:ラット脳(前部梨状皮質)におけるVGULT1~3 mRNAの分布

VGLUT1とVGLUT2はどちらも脳組織で発現していますが、VGLUT1は皮質領域で多く見られ、VGLUT2は皮質下領域に多く見られます2(図4)。脳組織で見られるこれら2つの主要なアイソフォームは、神経伝達物質放出の確率(probability of transmitter release)とシナプス可塑性が異なる、2つの機能的に異なるグルタミン酸作動性シナプスの亜集団で発現しています4(図5)。さらにVGLUT1とVGLUT2は、セロトニン(5-HT)、GABA、ドーパミン(DA)、またはアセチルコリン(ACh)といった他の主要な神経伝達物質とは共局在しません。対照的に,非定型サブタイプであるVGLUT3はVGLUT1やVGLUT2より発現量が少なく、セロトニン、アセチルコリン、GABAなどの神経伝達物質を使用するニューロンで共発現していることがあります。線条体コリン作動性介在ニューロンなど一部の神経細胞集団では、体細胞樹状突起部分にVGLUT3が多く見られます5

マウス脳でのVGLUT1および2の局在

図4:マウス脳切片でのVGLUT1およびVGLUT2の局在
パラホルムアルデヒド固定マウス脳切片の免疫蛍光染色像。Sulfo-Cyanine 5標識マウス抗VGLUT1抗体(#135011C5:緑色)およびSulfo-Cyanine 3標識マウス抗VGLUT2抗体(#135421C3:赤色)を使用し、核はDAPI(青色)で染色した。

画像内容説明

図5:マウス脳切片のVGLUT1、VGLUT2およびVGLUT3の三重染色
パラホルムアルデヒド固定マウス脳切片の免疫蛍光染色像。マウスモノクローナル抗VGLUT1抗体(#135011:緑色)、組換えモルモットモノクローナル抗VGLUT2抗体(#135418:赤色)および組換えウサギモノクローナル抗VGLUT3抗体(#135208:青色)を使用し、蛍光標識二次抗体による間接法で検出した。

グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーとしてのVGLUT

モノアミン(VMAT1とVMAT2)やアセチルコリン(VAChT)を輸送する小胞は細胞体と神経終末の両方に見られますが、VGLUT1とVGLUT2は神経終末に限局して見られ、原形質膜、エンドソームおよび新たに形成されたシナプス小胞の間で継続的に再循環されています2(図6)。

VGLUT1およびVGLUT2は、特定が困難だったグルタミン酸作動性ニューロンの特異的マーカーとして有用性が期待されます。一方、VGLUT3はグルタミン酸以外の神経伝達物質を使用するニューロンでも発現しているため、グルタミン酸作動性ニューロンの特異的マーカーとしては適していません5

シナプス間隙におけるシナプス小胞の形成サイクル

図6:前シナプスにおけるVGLUT1およびVGLUT2の局在
パラホルムアルデヒド固定ラット海馬ニューロンの免疫蛍光染色像。
A)組換えウサギモノクローナル抗VGLUT1抗体(#135308:赤色)およびマウスモノクローナル抗MAP2抗体(#188011:緑色)を使用。
B)組換えモルモットモノクローナル抗VGLUT2抗体(#135418:赤色)およびウサギポリクローナル抗MAP2抗体(#188002:緑色)を使用。
いずれも蛍光標識二次抗体による間接法で検出した。

参考文献

  1. Eriksen, et al., "The mechanism and regulation of vesicular glutamate transport: Coordination with the synaptic vesicle cycle.″ Biochim. Biophys. Acta. Biomembr., 1862(12), (2020). PMID:32147354
  2. Pietrancosta, et al., "Molecular, Structural, Functional, and Pharmacological Sites for Vesicular Glutamate Transporter Regulation.″ Mol. Neurobiol., 57(7), 3118~3142(2020). PMID:32474835
  3. Fremeau, et al., "VGLUTs define subsets of excitatory neurons and suggest novel roles for glutamate.″ Trends Neurosci., 27(2), 98~103(2004). PMID:15102489
  4. Du, et al., "Research progress on the role of type I vesicular glutamate transporter (VGLUT1) in nervous system diseases.″ Cell Biosci., 10(26), (2020). PMID:32158532
  5. El Mestikawy, et al., "From glutamate co-release to vesicular synergy: vesicular glutamate transporters.″ Nat. Rev. Neurosci., 12(4), 204~216(2011). PMID:21415847

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抗VGLUT1抗体

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抗VGLUT2抗体

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商品名(クローン名) 適用 商品コード
Anti-VGLUT 1/2, Rabbit-PolyIC IHC WB135503
Anti-VGLUT 2, Rabbit-PolyExM IC IHC IP WB135402
Anti-VGLUT 2, Rabbit-PolyELISA IC IHC IP WB135403
Anti-VGLUT 2, Guinea Pig-PolyEM IC IHC IP WB135404
Anti-VGLUT 2, Rabbit-Mono(Rb95E11)IC IHC IP WB135408
Anti-VGLUT 2, Mouse-Mono(318A8)ELISA IP WB135411
Anti-VGLUT 2, Chicken-PolyIC IHC WB135416
Anti-VGLUT 2, Chicken-Mono(Ch95E11)IC IHC WB135409
Anti-VGLUT 2, Guinea Pig-Mono(Gp95E11)IC IHC WB135418
Anti-VGLUT 2, Mouse-Mono(95E11)IC IHC IP WB135421
Anti-VGLUT 2, Mouse-Mono(95E11), BiotinIC IHC WB135421BT
Anti-VGLUT 2, Mouse-Mono(95E11), Sulfo-Cyanine 3IC IHC135421C3
Anti-VGLUT 2, Mouse-Mono(95E11), Sulfo-Cyanine 5IHC135421C5

略号
EM:Electron Microscopy、ExM:Expansion Microscopy、IC:Immunocytochemistry、IHC:Immunohistochemistry、IP:Immunoprecipitation、WB:Western Blot



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抗VGLUT3抗体

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商品名(クローン名) 適用 商品コード
Anti-VGLUT 3, Rabbit-PolyFCM IC IHC WB135203
Anti-VGLUT 3, Guinea Pig-PolyIHC WB135204
Anti-VGLUT 3, Rabbit-Mono(Rb57A8)IHC135208
Anti-VGLUT 3, Mouse-Mono(57A8)IHC IP WB135211

略号
FCM:Flow Cytometry、IC:Immunocytochemistry、IHC:Immunohistochemistry、IP:Immunoprecipitation、WB:Western Blot



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関連製品:免疫原タンパク質/ペプチド

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商品名 商品コード
VGLUT 1, Rat135-0P
VGLUT 1, Rat135-3P
VGLUT 2, Rat135-4P
VGLUT 3, Mouse135-2P


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お問い合わせ先

(テクニカルサポート 試薬担当)

reagent@funakoshi.co.jp

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